No.686139 司馬日記47hujisaiさん 2014-05-12 00:44:06 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:12877 閲覧ユーザー数:7685 |
5月25日
伯道が悄然として総務室を訪れたのでどうしたのかと聞くと陳倉へ帰るのだと言う。
「残念ながら一刀様にとって私は女ではなかったようだ…。昨日、一刀様に陳倉の地理や治安、農産状況等を報告したのだが、正にそれだけで終わってしまったのだ。正確にはお前の事など多少雑談もし、終始一刀様はにこやかであったのだが…それだけだった。『郝昭さんも忙しいだろうから、他に無ければ戻っていいよ』と惜しい素振りも無く帰されてしまった、真名さえ聞かれなかった。…まあ腕っ節と仕事ばかりの気も利かん田舎女だ、よく考えてみれば女を看る眼の肥えられた一刀様の御眼鏡に適う筈も無い。…これから都の水に洗われて、多少は女らしくなって再度お目見えをとも考えたがとても今はそんな気力も湧かん。田舎女は田舎女らしく、陳倉で暫く静かに暮らそうと思う。遠くから想う位は一刀様もお許し下さるだろう」
と言うが伯道は知る限り指折りの佳人で心根も良く、必ずや一刀様の心身を御支えするに相応しい女性だ。
伯道にお召し戴く意思は示したのかと聞くと、『先に私(仲達)が一刀様が良いようにして下さると言っていたので特に申し上げなかった』と言う。一刀様は御慎み深く部下思いで御遠慮深いところがあるので伯道の意思が分からなかった為に御遠慮されたと思われる、私の説明が悪かった事でもあるのでこれから一刀様に伯道をお召し戴く様お願いに上がってくると言ったところで子丹御嬢様から声が掛かった。
「あの、どこで止めようか迷ってたけれど…あのね伯道、会ってその日に抱かれた女なんて居ないのよ?仲達も貴女伯道に一体どんな説明したの、第一貴女一刀様にお目見えしてから後宮入りするまでにどれくらい掛かったか忘れたの?」
と言われはたと己が身を振り返ってみると、流石に自分の考えに無理があった事に気がついた。彼女の資質の高さゆえに私の気が逸ってしまったが、今後じっくり一刀様と御近づきになっていけば必ずやと伯道に説明するとぽかんとした後に
「…そうであるなら、今少し都で頑張ってみるが…何分私は田舎育ちでそういった機微や常識に乏しい、今後は女児に男女の道を説くと思って指導してもらえると有難い」
と言って、今一つ釈然としない様子であったが退職は思い止まり帰って行った。
…私も何時の間にか今の幸福に溺れ、初心を忘れてしまっていたようだ。自戒せねば。
5月27日
後宮の消耗品費が昨年よりも増加していたので調べてみたところ、一刀様用の食材費が増加していた。調理と共に発注管理を担当されている典韋殿に事情を伺ってみたところ、一刀様が元気になる料理を曹操様と共同で研究しており、材料費が高騰している為だという。しかし、予め一刀様の為の出費であれば問題は無いのでなんら責める意図は無いのですがと申し上げたのだが、妙に歯切れが悪く挙動不審なところが見られたので執務室に戻ってから詠様に食材表を見せながら何故だったのでしょうかと伺うと
「食材が鼈、山芋、大蒜、鰻、牡蠣に枸杞でしょ、このへん見たあたりで察しなさいよこのちゅーたt…そうねどんな研究してるのかしらね、流琉だけじゃちょっと心もとないしボクもちゃんと効果があったのか心配だから一刀の様子見てくるわ」
と言ってそそくさと退勤されていった。
典韋殿は曹操様と並ぶ調理の第一人者であるので特に心配ということは無いと思うのだが。
5月28日
庁内の東屋で呂布殿が一刀様と談笑されているところへ陳宮殿が割って入られ、何事か気に入らなかったのか一刀様を蹴ろうとして呂布殿に抑えられていた。
陳宮殿は日頃から一刀様への態度に問題があると思い私からも一言御注意しようと東屋へ向かおうとしたところ、どこから見ていたのか先に顔良殿が
「ねねちゃん?私、一刀さん蹴ったりしちゃだめだよって前に言ったよね?またあのお薬が…要るのかな?」
と言いながら人差し指をくいくいと曲げる仕草をすると、陳宮殿はひっと小さく悲鳴を上げて目を見開き、「あ…あのおかしくなってしまうお薬は恐いのですっ、ね、ねねはお尻はもう嫌なのですぞっ」と言いお尻を押さえながら後退りした。
