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真・恋姫†無双 ~孫呉千年の大計~ 第3章 18話

雪月さん

常連の皆様&お初の方もこんばんは いつもお世話になっております

この作品は真・恋姫†無双・恋姫†無双の2次創作となっております
主人公は北郷一刀 メインヒロインは雪蓮と蓮華と仲間達でお送りしております
※猶、一刀君はチート仕様の為、嫌いな方はご注意を! ※オリキャラ紹介は本文下記参照のこと

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2014-05-28 19:42:27 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:2579   閲覧ユーザー数:2199

 

第3章 群雄淘汰・天下三分の計編 18話 『 官渡の戦い 窮地へと陥る華琳の誤算 』

 

 

 

 

白蓮の誤算で始まった官渡の戦い、序盤は華琳側が優位に展開していた

 

上党から秋蘭が晋陽やギョウへと襲い掛かり、河北西部周辺地域を瞬く間に制圧していった

同じく青州から進発した流琉と風は、南皮を楽らくと制圧し終えると

流琉と風は疾風の如き速さをもって、白蓮の本拠地である易京へと襲い掛かったのである

 

白蓮達がこの報せを知るのは、なんと南皮やギョウが落とされてから、一週間は経とうとした後の事であり

しかも報せてくれたのが、風や流琉に急襲され易京から撤退する紅を介し

孫呉側の斥候がもたらしてくれた情報という、なんともお粗末、いや天啓ともいえた

 

裏を返せば、それだけ華琳達が徹底的に白蓮側の情報を遮断していた結果ともとれるのであろうが・・・

 

現状、本拠地の易京をまだ曹操側に抑えられてはいないものの・・・ 

白蓮の領土は、麗羽と開戦前より減ったことになるのであった

 

だが秋蘭や流琉、風を始めとした華琳側に領土を侵略されている間

白蓮とて手を拱いていた訳ではなかった 

 

 

そう、華琳の誤算は、まさしくここ”官渡城”の防衛にあったのだ

 

 

読者の皆様は正史を存じていることだろうと察する

そして今流れている歴史と”決定的にくい違っている点”が華琳の誤算を招いた

ともいえる結果をもたらしていた

 

”決定的にくい違っている点”の1つめ、それは華琳側に霞がいないこと

そして2つめに、この戦いに麗羽、斗詩、猪々子だけでなく、白蓮と華雄が加わっていたことである

 

戦を大局的にみれば華琳の優位は揺るがない 追い詰められていたのは白蓮であろう

しかし”官渡”という局地的戦おいては、むしろ白蓮達が優位に戦を進めていたのであった

 

 

そして華琳の2つめの誤算となるのが、互いに投入し使用した『 大型兵器 』にあった

 

 

前話にも書いたように、白蓮は麗羽との戦い時に未使用であった『井闌』を接収していたのだ

 

本来城の攻略には、長いはしごをかけ登って攻略という

その間、落石、弓などが次々と容赦なく飛来し、攻撃側が圧倒的不利な状況で行われていた

 

だが、その不利な戦闘状況を一遍させる攻城兵器がこの『井闌』なのである

 

簡単にこの兵器を説明するなら、城壁の高さに合わせた台車と言ってしまえばお解りであろうか?

似たモノに、祇園祭などで使用される山鉾、山車がニュアンスとして近いといえるのかもしれない

実際には、山車より一回り以上高く大きくガッシリとした兵器なのであるが・・・

 

一方、華琳側は反董卓連合時にも使用した投射兵器である『 投石器・霹靂(へきれき)車 』を用いていた

 

では一体、この2つの兵器のどこに差が生まれ華琳に誤算が生じたというのだろうか?

 

それは”初見”であるかどうかという点にあった

 

皆まずは兵器の大きさ、威容に圧倒されてしまう 次に兵器の威力や飛距離、実用性へと眼が向く

城から遠距離では、もちろん投射兵器である『霹靂車』>『井闌』が有利、一方的といえる

 

初見の一撃で官渡城から『霹靂車』にて発射された大石の一撃をもって

白蓮側が用意した『井闌』を破壊できたなら、どれだけの衝撃を白蓮側へと与えられたのか計り知れない所であった

 

だが最悪な事に、白蓮や華雄はもとより、ここにいる多くいる将兵達は

華琳が反董卓連合時、虎牢関の城壁を砕くのに使用した『霹靂車』の性能を、近くで見て知って体感していた

 

それはそうだろう 白蓮達は『霹靂車』を防衛する側にいたのだから・・・

 

それは戦闘に従事している者ならば、率いる驍将ともなれば

虎牢関の戦闘時にみせた霞のように、兵器の性能や特性を瞬時に見抜き対応してしまう能力を有している

 

「投石車が狙いを定める前に、井闌を城壁へと寄せてしまえ!!」

「あの投石車は連射は不可能だ! 破壊されるのを恐れずどんどん前進せよ!!」

 

白蓮や華雄のこの指示を受け男達は、命一杯力の限り押して『井闌』を前進させていく

 

動かない城壁だった虎牢関の壁でさえ、『霹靂車』の命中率は4回に1回ほど・・・

あれから訓練を積んだ真桜達であったのだろうが、前進し常に動く『井闌』に当てるなど至難の技といえた

 

「くっ! 最悪や・・・ 大石を装填したらどんどん撃ちや! 訓練通りとちゃうけど予想して撃ち!」

 

真桜の指示は、対応する白蓮達に対して当然ともいえる内容なのだが 

だが、真桜の指示は照準を合わせている部下にとっては酷といえた

 

「おっほっほっほ~~~♪ どうせ、くるくる小娘の大石など、私が手懸け開発した『井闌』には、到底掠りなどしませんことよ!

 それにこういうのは、当らなければどうということはありませんのよ!! 

 皆さん 怯えず進みなさい! 天は我らの味方のようですわ! さぁ 私に続きなさい!」

 

「麗羽さま! 大石が飛んできて危険です! 降りてきてください!」

「そうですよ! 斗詩の言う通りですよ 麗羽さま!」

 

馬鹿と煙は高いところが好き・・・といっては麗羽に失礼なのだろうが・・・

真桜の最悪という先程の言葉が指していたのは、実は天候の事であり、今回ばかりは天候も白蓮達に味方したのだろう

また時間も限られていた為、風と小雨が降る中で視界が不良、曹操軍にとって最悪ともとれる形で戦が行われていたからだ

 

だからといって、いつ大石が井闌に直撃するか分らず

冷や冷やしながら斗詩や猪々子が必死の説得も試みるも、麗羽は一向に聞く気配もなく

麗羽は『井闌』の最上段で高笑いをしながら、大石が飛んでくる中、果敢にも指揮を執り続けていたのである

 

その様子を白蓮と華雄は、さすがは大物だな、とても真似できんと呆れ返りつつ見守るのだった

 

「射ち方用意~ 今です! 射なさい!」

 

『井闌』の射手の有効射程距離に達していたのだろう 麗羽の指示により、最上段から矢が次々と放たれていく

 

秋蘭及び部隊がここにいたならば、曹操側の射手も優秀だったのだろうが

しかし、白蓮達の”猛攻”を止める為に、『魏武の大剣』を傍に置いていたのも、狂いが生じて誤算となっていた

 

井闌が近づいて来る事に恐れを抱いたのか、それとも井闌から放たれる矢に恐れを抱いたのだろうか

いずれにしても曹操軍が放ってくる矢に、正確性が伴っていなかった事をここに付け加えておく

 

「皆さん 今ですわよ! このまま前進し城壁へと横付けしてしまいなさい!

