No.651209

真・恋姫†無双 萌将伝 ss あはっぴーにゅーいやーいんなぴっと(後編)

stsさん

どうも皆さん、新年明けましておめでとうございます!

今回は新年特別企画の最終回です!ツンデレ比率10:0の鬼ツン?ナンデスカソレ?


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2014-01-03 00:00:43 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:6172   閲覧ユーザー数:5231

 

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

 

 

 

穴の中では北郷と荀彧が沈黙したまま相対していた。中は目を凝らせばようやく目の前にいるのが誰かが分かるほどの暗さである。

 

 

 

「えーっと―――」

 

「しゃべるな口開くな息するな。空気妊娠する」

 

 

 

地上までの高さは相当あるようであったが、その広さが問題であった。

 

ちょうど北郷と荀彧でもう穴の中は満員で、もう一人も入る余地のないほどの狭さであった。

 

 

 

「・・・なぜ多忙な荀文若様が、このような穴の中などにいらっしゃるのか、愚かなる私めにもお教えいただきゴハァッ!?」

 

 

「全部・・・全部あんたが悪いのよ!!あんたがさっさと落とし穴に嵌まらないから!!こんな年末の忙しいときにも、私はあんたを

 

落とし穴に嵌めるために苦労しなければいけなかったのよ!!」

 

 

 

そんな理不尽な!ということは今更言わない。

 

これが荀彧の北郷に対する平常運転なのは、北郷自身十分理解していた。

 

 

 

「・・・つまり、自分で作った罠に自分ではまっちゃったわけ?まぁ明命なんてプロに頼るからこうなるんだよ」

 

「はァ!?違うわよ!!自分で掘った落とし穴にはまるほど私は馬鹿じゃないわ!!ちょっといた不運が重なった結果よ!!」

 

「え・・・まさか、穴を掘ったはいいけど、出られなくなっちゃったとかそんなブベホァッ!?」

 

 

 

北郷は言葉をかき消されるように荀彧から顔面を殴打された。

 

 

 

「次その浅はかな想像で私を辱めようって言うのなら全力で殴るわ!」

 

 

 

と言いながら荀彧は北郷の顔面に執拗にラッシュを続けた。

 

 

 

「こんな!!はずじゃ!!なかったのに!!あんたのせいで!!あんたのせいで!!このままじゃ!!新年を!!迎えるその瞬間に!!

 

華琳様のお傍に!!いられないじゃないの!!」

 

 

「ぶはっ!?待てっ!!ごふっ!!この逃げ場のない場所で!!ぶへっ!!情け無用の!!ぶほっ!!インファイトとか!!がはっ!!

 

鬼畜すぎる!!ぐへぁっ!!」

 

 

 

しばらく北郷を殴り続けた荀彧は、一通り殴り終えて、疲れたのか、ようやく殴る手を止めた。

 

もはや北郷の顔面は原型を留めなくなってしまう一歩手前であった。

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・疲れたわ!!手も痛いし!!殴るこっちの身にもなれってのよ!!この能無し種馬男!!」

 

 

 

ひでぇ!!と北郷はさすがに叫び、そこから更に色々とツッコミを入れようとしたが、ここで言い争っても何の解決にもならない。

 

荀彧が若干冷静さを欠いている今、こちらが大人な対応をしなければならなかった。

 

さらに北郷自身も、もう間もなく訪れる新年を、このような穴の中で迎えるのは甚だ不本意であるため、

 

ここで言い争う前に、まず穴から出ることを最優先させた。

 

 

 

「とにかく、こんな所さっさと脱出するぞ。幸いこれだけ中は狭いんだ。俺だったら両手足を壁につっぱったら、体を支えることくらい

 

できるはずだ。まず俺が上に登るから、それから桂花を引き上げてやるよ」

 

 

 

北郷は続くツッコミの言葉の数々を何とか飲み込み、落ち着いて穴から脱出する手段を提案した。

 

 

 

―――しかし・・・

 

 

 

「ふん、それは無理ね」

 

 

 

荀彧はやや諦めを含んだ表情で北郷の提案をあっさり一蹴した。

 

 

 

「な・・・おいおい、確かに俺はそんなに力に自信がある方じゃないけど、それでも男の意地ってもんがあるぞ?」

 

 

 

そう告げると、北郷は穴の側面に両手足を大の字に広げるようにしてつっぱって体を支えた。

 

幸い、北郷の力でもなんとか自身の体を支えられるようで、そのままの状態を保つことに成功した。

 

 

 

