No.688531

司馬日記外伝 事後シリーズ9

hujisaiさん

『その後』の、一刀さんとねねさんです。
飯坂様への感謝と、本編でのねねの扱いがアレな事について観珪さんへ罪滅ぼしをしようとしたら却って罪を深めたという…ごめんなさい。
そして皆様、いつも見てくださって有難う御座います。

2014-05-22 20:52:39 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:11087   閲覧ユーザー数:7280

「…ろすのです」

ぺちぺちと彼女の手のひらが、軽く俺の肩を叩く。

 

「降ろすのです…」

「重くないけど」

「…ねねも以前ほど小さくはないのですよ」

荒い息を収めながら呟く彼女の声は色っぽい溜め息のようにも聞こえる。

軽いと言っていい身体を抱えて出来る限り優しく隣に降ろして、腕枕に頭を乗せさせると大きく一つ息を吐いて身体を丸める。

 

「水は…」

「…いいです。こんな時だけ優しくするなです」

棘のある言葉のわりに枕にした腕を握り締める彼女に軽い苦笑を漏らしてしまっていると、眉根に皺を寄せてはぁぁぁ…と力の抜けた溜息を吐く彼女の横顔。

 

「どしたの」

「…自分の心の弱さにほとほと呆れているです。おまけにお前はこう…人の弱ってるところにつけ入って女の体を貪る事にかけては天才的にも程があるのです」

「ひでえなぁいつもながら…の割には今日は特に」

「五月蝿い黙れ黙るのです!速やかに忘れろ忘れなければ力づくで忘れさせてやるですよ!?」

「いてて、叩くな叩くな」

それなりの力を込めて胸を叩かれる感触に、さっきまでのねねの乱れ方の本気度が感じられて思わず口元が緩んでしまう。なお俺はMではない。

 

「何があったの」

番のときには彼女は照れながら部屋にやってくる。しかし今日みたいに因縁つけてきて事に及んでくる時は必ず何かあった時だ。背は伸びてもまだ俺よりは十分小さい彼女を胸元に抱き寄せて、耳元で出来るだけ優しく囁く。

「あの姉妹…伯母姪ですか、あいつらは煮ても焼いても食えないのです」

「…桂花達か」

そう聞くと頭を胸に押し付けて押し黙ってしまったので、髪を撫でてやる。

「…桂花の方はまだいいのです。今思えば奴の言う事は正論でした」

「何の話だったの」

「商業政策です。正直言ってねねが勉強不足でした。ですがあの女は脇から余計な事をベラベラベラベラっ、仕事の途中だったのに腹が立ち過ぎてほっぽりだして来てしまったではないですか」

「…桐花(荀攸)は標的を見つけたら煽っていくスタイルだからなぁ」

元々桐花がねねの事を良く思ってないのは知ってたけど、敢えて関わる様子も無かったから油断してた。彼女も縄張り意識と言うか、魏の娘と他所の娘が議論してると魏の娘の肩を持って相手を言い負かしちゃう所があったけどそれが桂花でも…いや、桂花だからこそ肩入れしたのか。

「…まああんまり気にするなよ。仕事の方はこれからも頑張って欲しいけど」

「言われるまでもないのです。それにねねには荀諶ちゃんをあの性格のねじくれた姉達から隔離するという大事な仕事もあるのです」

「ああ…ねねの部下に新人で入ったんだってね。宜しく面倒見てやってよ」

「それこそ言われるまでも無いのです。配属当日におまえについての正しい認識を懇々と説いたので差し当たり問題は無いのですよ、くくくくくく」

「何言ったんだ!?」

「自分の胸に聞いてみろなのですこのちん皇帝め!彼女にまで手を出したら極上のちんきゅーきっく改をおまえの股間にぶら下がった脳ミソに叩き込んでやるのですぞ!」

「俺の脳ミソはそんなところにねえよ!あと大声で危険な事を叫ぶな人が来る」

「ひ!?」

顔色を変えてしがみついて来る彼女を抱き返しながら無意識に息を潜める。

 

何も聞こえない。

 

「…あれ以来何もされてはいないですが…あ、ああいう危険な女は首輪をつけて人を襲わないようにしておくのですぞ」

「首輪がどうというのは置いといて、仲良くしてもらえるように努力はしている」

ねねも俺に対する物言いはわりと荒っぽい上に官位も桂花よりも低く、春蘭や思春のように腕も立つ訳じゃないから一部の強烈な好意を向けてくれる娘たちからは睨まれがちだ。というかガチで睨まれてた事があった。

「ねねは努力ではなく結果を期待するのです」

「前向きに取り組んで参ります」

「ところで」

「何?」

「人の恐怖にかこつけて尻を揉むなです」

「揉み心地が良くてつい」

「それはねねの胸の揉み心地が気に入らないという喧嘩の売り文句ですか」

「いや背も伸びたのにあわせて慎ましくも御成長されたそこも魅力的だけどこの体勢じゃ無理だし、それよりもねね」

「何ですか」

「太ももに挟んですりすりされるのもどうかと」

「おまえが尻を掴んで引き寄せるから偶然にも挟まってしまったのです。コレは言わばおまえの頭脳です、つまりねねはおまえの頭を撫で撫でしてやってるのですぞ?ほーれ撫で撫で♪」

いたずらっぽい笑みを浮かべ、腰をくねらせながら手を伸ばして器用に頭も撫でてくるねね。

でしたらねねさん、折角なのでもっと温かい所で撫でて欲しいんだけどと言うと、くくっと幼げな笑顔を見せて仕方の無い種馬ですな…と呟きながら、目を閉じると一度浮き上がるようにしてから、ゆっくりと布団の中へ沈み込んでいく。

 

全てが彼女の柔らかく熱くぬめった、頭を撫でる掌にあたる部分に飲み込まれると、んぅ、と初めて会った頃は想像出来なかった色っぽい声を漏らし、ゆっくりと薄目を明けた。(始めても)いい?と問うとこくりと頷きながら、浮かされたような表情で耳元に口を寄せて来た。

「これも、んぅっ…良いのですが、…後で別のところでも…いい子いい子してやるのですよ…?」

一瞬何の話か分からず「え?」と聞き返すと彼女は怒ったように満面を朱に染めて、

「だ、だから!以前あの危ない女がねねを…ねねの…っ、そ、そこに危害を加えられそうに…、いえ精神的には危害を加えられたのですから責任持って飼い主のおまえが!おまえが一生治療と賠償と愛情と謝罪を尽くすべきだということなのですから分かればかっ!」

と押し殺した声で叫びながらしがみついてきた。

 

それがあんまり可愛くて、「そこって…ここ?」とか言ってつい張り切っちゃった俺も悪かった。反省している。

 

 

 

 

 

 

けど翌朝の会議の欠席を恋に言付けるのはやめような、ねね?

恋、理由聞かれたら正直に喋っちゃうからさ?


 
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