 猪々子さん 斗詩さん ごちゃごちゃ言ってないでさっさと門を開放なさい!」

 

「へ~~~い」

「ふぁ~~~い」

 

麗羽が何故これほどまでに、積極的にきちんと軍の仕事をこなしているのか? 

その辺りの事情を知る人物は、陣営の中でも白蓮と華雄のみなのだが

長年付き合ってきた2人だけに、その輝かしい?というかふてぶてしさに、若干?いや多大な違和感が付き纏っているものの・・・

さすがに戦の最中だけに、違和感の正体を追求している暇もなく

猪々子と斗詩は急いで井闌の梯子を駆け登り、官渡城へと侵入していった

 

それから間もなくして官渡城の閂は外され

兵達はより気合の篭った雄叫びをあげながら、井闌から次々と官渡城へと乗り込んでいく公孫賛軍の面々

 

これらの華琳の誤算が招いた結果、公孫賛軍の勢いが勝り

官渡城を巡る攻防戦が乱戦へと様変りし、まだ徹底抗戦するのか、はたまた撤退を余儀なくされるのか

戦場はより混沌へと判断の難しい局面へと推移していくのであった

 

 

 

 

城内の乱戦ともなると、兵の数と将の質がモノをいった

 

華琳VS白蓮・麗羽、春蘭VS華雄、季衣VS猪々子 斗詩VS凪・沙和・真桜

官渡城内で怒号がひしめき合う中、それぞれが熱い火花を散らせ激突していた

 

霞がいない誤算、それはこの乱戦で発現することとなった

 

晋陽、ギョウといった地を神速の張旗が楽々と制しはためいたことだろう

秋蘭を白蓮の本拠地である南皮、易京方面へと回すことが出来て

流琉か季衣を官渡城での乱戦時に華琳の傍へと配置するが適ったのだと予想できた

 

全て”たられば”である 無情にも嫌というほど冷たい現実を、華琳へと容赦なく突きつけてきたのであった

 

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公孫賛軍の官渡城への侵入を許した華琳は、すぐさま次なる手を打った

 

「早々と城内へと侵入されたわね こうなった以上私も出るわ!

 左翼は季衣に任せるわ、右翼は凪、沙和、真桜、貴方達3人に任せる!

 退路となるかもしれない”西門”は、相手が誰であろうと絶対死守してみせなさい! いいわね?

 

「最後に中央は『魏武の大剣』である春蘭、貴方に任せるわ 

 相手は恐らく華雄でしょう 見事討ち取ってみせなさい!」

 

的確な指示を出し将兵達を送り出し、自らも出陣すべく玉座の間を後にする

一方の白蓮もまた官渡城への侵入を果たし、将兵の意気は尚高し

 

「華雄を中央に配置、右翼を猪々子、左翼を斗詩に 私と麗羽は中央後方にて待機する

 曹操はまだ官渡城を棄て逃げるつもりはないようだ なれば我らがする事は1つ、曹操の首級を狙うんだ!」

 

そう将兵を鼓舞して、自らも曹操と決着をつけるべく、周囲にその意気込みを見せていた

 

 

双方が慌しく準備を整え終えると、官渡城の戦い第2幕の幕開けとなった

 

 

中央では春蘭がその武威を遺憾なく発揮していた

 

「ふんっ 雑魚共が! いくらかかってこようが時間の無駄、相手にもならんな!!」

 

鼻息荒く「七星餓狼(しちせいがろう)」を手に踏ん反り返っていた そこへ・・・

 

「いいだろう 相手になってやる! いくぞ夏侯惇! 私の名は華雄!!」

 

華雄はそう春蘭へと名乗りをあげた 曹操軍の周囲からはどよめきの声が聞こえ

兵達は自然と2人から距離をとり、遠巻きに観戦している者達まで現れていた

 

「孫堅に負けた奴か! 今までの雑魚よりちょっとマシになったとて変らんぞ?」

 

尚も鼻息荒く、手にしていた「七星餓狼(しちせいがろう)」を肩に乗せ、踏ん反り返る様は

まだ勝っていないにも関らず、なんとも言えずふてぶてしさが滲み出ていた

 

「ふんっ 怯えて我が前に出てこなかった負け犬の分際でよく吠える!」

 

春蘭が吠えるのに構わず、愛斧「金剛爆斧(こんごうばくふ)」で挨拶代わりにと春蘭を薙ぎ払った

 

「ぐおっ!! なんという・・・なんという馬鹿力だぁーーーーーーー」

 

耐え切れなかったのか、ゴギンッという大きく鈍い音と共に

春蘭の身体が後方へと勢い良く味方の兵の真っ只中へとすっ飛んで消えていった

 

「調子にのってるから痛い目をみるんだ それに貴様に馬鹿呼ばわりされたくはないのだがな」

 

「金剛爆斧(こんごうばくふ)」を地に突き立てそんな感想を述べていた華雄であったのだが

 

「いったぁ~~・・・それはお互い様だ!」

 

兵達の人ごみから這い出てきた春蘭は、さっきのお返しとばかりに「七星餓狼(しちせいがろう)」を力一杯振るった

ギギンッと華雄が受けた柄から火花が勢い良くほとばしる

 

「私はお前のように、無様に兵達の中へとすっ飛んではいかなかったようだが?」

 

華雄はそう春蘭を挑発することを忘れない 

緋蓮と華雄との西涼での戦いでは、熱くなり過ぎて墓穴を掘った為だ その時の経験が生かされていたのだろう

 

「ぐぬぬぬ・・・・ ああいえばこういう!小理屈ばかりこねおって! まるで桂花のような奴だ! くそっ」

 

華雄に桂花という名前に心当たりがない為、春蘭の言っている意味が完全に分るわけもなかったのだが

言ってるニュアンスだけはなんとなく分った 

 

不遜、ふてぶてしい・・・華雄が春蘭に抱いた気持ちと同じことを言いたかったのだと華雄なりの解釈をし理解した

 

戦いをジッと固唾を呑んで観戦していた者達は、どっちもどっちと思わないでもなかったが

両者のボルテージが最高潮なだけに、下手に中傷し煽ると、こちらの首が飛んでしまいかねない緊張感が周囲に漂っていた

 

「戦いはまだまだこれからだろう? 夏侯惇やら?」

 

「ああ その通りだ 孫堅に負けた腰抜けという言葉は訂正してやる」

 

「余計な言葉が増えていた気がしなくもないが・・・ まぁ 遊んでやろう」

 