「ほら見ろ!じゃあまた後でな」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

北郷はドヤ顔で、憮然と北郷の様子を眺めている荀彧にそう告げた。

 

あとは慎重に両手足をずらしながら上を目指すだけである。

 

 

 

―――しかし・・・

 

 

 

「冷たッ!?っていうか滑――――――ッ!?」

 

 

 

上を目指そうとする前に、北郷は手足を滑らせてしまい、再び荀彧の目の前に降り立ってしまった。

 

 

 

「・・・やぁ、思いのほか早く再会できたね・・・」

 

 

「ふん、だから無理だと言ったでしょう?あんたもさっき言った通り、今回私はこの手の罠に関して一流の技を備えている明命に協力を

 

依頼したのよ?当然、この穴もただの穴じゃないわよ」

 

 

 

荀彧の言葉に嫌な予感のした北郷は、試しに穴の側面を触ってみた。

 

 

 

「やっぱり、異常に冷たいな。っていうか凍ってるのか?でも何で―――まさか桂花、お前寒剤か何かを撒いたのか・・・!」

 

 

「かんざい?とにかく、明命から不思議な液体を受け取ったわ。これを散布すると、水分が凍ってしまうそうよ。あとは見ての通り、

 

穴の壁を凍らせることで、落ちた者が穴をよじ登るのを防ぐって訳ね。まぁそもそも私はこちらの分野よりも政治の方が得意なわけだし、

 

この発想はなかったわって所ね」

 

 

 

と、荀彧はあたかも自身の手柄かのように得意げになって語っているが、事態は想像以上に思わしくなかった。

 

時節は十二月末の真夜中である。

 

気温は当然氷点下。

 

いくら穴の中には外からの風が入ってこないとはいえ、その壁全てが凍っているとなると、導き出される答えはただ一つ。

 

 

 

「どうもやけに寒いと思ったよ。っていうか桂花、お前この中に俺を落として一晩中放置しておくつもりだったのか?」

 

「あら、あんたにしては察しがイイじゃない。当然そのつもりだったわよ」

 

 

 

さらりと帰ってきた言葉に、さすがに少々イラッときた北郷は、ついに堪え切れずに腹に溜めていた不満を爆発させてしまった。

 

 

 

「お前なぁ!いくらなんでもこれはやりすぎだろ!?限度ってもんを知らないのか!?これは本当に凍死しちゃうレベルの問題だぞ!?

 

ただ落とし穴に嵌めるのとは全然訳が違うぞ!!」

 

 

 

そして北郷に触発されるかのように、荀彧もまた逆上する形で反論した。

 

 

 

「何よ、大きい声出して!!誰もあんたなんか殺そうなんて考えちゃいないわよ!!前に雪山で遭難したら横穴を掘って寒さを凌ぐって

 

あんたに聞いたから!!落とし穴の中もそんなに寒くはならないって思ったのよ!!明命もそう思ってこの液体のことを教えてくれたの

 

だしね!!でも今日はたまたま昨日の雨のせいで土壌が水分を多く含んでいたから!!想像以上に凍っちゃったんじゃない!!」

 

 

「想像以上にって・・・!お前それでも王佐の才の名を冠する天才軍師かよ!?あらゆる可能性を想定してこそだろ!?雨で濡れた土に

 

寒剤なんて撒いたらカッチカチになっちゃうことくらい、俺でも想像できるぜ!!ホント笑っちゃうよな!!」

 

 

「ふん、何よ!!軍師を万能な神か何かとでも思っているわけ!?軍師も人の子よ!!当然間違いはあるわ!!見当違いな不平はやめて

 

ほしい―――っくちゅん」

 

 

 

当分の間続きそうだった二人の言い合いは、しかし、不意に起こった荀彧のくしゃみによって途切れた。

 

 

 

「・・・ほら見ろ。自業自得だぞ?」

 

「ふん、何よ。だから想定外だったって言っているで―――っくちゅん」

 

 

 

荀彧は悪態をつきながらも二度、三度とくしゃみを続けた。

 

どうやら本格的に体が冷えてきたらしく、よく見ると体も小刻みに震えはじめていた。

 

北郷はそんな荀彧の様子に完全に頭に昇っていた血が引いてしまい、ハァとため息をつくと、

 

不意に自身の腕を荀彧の背後に回すとそのまま自身の方にぎゅっと引き寄せた。

 

 

 

「ちょっ!!??何するのよこの変態色欲万年発情男!!!!こんな状況でも私を襲おうって言うの!!??」

 

