No.657949 とある傭兵と戦闘機 (IS編第一話) 戻って説明どうしよう?雪下 夾矢さん 2014-01-26 22:56:05 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:3094 閲覧ユーザー数:2978 |
IS学園
職員室にて、千冬はとある封筒内に収められた書類に目を通す
「・・・・・・」
そこには、米軍総司令官直筆のサインと写真が一枚挟まっていた
書類の文章には、円卓の鬼神の経歴、従軍証明書
米国特務航空隊のIDカードの注意事項とIDカード、ドックタグ
そして、現用軍用機を使用するにあたって絶対に必要なFACSの認証キー”FRMK”
これは米国が保有する、叉は同盟国の戦闘機を使う為の一種の”鍵”
いわば自動車のキーの航空機版とも言える
これが無ければ、現用戦闘機の統合戦闘支援システムが起動しない
FACSが正式採用された今、この鍵無しに飛行可能な戦闘機は極めて少ないだろう
「やはり米軍の所属になるのか・・・」
「はい・・・了解しました。・・・織斑先生、打鉄零式の解析が完了しました」
と、正面の机から山田先生が頭を出して報告する
「そうですか。いつもすまないな、山田先生」
「いえいえ。それよりあの機体の解析データを送ります」
ピピッと、パソコンが作動してダウンロードを開始する
「それにしてもフィリアさん・・・どこに行ってしまったんでしょうか?」
山田先生が心配そうな顔をするのも無理は無いだろう
何故ならここ一週間、フィリアは行方不明のままなのだから
零式を私に預けたまま、フィリアは機体と共に姿を消した
色々考えているとダウンロードが完了し、データが自動再生される
「打鉄零式改・・・ステリシットユニット・・・シース・ストラティア」
部分的に思わず呟きたくなるような単語を流し、そして気が付いた
「マヤ、この機体をどう思う?」
「はい・・・正直、目眩が起きそうです
この機体・・・人間に扱えていい機体ではありませんよ・・・」
頭を抱えそうになるのを抑えながら、私はこうも思った
”誰にも扱えない・・・従わない
唯一つの使命に生き、唯一つの使命に息絶える
それはまるでーーー”番犬”の生き様を体現したかのような機体
使命を与えらるのはーーーそれを生んだ者のみ”
零式のあの”意識”を生み出したのは束ではない・・・間違いなくフィリアだ
似たもの同士・・・いや、同一人物なのだろうな
そう考えなければ示しが付かないだろう
そして、通常のIS以上の何かがあの機体に秘められている
だからこそ、あの機体はこの世界に存在している
「さて、久しぶりの休憩だ。山田先生もどうですか?」
クッと手首を捻るジェスチャーをする
「はい、ご一緒させていただきます」
そうして職員室を後にする
さて、途中でアイツの部屋に寄ってみるか
「・・・・・・」
目が覚めたら、私は見覚えのある場所のベットの上に寝ていた
そこから見上げる天井は木製の梁では無く、モダンブラウンの天井に
シンプルな四角い窓のような照明が一つ配置されている
左には大きな展望ガラスがあり、そこからは眩しい日差しが差し込んでいた
ここはーーー私の部屋
IS学園という鳥篭の中にある、私の巣箱だ
その部屋のベットで、私は仰向けになって寝ていた
服は、IS学園指定の制服で
そして・・・私の腕の中には、フィアが私の懐で寝息を立てていた
「そっか・・・戻ってきたんだね」
そう思って、ホッと溜息を付いた
コンコン
部屋の扉がノックを受ける
目が覚めたばかりだからか、少し足元がおぼつかない
でも、流石に来客を待たせるのは気が引ける
そう思いながら、私はドアを開けた
「っ!?居たのか!!」
「え・・・えぇ」
ここに来て鬼教官こと織斑先生か・・・
しかも滅茶苦茶警戒してるし・・・
「戻ってきていたのなら連絡の一つくらい入れろ
お前に関する緊急事項がある。少し話しをいいか?」
・・・大変、マズイ事になったかもしれない
今部屋に先生を入れると、必然的にフィアの事がばれてしまう
そうなれば、私は正体不明の質問で必然的に蜂の巣にされちゃう
「えっと・・・ちょっと用事がありまーーー」
何とか、私はこの場を切り抜けようと必死に足掻いていた
しかし・・・現実は甘くなかった
ドテっ
「うえぇぇん!!」
部屋の奥から何かが床に落ちる音と泣き声が聞こえた
ってあぁぁぁぁぁ!?
「何だ?、誰かいるのか?」
織斑先生がそれに気が付いてしまった
マズい!!非常にマズい!!