「ぬかせ! 次からは本気でいってやるからな」

 

「それはそれは その本気とやらを楽しみにしていよう」

 

華雄、春蘭共にそれから後も煽りに煽り、両者のボルテージがさらに上昇し200%?にまで達していた

突然黙りこくった2人にもう言葉は不要なのだろう あとは武を極限まで競い合うのみ

 

煽りという挨拶が終えた2人は、弾かれるように互いの武器を相手をブチのめす為に命一杯力強く振るうのであった

 

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防衛側中央からみて右前方の東門では、将同士による戦いがすでに始まっていたのである

 

「やるな~ チビっ子」

「そっちこそ 少しはやるじゃん 男女(おとこおんな)」

 

戦いを通じお互い相通ずるモノがあったのだろう 猪々子と季衣は妙な呼び名?で互いの健闘を称えあっていた

 

猪々子、季衣の2人の周囲はすでに、季衣の大鉄球「岩打武反魔(いわだむはんま)による陥没跡

猪々子の大剣「斬山刀(ざんざんとう)」による斬り傷などが豪快に刻まれていた

 

華雄と春蘭との戦いとは違い、2人の戦い方は良く言えば豪快、悪く言えばムラがあり大雑把

そんな表現が飛び出してくる力任せの戦闘模様といえた

 

「どぉぉぉりゃぁぁぁーーーーーーーーー!!」

「せぇぇりゃぁぁーーーーーーーーーー!!」

 

最初は何気なく放った岩打武反魔を、猪々子が打ち返したのが事の始まりといえた

何時から戦闘が野球?にすり替わったのか定かではないが、両者それに気付かぬほど真剣に取り組んでいた

 

季衣の投げ放った「岩打武反魔」をバッターボックスに立った選手のように

豪快に雄叫びをあげながら打ち返してみせる猪々子 

 

「震えるこの手が真っ赤に燃える! 勝利を掴めと轟き叫ぶ!! 爆熱! 岩打武反魔ぁーーーー!!!」

 

「岩打武反魔」は黄金に輝きつつ、季衣の手から放たれた 

それは一筋の彗星の如き輝きを伴い猪々子へと吸い込まれていった・・・

 

かに見えたのだが、次の瞬間には豪快に猪々子に打ち返された「岩打武反魔」は

小さな季衣を大きく超えて上空へと跳ね飛ばされお星様になった・・・

 

「うっ・・・ボクの燃える闘魂を詰め込んだ・・・魔球『ゴ●ドフィンガー岩打武反魔(仮)』が・・・完全に打ち返された・・・がくっ」

「ふっふっふ 今の”ほーむらん”じゃね?」

 

この時代に野球などあるはずもないのだが、意気投合?していた2人に電波が届いたのだろうか?

マウンド?上で膝を屈し打ちのめされている季衣と笑い飛ばしその場でぴょんぴょん跳ねる猪々子という

勝者と敗者が色濃く、また鮮明に戦場で映し出されていたのである

 

この出来事が、この大陸における野球のルーツ?歴史?始まり?となったことは、一刀が知る由もなかった

 

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防衛側中央からみて左となる西門辺りの攻防戦では

 

「はぁああああああああああ」」

 

気合の入った雄叫びと共に、凪の足が赤く時に黄金が混じえた氣を足に纏わせているのが分る

氣を込め整え終えたのか、キュピィィーーンという音と共に、斗詩へと豪快に氣を纏った蹴りを繰り出した

 

とっさに斗詩は身体を側転させかわしたが

次の瞬間にはドゴォォーーーーーンという豪快な爆音共に土煙と共に石畳の破片が豪快に周辺へと散乱していた

周辺の変り果てた様子をみて、斗詩は瞳を何度も素早く瞬きさせ黙り込むと

咄嗟に自身の直感に従ったのが正解だった事を思い知るのでありました

 

「いくでぇーーーーー」

 

今度は真桜が、間髪を入れずに気合の篭った掛け声と共に

ドリル槍「螺旋槍(らせんそう)」を斗詩へと繰り出す ギュァァーーーという唸りを上げ猛回転し斗詩を襲った 

 

「いったぁ~~い 手がしびれた」

 

今度はさすがに避ける暇もなかったので柄の部分で受け止めたものの・・・

やはりドリル部分の猛回転がクセモノだったらしく、大槌を弾かれ手が痺れるほどの勢いだったようだ

 

「沙和もいくの! てぇぇ~~~い」

 

さすがに前者2人のように上手くいかなったようで

沙和の双剣「二天(にてん)」は、斗詩の大槌に楽々弾き返され、火を噴く事なく鎮火されてしまったようである

 

「ふえぇぇ~~~ 3人がかり!? どうして私だけいっつも貧乏くじばっかり引くのぉ~」

 

泣き言にも似た愚痴を吐きつつも、斗詩は大槌「金光鉄槌(きんこうてっつい)」を容赦なく3人へと振り下ろすものの・・・

悲しいかな、阿修羅さんのように手数が増える筈もなく、凪と真桜、おまけとして沙和に押され

早々に退散を余儀なくされる斗詩でありました

 

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官渡城へと乗り込まれた時は、早々の撤退かとヤキモキした華琳であったものの・・・

あの絶望的な状況から、将兵達の頑張りにより、戦線を崩壊させずに維持出来ていた

しかしこのような混沌とした状況は、何かの出来事で容易に覆ることが多く、油断は出来ない状況に変わりなかった

 

「華琳さま 公孫賛軍は予想通り中央を突破することを狙ってこの城へと乗り込んでくる思惑でいるのでしょう

 ここは官渡城を一旦離れ、西門へと陣を構築しましょう その方がもしもの時に許昌への退却が容易に行えます」

 

中央にいた春蘭の軍勢より後方の官渡城本丸を背に対陣していた華琳に対し

傍に控えていた稟がそう進言したのである

 

「そうね 稟の進言を採用しましょう 夜陰に紛れて西門へと移動を開始する!」

 

状況が変化しない内に安全策をとる華琳 

この西門への本陣の移動行為は、後々白蓮の首を絞める効果を伴って返ってくることになる

 

しかし華琳の行動を悟ったかのように、白蓮本隊の白馬義従達が華雄達の軍を押しのけて突然前へと突撃を敢行したのである

 

この本陣の行動には、さすがに中央で戦っていた春蘭、華雄の2人も度肝を抜かれていた

通常なら左右へと分けるか下がらせるかしてから突撃するのが普通なのだから・・・

2人の将が同じ反応をし唖然としていたのだから、兵達に到っては双方共に中央前線は大混乱であった

 

(また状況が変り、後手を踏むことになったわね やってくれる・・・ 

  公孫賛?そうじゃないわね 味方も巻き込み混乱をきたしている所からも、これはきっと麗羽の仕業ね 

  敵に回すと恐ろしく厄介極まりないわね 麗羽の執念?妄執といった所なのかしら? 今こそ受けて立つわ)

 