 

「違うってば。この前雪山の話をしたときこんな話もしただろ?もし人間が二人以上いる場合は、お互いに体を寄せ合って暖をとれば、

 

これが意外と効果的なんだって。本当は肌と肌を密着させた方がより温かいんだろうけど、衣服の上からでも十分効果はあると思うよ」

 

 

 

そういうと、北郷は荀彧を抱きしめる腕の力を若干強めた。

 

 

 

「いやー、でも実際本当に温かいなー。お腹の辺りが桂花でぽかぽかだ」

 

「(へ、―――態・・・孕―――――ゃない・・・)」

 

 

 

先ほどとは打って変わり、緩んだ表情でそのような感想を述べた北郷に対して、

 

荀彧はやや動揺した表情でブツブツ何かを呟いていたようだが、北郷の耳には届かなかったようである。

 

そして、しばらく静寂が穴の中を包むと、荀彧が北郷の胸元をじーっと見つめ始めた。

 

そして、少しの間見つめた後、また再び何かを呟き始めた。

 

 

 

「(本当に・・・何で私がこんな・・・屈辱だわ・・・あぁもうっ・・・!)」

 

 

 

北郷がそんな荀彧の様子を不思議そうに見ていた次の瞬間、北郷にとって予想外のことが起きた。

 

なんと、男嫌いで北郷嫌いでも有名な荀彧自らが、北郷の首の後ろに腕を回すような形で北郷に抱きついてきたのだ。

 

 

 

「なっ・・・!?け、桂花さん!?」

 

 

「勘違いしないでよ!私とあんたとじゃ身長差があるから、あんたの胸の辺りが暖まらないでしょう!?これでおあいこよ!あんたに

 

変な借りを作って、それを口実に襲われたら堪ったものじゃないんだから!」

 

 

 

荀彧はそのような悪態を北郷に付きながら、抱きしめる腕の力を強めた。

 

 

 

「ははは、本当だ。胸の真までぽかぽかだ。ありがとう、桂花」

 

 

 

北郷もまた、荀彧を抱きしめる腕の力を一層強めた。

 

 

 

「ふん、私があんたに抱きつくなんて、今後一切未来永劫ありえないんだから、せいぜいそのありがたみを噛みしめることね」

 

「へいへい、そうさせてもらいますよ」

 

 

 

まぁそもそもこんな状況になったのは桂花のせいなんだけどな、というような無粋なことは当然北郷は口にしない。

 

さすがにそれくらいの空気は読める男なのである。

 

そして、再び沈黙が穴の中を支配したが、それも長続きしなかった。

 

しばらくして、穴の外で何かが爆発するような大きな音が幾度となくしたからである。

 

 

 

 

ヒューーーーーン・・・ドドーーーン!!!パラパラ・・・ヒューーーーーン・・・ドドーーーン!!!パラパラ・・・

 

 

 

 

この規則的な音の響きに、その正体が何なのか二人も気づいたようである。

 

 

 

「この音は、真桜謹製の打ち上げ花火か」

 

「ということは、どうやら新年を迎えたようね」

 

 

 

花火が打ち上がるごとに、若干ではあるがわずかな光が穴の中にも届き、お互いの姿をしっかりと確認できるようになった。

 

 

 

「ははは、まさか落とし穴の中で、しかも桂花と二人きりで新年を迎えることになるとは思いもよらなかったよ」

 

「ふん、まったく、一生消えることのない汚点だわ。今年は最悪の出だしよ。きっと厄年だわ」

 

 

 

再び沈黙。

 

すると、北郷が二人きりなどと変なことを言ったせいか、お互いの鼓動がやけにはっきりと感じられた。

 

急に気まずくなった二人はなんとはなしにお互い顔を背けた。

 

 

 

「えーと、まぁ、なんだ・・・一応。今年もよろしく、桂花」

 

「何?今年もあんたに孕まされないようにずっと神経をとがらせておけってこと?」

 

「ははは、どうやら今年も桂花は絶好調のようだな」

 

 

 

荀彧の言葉は平常運転であったが、本当に僅かばかりではあるが、声色に含まれるトゲが少ないようである。

 

 

 

「ふん。で、あんたはどうなのよ?」

 

「え?俺か?そうだなぁ・・・」

 

 

 

北郷は少し考えたそぶりをすると、そのままゆっくりと荀彧の唇に自らの唇を重ねた。

 

荀彧は一瞬驚いたような表情をしていたが、特に抵抗するそぶりは見せなかった。

 