「い、居ません!!誰も居ません!!」
勢いよくドアを閉めて鍵をかける
とりあえず部屋に戻ってフィアを確認する
「どうしたの?」
「ベットから落ちましたぁ~」
頭を痛そうに抱えている
「ほら、こっちにおいで」
よたよた歩いてくるフィアは、相変わらず本当に戦闘機なのか疑わしい事この上ない
「ほらほら、泣かない泣かない。痛くない痛くない」
抱きしめながら頭をさすってあげる
「ぐすっ・・・ありがとうございます・・・お母さん・・・」
うん、戦闘機とは思えない・・・かわいいなぁもう
ガチャ
「いきなり何をするん・・・だ・・・」
織斑先生が部屋に突入をかけてきた。そして止まった
その手にはカードキーが握られていた。マスターキーやっぱり管理されてるんですね
あ、因みに今の状況
・唖然と硬直する織斑先生
・どうやって誤魔化そうかと必死で考える私
・「・・・?」と頭の上でクエスチョンマークを浮かべているイーグル
誰か状況の整理をお願いします・・・ってもう整理ついてるね
思ったより私は窮地に対しての思考体勢が整ってるみたいだ
「・・・その娘はどうした?」
やや警戒気味の織斑先生はフィアに敵意に似た物を向けていた
「・・・・(ヒシっ)」
私に涙目でしがみつくフィア
「いや・・・その・・・」
返答に悩んでいると、フィアが
「お母さんを困らせないでっ」
と、幼き犬の如き睨みをきかせて織斑先生を威嚇する
もちろん、鬼も黙る織斑先生には全くといって効果なし
「お母・・・さん・・・?」
マズイ、織斑先生の頭がショートしかけてる
自分の頬をつねっているあたりがとっても新鮮な光景だ
「とにかく落ち着いて落ち着いて!!」
早速処刑ターイムな神の予感~
「・・・で、この子はどうしたんだ?」
「ま、まあ・・・私の娘です・・・」
スヤスヤと寝息を立てながら、イーグルは私のベットで寝ている
ゴッ
そしてこの拳骨です・・・痛い
多分チョップだと拳骨より音が出てイーグル起こしちゃうからという配慮なのだろう
はい、私には非常に優しくない配慮です・・・
「次に嘘を付いたら私の組み手の相手になってもらうからな」
「ハイスミマセンデシタ」
イチがバチかで嘘・・・なのかよくわからない嘘を付いてみたが
この人に嘘は通じないみたいだ
「で、どうなんだ」
「それがですね・・・この娘、私の機体みたいなんです」
とりあえず、魔法力の事は伏せて説明する
まあ信じてくれればいいが
「ほう・・・確かに信じられんな」
「まあ、別に信じてもらわなくて結構ですけど・・・事実、ハンガーにある私の機体が無くなってますから」
「待て、お前機体がないのならどうする気だ?」
「何がです?」
「一週間前に連絡が来た、米軍への機体引渡しは」
「それについてはラリーに話を済ませてます」
「米軍総司令か。それにしても、今年はイレギュラーが多すぎる」
織斑先生が頭を押さえながらため息を付く
この動作を私は何回見た事か数え切れない
ちなみに上官がため息を付く動作の事ね
「とにかく、お前が絶対に育児放棄をしないと言うのなら寮での生活を保障しよう」
「え、ホントですか?」
あっさり、本当にあっさりと先生は許可をくれた
ただその時の先生の顔が曇ったのは見間違いなのか
「絶対に、だぞ」
強く、そして有無を言わせない視線で私を睨む
「もちろんです。ありがとうございます」
頭を下げ、深々と礼をする
本当に、織斑先生には迷惑かけっぱなしだなぁ・・・私は
「あ、お茶出します」
「おう、すまんな」
購買で買った茶葉を出す
淹れ方に関しては、由来やら説明やら一時間近くセシリアに聞かされたというのは記憶に新しい
「・・・よし、そろそろ頃合かな?」
お茶が出た所で、あらかじめ暖めておいたポットに茶葉をこしながら入れる
普段はコーヒー派だが、たまにはこういうお茶も悪くはない
「どうぞ」
カップを出し、それにゆっくりとお茶を注ぐ
「ほう、手馴れてるな」
「いえいえ、セシリアに叩き込まれましたので」
一時間近く(ry
まあ、覚えてて損はないだろうけどね
紅茶の入ったカップを織斑先生の前に出す
「どうぞ」
淹れるのは今回が初めてだけど・・・
「・・・美味いな」
どうやら紅茶は織斑先生のお口に適ったみたいだ
コンコンッ
ドアをノックする音が聞こえた
「は~い、今出ま~す」
腰を上げ、玄関に行ってドアを開ける
「おはようございます、お久しぶりですフェイリールドさん」
お客さんは、山田先生だった
「おはようございます。どうしたんですか?」
「いえ、織斑先生がフェイリールドさんの部屋に用があると言っておられたので、こちらにお伺いしたのですが」
「ああ、今お茶を出している所だったんですよ。山田先生もどうです?」
「いいんですか?では私もいただきます」
にっこり、今日ものんびりした雰囲気を纏っている
とりあえず、部屋に上げてテーブルに座ってもらう
お茶は作ったばっかりだから、まだ十分に暖かい
「今出しますね」
カップをもうひとつ出して、それにお茶を注ぐ
ソーサーにカップを乗せて山田先生の前に置く
「いただきます・・・。美味しいですね~、本格的な茶葉を使ってるんですか?」
「いえ、茶葉自体は購買で買った安いものです」
「は~・・・あれは私も飲んでますが、淹れ方次第でここまで香りが出るものなんですね~」
というちょっとした話をする
「ところで、山田先生はどうしたんですか?」
「あ、そうでした。織斑先生に緊急の知らせがありまして・・・」
「第三小型航空機用ハンガーの機体の事だろう?」
第三小型ハンガー、私の機体が置いてあった場所だ・・・あっ
「お、織斑先生!?これは機密事項ですので生徒の前ではーーー」
「心配するな山田先生。あの機体の所有者はフェイリールドだ」
「・・・へ?」
言っちゃったよ・・・この人
「はい。私があのF-15Cの所有者です」
もういいや、と思って話した
「え、えぇぇぇぇ!?という事はパイロットはーーー」
「はい、私です」
と、ここで状況をもう一度整理してみよう
・今、山田先生の頭は混乱状態
・今、その機体ことイーグルは私のベットで寝ている
・今、その事を山田先生に話すと山田先生の頭の中はどうなるか?
