砦から下を見下ろすと数千という兵たちが並んでいる。
そういえば、こうして華琳の軍の戦に同行するのは初めてだな。
ということは初陣というわけか。
春蘭「おい、こんなところでなにをしている。」
北条「いや、なんでもない。」
春蘭「ふん!どうせ華琳様の軍に圧倒されてたのだろう!」
いや、実際その通りなのだが何故か腹が立つ。
まったくをもって不思議である。
華琳「あら、二人ともこんなところでなにをしているのかしら?」
向こうから華琳と秋蘭が歩いてきた。
華琳「皇矢には兵糧調達の帳簿を取りに行ってもらうよう頼んだはずなんだけど?」
北条「いっけね、春蘭に話しかけられたせいで忘れてた。いってきまーす!」
春蘭「あ、きさま!私のせいに!!」
後ろで春蘭でなにかを言っているきがするが、あくまで気にするだけ。
ぶった切るとか聞こえるのも聞こえない。
あー聞こえない聞こえない。
そういえば、監督官の顔を知らなかった。
まあ適当な人に聞こうか。
北条「ねぇねぇそこの猫耳。糧食管理の監督官知らない?」
荀彧「だれが猫耳よ!?近づかないで!妊娠する!!」
北条「妊娠はしねぇよ!」
荀彧「するわよ!ホントに近づかないで!空気妊娠する!!」
空気妊娠ってなんだよ!だめだこいつ早くなんとかしないと。
北条「ま、まあそれはどうでもいい。」
荀彧「どうでもよくないわよ!」
北条「糧食管理の監督官どこにいるか知ってるか?」
荀彧「無視するな!なんであんたなんかに教えてないといけないのよ!」
北条「華琳に頼まれてるんですけど。」
荀彧「な、ななななななんであんたなんかが曹操さまの真名を呼んでるのよ!!」
め、めんどくせええええええ!
果てしなくめんどくさい!!
北条「許されたからに決まってるだろ。いいのか?遅れたら怒られるのはお前だぞ?」
荀彧「.....ちっ。そこに置いてあるから勝手に持って行きなさい。」
やれやれ、やっとか。
まあ、怒られるのは俺なんだけどね。
山積みになっている資料から糧食調達の帳簿をみつけ、華琳たちの元へ急ぐ。
北条「ほれ、帳簿だ。」
華琳「ご苦労。」
帳簿を華琳に渡すと、ぱらぱらと読み始めた。
するとみるみる華琳の顔が険しくなっていく。
華琳「皇矢。」
北条「へ、へい。」
華琳「あなたこれはみたのかしら?」
北条「い、いやみてないけど。」
華琳「そう、秋蘭。監督官を呼びなさい。」
秋蘭「はっ。」
北条「おいおい、どうしたんだよ一体。」
華琳が不機嫌なのはいつものことだが今回は特に怒っているようにみえる。
華琳「............」
スルーですか、そうですか。
しばらくすると、秋蘭がさっきの猫耳を連れてきた。
華琳「あなたが糧食管理の監督官かしら?」
荀彧「はい。」
華琳「名を名乗りなさい。」
荀彧「姓を荀 名を彧 字を文若と申します。」
すっごい緊張感。
華琳の後ろには春蘭が控えていて、なにかったら斬ってやる気が満ちている。
華琳「そう、荀文若。あなた私が決めた糧食の量の半分も用意していないようだけどどういうことかしら?」
なっ!?この猫耳そんなことしてたのか!そら怒るわけだ。
華琳は慎重な奴だからな、こういうのは好かない。
いや、最も華琳じゃなくても怒るとは思うが。
荀彧「はい。理由は三つあるのですが、よろしいでしょうか?」
華琳「言ってごらんなさい。」
荀彧「ご納得頂かねば、この場で我が首刎ねて頂いても結構でございます。」
華琳「......二言はないわよ」
荀彧「それでは説明に入らせて頂きます。まず一つ目。曹操様は慎重なお方ゆえ一度は帳簿を確認するはず。そして問題があればこうして責任者を呼ぶはず。行き倒れにはなりません。」
華琳「な....!馬鹿にしているの!?春蘭!!」
春蘭「はっ!」
春蘭が返事すると剣を構えいまにもその剣を振り下ろさんとしている。
やばいほんとにきるきか!?