華琳の読み通り、これは麗羽の状況の打開の策であり、華琳を追い詰めるための一手であった

この策は事前に討議された策ではなく、麗羽の一瞬の閃きで実行されていた点に面白さがあった

 

閃きを実行しようとする麗羽も無茶だが、実行を許した白蓮も白蓮だ 華雄が唖然としたのも心情を察するにいたる

だがこの麗羽の意外性が功を奏し、見事に膠着した戦いの打開へと通じた

 

これは戦が持つ魔力、魅力、妙味ともいえた

 

華琳とて騎馬は得意であり、騎乗しながらでも寝ることも可能なほどの手腕だったりする

味方が展開している時に突撃しようとは思わない その常識外れともいうべき意外さが華琳には欠けていたともいえる

 

戦の状況はまだまだ不透明、どっちへ転ぶか分らない、油断めさるな?そう天が華琳へと教えてくれた気がしたのであった

 

「騎馬隊、親衛隊の者達は公孫賛の突撃を食い止めよ! 本陣の指揮は稟に任せたわよ」

 

そう稟へと一言いい残すと、華琳は急いで絶影へと騎乗し前線へと疾駆しだした

親衛隊長以下、皆が一斉に華琳に倣い、自分達の馬へと跨り、本陣を駆け出していった

 

「ハッ 華琳様 どうか御無事で」

 

華琳を見送る今の稟には、そう呟くのがやっとという所であった

 

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華琳の死神鎌「絶(ぜつ)」が飛来し、白蓮は完全に騎馬の勢いを削がれた

同様に麗羽も、白蓮の次に絶を投擲され、動きを止められることとなる

 

だが華琳とこうして対峙出来た状況は、白蓮、麗羽の2人にとっては行幸ともいえた

 

「漸く見つけた! 曹操覚悟!」

「ほっほっほ まだ生きてらしたのね 華琳さん」

 

「それは私の台詞でなくて? 公孫賛に麗羽」

 

「この戦の決着 今こそつけてやる!」

 

「戦の決着!? ・・・ですって? ウフフ・・・フハハハハ あぁ~可笑しい」

「何が可笑しい!」

 

「この官渡城の戦だけで勝ち負けした所で、決着なんてつく筈がないでしょう?

 それとも何? こうして出会ったという事は、私に降参でもするつもりだったのかしら?」

 

「曹操 貴様を倒せば全てが終わる!」

 

「それこそ馬鹿馬鹿しい 愚かにも程があるわね 

 私が貴方如きにこの場で倒される訳なんてないことくらい、少し考えれば判ることなのに

 

 それにお久しぶりね 麗羽 反董卓連合で別れて以来かしら? 

 公孫賛に敗れ去ったというから、少しは心配していたのよ?」

 

「ふんっ くるくる小娘の貧相な首級を土産にしようと、地獄から舞い戻ってきただけのこと」

 

「フフフ 元気そうで何よりだわ それに今の奇をてらう突撃は、見事賞賛に値するモノだったわ」

 

昔のよしみもあって、麗羽は華琳のこの発言が強がりだと一瞬で見抜いたのだが

白蓮はそれを馬鹿にされたと捉え、怒気が一気に膨れ上がった

 

「御託を並べるのはそこまでだ 曹操覚悟!」

 

白蓮は怒りに任せたまま、華琳との会話を打ち切って斬りかかった

 

「フフフ 馬鹿ね 貴方達2人が寄って集って私を攻め立てても無駄だというのに・・・

 もう少し華雄といった武辺者を連れてきなさいな」

 

騎乗したままであっても、華琳の強さが減じることはなく

華琳の死神鎌「絶」が閃くと、白蓮も麗羽も防御に徹しないと、逆に自身が首を落とされそうな勢いだったのだ

 

2人の防御に徹する様子に呆れ果てた華琳は、早々に見切りをつける

 

「折角時間を割いて相手してあげたというのに・・・これ以上は時間の無駄ね

 敵の勢いは削いだ! 親衛隊の者達は私と共に本陣へと帰還せよ! 騎馬隊と中央の者達は前線の維持に努めよ!」

 

そう周囲の騎馬隊、中央の部隊の者に命じ終えると、絶影の馬首を返し本陣へと帰陣すべく駆けさせた

 

「まっ待て曹操! 何処へ行く! まだ決着はついていないんだぞ!」

 

「くっ 敵がゾロゾロと湧いて来てうっとおしいですわね 白蓮さん、ここは一旦退くべきですわ」

 

麗羽の言う通り、白蓮と麗羽の周りには、華琳の援軍により味方の数がかなり激減しており

麗羽が白蓮の防波堤となっている有様であったのだ

 

「ぐっ・・・・ 包囲される前に全軍一度撤退する!」

 

華琳を取り逃がし、眉間に皺を寄せ悔しがる白蓮は、断腸の思いで退却命令を出した 

 

その後中央の戦線を見事立て直した曹操軍は、華琳の指示通り戦線の維持に努めた

この結果、麗羽によって戦場に引き起こされた波紋は、見事華琳という強き波紋によって打ち消され

再び揺らぎのない膠着状態へと戦いが落ち着くことになってしまった

 

春蘭、季衣、凪達3人組、その後も繰り広げられた全ての戦いにおいて

双方決め手に欠け、陽が落ちても互角で決着がつかず

その日は結局、痛み分けの形で両軍退き、夜襲を警戒しつつ尚も膠着状態が続くという、悪循環へと雪崩れ込んでいった

 

そして華琳の言葉にもあった通り、夜陰に紛れて西門へと陣を構築し、方円陣を敷いて守りを厚く敷くに到る

 

華琳が西門へと陣を移したという事実を白蓮達は知らぬまま

信じられない事に、それから両軍実に3日もの長きに渡る間

交代しながら果敢に決着をつけるべく攻めかかるものの・・・互いに譲らず

時に夜襲もまじえた為、両軍大量の負傷者を抱え

長期に渡る緊張を強いられている事からくる疲れで、動きも反応も次第に鈍くなっていった

 

「時が過ぎるほどこちらが不利になっていく 明日全てに決着をつけよう」

 

城門を突破したというのに、それから何の進展もない公孫賛軍にも焦りが見え隠れしていた 

一方の曹操軍とて、現状を維持し持ちこたえているのが精一杯というのが本音であった

 

 

 

 

この膠着状況を打開する為、再び白馬義従を道一杯に3列に敷き詰め、払暁と共に突撃を開始した公孫賛軍

白馬義従による騎馬突撃は、騎馬の扱いに慣れた曹操軍であっても手に余る代物であった

 

曹操軍に属するある者は騎馬に吹き飛ばされ、ある者は蹴り殺され

立ちはだかった曹操軍の者達は、阿鼻叫喚の地獄へと容赦なく叩き落とされた

 

それでも官渡城へ続く中央を死守すべく曹操軍の槍隊が頑強に抵抗し続ける中、両軍の被害はどんどん拡大していった

白蓮はそんな中、只1人騎馬を疾駆させ、曹操軍・槍隊の抵抗を潜り抜け、悲壮な覚悟の中官渡城へと乗り込んでいた

 