イコール・・・処理落ち&クラッシュで墜落死不可避
「山田先生、とりあえず機体は米軍に既に引き渡し終えたようですので」
織斑先生がナイスフォロー
「あ、そうなんですか。いきなり機体が消えているから驚いてしまいました」
まあ、嘘なんですけどね
「では私達はこの辺で戻るとしようか、山田先生」
「はい、そうですね」
「あ、玄関まで送ります」
私達三人が同時に腰を上げた・・・のがまずかった
「・・・う~ん・・・ムニャムニャ・・・」
私達が立った時の音で、ベットで寝ているイーグルが起きてしまった
「あれ?確かフェイリールドさんは一人部屋でしたよね?」
しまった!!と、織斑先生と顔を合わせるがもう遅い
「う~・・・うにゅ・・・」
ベットから上半身を起こして、イーグルが目を擦る
完全に、山田先生の知らない少女が視界に入る
「・・・お母さん・・・この人はだれ?」
ベットから降りたイーグルが私の制服の裾を引っ張る
「おっ・・・おかっ・・・お母さん!?」
山田先生が、イーグルと私を交互に見る
仕方ない、止めを刺そうか
「山田先生」
「は、はい、フェイリールドさん?これはどういうーーー」
「私の娘です」
イーグルをかかえながらそう答える
イーグルは八歳の子供ぐらいの重さと身長の為、どちらかと言えば妹に見えそうだけど
「・・・きゅう」
バタッといい音を立てて山田先生が倒れる
結局処理落ちは免れなかったですね山田先生
「お前・・・存外に鬼畜だな」
「それを言う前に織斑先生はその手刀を収めて下さい」
あのまま行けば山田先生がその手刀を食らう羽目になったんだろうと思うと
山田先生にとってはいい選択だったと心から思いたい所だ
「それでは、向こうの方にはお前から連絡と説明をしてくれ」
織斑先生は倒れた山田先生を抱えて部屋を出て行った
「はぁ~、これからどうしよう・・・」
前途多難だ・・・
「?」
心配そうな目で私を見つめるイーグル
「大丈夫、心配しないで?」
幸い、この部屋にはキッチンとシャワールームが備えられている
生活するのには困らないはずだ
「うんっ」
イーグルの頭を撫でて、私は心に決める
”守ろう”と
戦争の時に守られてばかりだったから
せめてもの恩返しをしようと
~一週間後~
今日、フィアは織斑先生の部屋に行って色々お勉強をしている
そんな、静かでのんびりとした休日の部屋に携帯端末の着信音が鳴り響いた
「もしもし~」
「あ、フィリア。今日って予定とかあったりする?」
電話をかけてきたのはシャルで、何でも一緒に買い物に行かないかというものだった
「オーケー。それじゃあ着替えてからシャルの部屋に行くね」
「うん。わかった」
通話を切り、部屋のクローゼットを物色して一番マトモな服を引っ張り出す
「えっと・・・フィリア?その服って」
「うん。私が持ってる中で一番マトモな服」
一番マトモな服とは、ラリーが送ってきた私服だ
「ほら、動き易いしここにホルスターがあってーーー」
説明をしていると、何故かシャロはため息をつきながら頭を押さえる
「いや、似合ってるけど学園から拳銃持ち出しちゃダメだからね!?」
「いや、でも問題なーーー」
「ダメ、それなら制服で!!」
何で猛反発されたんだろう?
