No.681800

真・恋姫†無双 外史 ~天の御遣い伝説(side呂布軍)~ 第三十八回 第三章A:臥竜鳳雛捜索編②・探せ!孔明の庵

stsさん

みなさんどうもお久しぶりです!初めましてな方はどうも初めまして!

今回ははわわあわわを探して右往左往・・・。

果たして朱里ちゃんの庵は見つかるのでしょうか・・・!

続きを表示

2014-04-27 00:01:02 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:5384   閲覧ユーザー数:4491

 

張遼「ハァ~~~~~~・・・」

 

 

 

張遼は城下の酒場で、なみなみに注がれた盃を片手に大きなため息をついた。

 

 

 

厳顔「まぁそう気を落とすな。別に今回でなくとも、お館様と共にする仕事くらいあろう」

 

 

 

張遼の隣で同様に酒を飲んでいるのは厳顔である。

 

二人は今、仕事終わりで一杯やっているところである。

 

 

 

張遼「せやけどやで!何だかんだであれからもう3日。しかも、さっきななからもう2,3日粘るっちゅー連絡が来たんやろ?はよ諦めて

 

いっぺん帰って来いっちゅーねん!」

 

 

 

北郷ら臥竜鳳雛捜索隊は無事襄陽に着いたものの、そこからなかなか情報をつかむことができず、捜索は難航しているとのことであった。

 

そのため、さきほどもうしばらく捜索を続けるとの連絡が成都に届いていたのだ。

 

この粘りの原因は、恐らく臥竜鳳雛に会うことに異様な執着を見せていた北郷の我儘がまかり通っているものと二人は予想していた。

 

張遼は手にした酒をグッと一気に飲み干し、厳顔に愚痴をこぼした。

 

 

 

張遼「しかもやで!あの時ねねがすんなりななの同行を許したんは、恋が決めたことやからやって思っててんけど、よー考えてみたら、

 

ねねにとって今ほど恋を独り占めにできる機会はあらへんのや!今も恋と晩飯一緒に食べてるみたいやしな!特にねねは朝議やら政やら、

 

なんかの理由にかこつけては、あっちでベタベタ、こっちでベタベタ、会うたんびに一刀にいっつもベタベタくっついとるからな!別に

 

今回一刀を取られても大したことないんや!結局はねねの一人勝ちっちゅーことやで!ホンマ、才の無駄遣いやであの残念軍師!」

 

 

 

一気に盃を空にした張遼は、「っぱぁ゛ぁ゛」というおっさんみたいな声をだし、自身で豪快に酒を注いでいく。

 

あまりに勢いよく注いだため、酒が盃から零れ落ちていた。

 

 

 

厳顔「まぁ、確かに今まではねねが軍師という立場上一番お館様に近いが、いつまでも安泰という訳にもいかぬやもしれぬぞ?」

 

張遼「あァ!?どういうことや!?」

 

 

 

布巾で張遼がこぼした酒を拭きながらそのようなことを言った厳顔に、

 

張遼はダンッと盃を机に叩きつけて逆ギレ気味に厳顔に問い詰めた。

 

 

 

厳顔「つまり、今回探しに行った諸葛亮と鳳統とかいう者たち、どのような者たちかは知らぬが、お館様がご指名なさるほどの者たちだ。

 

娘子である可能性が高かろう。しかも「口説く」などと仰せなのだ。軍師というねねの独占的な立場は崩れるだろうな」

 

 

張遼「女・・・口説く・・・アカンアカンアカン・・・やめてや桔梗はん、ホンマに一刀やったらありえそーやからそれ・・・これ以上

 

一刀の周りに女増えるとか収集つかへんくなるで・・・」

 

 

 

張遼は厳顔の話にすっかり顔を真っ青にさせ、酔いが一気に吹っ飛んだのか、再びハァ~~~~~っと長いため息をついた。

 

 

 

 

 

 

【荊州、襄陽、とある村】

 

 

 

北郷たちが襄陽入りしてはや三日が経過していた。

 

しかし、未だに有益な情報はつかめていない。

 

今は襄陽付近にある、とある村にあった食堂で朝食をとっているところである。

 

 

 

高順「すでに大きなまちは粗方まわりましたが、どうもいそうにありませんね」

 

 

 

高順は手にしたあんまんを一口サイズに千切り、その小さな口に入れてやや疲れ気味にため息をついた。

 

 

 