「曹操はどこだ!? 公孫賛はここにいるぞ! 出て来い! 正々堂々勝負しろ!」

 

白蓮の咆哮は何度も・・・何度も虚しく余人がいない部屋で木霊する

 

白蓮の全身は大量に血を浴びており、自身の血か返り血かどうかも定かでない酷さであった

しかしそんな様相など気にする事無く、必死の形相で白蓮は華琳の行方を求め

入り組んだ官渡城内を方々へと駈けずり回り彷徨い続けた

 

「漸く官渡城の玉座の間を探し当てたのは褒めてやってもいいが、必ずしも主がここにいるとは限らんのだぞ?」

 

誰も居ない筈の玉座の陰からスゥーーと姿を現した人物が1人いた

曹操と背丈は同じくらいで、一見すれば曹操と見間違えなくもないが、顔貌、服装の格好からみて、どうも男性のようであった

 

「お前は何奴だ!」

 

ふつーの剣を突き出し、姿を突如現した不審人物へと警戒心を露にする白蓮

 

「俺へのその無礼な立ち振る舞いに物言い・・・本来赦し難いが、初見であった為ここは見逃してやろう

 俺の名は司馬師、この大陸を統べる者の名だ 憶えておけ」 

 

大陸を統べる?何を馬鹿な事を気が触れた男なのか? 白蓮は訝しげに司馬師を注意深く観察している

 

「司馬師? ・・・とやらが私に何の様だ? それに今の私は貴様なんぞに係(かかずらわ)っている暇はないんだ」

 

「急ぎ? お前の事情など俺が知ったことではないわ 馬鹿め 

 それに不遜な物言い、実に聞くに堪えんほど耳障りだが、貴様の問いにはあえて答えてやるとしよう ありがたく拝聴せいよ?

 曹操はこの城を棄て、今頃西門辺りに、方円陣を敷いて陣を強化していることだろうな」

 

実際、この司馬師の指摘した言は的確であった 

 

だが司馬師は華琳の行方を見て知っていた訳ではなく、城壁からみた曹操側の陣の構築具合を先程”チラっと見ただけ”なのであった

それで的確に華琳の居場所を言い当てたのだから、さすがは司馬懿の息子だと舌を巻かざるを得ない

 

司馬師の洞察に本当かどうか疑わしい眼を向けていた白蓮であったが

他に探す当てもなかった事から、司馬師の言を信じ探してみようという気になった

 

そして玉座の間を去ろうと背を向けようとした瞬間、またも司馬師に声をかけられ振り返ることとなる

 

「曹操の居場所を言ってやったんだ 少しはこちらの話も聞け

 それに余興には都合がいい時期だろう  我らがお前達に味方してやろうではないか! どうだ?

 

 あの高飛車な曹操の仰天し苦痛に顔を歪める姿が拝められそうだしな! その時の事を想像するとさぞ滑稽で面白そうだ!  

 手始めにとりあえず・・・ そうだな 貴様の本拠地である易京へと到る逃げ道を確保してやろう それでよかろう?」

 

曹操の配下である司馬懿の息子の司馬師、本来なら白蓮は対等の立場で話す必要もない所なのだが

追い詰められていただけに、今までは司馬師の悪魔の囁きが、つい気になり聞き入ってしまっていたのだ

 

「余興だと!? 断る!!」

 

だが司馬師の悪魔の如き提案には、頑強に抵抗をみせた白蓮であった

その白蓮の頑強な反応に対し、鋭き眼光を湛えていた司馬師の眼がキュッと細められた

 

「うん? どうして断る? 何故だ? 破格ともいえる好条件だと思ったのだがな? やれやれ・・・何が不服というのか? 

 それとも何だ? 曹操の首でも取って来いとでもいうのか?」

 

「貴様の提示する条件などに、最初から興味や問題などあるか! それ以前にお前達の事を元から信用できないんだよ!」

 

「信用? 信用だと!? クックック アッハッハーーー!! そういう事か! 面白い事をいうな お前

 

 ここまで追い込まれ、本性剥き出しにして、お利巧になってるかと思いきや・・・

 これは中々にオツムがお堅い甘ちゃんだったようだ 愉快! 痛快だ! クックック 

 

 お前がこうして、官渡城でのうのうと戦っている合間にも

 味方はお前が帰ってくる事を信じ戦って死んでいってるのだがな~ お前はそれでもいいのか? 

 運のない大将をもつ兵隊ほどみじめなものはないな!

 

 ギョウ、晋陽、南皮の各都市は、すでに夏侯淵、典韋、程昱らの手によって落とされたと聞いているぞ?

 

 まぁ ようかろう その足掻きともみえるその余裕がどこまで続くのか

 とくと見届けさせてもらおうではないか! クッアッハッハーーー!!」

 

白蓮の気持ちを逆立てながら、豪快に笑い飛ばし去っていく

 

切り刻んでやる! そんな怒りに支配された気持ちに苛まれる白蓮であったものの・・・

華琳をすぐに追いかけなければならないという焦りと、司馬師の間際の捨て台詞が頭の中でぐるぐると巡り始め

その場から動けなくなってしまっていたのだった

 

「くそっ!! いいわけなんてないだろう!! それにしてもなんなんだアイツは・・・ 藪から棒に・・・ 

 言いたい放題言いやがって・・・ そんなのは百も承知なんだよ!! ぐすっ・・・ 

 

 本音はすがれるものなら・・・なんだってすがりつきたいに決まっているだろう! 

 

 私は北郷や桃香のように、大将の器なんてありはしない! ふつ~~なんだよ!

 だがな 私はもう逃げないと誓ったんだ! 麗羽に勝ったその時から・・・

 

 最初から私は民を!兵達皆を守りたい! たったそれだけだ・・・ それだけのことなのに・・・

 何故こうも上手くいかないんだよ・・・・・・

 

 それに余裕なんて・・・ 戦う以前より最初からあるものか! 

 前進すれば光明があると信じ、只管突き進んでいるだけだ バカやろう・・・」

 

司馬師が去っていった方角へと、誰にも聞かれないよう吐き捨てるかのように

胸中にひた隠していた本音を吐露し、歯を食い縛りながら主無き玉座の間で独り静かに泣くのであった

 

白蓮は誰にも見られていない、そう思い本音を吐露したのだろう

だが白蓮が泣く様子を、声をかける事無く、暫しの間密かにジッと見つめる者の姿があった

 

(主となった者すべてが通る苦難の道、皆の夢を背負い、世間とは違う道化を演じ続けなければならないのも定め

  自身の夢や理想は置き去りにしてでも・・・ね)

 

暫くすると、その人物は白蓮に知られぬよう、声をかける事無くそっと玉座の間を背にし後にするのであった

 

白蓮としてもここまでくれば退くに退けず、前進すれど光明が一向に見出せない泥沼へと踏み込んでいた 

普段の穏やかな白蓮からは全く想像も出来ないほど、焦燥感に苛まれた言葉が大将たる重圧を物語っていた

 

官渡の戦いに勝利した白蓮であったものの・・・

電撃戦にて献帝を奪取するという目的は、もはや当の昔に失われてしまっていた

 

大事な仲間、故郷を失うかもしれないジレンマに苛まれた白蓮は

華琳が作り出したこの強大な包囲網の終着点を何処に見出すというのだろうか?