とりあえず制服に着替えて再びシャロの部屋に戻る
「そう言えば、フィリアって国籍はどこにあるの?」
学園の駅から出ている電車のようなものに乗りながら外を眺めていると、シャロがそんな事を聞いてきた
「う~ん、一応アメリカ国籍だけど・・・生まれはイギリスだからイギリス国籍もあるのかも」
イギリスに居た時の事はほとんど覚えていないけど
「妹よ、質問いいか?」
と、少し警戒気味で質問をしようとするラウラ
「うん。答えられる事ならどうぞ」
「お前は、どうして強い?」
え・・・いきなり答えづらい質問来たんですけど
「う~ん・・・強いって言われても、私は強くないし・・・強くなりたいとは思うけど」
「なら何故、強くなりたいと思う?」
難しい質問するなぁ・・・
「・・・失いたくないから」
考えた末に、私はこう結論を出した
「何もかも力が支配するこの世界で、いろいろな大切な物を守る為に私は強くなりたい」
失った仲間や友人の為にも
もう失うばかりの戦いなんて嫌だから
「そうか・・・やはり兄妹だな」
「だから何でそうなるの?」
もしかして織斑君にも同じ質問をしたのかな
でも彼と同じ答えだったとしても、私と織斑君は違う
生きる道が、全く別の方向だから
「二人とも、そろそろ駅に着くよ」
考えていて時間を忘れていたみたいで
どうやら目的地までもう少しらしい
「とにかく、私は弱いから守り抜くために力が欲しい。これでオーケー?」
「ああ、わかった。これ以上は野暮な質問だな」
と、問答を終えて電車から降りる
駅構内はかなり人が多く、同い年ぐらいの学生や一般市民
老若男女問わず大勢の人で賑わっていた
「(戦争の面影なんて欠片も残ってないなぁ・・・)」
最後に大きな戦争が起きてから十年
人々は平和な生活を当たり前と認識している
でも・・・知らないだけだ
この平和の下に数え切れない程の命が積み重なっている事を
”他の国だから関係ない”
それは無責任な考え方だと思った
今の平和という一つの果実は、何万という人の命を栄養としてできた結果
失われてしまった命はもう戻らない
それでも、残したものは変わらない
今を生きる人には、その平和という繊細な果実を守る義務がある
当事者の私は・・・その使命を持っている
「フィリア?」
「・・・ん、何?」
「いや・・・何か難しい顔してたから。どうかしたの?」
「別に何でもない・・・心配かけた?」
「あ、いや、そんな事ないよ?」
「ごめん、なんでもないから」
最近少し考え込むクセがついたみたいだ
シャロが心配してたみたいだった
いい人だな・・・羨ましい
「それで、これから何を買いに行くのだ?」
「えっとね、とりあえず7階フロアへ向かうよ。その下、6階と5階もレディースだがら順番に見ていこ」
「うん?何故上から見ていくのだ?」
「下からでも別にいいんじゃない?」
「上から下りた方がいいの。ほら、お店の系統を見てもそうでしょ?」
シャロが本を開いてみせてくれる・・・が
「まったくわからん」
「右に同じく」
「~~~っ。あのね、下の方は秋物になってるの。上の方もだいぶ入れ替えてるだろうけど
今セールで夏物も残ってるだろうから、先にそっちをーーー」
それから普通は季節を先取りする物だとかラウラがそれを別の意味で理解したりと
なんとなく説明を聞いていた
二人と別行動を取る事にした私は前に見に行ったお店に足を踏み入れた
「いらっしゃいませ。どんな服をお探しで?」
前とは違う女性店員さんが、手で服を畳みながらやってきた
「私洋服をあまり着た事が無かったので、できれば似合うものを選んで頂けないでしょうか」
「あ、はい!!かしこまりました。すぐにお見立てをしましょう!!」
何故か、やたら嬉しそうに店員さんは服を選びに走って行った
ちなみに、商品の洋服をその場に残して
「これはどうでしょう?」
店員さんが持って来たのは、真っ白一色のワンピースとサンダルのような靴、同じく真っ白な帽子だった
「・・・分かりました」
分かった事
時代関係なく私はワンピースなんだと
試着室に入って着替えをささっとすませる
でもワンピースって着やすくていいなぁ・・・
「どうですか?」
着替えを終え、カーテンをシャッと開けて店員さんに似合っているかどうかを聞いた・・・が
「・・・・・・」
絶賛絶句中です・・・はい
「・・・似合ってないでしょうか?」
すると店員さんはおもむろに携帯電話を取り出して、誰かに連絡をとりはじめた
「はい、今すぐ第二試着室まで来て下さい、今すぐです!!事件は現場で起きているんです!!」
はて?何を言ってるんだろうかこの人は
「あの~・・・」
「少々お待ちください!!カメラを取ってきますから!!」
店員さんはいきなり陸上選手よろしくスピードで走り去った
「はぁ・・・何よ全く、いきなり事件は現場で起きているって・・・え・・・あ・・・」
入れ違いに来た他の店員さんが持っていた携帯端末を落とす・・・何事?
十秒程の沈黙の後、いきなりその人はハッと顔を上げた
「・・・女神は存在したわ!!」
それから何故か写真撮影が始まったのだった・・・なんでこうなったのさ?
「はぁ・・・何で買い物だけでこんなに疲れるんだろう」
少しため息交じりに通路を進んでいく
すれ違う人達からの視線が痛い
そんなに似合ってないのかな?