魏延「モギュッモギュッ・・・影も形もないとは・・・まさにこのことだな・・・ゴクンッ。本当に臥竜鳳雛なんているのか?」

 

 

 

魏延は皿に山盛り積まれた春巻きを一つ箸でつかむと、一気に口の中に押し込み、咀嚼しながら疑いの目を北郷に向けた。

 

 

 

北郷「いや・・・いる、とは思うんだけど・・・」

 

 

 

魏延の問いかけに、北郷は食べようとしていたマントウを皿の上に戻し、俯き気味に口ごもった。

 

もはや成都を出発した時のテンションの高さは見る影もない。

 

 

 

北郷(そういえば、オレってゲームとかやってても、どっかの勢力に所属している諸葛亮や鳳統を捕虜にしたり引き抜いたりで登用した

 

ことはあっても、なぜか在野の二人って登用どころか一度も発見できたことないんだよなぁ。もしかしてオレって嫌われてるのか?)

 

 

高順「まぁ、表舞台に出たがらない人物のようなので、今まで探していた大きなまちではなく、小さな村のはずれとかにいる方が可能性

 

としては高いような気がします。成都にもあと2,3日粘ると伝えてありますし、もう少し頑張って探しましょう」

 

 

 

北郷が相当に落ち込んでいる様子だったため、高順がフォローを入れた。

 

 

 

北郷「なな・・・」

 

魏延「ふん、そうと決まればさっさと飯を済ませて探しに行くぞ」

 

 

 

魏延も疑いの目を向けていたのは本心ではなかったようで、皿に残った春巻きを片付けるべく再びがっつき始めた。

 

 

 

北郷「焔耶・・・そうだな、二人ともありがとう。言い出しっぺのオレが最初に諦めるとかあり得ないよな。まだ探してない村もあるし、

 

もうひと踏ん張りするとしますか!」

 

 

 

 

 

 

とはいったものの、世の中そんなに甘いわけもなく、結局その後の二日間、

 

まだ探していない村々を回った北郷たちであったが、それでも見つけることができなかった。

 

しかし、二日目に立ち寄った最後の村で、天下の奇才とも言うべき人物が、

 

かつて水鏡という人物の学び舎から巣立ち、襄陽の外れにある隆中という小さな村で、

 

ひっそりと暮らしているという情報を得たことが、唯一の収穫ではあったが非常に有益な情報でもあった。

 

その人物が諸葛亮や鳳統を指しているという確実な証拠はないが、

 

隆中といえば、『三国志演義』で劉備が諸葛亮を三顧の礼で迎える舞台であり、

 

更に言えば、少なくとも水鏡、つまりは司馬徽の元を巣立った門下生は、史実でもそのほとんどが優秀な人物であり、

 

仮に諸葛亮や鳳統が見つからなくとも、その人物の登用がかなえば、当初の目的である人材不足の解消には繋がるからである。

 

ただ残念だったことは、水鏡に会えればその人物について詳しく聞けるかと思ったのだが、

 

その水鏡自体、どこにいるのか分からなかったことか。

 

 

 

 

 

 

そして、臥竜鳳雛捜索延長を決めてから三日目、今日見つからなければさすがに成都に引き上げざるを得ない最終日に、

 

北郷たちは隆中という村に最後の望みをかけ、朝食を済ませると共に隆中に向かった。

 

しかし、この隆中にたどり着くことがまず困難であり、幼少期に荊州にいたという魏延もその場所が分からず、

 

結局、村々で場所を尋ねながら何とか無事隆中に到着した時には、もう夕方になってしまっていた。

 

 

 

北郷「ふぅ~・・・やっと着いたぞ・・・」

 

魏延「だらしのないヤツだな。一服している暇なんてないぞ?もう夕暮れ時だからな」

 

北郷「わ、わかってるって・・・」

 

 

 

北郷はだいぶ騎馬に慣れてきたとはいえ、馬での移動が六日も続けば、

 

冬の寒さも相まって、さすがに肉体・精神共に悲鳴を上げるというものであった。

 

しかし、ここで泣き言を洩らしても、魏延から鍛錬が足りんと冷たく一蹴されるだけなのは目に見えて明らかであったため、

 

その泣き言は胸の内にとどめる。

 

 

 

高順「では、時間もありません。小さな村ですし、手分けをすればすぐでしょう。私が一刀様を護衛しますから、焔耶と一刀様の二手に

 

分かれて―――」

 

 

 

しかし、高順の提案を、魏延が食い気味に全力で待ったをかけた。

 

