No.659712 ランドシン伝記 第12話2014-02-02 01:09:31 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:385 閲覧ユーザー数:385 |
第12話 ツリー・フォート
大木は-さらにヴィルとファントムのもとに近づいて来て、
そして、止まった。
ファントム「チィッ・・・・・・ツリー・フォートか・・・・・・」
と、ファントムは忌々しげに呟(つぶや)くのだった。
そこには、大木の形をした何かがおり、ファントム達を
覗きこんでいた。
その大木のような何か-は明らかに意思を持っており、
その顔にあたる部分は、さながらヒゲの生えた老人の
ようにも見えた。
ヴィル「テ・テヒシ、来てくれたのかッ・・・・・・」
と、ヴィルは-その歩く大木-テヒシに対し言った。
テヒシ『久しいな、ヴィルよ。して、何やら苦戦しておるよう
じゃが?』
ヴィル「ああ。助けてくれないか?」
テヒシ『よかろう。お主には恩もある。さらに、猫の王、
ケット・シーよりの頼みでもある。加勢しようぞ』
との歩く大木-テヒシは言うのであった。
それに対し、ファントムは笑い出した。
ファントム「おいおい、おいおいおいッ!こりゃあ、すごい。
まさか、あの気むずかしいツリー・フォートが
人間に協力するか?ハハッ、面白い。面白く
なってきた」
テヒシ『若造よ・・・・・・。痛い思いをしたくなくば、今すぐ
森を去れ。我々、ツリー・フォートは元来、争い
を嫌う。どうじゃ?』
ファントム「ハッ、争いこそが、僕の道なんでね」
テヒシ『・・・・・・いたしかた-あるまい。やるぞ、ヴィルよ』
ヴィル「ああ・・・・・・」
そう言って、ヴィルは剣を構えた。
ファントム「ハッ、こりゃあ、本気、出さねーとなぁッ!」
すると、ファントムは魔石を取りだし、体内に埋めこんだ。
それと共にファントムの周囲から、異様な魔力が-ほとばしった。
ファントム「さぁ・・・・・・。始めよう・・・・・・」
そして、ファントムは詠唱無しで、炎の中規模-魔法を放った。
それと共に、森は焼けていくのだった。
テヒシ『愚かモノがッッッ!』
そう叫び、テヒシは巨大な拳を振り下ろした。
しかし、ファントムは-その拳を器用に避け、逆に、猛毒の
剣を突き立てた。
その横からヴィルは渾身の一撃を放つも、ファントムは
大きく跳んで避けるのだった。
テヒシ『・・・・・・毒か』
と、テヒシが呟(つぶや)くと、その傷口から樹液が出て、毒を流し出した。
ファントム「ハハッ、そうだった。ツリー・フォートには、
毒は効かないんだったなぁ。ハハッ。こりゃあ、
楽しくなって来たよッ!」
そう叫び、ファントムは燃える森の中、魔力を高めるのだった。
・・・・・・・・・・
一方、トゥセ達は依然(いぜん)、危機的な状況にあった。
少女アリスの黒い波動が、トゥセ達を襲っていた。
トゥセ達は今の所、結界で守られていたが、それにはヒビ
が入り、いつ壊れても-おかしく無い状況だった。
カシム「ッ、後、五分と保ちませんッ!」
と、叫ぶのだった。
すると、トゥセは-ため息を吐いた。
トゥセ「・・・・・・俺に考えが-ある。カシム、結界を縦に伸ばして
くれ」
カシム「わ、分かりました。ですが、そうすると、魔力の消費が
激しくなり、後、数分で結界は壊れますッ!」
トゥセ「十分(じゅうぶん)だ」
そして、カシムと茶猫のケシャは、結界を縦に伸ばし、
かなり上方の部分まで波動を防いだ。
アーゼ「トゥセ、何を考えてるッ?」
トゥセ「アーゼ、俺を上空に垂直に飛ばしてくれ」
アーゼ「分かった。じゃあ、俺の手に乗れ」
そして、トゥセがアーゼの手の上に乗り、アーゼは-腕を
思い切り上げ、トゥセを上空に放った。
トゥセは波動と結界の外へと跳んだ。
そして、上空から少女アリスを確認し、再び、結界の中へと
戻って行った。
アーゼ「お、おいッ!今、何かしたのか?」
トゥセ「いいから、もう一度、投げてくれ」