「あの・・・フィリア?」
後ろから呼ばれて振り向く
呼んだのは、買い物を終えたと思しきシャロとラウラだった
「やっぱりフィリアなんだよね、雰囲気全然違うから声をかけにくかったよ」
「え?そんなに変わってる?」
「うん。その服凄く似合ってるからびっくりしちゃった」
「え?そんなに?」
イマイチよく分からない
そして周囲からの視線が痛い
「あの子・・・凄く綺麗・・・」
「見てるだけで心が洗われるわ・・・」
「白いワンピースの似合う子の破壊力は無限大だわ・・・」
周囲がざわつき始めた・・・正直苦手なんだよねこの雰囲気
「そろそろお昼にしよ?」
シャルがそんな助け舟を出してくれた
「うん。そうだね」
「そうだな、それではさっそく行こう」
こうして私達は少し早めの昼食を取る事になった
・・・おっと、その前に御手洗いに行って服着替えてこよう
このままだと他人の視線で焼け死んじゃう
というわけで場所はオープンテラスのカフェ
私達はここでランチをとっていた
「所で、ラウラはどんな服を買ったの?」
「それは見てのお楽しみだ」
「お、自信アリな感じだね」
「うん、フィリアに引けをとらないほど似合ってたから」
「私なんかと比べないでよ、でも見てみたいな~」
普通の会話をしながらランチを楽しむ
「あれ?フィリアそれで足りるの?」
「いや・・・ちょっと食欲がね・・・二人はどうなの?」
「うん・・・まあ、気にしないで?」
どうやら同じ境遇の人間だと心も以心伝心らしい
というかさっきの写真撮影のせいで予想以上に疲れた
「それで、午後はどうする?」
「生活用品を見て回ろうと思うから、ラウラは欲しい物とかある?」
「日本刀だな」
「日本・・・刀?」
自身たっぷりに言う彼女の言動には一切の迷いが無かった
やっぱり根は軍人だからかな?人の事言えないけど
「はぁ・・・どうすればいいのよ・・・」
と、後ろの席からため息と共にそんな声が聞こえてきた
後ろの女性は途方も無く暗い雰囲気を出していて、悩み事を抱えているのは明白だった
「はぁ・・・」
嫌な事があったのか凄まじく落ち込んでるようだ
「ラウラ、フィリア」
「お節介は」
「程々にね」
おおぅ、ラウラと息がぴったり合った
シャロはお節介さんだから、困っている人は放っておけないのだろう
人がいいっていうのは彼女の魅力の一つだから
「・・・ありがと」
シャロは少し笑って、その女性の元に向かった
「あの、どうかされました?」
「え?---!?」
女性は力なく顔を上げて私達を見るなり、いきなり椅子から立ち上がってシャロの手を握った
「あ、あなた達!!」
「は、はい?」
「バイトしない!?」
「「「え?」」」
三人の声がそろった
そしていち早く緊急回避の動作を取った私は戦線離脱を試みる・・・だが
ガシッ
「「何処に行く(の)?」」
この二人に片手づつ掴まれて離脱できず
厄介事は突然にーーー来ても困るからお帰り願います
もちろん、去る事は無いんでしょうけどね!!
「という訳でね、いきなり二人やめちゃったのよ。辞めたっていうか、駆け落ちしちゃったんだけどね
はは・・・」
「はあ」
「フム」
「それで?」
「今日は超重要な日なのよ!!。本社から視察の人間が来るし、だからお願い!!
あなた達三人には今日だけバイトをしてほしいの!!」
うん、厄介事でしたね、ハイ
女性のお店というのがこれまた特異な喫茶店で
女性は使用人、男性は執事の格好で接客するというものだった
と、言うわけで今の私達の格好は
シャロ(執事)
ラウラ&私(使用人)
・・・あれ?おかしい。おかしいよ?
「あの、なぜ僕だけ執事の格好なんでしょうか?」
そう、本来私達と同じ服に身を包むはずのシャロが何故か男性の執事服になっていた
「だって、ほら、似合うもの!!そこらへんの男なんかより、ずっとキレイで格好いいもの!!」
「そうですか・・・」
私も、こんな動きにくい服は苦手だし
「あの・・・私は執事服の方がいいんですけーーー」
「何を言ってるのよ!!あなたは絶対メイド服よ!!それ以外認めないわ!!」
うわぁ・・・凄い反対された
「いいなぁフィリア・・・」
「いいなぁシャロ・・・」
そしてシャロが凄く羨ましそうな目で見てる
やめて痛い、凄く心が痛い
「あ、あのっ、もう一つだけ」
「ん?」
「このお店、なんていう名前なんですか?」
すると店長さんは、身に包んでいるメイド服の裾を少しつまんで上げ
大人びた容姿に似合わない可愛らしいお辞儀をした
「ようこそ、@クルーズへ」
「フェイリールドさん、デュノアさん、それぞれ五番と四番テーブルにケーキセットとコーヒーをお願い」
「「わかりました」」
とりあえず、なし崩しに運ばされる一方だ
カウンターからケーキと紅茶を受け取り、丸いトレーに載せて運ぶ
意外や意外、この服見た目より全然軽くて動き易い
すぐさま五番テーブルに行き着いてお客様の前にセットを置く
「ケーキセット、ロイヤルミルクティーになります」
「あ、ありがとうございま・・・す・・・」
「それでは、当店自慢の日替わりフルーツケーキを心行くまでご堪能ください」
軽く、セシリアがよくやる裾を軽く持ち上げてお辞儀の真似をする
正直私がこの動作をしてもあまり似合わない気がするんだけど・・・
というか、店内での視線もドスドスと全身に突き刺さって痛い
「あの子、絶対メイドじゃないわ・・・」
「上品な雰囲気がメイドのそれじゃない・・・」
「お姫様・・・絶対・・・」
それから私指定のオーダーが次々と入る・・・私が何をやったっていうの?
