No.659458 ランドシン伝記 第11話2014-02-01 13:14:49 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:303 閲覧ユーザー数:303 |
第11話 古(いにしえ)の森
いよいよ、ヴィル達は猫の国を旅立つ事となった。
ケット・シー「古の森には使者を送っておいたよ」
ヴィル「ありがとう-ございます。何から何まで、お世話になりました」
と言って、ヴィルは頭を下げた。
ケット・シー「・・・・・・ヴィル。気を付けるんだよ。
外にはハンター達が-うろついている。
彼らは並のハンターじゃ無い。
君達ですら勝てるか-どうか」
ヴィル「戦うつもりは-ありません。俺達は、ただ、
レククちゃんを島に返して-あげたいだけ
ですから」
ケット・シー「そうかい・・・・・・。ヴィル、そして、
ヒヨコ豆-団の諸君、さらに、
レクク達よ。無事を祈っているよ」
ヴィル「ありがとう-ございます」
そして、ヴィル達は扉をくぐり外の世界へと戻って
いくのだった。
すると、茶猫がヒト型に変化し、ケット・シーの隣に
立った。
茶猫「陛下・・・・・・。私も彼ら-に付いていきたく存じます」
ケット・シー「ケシャ。君の力は-この猫の国には必要だよ。
君を長期間-外に出すワケには行かない。
残念だけどね」
茶猫「はい・・・・・・」
ケット・シー「大丈夫だよ。彼ら-なら、きっと・・・・・・?」
すると、ケット・シーは目の前が歪むのを感じた。
茶猫「陛下?」
ケット・シーの意識は幻想的な空間に包まれていた。
そこは記憶の空間だった。
そこでは幼いケット・シーが銀髪の女性に抱きかかえ
られていた。
女性「ケット・・・・・・。私に万一の事が-あったら、東へ
逃げなさい。東には-あなた達の故郷が有ると言うわ。
そこなら、きっと、ここよりも安全な暮らしが出来る
ハズよ」
ケット「シャーリア・・・・・・。やだよ。僕、シャーリアと一緒に
居たいよ」
と、幼いケット・シーは半泣きで女性に言うのだった。
シャーリア「そうね・・・・・・。でも、忘れないで。私に何が
起きても、私の魂は-あなたを見守っているわ。
ケット・・・・・・。愛してるわ」
ケット「うん、僕も・・・・・・」
ケットはシャーリアに甘えるのだった。
血花が咲いた。
人々の悲鳴が-あがった。
黒の女皇帝シャーリアは-悲しげに微笑(ほほえ)み、そして、倒れた。
ケットには何が起きたか分からなかった。
ただ、シャーリアは二度とケットを抱きしめる事は無かった。
ケット・シーの意識は幻想の空間で目を覚ました。
そこには懐(なつ)かしい女性が立っていた。
ケット「シャー・・・・・・リア?」
シャーリア「ケット。久しぶりね。」
ケット「何で?どうして?だって、シャーリアは・・・・・・」
シャーリア「私は死んでいないわ。長い、長い眠りについた
だけ。目覚めの時は近いわ」
ケット「ほ、ほんとなの?」
と、ケット・シーは猫の王らしからぬ口調で、シャーリアに
尋ねた。
シャーリア「ええ。でも、それには-もう少し時間が、かかるの。
だから、ケット。それまで、彼らを助けてあげて。
どうか、あの勇敢なる冒険者-達を助けてあげて。
それが、私からの-お願い」
すると、シャーリアの姿は薄れていった。
ケット「シャーリアッ?やだよ、消えないでッ!」
シャーリア「大丈夫・・・・・・また、会えるわ・・・・・・。
でも・・・・・・どうか・・・・・・」
そして、シャーリアの姿は消えていった。
ケット・シーは猫の国に意識を戻していた。
茶猫「陛下?」
ケット「・・・・・・ケシャ。ヴィル達の所へ行ってくれ」
茶猫「は、はい。ですが、本当に-よろしいのですか」
ケット「大丈夫。少しの間なら、僕が-この国を守るから。
でも、必ず帰って来て欲しい。必ず」
茶猫「はい。必ずや。ユア・マジェスティ」
と言い、茶猫は胸に手を当て、頭を下げるのだった。
そして、次の瞬間には茶猫は居なくなっていた。
ケット「これで-いいんだよね、シャーリア?」
と、ケット・シーは呟(つぶや)くのだった。
・・・・・・・・・・
ヴィル達は早歩きで進んでいた。
