「さて・・・今日は何処に行こうかね?リクエストあるか?」
「何処でもいいぞ」
「そういう答えが一番困るんだがなあ・・・・・・」
街中を歩く一刀と華雄。
今日は二人とも、午後からの仕事が無かったので街へ出ることにしたのだ。
「飯は出る前に食ったし、これという娯楽施設もなあ・・・・・・」
「お前の好きな釣りにでも行くか?」
「それもいいが、こう変化が欲しいんだよな・・・・・・ん?」
一軒の店が、一刀の目に留まった。
「よし!あそこに行こう!」
二人が入ったのは服屋だった。
「いらっしゃいませ!どのような服をお探しで?」
「これと言って決めてないから、ゆっくり見させてくれ」
「そうですか。では、何かありましたら遠慮なくお呼びください」
そう言うと、店主は店の奥に引っ込んだ。
「どんな服を買うんだ?」
「部屋着。あそこで借してもらえる服は堅苦しいのばっかりだからな。仕事が終わった後とか、寝る時に着る服買っときたいんだよ」
「なるほどな・・・・・・」
「華雄は欲しい服とかないのか?」
「私か?う~ん・・・・・・」
キョロキョロと辺りを見渡す華雄。
「ま、急ぐわけでもなし、ゆっくりと探したらどうだ?とりあえず俺も自分の探すから」
「そうだな」
一刀の言葉に頷く華雄。
という訳で、二人はそれぞれの服を探す事にした・・・・・・
「これと・・・あとこれかな?」
部屋着を適当に見繕っていく一刀。
「むう・・・・・・」
華雄の方はと言うと、服を手に取っては戻すという作業を繰り返していた。
この服屋にある女性用の服は、可愛いものやオシャレなものばかりで、いつも華雄が着ているようなタイプの服がなかったのである。
「何かいいのあったか?」
既に買うものを決めた一刀は華雄の近くまでやってきた。
「いや、別に・・・・・・」
「そうか?せっかく来たんだから一着くらい買っていけば?」
「私がいつも着ているようなものが無くてな・・・・・・」
「いつも着てるようなものじゃなくてもいいだろ?・・・・・・うし!俺が見立ててやるよ」
「いや、ちょっと・・・・・・」
待ったと言おうとした華雄を無視し、一刀は女性用の服を物色し始めた。
「これはちょっと派手だし、これは子どもっぽい。う~ん・・・・・・」
真剣に悩む一刀。
「お?華雄。ちょっとこれ着てみてくれないか?」
「む、むう・・・・・・」
一刀が差し出した服を、華雄は困惑した顔で受け取った。
・・・・・・
「うん、似合ってる似合ってる」
着替えてきた華雄に対し、一刀はそう言った。
一刀が華雄に渡したのは、飾り気のない白のワンピースだった。
「素材がいいからシンプルなのがいいかと思ったんだが、中々どうして、帽子でもかぶればどこぞのご令嬢と言っても差し支えないぞ」
「か、からかうな・・・・・・」
頬を赤く染める華雄。
「からかってねえよ。でも、こうして別の服に着替えた所を見るのは新鮮だな。おし、次はこの服着てみてくれ!その次はこれな!」
次から次へと服を差し出す一刀。
戸惑う華雄だったが、無下に断る事も出来ず流されるままに試着していくのであった・・・・・・
服屋を出る頃には、もう日が暮れていた。
華雄は片手、一刀は両手に袋を引っさげている。
「私の服まで買ってもらって、悪いな」
「構わねえよ。しかし、一着で良かったのか?もっと買っても良かったと思うんだが・・・・・・」
「そんなに買っても着ないさ」
「そうか」
「まあ、これも着る機会があるかどうか・・・・・・」
「やれやれ・・・・・」
肩を竦め首を振る一刀だった。
その夜、華雄の自室
明かりもつけず、華雄は一刀に買ってもらった服を着て鏡の前に立っていた。
その服は、一刀が最初に選んだ白のワンピースだった。
ちなみにセットで白い帽子も買ってもらったのでそれもかぶった状態である。
月明かりに照らされたその姿は見るものを魅了するであろうことうけあいであった。
華雄も一刀に似合うと言ってもらって嬉しかったし、実の所、一緒に出かけたいとも思っていた。
が、やはりこの服で人前に出るふんぎりはつかず、華雄は大きなため息をつくのであった・・・・・・
一刀の部屋
「買ってしまった・・・・・・」
一刀は寝台に置いた一着の服を見ながら呟いた。
服屋で見つけ、こっそり買ってしまったその服。
それは、誰がどうやって作ったのか、黒のセーラー服であった。
「頼めば普通に着てくれると思うが・・・しかし、何だか後ろめたい気がするなあ・・・・・・」
華雄とは別種類のため息をつく一刀だったとさ・・・・・・
どうも、アキナスです。
今回は華雄のお話となりました。
終章に入ってから中々出番のない華雄さん。
ここからでも巻き返したい所ですね。
さて、では次回に・・・・・・
「ドラゴンクラッシュ!!」
Tweet |
|
|
38
|
1
|
追加するフォルダを選択
白い・・・・・・