それにしても恥ずかしい・・・こんな姿ラリーが見られたりしたら屈辱で死んでしまう
「(シャロ、こんな感じでいいの?)」
プライベート・チャネルでシャロと会話をする
「(うん、いい感じだよ・・・でも客商売ってこんなにも大変なんだね・・・)」
いつもより数段テンションが低いシャロ。多分さっきの事を気にしてるね・・・
「(そうだね・・・所でラウラは?)」
二人で店内を見回す
そしてそれはすぐに目に入った
ドンッ
「えっと・・・これは?」
「水だ」
「あのさ、メニュー表とかはないのかい?」
勢いよく水の入ったコップをテーブルに置くラウラ
もちろん、フタなど存在しないグラスコップからは容赦なく水が零れる。凄まじい・・・
またそれが一部の人間には人気で、ラウラ指定のオーダーが次々と入る
「(・・・見なかった事にしよう・・・)」
「(うん、私達は何も見てない・・・)」
互いに、考えている事を理解した私達は以心伝心。仕事に集中する
「あ、あのっ、追加注文いいですか?できれば金髪の執事さんで!!」
「コーヒーください!!銀髪のメイドさんで!!」
「ショートケーキセットお願いします!!蒼髪のお姫様で!!」
待った、お姫様って誰~?
店内のそれはすぐに店内に感染していき、喧騒を大きくしていった
そしてそれが二時間程続き、私達三人に疲れが出始めた時、事件は飛び込んできた
「全員、動くんじゃねえ!!」
ドアを蹴破らん勢いで、三人組の男が店内になだれ込んできた
顔を隠し、背負っているバッグからは日本の紙幣が乱暴にはみ出ていた
言うまでも無い、強盗ってやつだ
三人の手にはポンプアクションショットガン、SMG、ハンドガンが握られている
もちろん、セーフティーなんかかかっていない発砲可能な状態で
強盗の一人が拳銃を天井へ向けて発砲し店内が悲鳴につつまれる
「騒ぐんじゃねえ!!静かにしろ!!」
店内の人間は、銃声なんて聞く機会なんて全くない日本人
おとなしくするのが精一杯なのだろう、必死に床にへばりついてる
「あー犯人一味に告ぐ、君達は既に包囲されている。大人しく抵抗をやめなさい。繰り返すーー」
そして日本の警察機関は対応が早いね。関心関心
窓から見える外側全方向には既に対テロ装備の警察官達がシールドを持って待機を完了させていた
「ど、どうしましょう兄貴!!このまま、じゃ俺たち全員ーーー」
「うろたえるんじゃねえっ!!焦ることはねえ、こっちには人質がいるんだ。強引な真似はできねえさ」
リーダーと思しき大男はそう部下に告げて自信を取り戻させる
どうやら部下が弱腰な所を見ると、どうやらリーダー以外は素人みたいだ
銃を握る手に不自然な力が入ってるのがその証だ
まぁ、だからといって私は二階テラスに居るもんだから大人しくしているだけーーー
「おい、何だお前、大人しくしてろっていうのが聞こえないのか?」
唯一人、床に伏せていない人間が居た。ラウラだ
「おい、聞こえないのか!!それとも日本語が通じないのか!?」
語尾を強める強盗メンバーの一人
対するラウラは冷たい視線を外さない
それは、私が知る”兵士”の目だった
ジャカッ
「おいお前ら!!大人しくしろ!!」
二階のテラスから見下ろしていると後ろから銃器を突きつけられた
武器は・・・ボルトアクションの・・・猟銃だね
床に伏せて、私は近くに武器になりそうなモノが無いかを確認する
と、手元にトレーがある事に気が付いた
金属製、軽量にして強度もそこそこある
二階だから下の仲間が気が付くのには時間が掛かる
「おいそこ!!勝手に動くな!!」
目の前の犯人が私に背中を向けた
その瞬間に、私はトレーを縦にして強盗の肘を思いっきり殴った
「がっ!?」
一時的に麻痺した腕からライフルが滑り落ちる
膝を蹴り、姿勢を崩して前に押さえ込む
首筋に一撃、トレーを叩き込んで無音で無力化を完了
「ターゲット制圧完了。下の方は・・・」
と、様子を確認しようとした矢先に銃声が聞こえた
上から様子を確認すると、メイド一人と執事一人が強盗相手に近接格闘を繰り広げていた
シャロとラウラだ
そして一瞬で、二人の無力化を完了する二人は強盗を拘束していた
でも、気絶したと思われていたもう一人が銃口を二人に向けた
反射的に、私は二階の吹き抜けに飛び込んでいた
トンッ
と、靴がテーブルを軽く叩く音と共に私は一階へとショートカットをする
この使用人の服って空気抵抗がいい感じに阻害されるね
滞空時間が長いという事は
着地時の衝撃も緩和されるという事だ
そのまま私は空中に浮いた状態でライフルの照準を強盗の拳銃に合わせる
ドォンッ
と、ライフルから高速の銃弾が射出
ガキィンッ!!
狙い通り、強盗の拳銃はライフル弾を受けて弾けとんだ
テーブルに降りた瞬間、強盗は私にナイフを振り回してきた
それを紙一重、最小限の動きで回避してライフルの銃身でナイフを受けた
ギィンッ
正面から大の大男の力を受ける力は無い
押し返すような力も無い
だからーーーその力を利用する
銃身にナイフの鍔が引っかかって押される力が強くなる
瞬間、私は肩を軸ににその力を真後ろに受け流す
そして、その流れたエネルギーの方向を円運動を用いて強制的に変更
カキィンッ!!