すると、急に茶猫が現れた。
ヴィル「君は・・・・・・」
と、ヴィルは呟(つぶや)いた。
茶猫「ケット・シー陛下よりの命(めい)で参りました、ケシャと
申します。どうか、旅の同行を-お許しください」
と、茶猫ケシャは言うのだった。
ヴィル「ああ。よろしく頼むよ」
そして、今、ヒヨコ豆-団に新たなメンバーが加わったのだった。
・・・・・・・・・・
それから、一日が経過した。
ヴィル達は古(いにしえ)の森へと到達していた。
ヴィル「よし、入ろう」
すると、遠くで少女の絶叫が聞こえた。
さらに、黒い波動がヴィル達を捕らえた。
ヴィル「走れッ!」
そして、ヴィル達は一目散に駆けだした。
カシム「ヴィルさん、駄目ですッ!追いつかれますッ!」
すると、上空から、ハンター達が降ってきた。
今、ヴィル達は完全に囲まれていた。
黒ローブのハンター達は不気味に笑っていた。
それに対し、トゥセやアーゼ達は魔力を高め、いつでも
戦闘に入れるように準備をしていた。
ファントム「やぁやぁ、ヒヨコ豆-団の諸君。やっと、お会い
出来たねぇ」
と言って、ハンターのボスであるファントムは低く笑った。
ヴィル「お前は・・・・・・ファントム。ギルド、デスゲイズの
リーダー」
ファントム「おや、僕の名をご存じで?」
ヴィル「悪名高い-元暗殺ギルドの頭領・・・・・・」
ファントム「そこまで知っているなら話が早い。一応、聞こうか?
抵抗をしなければ、痛み無く殺そう。それは
約束する。さぁ、どうする?」
トゥセ「って、どっち道、殺す気まんまんじゃねぇかッ!」
ファントム「あぁ。その通りだよ、カード使いくん」
と言って、ファントムは口端を上げて、不気味な笑みを
浮かべた。
それに対し、トゥセは気圧(けお)され、後ずさった。
すると、ヴィルは手信号でアーゼ達に意思を伝えた。
アーゼ(団長を囮(おとり)に、俺達が脱出する・・・・・・。クソッ、他に
方法が無いとはいえ、やるせない・・・・・・。団長も、
どうして-いつも自分を犠牲にしようとするんだ。でも、
信じよう。今は、ともかく、命令どおりに-やるだけだ)
と、アーゼは決意を新たにした。
ファントム「さぁさぁ、どうする?」
ヴィル「・・・・・・一つ聞きたい。金で解決できないのか?」
ファントム「おっと、そんな金が-あるのかな?万年、貧乏の
ヒヨコちゃん達に」
とのファントムの挑発にトゥセは一瞬、激昂(げっこう)しかけたが
抑えた。
ヴィル「ある、と言えば-どうする?」
ファントム「フッ、残念だけど、一度-受けた依頼は完遂するのが
プロだろう?フッフッフ。さぁ、おしゃべりは
終わりだ。始めよう」
そして、黒ローブのハンター達は抜刀し出した。
ファントム「かかれ」
そして、黒ローブ達はヴィル達に一斉(いっせい)に襲いかかった。
すると、トゥセは閃光のカードを一気に放った。
ファントム「ははッ、それは効かないさ。ネタが割れてる」
と言って、ファントムは笑った。
見れば、黒ローブ達は、特殊な眼鏡をしており、閃光対策を
施していた。
しかし、次の瞬間、アーゼが次々と黒ローブの男を殴り飛ばし、道を切り開いた。
アーゼ「早くッ!」
そして、アーゼを先頭に、トゥセ達は包囲網から脱出するの
だった。
ファントム「Shitッ!追えッ!」
とのファントムの命令に黒ローブの大半がアーゼ達を追いかけた。
一方で、ヴィルは-その場に残っていた。
ヴィル「失策だったな。一斉に襲ってくれば、その分、包囲網
が狭まる。多数-対-少数では、基本、長引かせて、
少しずつ、少数を削っていくモノさ」
ファントム「ハハッ、そりゃ、ご教授どうもッ!」
そう言って、ファントムは長剣を抜き、ヴィルに斬りかかった。
それをヴィルは剣で受け止めるのだった。
そして、二人は次々と剣技を交(かわ)した。
ただし、ヴィルは剣技のみを使っているのに対し、
ファントムは時折(ときおり)、魔法も織りまぜており、
厄介であった。
ヴィル(こいつ・・・・・・詠唱が早い。一つ一つの威力は大した
事ないが、場慣れしているッ)
と、思いながら、ヴィルは必死にファントムの魔法を弾(はじ)いていった。
ファントム「ハハッ!お楽しみは-これからだッ!