 

 

魏延「ちょっと待て、なな。ただでさえワタシは荊州の道案内という役目を全うできなかったんだ。せめてお館の護衛くらいはワタシが

 

する」

 

 

 

勿論、魏延の本心としては、二手に分かれる=護衛担当は一刀と二人きり、という構図を高順にとられるのを阻止するが為の反論である。

 

 

 

北郷「あのー・・・」

 

高順「いいえ、そもそも一刀様の護衛をねねから任されたのは私です。ここは譲れません」

 

 

 

そして、当然提案者たる高順がここで引き下がるわけもない。

 

 

 

北郷「おーい・・・」

 

魏延「いいやここはワタシが!」

 

北郷「もしもーし・・・」

 

高順「いいえここは私が」

 

北郷「別に小さな村だし護衛とか必要ないんじゃ―――」

 

 

 

そして、二人に無視され続けた北郷が、ついに具体的な代替案を提示しようとしたその時、

 

 

 

魏延「お館は黙っていろッ!!」

高順「一刀様は黙っていてください!!」

 

 

 

あまりの北郷の甘さ(これは君主としての)・鈍さ(これは当然男性としての)にイラっときた二人は、北郷に容赦ない一撃を浴びせた。

 

(が、高順は寸分のところでなんとか思いとどまった)。

 

結局、魏延から理不尽な手痛い一撃をみぞおちに受けた北郷は、

 

もうこの村以外で探すつもりないし小さい村だから三人一緒に廻っても十分間に合いますよ?と涙ながらに提案し、

 

結果、北郷の提案が採用される形となった。

 

 

 

 

 

 

【荊州、隆中】

 

 

 

そうして、ようやく三人で捜索を開始し始めて数刻、しかし、小さな村とはいえ、まだ有益な情報はない。

 

 

 

高順「次はあの子に尋ねてみましょう」

 

 

 

疲れた表情で高順が指し示したのは、道端にある巨石の上に立っていた少女であった。

 

見た感じ歳は十代前半と言ったところか。

 

身長は高順と同じか、やや高いくらいであり、赤みがかったストレートヘアをふくらはぎ辺りまで伸ばし、

 

その赤毛の頭には、大きな薄桃色のリボンとえんじ色のミニシルクハットがちょこんと乗っていた。

 

白のチュニックに帽子と同色の上着を羽織り、首元には一対の陰陽魚のアクセサリーを身に着けている。

 

腰には帽子に付いたリボンと同様の大きなリボンを巻いており、若竹色のスカートをはき、裾からは黒のスパッツがチラリと見えていた。

 

そして、その少女は何か複数の光るものをお手玉のように投げて遊んでいるようで、淡いブルーの瞳は常にお手玉の頂点を見つめていた。

 

 

 

高順「すみません。ちょっとお尋ねしたいのですが」

 

赤毛少女「わわわ!?えーとえーと、何ですか?」

 

 

 

知らない人から突然声をかけられたからか、或いは単に恥ずかしがり屋なのか、赤毛少女は驚いた表情でおろおろしながら赤面していた。

 

しかし、驚かされたのは赤毛少女だけではなく北郷たちもであった。

 

なぜなら、赤毛少女に近づいて初めて気づいたのだが、

 

赤毛少女がお手玉のようにして投げていたものは、なんと4本もの包丁だったからである。

 

赤毛少女は高順に話しかけられた途端、危なげなく器用に4本もの包丁を片手でキャッチしてお手玉を中断させたのだ。

 

大道芸人か何かなのかと思った北郷たちであったが、今は目的を最優先させるべく、

 

特にそこについてはツッコむことなく、高順は質問を続けた。

 

 

 

高順「この辺りに水鏡老子の門下生が暮らしていると伺ったのですが、どなたか心当たりはありませんか?」

 

赤毛少女「・・・えーとえーと・・・」

 

 

 

赤毛少女は北郷たちのことを訝しんでいるのか、口元に指を当てながら少し考えたかと思うと、北郷のことをじーっと凝視し始めた。

 

その淡いブルーの瞳に見つめられた北郷は、どこか自身の心の内を見透かされているように思え、思わず目線をそらしてしまう。

 

 

 

赤毛少女「・・・えーとえーと、もしかして、孔明ちゃんのことですか?」

 

 

 

北郷が目線を外した後も、赤毛少女はしばらくじーっと北郷のことを見つめ続けていたが、

 