 

 

 

 

「もう少しで押し返せると思いたいけれど、やはり潮時ね・・・ 

 こう後手後手に回りすぎると一向に埒があかないわね これも全て私の誤算が招いた結果だわ

 

 真桜! 許昌での戦いで使われても厄介だわ 接収される前に、急ぎ全ての投石器を破却してしまいなさい!

 我らはここ官渡城を捨て、許昌まで急ぎ後退し再起を期する! 

 

 皆、戦が長引き疲れているだろうけど、至急準備なさい!」

 

白蓮が官渡城の玉座の間に着き司馬師と語っていた頃

主であった華琳は司馬師の指摘にもあった通り、官渡城の玉座を去った後でその姿はすでになく

玉座に居ては包囲される恐れもあった事から、今現在では城西門前へと移し陣を構築していたのである

 

「稟ちゃん 手負いの猪さんを舐めていると、怪我をするのはこちらですから十分に気をつけてくださいよ?」

 

「風は心配性だな 分っているさ 華琳様は必ずやどんな事が起こっても私が護ってみせるさ」

 

この戦いが始まる数ヶ月前、青州へと旅立つ風へとそんな軽口を叩いていたのだが、その時の光景がふと稟の脳裏をよぎっていた

 

「猪の言、やはり私のどこかに慢心があったのでしょうか? 華琳様」

 

司馬懿に嫌味をぶつけたが、これでは奴と同じではないか

稟の思考はよりネガティブな方向へと向き、つい弱音ともとれる未練がましい言葉を、主である華琳へと口走っていた

 

「勝敗兵家事不期、包羞忍恥是女児、江東子弟多才俊、巻土重来未可知よ」        ※女児→男児 華琳達用に変更しております

 

※現代語訳

 

戦いに勝つか負けるかは、兵法家であっても予想することはできない

戦いに負けてしまったときには、恥を堪え忍んでこそ、真の※女児というものだ

(項羽は劉邦に敗れ、烏江亭で自害してしまったが、もし根拠地の江東に帰っていたならばどうだっただろうか。)

江東の若者には優れた者が多いのだから、土を巻き上げて再起を図ったならば

勢力を盛り返して再び天下を争うことができたかも知れないのに

 

この言葉は「捲土重来」の語の元になったとされる、この時代より後年となる杜牧(とぼく)の詩である

 

杜牧(とぼく)とは、唐王朝の後期、文学史では晩唐と呼ばれる時代に活動した政治家・詩人で

さしもの栄華を誇った唐王朝も、安史の乱を境に、かつての輝きを失っていた時代の人物である       ※故事成語で見る中国史参照

 

普段は慎ましげな稟の表情が、華琳の言葉を聴いた途端に俄かに曇り出した

 

「地の利を得て、準備万端整えいざ開戦したものの、天の時は我に味方せず・・・ね

 

 それに公孫賛軍の実力を見誤ってたのは私も同じ・・・

 今はあれこれ弁明した所で時間の無駄よ 稟 勝敗は兵家の常

 許昌で再起を期すわ それにここ官渡城を落とされたとて、秋蘭や風、流琉が暴れていることでしょう

 

 公孫賛への包囲網はより完成形へと近づいていてよ? この戦まだまだ私の方が優勢なのに変りはないわ

 私にはまだまだこれからも貴方の力は必要なの これからの活躍に期待しているわよ?」

 

「ハッ 承知致しました 」

 

主である華琳から必要とされている事を感じ、稟は嬉しいやら不甲斐ないやら・・・

ない交ぜになった表情を隠すように、急いで頭を下げ俯いた

 

「春蘭 殿を任せるわ 追ってくる敵を容赦なくその剣にて薙ぎ払ってみせなさい!」

 

華琳は稟が俯いて黙り込んだ間に、春蘭へと殿を命じていた

 

「ハッ! 華琳さま! しかと承知いたしました!」

 

「それでは撤退を開始する! 皆も疲れているだろうが許昌までの道程の間辛抱して欲しい」

 

華琳は皆へとそういい残し絶影を駆けさせる

官渡城西門を先頭で潜り抜け撤退を開始するのであった

 

「ここまで追い込まれるとは予想外だったわ こうでなくては・・・ね  

 序盤の官渡城での戦の手腕見事だったわ ・・・さすがはあの麗羽を降しただけはあるわね

 次は許昌にて貴方達が来るのをお待ちしているわ」

 

絶影の背から徐々に小さくなっていく官渡城を見つめながら

悔し紛れの捨て台詞を残し、急ぎ許昌へと疾駆する華琳達でありました

 

 

 

 

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●『真・恋姫†無双 - 真月譚・魏志倭人伝 -』を執筆中

 

※本作品は【お気に入り登録者様限定】【きまぐれ更新】となっておりますので、ご注意を

人物設定などのサンプル、詳細を http://www.tinami.com/view/604916 にて用意致しております

 

上記を御参照になられ御納得された上で、右上部にありますお気に入り追加ボタンを押し、御登録のお手続きを完了してくださいませ

お手数をおかけ致しまして申し訳ありませんが、ご理解とご了承くださいますよう、何卒よろしくお願いいたします<(_ _)>

 

■■■【オリジナル人物紹介】■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 ○孫堅 文台 真名は緋蓮(ヒレン) 

 

  春秋時代の兵家・孫武の子孫を称し、各地で起こった主導権争いに介入し

  『江東の虎』の異名で各地の豪族を震撼させた

  優秀な人材を率い転戦、やがて軍閥化し孫家の基礎を築いた

 

  容姿:髪は桃色で、孫家独特の狂戦士(バーサーカーモード)になると、右目が赤色に変化するのが特徴で、平時は量目とも碧眼である

  祭と同じく胸が豊満で背は祭より高い 体格は祭よりすこし大きい 顔立ちは蓮華というより雪蓮に似ているだろうか

 

 ○張紘 子綱 真名は紅(コウ) 

 

  呉国の軍師の一人で主に外交を担当。 魏の程昱(風)の呉版と考えていただけると理解しやすいだろう

   『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の張氏の出 雪蓮直々に出向き、姉の張昭と共に臣に迎え入れられる

  張昭と共に『江東の二張』と称される賢人

 

  ※史実では、呉郡の四性でも張昭と兄弟でもありませんのでお間違い無きように。。。 

   呉郡の四性の中で張温しか見当たらなかった為、雪月の”脳内設定”です

 

  容姿は青眼で背丈は冥琳より少し低い 顔は姉の王林とは似ておらず童顔で人に安心感を与える顔立ちである

  髪は腰にまで届こうかという長く艶やかに保った黒髪を束ね、ポニーテールと呼ばれる髪型にしている事が多いが

  その日の気分により、長髪を肩辺りで束ね胸の前に垂らしている場合もあるようである

  服装は藍色を基調とした西洋風ドレスを身を纏っている

 