ナイフに銃身のマズルを勢いよく当てる
「なっ!?」
驚いた顔をしているだろう強盗には目もくれず
私はそのまま回転運動を加速させる
止まらない様に振りぬけるように攻撃をして、あたたかも踊るようにその動きに流れを持たせる
一歩、また一歩と、歩みを続ける私の攻撃には相手に反撃の隙を与えない
「がっ・・・あっ・・・・」
打撃を加えられ続けた強盗は膝を付いて前のめりに倒れた
私は勢い余る遠心力をゆっくり失速させる為に三回転ほど慣性で回転し
最後に銃を落とさないよう抱きしめ、その場に停止した
「「「・・・・・・」」」
ん?あれ、何で皆こっち見てるの?
「目標無力化を確認ーーー」
「こっちも終わったよ」
ラウラと共に強盗二人を制圧する
代表候補生として、私達はどんな状況下であっても戦えるように訓練されている
それはセシリアも鈴さんも同じ、そういう責任や義務を私達は持っている
「クソッ!!」
と、後ろの方で声が聞こえた
まだもう一人の強盗は意識を保っていたらしく
それを制圧しようと振り向こうとしたら、少し重い発砲音が聞こえた
「(今のはライフルの発砲音?相手は確かハンドガンだったはずーーー)」
振り向ききった僕の目に入ってきたのは・・・
タンッ
と、テーブルの上に着地したフィリアだった
ナイフをホルダーから抜き去った相手はその刃先をフィリアに向けた
その近接攻撃を、フィリアは抱えるライフルの銃身部分で受け止めた
しかし、体格差がある以上フィリアに力で相手に拮抗する事は不可能だ
そう思った瞬間、彼女は力を抜いて銃身を手前に引いた
そして、肩を中心にライフルを振る形で相手のナイフを弾き飛ばした
キィンッ!!
甲高い金属音が響き、ナイフは回転しながら床に刺さった
しかし、フィリアはその勢いを殺す事無く回転運動を加速させる
その姿は、まるで舞踏会で一人円舞曲を踊る少女のようだった
そして何より、攻撃的なそのリズムは相手に口を開ける暇すら与えなかった
「(あれはまさか・・・)」
と、シャルロットはその一瞬で思考したが、考えるのを止めた時点で、目標は完璧に沈黙していた
そして・・・フィリアは一人だけ立っていた
儚げに、その腕の中にあるのは凶器ーーーライフル
フィリアはそれをまるで愛おしいかのように抱きしめていた
「・・・・・・」
ラウラと共に、私は言葉を失っていた
そして店内の一般人達は静かになった状況から逃げ出すべく顔を上げた
「助かった・・・の?」
「一体何が・・・」
「私・・・いきてる?」
最初の一人から始まったざわめきは、あっという間に店内を埋め尽くす程の喧騒に広がった
と、急にフィリアが床にへたり込んだ
「はぁ・・・疲れたなぁ・・・」
フィリアは床に散らばったテーブルに備え付けられていた飴玉を一つ口の中に放った
ライフルはいつの間にかテーブルの上に置かれている
「ってそろそろ警官隊が突入してくるね・・・フィリア、ラウラ」
「判った」
「ん~了解」
ラウラとフィリアは私の言葉に率直に答えて更衣室に移動した
シャロに呼ばれてラウラと共に更衣室にて着替えをしていた
もちろん、先程から店内は警官や武装した対テロ特殊部隊によって被害調査で大賑わいだ
「服どうしようか?」
「畳んで置いておけばいいんじゃないかな?」
「その辺にでも放っておけばいいではないか」
ラウラ、その辺はちゃんとしようよ・・・
ラウラが放った使用人用の服をきれいに畳んで、私はロッカーを開けた
すると封筒と共に、何か少し大きめの紙袋が置いてあった
「なんだろう?」
紙袋の中には・・・よく判らない茶色い箱が入っていた
添え書きのメモ用紙を見ると
”急なお願いしちゃってごめんなさいね
一応、今日の分の給料と感謝の気持ちをこめて
お礼のプレゼントを贈ります
・・・っと、言ってもこの店で使いにくかった備品なんだけどね
よかったらもらって頂戴ね~
そしていつでもバイト募集中よ~
by てんちょ ”
「・・・何だろう?」
と、言っても長居は無用だろうね。中身は帰ってから確認しよう
あんまり表に出るといけない人間って事は承知してるから
「・・・よし。裏口は幸い封鎖されていない、行くぞ」
ラウラに催促され、私達は喫茶店を後にした
「ハァ・・・疲れた」
「そうだね・・・一応メディアに出るのは避けられたけど、気分のいいものではないね」
「ふむ・・・お前達はあの程度の状況で音をあげるのか?」
私とシャロは少し疲れ気味なのに、ラウラはお手の物といった具合にピンピンしてる
むしろ、使用人のバイトをしている時に比べて生き生きしてるね
「あんな変則な事態の訓練は受けてないよ」
「私は基礎訓練自体をサボってたから何も言えないよ・・・」
実際、私は専用機を所有しているけど
そんな訓練を受ける暇とかそういうのは無いし
空軍時代の私は訓練をサボってばっかりだったから体力はからっきしだ
「訓練を受けていない?ではあの”バヨネットワルツ”の説明をどうするつもりだ?」
「バヨネットフルーツ?何それ」
少しおいしそうな気がする名前だね、それ
「もしかして・・・フィリアあれ知らないで使ってたの?」
「だからアレって何?」
さっきから二人が何のことを言ってるのか判らない
「フィリアさっきライフルを使って近接戦闘をしてたよね?