やがて、カンカラカラーンと陰陽魚のアクセサリー同士をぶつけながら、巨石から飛び降りて発せられた人物の名前は、

 

北郷にとってよく聞いたことのある名前であった。

 

 

 

高順「一刀様!」

 

北郷「ああ、諸葛亮の字は孔明だ!間違いない!!」

 

魏延「本当か!?」

 

 

 

捜索六日目にしてようやく本命を発見できそうで、三人のテンションは一気に上がった。

 

 

 

高順「どちらにおられるかご存知ですか!?」

 

 

 

高順は赤毛少女にやや接近気味に諸葛亮がどこにいるかを尋ねた。

 

 

 

赤毛少女「わわわ!?えーとえーとっ、こ、この道をでしゅね、まっすぐでしゅね、行ってでしゅね、つつ、突き当りをでしゅね、右に

 

曲がってでしゅね、少し歩いた先にあるでしゅね、橋を渡ったところででしゅね、みみ見える大きな桃の木のある庵なのでふゅぷぇぉ!?」

 

 

 

高順の鬼気迫る勢いの質問に、赤毛少女は顔を真っ赤にし、テンパって噛み噛みになりながらも

 

(そして実際最後に思いっきり噛んでしまっているようだが)

 

こめかみに指を当てながら記憶をたどるように諸葛亮が住むという庵の場所を伝えた。

 

 

 

高順「ありがとうございました!」

 

 

 

高順は赤毛少女にお礼を告げると、三人は意気揚々とダッシュで突き当りまで馬を走らせた。

 

 

 

 

 

 

が、しかし、突き当りで右に曲がろうとしたのだが、なんとそこには木々が生い茂っており、

 

そもそも右に曲がる道がなく行き止まりであった。

 

もしかしてあの赤毛少女はかなり噛み噛みだったので聞き間違えたのかもしれない、

 

或いは、相当困惑していたようだったので本人が言い間違えたのかもしれない、と思い、

 

北郷たちは再び先ほどの赤毛少女がいた巨石のある場所に戻った。

 

赤毛少女は再び巨石の上に立ち、4本もの包丁をお手玉のようにして遊んでいた。

 

今度は少しだけイラっとしていた魏延が尋ねた。

 

 

 

魏延「おい、突き当りに右に曲がる道などなかったぞ!どういうことだ!?」

 

 

赤毛少女「わわわ!?えーとえーとえーと、す、すいませんでしゅ、突き当りに行くまでにあるでしゅね、四辻をでしゅね、右に曲がる

 

のでした」

 

 

高順「そういえばありましたね、四辻」

 

魏延「今度は本当に大丈夫なんだろうな!?」

 

 

 

魏延はあわてた様子の赤毛少女に少々威嚇するような視線を浴びせた。

 

 

 

赤毛少女「わわわわわわ、だだ、大丈夫でしゅ・・・」

 

北郷「ほらほら、焔耶もそんなに目くじら立てないで!ごめんね、教えてくれてありがとう」

 

赤毛少女「わわわ~・・・」

 

 

 

北郷の無自覚スマイル(手不使用)をくらった赤毛少女は、元々顔を真っ赤にしていたのだが、

 

その表情は先ほどまでのテンパった表情から、ぽーっとやや遠くを見ている感じに変わっていた。

 

 

 

高順「えー、コホン。さぁ一刀様、早く行きましょう」

 

 

 

北郷と赤毛少女の間に一瞬漂った不穏な雰囲気を瞬時に察知した高順は、

 

さっさと二人を引きはがす―――もとい、諸葛亮を見つけるべく、北郷に早く行くよう促した。

 

 

 

 

 

 

そして、再び赤毛少女と別れを告げた北郷たちは、言われた通り、四辻を右に曲がった。

 

が、しかし、今度は何もなかった。

 

いや、何もないというのはさすがに言いすぎであるが、そこにあったのは畑であり、少なくとも庵らしい庵は一切見当たらなかった。

 

 

 

魏延「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おい、今すぐアイツを殴りに行ってもいいよな?いいよな!?」

 

 

北郷「わーわー!待て待て待て待て!落ち着け焔耶!クールになるんだ!殴るってまさかその馬鹿でかい鈍器で殴るつもりか!?今年の

 

崇りの首謀者にでもなるつもりかよ!?そんなことしたってサトコは救われないぞ!!」

 

 

高順「気持ちは分かりますがさすがにそれは洒落になりません!」

 

 

 

