「なぁ、桂花。時間が空いてるなら俺と一緒に出掛けないか?」
この日、彼と初めて出会った第一声が逢い引きのお誘いだった。
私はこの後の事は喜びのあまり、よく憶えてない。
けど、一刀が言うには目を丸くし徐々に顔を赤らめながら、
首を何度も縦に振ったとの事。正直、全然記憶にない。
まぁ、そんなこんながあり、私たちは今、街中で逢い引きをしている。
「それにしても、あの時の桂花は可愛かったな。
丸で、小動物のみたいに首を何度も縦に振ってさ。
いやー、朝からいいモノが見れたよ」
「うう、忘れてよ」
「ダーメ、俺の記憶に刷り込んだから、桂花の可愛い姿は忘れない」
「…ばか」
可愛いと言ってくれるのは嬉しいが、どうしても羞恥心の方が勝り、
忘れて欲しいと思ってしまう。
何だか、ここ最近、一刀の前だと失態続きの様な気がする。
前の時も、思わず妄想に駆られて恥ずかしい所を見られちゃったし、
…自重できる様に努力しよう。
「さて、着きましたっと」
あれこれ考えていたら、目的地に辿り着いたようだ。
因みに私は今日何処に行くのか知らされておらず、全て一刀に任せている。
と言うのも、行き先を尋ねても私を驚かせたいが為、内緒との事。
そして、立ち止った先、目の前にあるのは装飾屋。
ここにどんな用件があるのかな?
「桂花。少しここで待っていてくれないか。直ぐ済むから」
「え、あ、うん。わかった」
「ありがとう。それじゃあ、行って来る」
そう言うと一刀は急ぎ早、吸い込まれる様に暖簾を潜った。
私は反射的に了承してしまったが、内心、気になってしょうがない。
一体、中で何が行われているのだろう。
次第に我慢が出来ず好奇心に負けたものの、流石に店内に入ることは出来ない為、
店先で聞き耳を立てる事にした。
「……が…う……ちゃ・・・」
「い……え……く…………です…………くだ……ね」
よく聞こえないわね。
――――うん?店主が一刀に何かを手渡したわね。
ここからじゃ、よく見えない。
って!?一刀が戻ってくるわ!!
「お待たせ桂花。……何してるの?」
「え、あの、その、さ、寒いなと思って………」
「だからって、店先の長布を身体に巻き付ける事はないだろう。
カーテンで遊ぶ子供じゃないんだから」
「カ、カーテン?」
「いや、こっちの話」
う、上手く誤魔化せたかな?取り敢えず布を元に戻して、
服の皺を伸ばしつつ、話をすり替える事にしよう。
「……ゴホン。と、所で一刀はこのお店で何か買ったの?」
……声が高くなってる様な気もするが気にしない。
「うーん、今はまだ内緒かな」
「…朝から内緒が続くわね。一体何を隠してるの?
もしかして、私に知られたくない事なのかしら」
「いや、そう言う訳じゃないんだ。只。まだ時期尚早と言うか何というか。
必ず訳を話すからさ、もう少し待っていてくれないか」
「…わかったわよ」
あまり、しつこく問い詰めて一刀に嫌われたくないし、
何よりやましい嘘は吐いていない。これだけは確信を得ているから、
首を縦に振る事にした。
「ありがとう。じゃあ次に行こうか」
「…きゃっ!?か、一刀!!!」
「寒いんだろ?」
「それは、その、言葉の綾で……」
「それとも……」
「い、嫌じゃないわよ!!……もう」
一刀は私の肩に手を乗せ、急に引き寄せてきた。どうやら、嘘を看破されたらしい。
全く一刀は人が悪いんだから、わかっていたのなら指摘してよ。
…いじわる。
私は落ち着きを取り戻して、一刀の腕に抱き付いて逢い引きを再開させた。
そして、この後、食事を摂る事にしたのだが、その道すがら、
民衆から黄色い声が飛び交い、好奇な眼差しで温かく見られていた。
私は一向に気にもせず腕を組み続けて歩く。
華琳様には既に私達の関係を知られている為、怖いもの何てない。
だから、大いに喝采したり、祝福でもすればいいわ。
と、内心思っていたのだが、時が経つに連れ涼しげな顔から一転して、
徐々に汗が吹き出て、小さくなっていった事は、
正直、誰にも告げないで欲しいと願うばかりであった。
……ううぅ、また恥ずかしい所を見られたわ。
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こちらは真・恋姫†無双の二次創作でございます。
関係が公になった後のお話です。
このシリーズも長くなりましたね。
ここまで長くなるとは思いませんでした。
とは言え、後2,3話でこのシリーズを終わらせます。
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