なおも顔良殿が「今度は…強くしちゃうよ?」と語調は穏やかながらも鬼気迫る雰囲気で陳宮殿の目の前で人差し指を回すと、「し、しない!しないのです、だからあれはやめて欲しいのですぞーっ!」と涙目でお尻を押さえたまま逃げるように走って行かれた。
顔良殿が先に陳宮殿に何をされていたのか伺おうとしたが、顔を引き攣らせた一刀様が笑顔の顔良殿を連れて去って行かれてしまったので伺えなかった。
5月29日
公達様に昨日のあらましを説明して陳宮殿は一体何をされたのか伺ったところ、
「あたし女にそういう事される趣味は無いのよねぇ…一刀様には流れで口前後ろって立て続けにしてもらったことはあるけどさぁ、一刀様そこですると必ず一旦お風呂休憩にされちゃうから口前胸顔をひたすら入ったり来たりする方があたし的には…」
とこれまた要を得ない答えであった。
5月31日
困惑された表情の一刀様が人事の件でと仰って書類を持って月様をお訪ねに総務室へ来られたが、月様も詠様も不在であったので実務を担当した士載が対応させて頂いた。
「この総務室の新人配属条件が処女って言うのはね、ちょっと踏み込み過ぎって言うか」
「非処女の方が面倒が無くて良かったのでしょうか?月様が『基本的に貞操の固い方を』と御指示されたのでそのように記載してしまったのですが…思えば私も初めての時は一刀様にお手間を取らせてしまいまして申し訳ありませんでした」
「いやそうじゃなくて」
「!分かりました、黄忠さんみたいに経産されてから一刀様の御魅力に気づくこともあるということを仰ってるのですね」
「えっと、仕事とプライベートは別に考えていいって話で…」
「ですが不貞な方の後宮入りは風紀、倫理上も…それに月様からも一刀様は寝取りプレイにはご興味が無いとのことでしたので」
「あのね、後宮入りが前提っていうのがね」
等とやりとりをされていたが、今一つ互いに要を得ず何分責任者の月様が御不在の為後日月様を再度お訪ねになると仰って帰って行かれた。
士載は自身で対応し切れなかった事に落胆し、『私の対応に何か誤りがあったのでしょうか』と聞かれたが私も確たる答えを与える事が出来ず、『処女が条件ではいけないという事は、総務室は重要部署である為御寵愛を賜ってから勤務させよということではないか』
と自分の意見を述べるにとどめた。
6月1日
珍しく曹休様が庁内に見えられていたようで、退庁されるところを庁門ですれ違った為会釈した。
執務室に戻った子丹御嬢様に曹休様がお見えだったようですと申し上げたところ、一刀様に呼ばれたようねとのことだった。総務室に来られていた子廉様と子孝様が、
「菫のやつ、まだ戻ってくる気無いのかしらねぇ」
「本人的にはまだ気にしてんじゃない?」
などと言われていた。私も不思議には思っていたので何をお気になさっているのでしょうかと伺うと、
「そっか、アレあんたが入庁する前くらいだったっけ。あの娘、一度一刀様本気で激怒させちゃってるのよ『じゃあクビだ!』って言われてね。あたしに言わせりゃあんなの愛されてる証拠だけどねぇ、あの娘そういう無駄にクソ真面目なとこちょっとあんたに似てるわよね。そうだ思い出したあの時凪もマジギレしたのよ、詳しい話聞きたかったら凪に聞けば?」
と言われた。
一刀様が我を忘れてお怒りになられたところは私が勤務して以来見たことも聞いた事も無く想像さえ出来ない。
6月3日
げんなりした表情で于禁殿が会議室から出てこられ、詠様がどうしたのよと聞かれたところ
「呉の方から『不倫プレイはアリか』っていう照会が月ちゃんの方に来たんだけど、月ちゃんが誘い方と程度次第じゃないですかって言ったみたいなの。じゃあその基準って何って話をしてたら何故か私の取調べプレイが基準ってことになったらしくて、根掘り葉掘り聞かれたの…特に月ちゃんが、私隊長に軍の教練でしてるような喋り方してないのに『この豚とか言ってませんよね』ってしつっこいくらいに聞かれて、私ちょっと疲れたから帰るの…」
と言いながらふらふらと帰って行かれた。
6月4日
定時後に凪を誘い、曹休様が三国一に勤められている訳を知っているか聞いてみた。
凪曰く、