マジ武器・鈍砕骨を取り出し、今にも赤毛少女を亡き者にせんとする魏延を、北郷と高順は必死で取り押さえた。

 

北郷に至っては必死のあまり訳の分からないことを叫んでしまっている。

 

 

 

北郷「ほら!反対側を見てみなよ!遠くに橋が見えるだろ!?たぶんあれがあの子が言ってた橋だよ!きっと慌てて右と左を言い間違え

 

たんだよ!」

 

 

 

北郷が指し示した方は、四辻を左に行く道であり、その先には確かに橋が架かっているのが見えた。

 

そして、なんとか北郷と高順は魏延をなだめ、気を取り直して一行は橋を目指して馬を歩かせた。

 

 

 

 

 

 

そして、橋を渡ってしばらくすると、ようやく大きな木が見え、近づいてみると小さな庵を発見することができた。

 

季節が冬ということもあり、大きな木は枯れ木となっているため桃の木かどうかを判断するのは難しかったが、

 

赤毛少女の情報と立地条件が合致しているため、恐らくこの場所が諸葛亮の庵で間違いなさそうであった。

 

 

 

北郷「・・・ついに、ここまで来たんだな・・・」

 

 

 

北郷は感動のあまり目に涙を浮かべている。

 

 

 

魏延「おいお館・・・まだ泣くのは・・・早いぞ・・・」

 

 

 

また、苦労して探していたものが見つかったせいか、魏延にも妙なテンションが伝播してしまっており、目頭を押さえていた。

 

 

 

高順「焔耶もですよ。実は全然関係ない廃墟だったなどという展開もなくはないのですから。本人に会えるまでは油断できません」

 

 

 

とはいったものの、高順自身も若干声色に揺れが感じられた。

 

そして、三人は大きく深呼吸して落ち着いたところで、ゆっくりと庵の敷地内へと入っていった。

 

 

 

北郷「あーあー、コホン。ごめんくださーい」

 

 

 

北郷は妙な緊張感から、咳払いをして声を整え、来訪の挨拶を述べた。

 

 

 

―――しかし、反応はない。

 

 

 

北郷「あれ?ごめんくださーーーい!」

 

 

 

もしかしたら声が小さくて聞こえなかったのかもしれないと思い、今度はやや大きめの声で言った。

 

それでもやはり反応はない。

 

どうやら、誰もいないようである。

 

或いは、人が住んでいないというのが正しいのか・・・。

 

 

 

北郷「もぉおおおおおお!!!!ななが不吉な事言うからぁああああああ!!!!」

 

 

 

北郷は頭を抱えて天を仰ぎ、号泣しながら叫んだ。

 

 

 

高順「ええ!?わ、私のせいですか!?」

 

 

 

高順は北郷のあまりにも理不尽にもかかわらず、なぜかそうかもと思えてしまう言いがかりに狼狽えている。

 

一方魏延はというと・・・。

 

 

 

魏延「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・殴る」

 

 

 

しばらくうつむいて黙っていたのだが、一言そう告げると、回れ右して馬にも乗らず駆けだした。

 

 

 

北郷「ちょ!?早まるな焔耶!!なな!焔耶を止めてくれ!!」

 

 

 

北郷は自身の足では魏延に追いつけないことは重々承知していたため、何とか仲間の凶行を阻止すべく高順に助けを求めた。

 

 

 

―――が、しかし・・・。

 

 

 

高順「・・・いえ、あの赤毛の子供には、一度大きな刺激でも受けてもらった方があの子の頭の為にも良いでしょう・・・」

 

 

 

高順の瞳は本気モード顔負けの冷たいまなざしになっている。

 

 

 

北郷「ちょっと那々那さん!?怖い怖い怖い!瞳の色が氷点下!?陥陣営モードMAXじゃないっスか!落ち着いて考えてくださいよ!

 

焔耶の一撃は確実に頭粉砕ですよ!?頭良くなるとかそういう次元じゃないですよ!?」

 

 

 

しかし、完全に機嫌を損ねた高順は聞く耳持たぬといったように、フッと短くため息をついただけであった。

 

そうしている内にも、魏延はどんどん走り去っていく。

 

 

 

北郷(どうする・・・落ち着け北郷一刀・・・!何か、何かこの絶体絶命のピンチを脱する革命的策は・・・!)