ヒヨコのリーダーさんッ!」
そう言い、ファントムは魔力を高めるのだった。
・・・・・・・・・・
一方で、アーゼ達を追う黒ローブ達は、少しずつ-その数を
減らしていた。
トゥセやアーゼだけで無く、カシムや茶猫のケシャも活躍
しており、次々とハンター達を倒していったのだった。
その様子を上空から、ハンターの幹部達が見ていた。
「おい、やべぇんじゃ無いのか?」
と、包帯を巻いた男が尋ねた。
「なら、そろそろ私達も行きますか」
と、獣使いのエルフが答え、指笛を鳴らした。
すると、彼らを乗せた大ガラスはトゥセ達の所へと、
降り立とうとした。
トゥセは-それを見て、カードを放つも、包帯の男の-かぎ爪
が、それを阻(はば)んだ。
獣使い「アリスさん、アリスさん、起きて下さい。出番ですよ」
そう言って、獣使いのエルフは-アリスの拘束具を全て解除し、
地面に降ろした。
そして、獣使いは大ガラスを上空へと飛ばし、場を離脱した。
今、アリスの人形のような顔は、あらわに-なっていた。
そして、アリスはニッコリとトゥセ達に微笑(ほほえ)んだ。
しかし、段々と、その様子が豹変(ひょうへん)し、アリスの両目から
黒い涙が流れ出した。
トゥセ「やべぇッ!」
カシム「結界を張りますッ!」
茶猫『私も手伝います』
そして、カシムと茶猫ケシャは強力な結界を張った。
アリス『ヒィヤァァァァァッァア!』
との絶叫と共に、強大な黒い波動がトゥセ達を襲った。
カシム「ッッッ!」
カシムは必死に結界を黒い波動を防(ふせ)ごうとするも、
アリスの波動は強力で、結界は今にも砕けそうだった。
包帯「ハハ、こりゃ、案外、楽に終わったかもなぁ」
と、上空で包帯の男は言うのだった。
獣使い「だと、いいのですが・・・・・・」
そして、ハンターの幹部達は-様子を見守るのだった。
・・・・・・・・・・
一方で、ヴィルとファントムは死闘を繰り広げていた。
他のハンター達は、ファントムに加勢しようとしては居たが、
両者の戦いが-あまりにレベルが違い過ぎて、何も出来ずに、
手をこまねいて見ている事しか出来なかった。
両者は傷だらけであるも、剣撃は少しも衰(おとろ)えていなかった。
ファントム「ハハッ、やるねぇッ!」
そう叫び、ファントムは魔法を発動し、氷の刃を降らせた。
しかし、ヴィルは-それらをまともに弾こうとせず、一気に
ファントムに肉薄し、一閃した。
ファントムは-とっさに避けるも、腕に大きな傷を負った。
一方で、ヴィルも、肩などに氷の刃を受けていた。
ファントム「こりゃあ・・・・・・参ったね。予想以上だ。依頼金に
対し、釣り合わなすぎるね・・・・・・」
ヴィル「・・・・・・なら、今からでも引いてくれ」
とのヴィルの言葉に、ファントムは笑った。
ファントム「冗談だろう?だって、僕の勝ちは見えている」
ヴィル「何?」
すると、ヴィルは視界が歪むのを感じた。
ヴィル(これは・・・・・・)
ファントム「おっと、ようやく効いてきたか。そう、毒さ。
僕の剣や魔法には猛毒を付加してある。ハハ、
まぁ、並の人間なら-もっと早く毒が-まわるハズ
だからなぁ。流石(さすが)に元-聖騎士だけは-ある」
ヴィル「クッ・・・・・・」
ヴィルは体をふらつかせながらも剣を構えた。
ファントム「ただ・・・・・・もう少し、楽しませてくれるかと、
思っていたよ。何せ、ドワーフの国では、君は
《巨人殺しのヴィル》とまで呼ばれて居るのだからさぁ」
ヴィル「俺はッ・・・・・・俺だッ!」
そして、ヴィルは魔力を全身に通した。
ファントム「ハハッ、魔力で自分を無理に動かすか。まるで、
操(あやつ)り人形のようだね。まぁ、いいさ、いいさ。
その糸を一本、一本、断ち切ってやるさ」
と言って、ファントムは2本目の剣を抜き、双刀を構えた。
それに対し、ヴィルは苦しげに、顔をしかめた。
その時、地響きがなった。
ファントム「何だ・・・・・・?」
ヴィル「これは・・・・・・まさか・・・・・・」
地響きは強まって来た。
それと共に、大木がヴィルとファントムに近づいて来たのだった。
・・・・・・・・・・
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猫の国を発ち、古の森に到達したヴィル達。
しかし、そこにハンター達の魔の手が迫る
のであった。