 ○魯粛 子敬 真名は琥珀(コハク)

 

  普段は思慮深く人当りも良い娘で、政略的思考を得意とし、商人ネットワークを駆使し情報収集・謀略を行う

  発明に携わる時、人格と言葉遣いが変化し、人格は燃える闘魂?状態、言葉遣いは関西弁?風の暑苦しい人に変化する

  このことから「魯家の狂娘・後に発明の鬼娘」と噂される

 

  ※穏(陸遜)は本をトリガーとして発情しちゃいますが、、琥珀(魯粛)は発明に燃えると・・・燃える闘魂に変身って感じです

 

  容姿は真名と同じく琥珀色の瞳をもち、髪は黒で肌は褐色がかっており月氏の特徴に似通っている

  背は明命と同じくらいで、服装は赤を基調としたチャイナドレスを身に纏っている

 

 ○張昭 子布 真名は王林(オウリン) 

 

  呉国の軍師の一人で主に内政を担当。 冥琳とはライバル同士で互いに意識する間柄である

   『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の張氏の出 雪蓮直々に出向き、妹の紅(張紘)と共に臣に迎え入れられる

  張紘と共に『江東の二張』と称される賢人

 

  妹の紅は「人情の機微を捉える」に対して「政(まつりごと)の機微を捉える」という感じでしょうか

 

  容姿は冥琳より少し高めで、紅と姉妹でありながら顔立ちが似ておらず、冥琳と姉妹と言われた方がピッタリの美人系の顔立ちである

  眼鏡は使用しておらず、服装は文官服やチャイナドレスを着用せず、珍しい”青眼”でこの眼が妹の紅と同じな事から

  姉妹と認識されている節もある 紫色を基調とした妹の紅と同じ西洋風のドレスを身を纏っている

 

 ○程普 徳謀 真名は楓(カエデ)

 

  緋蓮旗揚げ時よりの古参武将であり、祭と並ぶ呉の柱石の一人 「鉄脊蛇矛」を愛用武器に戦場を駆け抜ける猛将としても有名

  祭ほどの華々しい戦果はないが、”いぶし銀”と評するに値する数々の孫呉の窮地を救う働きをする

  部下達からは”程公”ならぬ『程嬢』と呼ばれる愛称で皆から慕われている

 

  真名は・・・素案を考えていた時に見ていた、某アニメの魅力的な師匠から一字拝借致しました・・・

 

  容姿は祭と同じくらいの背丈で、端正な顔立ちと豊かな青髪をうなじ辺りでリボンで括っている

  均整のとれた体格であるが胸は祭とは違いそこそこ・・・ちょっと惜しい残念さんである

 

 ○凌統 公績 真名は瑠璃(ルリ) 

 

  荊州での孫呉崩壊時(※外伝『砂上の楼閣』)に親衛隊・副長であった父・凌操を亡くし、贈った鈴をもった仇がいると

  知った凌統は、甘寧に対して仇討ちを試みるものの・・・敵わず返り討ちにあう間際に、一刀に救われ拾われることとなる

  以来、父の面影をもった一刀と母に対してだけは心を許すものの・・・未だ、父の死の傷を心に負ったまま

  呉の三羽烏の一人として日々を暮らしている

 

  容姿はポニーテールに短く纏めた栗色の髪を靡かせて、山吹色を基調とした服に身を包んでいる小柄な少女

  (背丈は朱里や雛里と同じくらい)武器は不撓不屈(直刀)真名の由来で目が瑠璃色という裏設定もございます

 

  ○朱桓 休穆 真名は珊瑚(サンゴ)

 

  『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の朱氏の一族

  槍術の腕を買われ、楓の指揮下にいた 一刀の部隊編成召集時に選抜された中から、一刀に隊長に抜擢された『呉の三羽烏』の一人

  部隊内では『忠犬・珊瑚』の異名がある程、一刀の命令には”絶対”で元気に明るく忠実に仕事をこなす

 

  容姿:亞莎と同じくらいの背丈で、黒褐色の瞳に端正な顔立ちであり黒髪のセミロング 人懐っこい柴犬を思わせる雰囲気をもつ  

  胸に関しては豊満で、体格が似ている為よく明命から胸の事で敵視されている  

 

  ○徐盛 文嚮 真名は子虎(コトラ)

 

  弓術の腕を買われ、祭の指揮下にいた 一刀の部隊編成召集時に選抜された中から、一刀に隊長に抜擢された『呉の三羽烏』の一人

  『人生気楽・極楽』をモットーにする適当な性格であったが

  一刀と他隊長である珊瑚と瑠璃・隊長としての責に接していく上で徐々に頭角を現し

  後に部隊内では『猛虎』と異名される美丈夫に成長を遂げていくこととなる 

 

  容姿:思春と同じくらいの背丈で黒髪のショートヘア 体格も思春とほぼ同じく、遠めからでは瓜二つである 

  二人の区別の仕方は髪の色である(所属部隊兵談) またしなやかな動きを得意としている為、思春の弓バージョンと言える 

 

  ○諸葛瑾 子瑜 真名は藍里(アイリ)

 

  朱里の姉 実力にバラツキがあった為、水鏡から”猫”と称される

  その後、水鏡と再会時に”猫”が変じて”獅子”になりましたわねと再評価される

  天の御遣いの噂を聞きつけた藍里が冥琳の元を訪れ、内政・軍事・外交とそつなくこなす為

  未熟であった一刀の補佐にと転属させられる 

 

  初期には転属させられた事に不満であったが、一刀に触れ与えられる仕事をこなす内に(わだかま)りも消え

  一刀に絶大な信頼を寄せるようになる

  後に亞莎が専属軍師につくと、藍里の内政面への寄与が重要視される中で、藍里の器用な才を愛し、軍師としても積極的に起用している

 

  容姿は朱里より頭一つ高いくらい 茶髪で腰まであるツインドテール 朱里とよく似た童顔でありながらおっとりした感じである

  服装に関しては赤の文官服を着用しており、胸は朱里と違い出ている為、朱里とは違うのだよ 朱里とは・・・

  と言われているようで切なくなるようである(妹・朱里談)  

 

  ○太史慈 子義 真名を桜(サクラ)

 

  能力を開放しない雪蓮と一騎打ちで互角に闘った猛者  桜の加入により瑠璃が一刀専属の斥候隊長に昇格し

  騎馬弓隊を任されることとなった(弩弓隊・隊長 瑠璃→子虎、騎馬弓隊・隊長 子虎→桜に変更)

  本来の得物は弓で、腕前は祭を凌ぎ、一矢放てば蜀の紫苑と互角、多矢を同時に放てば秋蘭と互角という

  両者の良い処をとった万能型である

 