数秒ほどそのままの状態が続き、やがてゆっくりと北郷はゆっくりと唇を離した。

 

 

 

「まぁこの通り、絶好調だな」

 

「ふん、まったく憎らしいほどそのようね」

 

 

 

荀彧はそう不満そうにつぶやくと、今度はどちらからともなく、お互いに唇を重ねた。

 

今度は深い深い口づけ。

 

先ほどよりも長い間、お互いを感じ合いながら、やがてゆっくりと唇を離した。

 

 

 

「桂花の口の中、温かいね」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・バカ・・・」

 

 

 

そして、二人はそのまま三度お互いの唇を重ねた。

 

 

 

 

 

 

「もう一度聞くわよ?どういうことか説明しなさい」

 

 

 

魏の屋敷の玉座の間にて、額に青筋を浮かべながら声色に怒気を含んだ調子で言い放った曹操の問いかけに、

 

曹操の正面で正座をさせられている北郷と荀彧はプルプル震えながら縮こまった。

 

周囲には、典韋、許緒、張遼、程昱が集まっている。

 

夏候姉妹や、三羽烏は、どうやら遠方まで北郷を探しに行ってしまった為、

 

郭嘉はすでに今年一発目の流血をすでに終え、部屋で寝込んでいる為、今この場にはいないようであった。

 

 

 

「・・・いや・・・その・・・俺が桂花の落とし穴にはまって・・・だな・・・そしたら・・・桂花がすでに穴の中にいて・・・だな・・・」

 

 

 

北郷は口をパクパクさせながら、先ほどは説明できなかった言葉を何とか絞り出した。

 

 

 

「それじゃあ桂花、なぜあなたはこの大事な時期にこのようなことをしようと思ったのかしら?今年は3年ぶりに魏が一刀を独占できる

 

年だというのに?」

 

 

「・・・・・・いえ・・・それは・・・新年早々・・・華琳様に・・・お目見えするなど・・・こいつには・・・勿体ないと・・・

 

思いまして・・・ゴニョゴニョ・・・」

 

 

 

荀彧も、本来このまま曹操からのお仕置きを受けるという流れで本望のはずなのだが、

 

どうも曹操の怒り方が本気モードっぽく、いつものようなサディスティックな嗤いが一切見られなかった。

 

荀彧は、今になってようやく、自身の行ったことは曹操の逆鱗に触れてしまうほどのことだったのだと悟っていた。

 

 

 

「じゃあ何?あなたは、一刀が私とは釣り合わないから、代わりにあなたが今年一番に一刀と一夜を過ごしたと、そう言いたいのかしら?」

 

 

「ち、違います!!この荀文若、華琳様に対してそのような愚かな考えは決して持ち得ません!!それに、こいつと一晩を明かす羽目に

 

なったのは、私自身の不覚によるやむを得ない状況に陥ったためで、決してこいつとは何もありません!!!」

 

 

 

荀彧は先ほどとは打って変わって、全力で曹操の見解を否定するためにやや強い口調で主張した。

 

 

 

「ふうん、昨晩は何もなかったと、ただ寒さを凌ぐために体を寄せ合ったに過ぎないと、そういうことなのね?」

 

「そ、そうです!!さすがは華琳様!!我が稚拙なる弁明をお汲み取り戴き、心より拝謝申し上げます!!」

 

 

 

未だ曹操の全身凍てつくような冷たい怒気は消える様子はないが、

 

それでも荀彧は、自身の弁明をくみ取ってもらえたと判断し、土下座をして感謝の意を述べた。

 

そして、曹操は鋭い眼光で両者を睨みつけたまま、今度は北郷に対して次のように問いかけた。

 

 

 

「ところで一刀。霞が穴からあなた達を引き上げようとした時、あなたこう言ったそうね。『今は桂花と一つだからちょっと待って!』と。

 

これはいったいどういう意味かしら?」

 

 

「そ、それは・・・」

 

 

 

北郷は全身から嫌な汗が噴き出るのを感じていた。

 

隣の荀彧に至っては、瞳孔を開きながら、ブツブツとしきりに何かを呟いている。

 

新年になり、魏の屋敷に北郷が現れなかったため、魏の面々は夜通しで北郷を探したのだが、

 

その時偶然、張遼が落とし穴の中で、寒さで全身ガクガクに振るわせながら抱き合っている北郷と荀彧を発見したのだった。

 

北郷の性質に加えてこのセリフ。

 

穴の中で一体何が行なわれいたのかなど、わざわざ説明する必要はあるまい。

 