「私も大人気なかったのですが…菫(曹休)様、隊長と初めて結ばれた後に胸に悪性の腫瘍がある事が分かって華陀さんに診てもらったんです。そうしたら治るけれど胸にその…跡は残るって言われて、それで菫様顔にはあまり出さないんですが物凄く落胆して治療をしないで仕事を続けようとしたんです。それを華陀さんから聞いた隊長は青くなって、いや真っ赤になって菫様の所へやって来て治療を受けるように強く説得されたんですが、『傷物の身体では二度と一刀様の御相手は務められません、治療はせず愛される身のまま公に私に尽くして死にたい』って言われたんです。それに隊長は切れてしまって、『じゃあ仕事はクビだ、治療以外一切させるか』って軍幹部皆の前で怒られたんです。そのときその…私もこんな身体ですけど、あの、隊長に凄く愛してもらってますから、そんな事でってついそのカッとなって上官なんですが手が出てしまって…その後もぼろぼろ泣きながら隊長がそんなことで嫌いになるはずがないとか色々わめき散らして…その後菫様は治療を受けられて今では健康なんですが、隊長から慰留されても『一度退職を命じられた身ですから簡単に戻っては一刀様の権威を損ねます』ってあの飲み屋で給仕長をされているんです」
ということだった。改めて一刀様の広く深い御愛情に感じ入っていたが、いつの間にか凪の背後に于禁殿と李典殿が来られており
「凪の話は肝心なところが抜けてるのー!」
「沙和!真桜も!?」
「その後『傷の一つや二つがなんだ、俺がどれくらい凪の事を愛してるか見せてやる』言うて菫様正座させて、全身の傷跡隈なく嘗め回された挙句むぐ」
「隊長が自分から人に見せたのはそれが最初で最後もご」
「そ、それは言わなくてもいい話だろう!?」
などとからかわれていたが一刀様の濃やかな御愛情を窺える、更に良い話だ。
6月5日
子敬と昼食を摂りながら、呉から出されたと言う不倫プレイなるものの質疑について思い出したので知っているか聞いてみたところ
「ううん別に全然無礼働こうなんてつもりは無いのよ?何かと影の薄…慎ましい蓮華様から寝取る系じゃなくて二号でもいいから関係しちゃいましょみたいな方だから特に問題は無いかなって思っ…意見を拾ったんで月さんに一応照会かけただけなのよ。これあたしがやりたいって言ったわけじゃないからね?これあたしじゃないからね?月さんに余計な事チクらなくていいのよ?」
等と聞いていない事まで捲くし立てられた。
6月6日
一刀様の御部屋で公務予定を御説明し終わり御茶の準備をしていたところ、馬岱殿がいつかの展示会で見た黒の襞の多い服を着て部屋に飛び込んで来られた。
「ねえねえご主人さま!今から蒲公英がそのお茶請け美味しくしてあげるから、可愛かったら可愛いって言ってね!」と言い一刀様が怪訝な表情ながらも頷かれるや、
「お・い・し・く・な・あ・れ♪萌え萌え~きゅん!」と言いながら多少珍妙な、しかし彼女の容姿と相俟って可愛らしいとも言える仕草をして見せた。多少面食らわれていたが一刀様が有難う、可愛いし美味しくなったと言われるや、にいっと笑みを浮べて部屋の外に隠れていたらしい魏延殿の腕を取って駆け出して行かれた。
一刀様はあっけにとられていたが、突然どうしたんだろうねぇと笑いながら言われ公務に戻られた。
しかし夕方、普段は静かな蜀の休憩室の前を元直と通りがかったところ人の話し声が聞こえた為共にのぞいてみた所、
「もっ…も、萌え萌えきゅん!萌え萌えきゅん!…あの、もうよろしいですか桔梗様」
「そうじゃの。どうじゃ蒲公英」
「んー…まだ笑顔が固いかなぁ、あと媚びた感じが足りないよねー。可愛いって言われたいって言うから蒲公英手伝ってるのに、これじゃ引けばいいのか笑えばいいのかご主人さま困っちゃうよ」
「じゃと。もうちぃと練習してから御館様に披露して来い」
「で、ですからワタシにはこれは無理ですと申し上げてるではないですかぁ!」
などと白い襞の服を着て途方に暮れる魏延殿、寝そべって煎餅を齧る馬岱殿、酒瓶片手に酔眼の厳顔殿が話されていた。
魏延殿がお困りのようだが止めなくていいのかと元直に聞くと、蜀ではよくあることだから、と生温かい笑顔で戸を閉め私の腕を引いて立ち去ってしまった。
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遅くなってしまいましたがその後の、とある文官の日記です。
いつも皆様の御笑覧、コメント有難う御座います。