秋蘭「華琳様!お待ちください!この者は三つともうしました。ここできっては約束を違えることになるかと....」
華琳「それもそうね続けなさい。」
うっはぁさすが秋蘭、こんなときほんとに頼りになる。
荀彧「はっ。二つ目は、糧食が少なければ身軽になり、輸送部隊の行軍速度が上がります。それによって討伐全体にかかる時間を大幅に短縮できるでしょう。」
華琳「糧食が多少軽くなったとはいえ、戦闘や休息の時間まで減らないでしょう。まあ、いいわ最後の理由説明してごらんなさい。」
荀彧「はっ。私の立案する作戦をとって頂ければ戦闘の時間を大幅に短縮できます。よって、この糧食の量で十分と判断いたしました。」
荀彧「曹操様!どうかこの荀彧めを、あなたを勝利へと導く軍師として配下にお加えください!!」
秋蘭「なっ....」
春蘭「なんと....」
秋蘭たちが驚くのも無理はない。
俺だって驚いている。
あまりにも図々しい。よく言えば、勇気がある。
荀彧「どうか....どうか曹操様!」
華琳「......あなたの真名は。」
荀彧「桂花にございます。」
華琳「桂花......あなた、この曹孟徳を試したわね。」
桂花「はい。」
春蘭「きさま!よくもいけしゃあしゃあと!!」
北条「まあ、落ち着け春蘭。」
春蘭「皇矢!華琳さまが愚弄されておるのだぞ!」
北条「春蘭の気持ちはよくわかるが、決めていいのは華琳だけ。そうだろう?荀彧。」
荀彧「えぇ、男のくせによくわかってるじゃない。汚らわしい。」
最後のおかしくね!?
褒めてたのに!褒めてたのに!
華琳「あなた軍師の経験は?」
荀彧「以前、南皮で。」
華琳「ふむ.....一応の経験はあるのね。」
荀彧「曹操様!ひと目あなたをみた瞬間、私の全てを捧げるお方と確信しました!私に、天をとる器である曹操様のために力を振るうことをお許しください。」
荀彧「もし、ご不要とあらばこの荀彧生きてこの場を去る気はありません。遠慮なくこの場でお斬り捨てくださいませ!」
華琳が無言で鎌を荀彧の首に当てた。
秋蘭「華琳様....!皇矢からもなんとか言ってくれ。」
北条「大丈夫さ。」
大丈夫ってと秋蘭は呟くが、俺には確信がある。大丈夫さ。
こんなところで荀彧を殺すほど華琳の器は小さくない。
華琳「私は他人に試されることがだいきらいなの。知ってたかしら?」
荀彧「はっ...そこをあえて試させて頂きました。」
華琳「ならばこうすることもあなたの手の平の上ということね?」
そういうと華琳は鎌を荀彧むけて振り上げた。
だが、鎌は荀彧にあたる直前で止められた。
華琳「桂花、もし私が本当に当てていたらだうするつもりだった?」
荀彧「それを天命と受け入れていました。曹操様に看取られるというのなら、それを誇りとすれ恨むことはございませぬ。」
しばらく沈黙の時が流れる。
この沈黙のときを破ったのは華琳だった。
華琳「ふふ....あはははは!」
春蘭「か、華琳さま?」
まるで新しいおもちゃを買ってもらった子供のように笑う。
やれやれ、これが人材コレクター曹孟徳か。
女だろうが男だろうが変わらんな。
華琳「最高よ桂花。この私を二度も試す度胸とその智謀、気に入ったわ。あなたの才、私が天下をとるために存分に使わせてもらうことにする。」
桂花「はっ!」
華琳「まずはこの討伐を成功させてもらうわよ。糧食は半分で良いと言ったのだからわとし不足したら、その身をもって償ってもらうから覚悟しなさい。」
桂花「御意!」
そう言う荀彧がどこかうれしそうに見えたのは気のせいであってくれ。
華琳「それとここにいる三人にも真名を預けるように。」
桂花「そんな!古参の二人はともかく、こんな猿にまで!」
華琳「いいわね?」
桂花「......わかりました。」
おう失敬だぞ。
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part5です。
桂花登場。毒のあるキャラでツン:デレ比が10:0のキャラですが
少しでれさせれたらいいなぁとかかんがえてます