アーゼ「分かったッ」
そして、アーゼは言われるがままに、トゥセを上空へと
放った。
しかし、トゥセは再び、落ちてくるだけだった。
アーゼ「おいッ!トゥセッ!何やってんだッ!」
トゥセ「・・・・・・もう一回やってくれ」
と、トゥセは答えるだけだった。
その様子を上空からハンター達は見ていた。
包帯「何やってんだ、あいつら?」
と、包帯の男は首をかしげ、言った。
獣使い「まさか・・・・・・マズイッ!あのダーク・エルフを
止めないとッ!」
そして、獣使いのエルフは大ガラスに命(めい)じて、トゥセ達の
所へと向かおうとした。
しかし、その時、石つぶてが森から飛んできて、大ガラスの
羽に命中した。
そして、大ガラスは-よろめき、ハンター達も成すすべも無く
あらぬ方向へ落ちていくのだった。
一方、トゥセは何もしないで、再び、落ちてきた。
カシム「トゥセさんッ!あと、一分以内で何とかしてくださいッ!」
と、カシムは悲痛な声をあげた。
トゥセ「やれやれ、はぁ、女の子を傷つけるのは-しのびなくて
よぅ」
アーゼ「何、フェミ気取ってんだよッ!早く-やってくれッ!」
トゥセ「分かった。もう一度、放ってくれ」
アーゼ「ああ」
そして、アーゼは急ぎ、トゥセを上空に放った。
トゥセはタイミングを計っていた。
丁度、重力により、速度がゼロになる瞬間、つまり、空中に
完全に浮いている一瞬を求めていた。
トゥセは今、世界をスロー・モーションのように感じていた。
トゥセ(まぁ、仕方ねぇよな・・・・・・。俺も死にたくねぇし。
それに、こっちにもゴブリンとはいえ、女の子が
居るワケだしな・・・・・・)
と、凍れる時の中、緩(ゆる)やかに上昇しながら思うのだった。
そして、その瞬間が来た。
今、トゥセは完全に空に静止していた。
トゥセの瞳は完全に、少女アリスの脳天を捕らえていた。
トゥセ(悪いな)
次の瞬間、トゥセの渾身(こんしん)の一撃が放たれた。
カードは上空から、少女アリスめがけて降り注ぎ、黒い波動を貫き進んだ。
そして、少女アリスの脳天にカードが突き刺さった。
一方で、あまりにも、その一瞬に-かけすぎたため、トゥセは空中で
体勢を崩し、落ちてきた。
それをアーゼは受け止めた。
アーゼ「やったのかッ?」
トゥセ「わ、分からねぇ・・・・・・」
カシム「いえ・・・・・・波動が弱くなって来ました・・・・・・」
と、カシムは言った。
カシム(しかし・・・・・・トゥセさんが、カードを放った瞬間、
背筋が凍った・・・・・・。トゥセさん。このヒトは、むら
が-あるが、最高潮の時の実力は神業(かみわざ)に達している)
と、体を身震いさせ、思うのだった。
その頃、少女アリスは-よろけていた。
アリス「あ・・・・・・れ?何、これ・・・・・・。頭、何か、刺さってる。
取ろう・・・・・・」
そして、アリスはカードを取ろうとするも、上手く取れなかった。
アリス「う・・・・・・うぁ・・・・・・。痛くないけど・・・・・・むかつく」
そして、アリスは-ぶつぶつと言い出した。
アリス「あぁ・・・・・・お腹、お腹、減った。魂を食べたいよぅ。
魂、とっても、おいしいから。あぁ、あぁ、おいしか
ったなぁ、パパとママの魂。おいしかったなぁ。
いっぱい、食べて、大きくならないと・・・・・・。
大きくなって、パパとママに褒(ほ)めてもらおうっと」
と、呟(つぶや)き、笑い出すのだった。
カシム「・・・・・・少女の波動が解けました」
トゥセ「おっしゃッ!今の内(うち)に逃げようぜッ!」
すると、地響きが鳴り、大木がトゥセ達に近づいて来た。
そして、木人(きびと)、フォーク・ツリーが一人、やって来た。
アーゼ「こ、これって。団長の言ってた」
木人「急ぎ、乗れッ!」
そう言って、その若い木人はトゥセ達を-その大きな手の平の上に乗せた。
すると、少女アリスの笑い声が止まった。
アリス『こちそう、いっぱい。逃げちゃ駄目。今日は、お野菜も-たっぷりなの』
と言い、大規模-魔法を展開した。