バヨネット付きのライフルを使って踊るように戦う事
通称だけど、それをバヨネットワルツって呼ぶんだ」
「へぇ~そうなんだ」
「妹よ。貴様は何者だ?」
「そう何度も”何者だ?”って言われても困るだけなんだけど・・・」
いい加減何回目なのさ、このやり取りは
「私は何者でもない。故に私は私なんだし、決まった答えなんてないよ。それとも・・・」
それを否定する為に口を開こうとするラウラを見つめる
「ーーーー!!」
言葉を発せないラウラを牽制する
「この無駄な”言葉”のやり取りを続ける?」
カラン・・・と、水が入ったグラスの中で氷が崩れる
ピピピッ ピピピッ
と、端末が着信音を鳴らしてこの静寂を崩した
「っと織斑先生だね・・・」
本文の内容を見て、私は端末を仕舞った
「急いで学園に戻れって事だから私は帰るね」
「うん、気をつけてね」
「二人ともね」
席を立ち、私は二人と別れて学園への帰路についた
「ラウラ、いくら聞いても変わらないよ」
フィリアが一人帰った後、私達は話題のクレープを食べてから公園のベンチで話し合っていた
「しかし・・・妹は第三世代軍用機を一人で無力化させられるんだぞ?
ISを所持しない場合の戦闘をシャルロットも見ただろう?
あれは、失われたはずの戦闘術だ。なぜ妹がそんなものを会得している?
それに、あれはデモンストレーション用に覚えた見せ掛けだけの儀仗部隊の成せる技ではない
私が見る限り、最初から相手を打ち倒す事を前提に最適化されていた」
ラウラが言うのも無理はない
同じく私もそう思っていたからだ
バヨネットワルツ自体、既に現代戦闘形態の中では不必要になってしまった技だ
元々の起源はマスケット銃の時代からだったと思う
マスケット銃では近接戦闘ではスナイパーのように一撃で仕留めなければならない
何故ならマスケット銃は次弾装填までに時間がかかってしまうから
だからそれを補うために銃剣・・・バヨネットを付ける事によりマスケット銃を槍として
使う事も可能にしたのである
そして、銃剣付きの銃は通常の槍に比べて重量がかさむ
使用者が男性ならある程度は扱えるが、それは通常の銃剣術で
これが女性兵士となると話は別だ。普通の人なら確実に銃本体の重量に体を振られてしまう
そして、非力な人間が扱うために考案されたのが・・・バヨネットワルツ
攻撃を一度一度止めて向きを変えるのではなく、円運動によって力の流れを作り
叉は相手の攻撃力のベクトルを自分の攻撃力に変える事も可能にした
遠心力をうまく利用すれば相手の攻撃力を上回る攻撃を相手に与える事ができたみたい
ーーーまさに、先程フィリアが行った近接戦闘の技そのものだ
「でもフィリアは本当に知らないみたいだし・・・ただそういう風になっただけって可能性もあるよ?」
そう、彼女はそれを知った風に振舞ってはいない
つまりーーー僕達の思い違い
「さて、僕達も帰ろうよ」
「そうだな」
「あっ、買った商品を忘れないようにね」
こうして、買い物と共にいくつかの疑問を抱えながら僕達も学園に戻った
「お母さんっ!!」
と、織斑先生の所に行くとフィアがひしっと嬉しそうに抱きついてきた
うん、満面の笑みがなんか眩しいね
「この齢にして私の教えた事をほぼ全て覚えてしまった。流石はお前の娘と言った所か」
頭を少し悩ましげに掻く織斑先生は、言葉とは裏腹に少し楽しそうだった
「私なんかと比べないでくださいよ~」
「お前の娘だろう?お前に似て本当に優秀だ」
おお、織斑先生のお墨が付いた
それからフィアをべた褒めにする織斑先生を落ち着かせながら本題を聞く
「ああ、お前の機体・・・打鉄零式の装甲換装を行った。
明日第三アリーナで試験稼動を行うつもりだが、予定はどうだ?」
「別に無いですよ。フィア、明日は山田先生とお留守番だよ」
「はいっ、わかりましたっ!!」
うぅ・・・笑顔がかわいいから困る
できれば一人にさせたくないんだけどね・・・山田先生なら安心か
「では明日、時間は追って伝える」
と、織斑先生は踵を翻して部屋に戻っていった
「それじゃあフィア、帰ろうか」
「はいっ」
そうして手を繋いで部屋に戻る
夏休みで皆帰ってるのか、廊下には誰も居なかった
人の居ない廊下を、人を捨てた者と人ではなかった者が共に静かに歩んでいた
さてさて、IS編第一話は夏休みの真っ只中から始まりました
ここからが本番・・・ともいえるかもしれませんね
駄文、半端な知識による誤植などの至らぬ点があろうかと思いますが
どうぞ、よろしくお願いします
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再び元の世界・・・自分が生きた時代の三十年後の世界に戻ってきた主人公・・・再び訪れる自分の認識する平和な時代を生きる
・・・大切な、守るべき者と共に・・・