 

 

「それは・・・そ、そうだよ。そりゃ、あ、あれだよ・・・狭い穴に二人でぴったりはまっちゃったから、二人と考えず、一人の人間が

 

はまってるって考えた方がいい・・・と、言いたかったんだ・・・」

 

 

 

しかし北郷は、顔中に汗を垂らしながら、とぎれとぎれに苦し紛れの弁解を試みた。

 

 

 

「ふうん・・・まぁ、いいわ」

 

 

 

曹操は絶対零度の視線を北郷に浴びせかけながら聞いていたが、特にその弁明を咎めることなく、適当に流した。

 

かと思えば、曹操は急に北極海もかくやと言うような極低温の視線をやめてしまった。

 

急に普段通りに戻ったことで逆に何かあるのではと身構えてしまう二人であったが、

 

そんな時、曹操がふと思い出したかのような面持ちで北郷に尋ねた。

 

 

 

「あら、そういえば一刀。あなた最近うなじに凝っているとか言っていたくせに、見たところ桂花のうなじには手を出さなかったようね。

 

どうして桂花のうなじには何もしなかったのかしら?まさかあなたともあろう者が、手を抜いたというの?それとも桂花のうなじは手を

 

出すに値しないとでもいうのかしら?」

 

 

 

曹操が普段通りに質問したせいか、北郷もまた臆することなく、普段通りの調子で、

 

というより、むしろ曹操の質問は北郷自身にとって不本意な質問であったため、やや強い調子で反論した。

 

 

 

北郷「それは聞き捨てならないぞ華琳!俺がそっち方面で手を抜くなんて、そんなことは絶対ない!桂花のうなじが手を出すに値しない

 

なんてことも絶対あり得ない!むしろいつでも手を出したいくらいさ!!今回手を出さなかったのは、あんなに狭い穴の中じゃうなじに

 

口が届かなかったからだよ!だから、仕方がなく他の手段で桂花を気持ちよくさせるために、まず桂花に手m―――」

 

 

荀彧「(バカッ!!)」

 

 

 

北郷がそのまま高らかに言い逃れの出来ない、それこそ修正が入ってしまうであろう決定的なことを言ってしまいそうになったところを、

 

荀彧がほんの僅かばかり頬を染めながら渾身の力を込めて北郷の背中をシバき、阻止しようとしたが、ほんの少し遅れてしまった。

 

 

 

北郷「ぁ・・・やっちまった・・・」

 

曹操「て・・・何かしら?」

 

 

 

ここに来て、曹操お得意のサディスティックな嗤いが、今年第一号としてお披露目された。

 

北郷は先ほどの倍以上の汗を顔面中にたらしながら、目を泳がせ起死回生の弁明を試みようとするが・・・

 

 

 

「手ぇ・・・てぇ・・・大変(てぇへん)申し訳ありやせんっしたァアアアアアアッ!!!」

 

 

 

一瞬のうちに思いつくこと叶わず、ついに観念して床に額を打ち付け全力で謝罪した。

 

 

 

「ところで風、腐刑ってもちろん知っているわよね?」

 

「はい、もちろん知っていますー」

 

「婦警?」

 

 

 

北郷の脳内には、ピストルを構え、白バイに跨る巨乳の美人婦警さんが、逮捕しちゃぞ?などと言っている映像が浮かんでいた。

 

しかし一方で荀彧は、にやけ顔なのに顔色は真っ青という器用な顔をしている。

 

 

 

「はぁ、一刀、この期に及んでやましいことを想像しているようね。風、この愚かな種馬にも分かりやすいように説明してあげなさい」

 

「・・・・・・ぐぅ」

 

「寝るな!」

 

「おぉ!?これは風としたことが。ですが、そのようなこと、風の口からはとてもとてもー」

 

 

 

曹操と程昱による、タヌキ寝入りからの一連のお約束をこなした後、宝譿が程昱の代わりに説明しだした。

 

 

 

「ここは俺に任せとけって。いいかい兄ちゃん。腐刑ってのは、別に美女の警邏隊員って意味じゃねぇぜ。腐る刑。腐った樹木は果実を

 

結ばねぇってのが元々の意味らしいが、要するに、去勢だな去勢」

 

 

「コラ宝譿、そのようなことを恥ずかしげもなく言うなんて、はしたないですよー」

 

 

 

宝譿も程昱も平然とした様子で話しているが、当然北郷はそういう訳にはいかない。

 