 

 

 

北郷は、場違いなまでの真剣な表情で、これまた今まででも最高なのではと思えるほど思考を高速回転させている。

 

 

 

北郷(まずはなんとしても焔耶の怒りを鎮めないと・・・焔耶が怒っているのはあの子の言ったことが悉く外れているから・・・今回も

 

ようやく見つけた庵が結局誰もいない廃墟だったから焔耶は怒っている――――ん?待てよ、確かに誰もいないけど・・・それってただ

 

留守って可能性もあるよな・・・さっきはななの言葉に影響されて勢いとノリで廃墟だって決めつけちゃったけど・・・留守か・・・・・・

 

・・・・・・・・・ッ!!!!)

 

 

 

その刹那、北郷に電流走る。

 

 

 

北郷「そうか!!!これはフラグだ!!!」

 

 

 

その北郷の突然の叫びに、聞きなれない単語だったことも影響したのか、魏延が何事かと走るのをやめてこちらを振り向いた。

 

 

 

魏延「ふらぐ?」

 

北郷「これは間違いなく、三顧の礼のフラグだよ!!」

 

高順「何なのですか?そのふらぐというのは?」

 

 

北郷「えーと、漢字だと条件っていう感じかな。ほら、この前朝議の時に、オレの世界では、諸葛亮を口説き落とすために君主が三回も

 

足を運んだって言っただろ?実は、あれは別に最初と二回目は断られたわけじゃなくて、諸葛亮が最初と二回目は留守だったから三回も

 

訪れたっていうことなんだ。だから、今回諸葛亮に会えないのもきっと三顧の礼の前触れに違いない!あの子の情報は正しかったんだよ!」

 

 

高順「そういえば、よく見るとこの庵は別に廃墟というほどボロボロではありませんね。一刀様が最初に廃墟と決めつけてしまったこと

 

に引きずられてしまいましたが、普通留守と考える方が自然なのでは?」

 

 

 

高順はジトーッと北郷を見てきた。

 

北郷は口笛を吹きながら視線をそらして回避。

 

 

 

魏延「では、また別の日に改めてここを訪れれば、諸葛亮に会えるということだな?」

 

 

 

魏延は落ち着きを取り戻して二人の元に戻ってきた。

 

 

 

北郷「ああ、だから帰るのが少し遅れちゃうけど、あと二回ここを訪れればきっと諸葛亮に会えるはずだよ!」

 

 

 

そして、明日再びここを訪れることに決めた三人は、一度宿のある大きな町まで戻り、そこで一夜を明かした。

 

 

 

 

 

 

翌日、軽い朝食を済ませた三人は再び諸葛亮がいるとされる庵にやって来ていた。

 

 

 

魏延「だが、予定では今日も諸葛亮は留守のはずなんだろう?だったらわざわざ来なくとも、明日まで待てばよかったんじゃないか?」

 

 

北郷「いや、たぶん三顧の礼は三日目に訪れるんじゃなくて、三回訪れることに意味があるはずなんだ。だからいないと分かってても、

 

今日ここを訪れることにはとても重要な意味があるはずだよ」

 

 

高順「では、一応挨拶もしますか?」

 

北郷「うん、一応しておくか」

 

 

 

そうして、北郷は昨日と同じように来訪の挨拶をした。

 

 

 

北郷「ごめんくださーーーい!」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

やはりというか予定通りというか、昨日同様一切反応はなかった。

 

 

 

北郷「よし、予定通りだ。あとはまた明日―――」

 

 

 

―――しかし・・・

 

 

 

??「はぁーーーい」

 

 

 

中から女性と思しき声の反応があった。

 

 

 

【第三十八回 第三章A:臥竜鳳雛捜索編②・探せ!孔明の庵 終】

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

 

第三十八回終了しましたがいかがだったでしょうか?

 

今回は今までの本編と違い、どちらかというと拠点とかのノリに近い、少し緩い感じに仕上がったかなと思っております。

 

たまにはこんな本編もありですよね?

 

そして謎の赤毛少女。そうです。こんなに詳しく容姿の説明がなされていることから、名のある人物と推測されます。

 

わわわ!?・・・はたして誰なんでしょうか。

 

そして庵の中から出てきた人物とは、、、!

 

隔週ペースになってますますスローペースに拍車がかかった印象ですが、

 

次回も気長にお待ちいただければと思います。

 

 

それではまた次回お会いしましょう!

 

 

 

諸葛亮や鳳統がゲームで見つからないのは経験に基づく実話。バグってるとしか思えないくらい見つからない。解せぬ、、、

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
29
2

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択