  武器:弓 不惜身命

  特に母孝行は故郷青州でも有名であり、建業の役人街が完成した際に一刀の薦めもあって一緒に迎えに行く

  隊長として挨拶した一刀であったが、桜の母はその際に一刀をいたく気に入り、是非、桜の婿にと頼み込む程であった

   

  容姿はぼん・きゅ・ぼんと世の女性がうらやむような理想の体型でありながら身長が瑠璃ぐらいという美少女系女子

  眼はブラウン(濃褐色)であり、肩下までの黒髪 気合を入れる時には、白い帯でポニーテールに纏める

  一刀の上下を気に入り、自身用に裁縫し作ってしまう程の手先の器用さもみせる

 

  真剣に話している時にはござる口調であるが、時折噛んだりして、ごじゃる口調が混ざるようである

  一時期噛む頻度が多く、話すのを控えてしまったのを不憫に思った為

  仲間内で口調を指摘したり笑ったりする者は、自然といなくなったようである

 

 ○高順

 

  「陥陣営」の異名をもつ無口で実直、百戦錬磨の青年 

  以前は恋の副将であったのだが、恋の虎牢関撤退の折、霞との友誼、命を慮って副将の高順を霞に付けた

  高順は恋の言いつけを堅く守り続け、以後昇進の話も全て断り、その生涯を通し霞の副将格に拘り続けた

 

 ○馬騰 寿成 真名を翡翠(ヒスイ)

 

  緋蓮と因縁浅からぬ仲 それもその筈で過去に韓遂の乱で応援に駆けつけた呉公に一目惚れし

  緋蓮から奪おうと迫り殺りあった経緯がある

 

  この時、緋蓮は韓遂の傭兵だった華雄にも、何度と絡まれる因縁もオマケで洩れなくついて回ることとなるのだが・・・  

  正直な処、緋蓮としては馬騰との事が気がかりで、ムシャクシャした気持ちを華雄を散々に打ちのめして

  気分を晴らしていた経緯もあったのだが・・・当の本人は、当時の気持ちをすっかり忘れてしまっているが

 

  この事情を孫呉の皆が仮に知っていたのならば、きっと華雄に絡まれる緋蓮の事を自業自得と言いきったことだろう・・・

 

 ○孫紹 伯畿 真名を偲蓮(しれん)

 

  一刀と雪蓮の間に生まれた長女で、真名の由来は、心を強く持つ=折れない心という意味あいを持つ『偲』

  ”人”を”思”いやる心を常に持ち続けて欲しい、持つ大人へと成長して欲しいと2人が強く願い名付けられた

  また、偲という漢字には、1に倦まず休まず努力すること、2に賢い、思慮深い、才知があるという意味もある

 

  緋蓮、珊瑚、狼をお供に従え?呉中を旅した各地で、大陸版・水戸黄門ならぬ

  ”偲”が変じて”江東の獅子姫様”と呼ばれる

 

 ○孫登 子高 真名を桜華(おうか)

 

  一刀と蓮華の間に生まれた次女で、子供の扱いが分らぬ蓮華の犠牲者1号となり

  早々に侍従長の咲と思春の手により育てられることとなる

 

  そんなエピソードがあるのにも関わらず、聡明な娘で人望も厚く育ち、王となってからは自身の才能をいかんなく発揮させる

  一刀や蓮華に似ているというより、姉である雪蓮に似ているとの蓮華談有り

  後年孫呉の王として、天皇となりし姉・偲蓮を支えることとなる

 

 ●その他武将

 

  蒋欽ー祭の副将、董襲ー楓の副将

  歩シツー珊瑚の副将、朱然ー昔は瑠璃、現在子虎の副将、丁奉ー昔は子虎、現在は桜の副将 周魴ー瑠璃の副将

 

 ○青(アオ)

  白蓮から譲り受けた青鹿毛の牝馬の名前 

 

  白蓮から譲られる前から非常に気位が高いので、一刀以外の騎乗を誰1人として認めない 

  他人が乗ろうとしたりすれば、容赦なく暴れ振り落とすし蹴飛ばす、手綱を引っ張ろうとも梃子でも動かない

  食事ですら・・・一刀が用意したモノでないと、いつまで経っても食事をしようとすらしないほどの一刀好き

 

  雪蓮とは馬と人という種族を超え、一刀を巡るライバル同士の関係にある模様

 

 ○狼(ラン)

  珊瑚の相棒の狼 銀色の毛並みと狼と思えぬ大きな体躯であるが

  子供が大好きでお腹を見せたり乗せたりする狼犬と化す

 

 

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【あとがき】

 

常連の読者の皆様、お初の皆様 こんばんは 雪月でございます

いつも大変お世話になっております 

 

先ず最初に、最近文章を書き起こすのが遅いので

今まで種明かしとなる部分、または伏線となる部分には、おおよそではありますが~参照という注釈を入れていたのですが

最近では書くことに追われて、ほとんどという所で入れられておりません ホントごめんなさい(´;ω;`)ウッ…

 

じっくり読んで探してみてください!・・・というのは無理があるとは思うのですけど

制作が完結した後にでも、ゆっくりと注釈を入れていきたいと思っておりますので、どうかそれまで御勘弁を

 

さてさてこの度の話と致しましては、え~長くなりました文章でございますが

白蓮VS華琳、第2ラウンドとなる官渡の戦いが始まり

終わってみれば、歴史とは異なり白蓮の勝利で幕を閉じることとなりました

 

副将戦となる春蘭VS華雄は華雄が優勢にあしらいつつも決着がつかず

先鋒戦は季衣VS猪々子はほーむらん?による猪々子の勝ち・・・と断じてしまっていいものやら(滝汗

次鋒戦は斗詩VS3人組は、3人組が優勢

中堅はなく、そして大将戦となる華琳VS白蓮、麗羽は、2人係にも係わらず華琳の圧倒的勝利となりました

 

結果的に微妙なモノもありますが、曹操軍の2勝1敗1分?ではありますが

曹操側が、初期の不利な態勢から劣勢を覆し、互角の戦いに持ち込んだといえるのでしょう

 

ですが、司馬師の言葉にもありましたように、官渡城を落としたとはいえ

晋陽、ギョウ、南皮はすでに曹操側に落とされてしまい、白蓮包囲網は着実に白蓮を追い詰めていることに、現状変わりありません

 

司馬師が暗躍する中、官渡城を奪取できたものの・・・

今後の”ぱいれん”ちゃん達は一体どうなっちゃうの?といった所が焦点になります 

そして、孫呉側もこの状況を打開する為に動きをみせます

 

より混迷の度を深めて参りますが、次回辺りで決着をつけようと思っております

どうか最後まで気長にお付き合いくださいますよう、何卒よろしく御願い致します<(_ _)>

 

これからも、皆様の忌憚のない御意見・御感想、ご要望、なんでしたらご批判でも!と何でも結構です

今後の制作の糧にすべく、コメント等で皆様のご意見を是非ともお聞かせ下さいませ 

 

それでは完結の日を目指して、次回更新まで(*´∇`)ノシ マタネ~♪

 


 
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