そして、トゥセ達に対し、巨大な重力場が発生し、引きずり
こもうとした。
アリス『アハハ、アハハハ、こっち、こっちだよ。こっちに
おいでッ!アハハハハハッ!』
と、アリスは笑いながら、クルクルと回り-踊るのだった。
木人「ヌゥ・・・・・・」
トゥセ達を乗せた木人は必死に地面に根を張り、重力場から
逃れようとしたが、それでも、少しずつ吸い込まれそうに-なっていた。
アーゼ達も必死に木人の手に掴(つか)まり、吸い込まれないように
していた。
アーゼ「まずいッ!トゥセ、何とか、ならないのかッ!」
トゥセ「ん・・・・・・あぁ・・・・・・」
と、トゥセは気のない返事をした。
カシム「カードを放っても吸い込まれてしまいますよ、恐らく」
トゥセ「ん、ああ。そうだな・・・・・・」
と、トゥセは-ぼんやりとしながら答えた。
アーゼ「トゥセッ!お、お前、この危機的な状況を理解して
いないのかッ?」
トゥセ「え?だって、もう、勝負、ついてね?」
アーゼ「へ?」
トゥセ「しゃあ無い。魔力も落ち着いたし、やるか。アーゼ。
俺の体、支えていてくれ」
アーゼ「あ、ああ」
そして、アーゼはトゥセを片手でつかみ、支えた。
トゥセは重力場を正面から見据(みす)えた。
トゥセ「まぁ・・・・・・仕方ない事もある」
そう言って、トゥセは指を鳴らした。
次の瞬間、少女アリスの頭に刺さっていたカードが-爆発した。
そして、アリスの魔法は解け、重力場は消滅した。
アリス「ッ!」
しかし、アリスは再び、魔法を発動しようとした。
トゥセ「遅いぜ・・・・・・」
と、悲しげに呟(つぶや)き、トッセはカードを数枚、アリスに
向けて投げた。
それは再び、アリスの体に突き刺さり、爆発していった。
煙が晴れると、アリスは両膝(りょうひざ)を地面に着いていた。
アリス「あ・・・・・・れ?変だな。詠唱・・・・・・出来ない」
と、アリスは-ぶつぶつと呟(つぶや)いていた。
すると、ハンター達がアリスの周りを囲うように現れた。
包帯「チッ、奴ら、ぶっ殺すッ!」
と、包帯の男は激昂(げっこう)しながら叫んだ。
獣使い「アリスさん、大丈夫ですか?」
と、獣使いのエルフはアリスに尋ねた。
アリス「え?全然、平気だよ。むしろ、長年の頭痛が取れた
感じ」
獣使い「そ、そうですか・・・・・・」
と、獣使いは困った風に答えた。
獣使い「コホン、さて・・・・・・。反逆者の皆さん。ファントム
さん-は、ああ-おっしゃってましたが、私としては
無駄な殺生は避(さ)けたいモノと、思っています。
そこで、どうでしょう。次の条件を飲んでくだされ
ば、この場を引く事を約束しましょう」
トゥセ「な、なんだよ・・・・・・」
獣使い「あぁ、その前に、私の名前はクエルト。こっちの
包帯の男はサギオス。私達はギルド、デスゲイズの
幹部(かんぶ)です。他にも幹部は居ますが、今日は別の所で
お仕事中でして」
トゥセ「いいから、要点を話しやがれッ!」
とのトゥセの言葉に、クエルトは微笑(ほほえ)み、口を開いた。
クエルト「ええ。一つは、そのゴブリンを私達に引き渡す事。
これは絶対です。そして、もう一つ。それは、
ダーク・エルフのカード使いさん、あなた-です」
トゥセ「お、俺?」
クエルト「ええ。私は-あなたが欲しい。あなたの-その才能、
そんなギルドの中では、磨(みが)かれる事なく、終わって
しまう。もったいない-とは思いませんか?」
とのクエルトの言葉に、トゥセは-あぜんとするのだった。
トゥセ「な、何言ってんだ、お前?」
クエルト「私は本気です。さぁ、どうでしょう。
カード使い-さん」
と言って、クエルトはトゥセに対し、手を差し出すのだった。
・・・・・・・・・・
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
木人(きびと)のツリー・フォートの助けが
来たもののヴィル達は依然、危機的な状況に
あった。
そんな中、トゥセは意外な才能を発揮し、
状況を好転させるのだった。