今となっては顔中を覆っていた汗すら完全に引いてしまうほど顔面蒼白である。

 

 

 

「ちょ――――――!?」

 

「流琉、季衣、連れて行きなさい」

 

「「了解です」」

 

 

 

北郷が何かを言う前に、曹操はサディスティックな嗤いを崩さないまま、左右に控えていた典韋、許緒に北郷の連行を命じた。

 

そして、二人の小さな怪力娘にそれぞれ両腕を完全にホールドされ引きずられる中、

 

北郷は最後の悪あがきをするべく必死に二人に声をかけた。

 

 

 

「おい、流琉!ちょっと待ってくれ!」

 

「もう兄様なんて知りません!」

 

 

 

しかし、典韋は不機嫌そうにぷいっと顔を背けてしまう。

 

 

 

「季衣!俺の話を聞いてくれ!」

 

「ふんだ、今度はボクとするんだよー!」

 

 

 

そして許緒もまた、典韋と同様不機嫌そうにぷいっと顔を背けて聞く耳を持たなかった。

 

 

 

(季衣!今まさに俺は息子を失おうとしているんだぞ!?今度なんてなくなっちゃうんだぞ!?)

 

 

 

などというツッコミの声を上げる暇もなく、北郷は玉座の間から消えた。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 

 

そんな北郷の様子を縮こまったまま窺っていた荀彧だったが、やがて曹操に声をかけられビクンと一度体を震わせた。

 

しかし、その表情には恐怖というよりも、むしろ曹操からのお仕置きを期待するニヤケのようなものの色の方が強いように思えた。

 

 

 

―――しかし・・・

 

 

 

「桂花、あなたは当分の間、自室での謹慎を命じるわ」

 

「は、はい!―――はい?自室で謹慎、ですか?」

 

 

 

荀彧に対する処置は、北郷とは比べ物にならないほど軽いものように思えた。

 

そのため、過激なお仕置きのあれこれを想像していた荀彧はやや肩を落としたが、しかし・・・

 

 

 

「ええ、そうよ。ただし、基本部屋の外に出ることは一切禁じる。食事は兵に運ばせることとし、唯一、入浴時と厠へ行く時のみ、女官

 

を付き添わせるという条件付きで部屋を出ることを認めることとする」

 

 

 

曹操がこの日一番の最大級のサディスティックな嗤いを見せながら付け加えたその説明を聞いたその瞬間、

 

すぐに荀彧は曹操の意図するところを悟った。

 

つまり、敬愛する曹操に会うことができなくなるだけでなく、顔を拝むことすらできなくなるということである。

 

しかも、当分の間、つまり、無期限で。

 

今度こそ荀彧の表情から一切のニヤケが消え、完全に顔面蒼白になった。

 

 

 

「ちょ!?華琳さ――――――!!」

 

「霞、連れて行きなさい」

 

「りょーかいや」

 

 

 

荀彧もまた、北郷同様何かを言いかける前に張遼に首根っこを掴まれて、引きずられていった。

 

 

 

「ちょっと霞!放しなさいよ!」

 

「放すかアホ。自分、抜け駆けするからやで。寒いからって一刀と激しい運動してましたってか?そーゆーのいらんねん!」

 

 

 

荀彧は手足をばたつかせて抵抗するものの、張遼はものともせずそのまま引きずっていき、

 

イヤァアアアアッという荀彧の越境が虚しく玉座に響き渡った。

 

今年もまた、新年早々、魏の屋敷は例年通り賑やかである。

 

 

 

【あはっぴーにゅーいやーいんなぴっと(後編) 終】

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

さて、三夜連続投稿のお正月特別編の最終回、いかがだったでしょうか?

 

 

本来は一話完結のお話を書くつもりだったのですが、前回申しました通り妙なテンションで書いたため、

 

本来一刀君が明命の落とし穴にはまった、という事実だけしかいらなかったのに、

 

無駄に長いマンハントの描写になってしまい、改めて自身のまとめるスキルの無さに苦笑を覚える次第です。

 

また、stsの妄想が勝って、桂花たんのツンデレ比がおかしなことになってたりしていますが、

 

安心の鬼ツンこそが桂花の真骨頂だろぉがぁ!という不満はどうか胸の内にしまっていただければと思います。

 

 

まぁ一刀君がどうなったかは、ご想像にお任せしますと言うことで 笑

 

さすがに息子とバイバイは洒落にならんというか恋姫にとって望むところではないと思いますので、

 

新たな性癖に目覚めてしまうような快楽を味わってるとかそんな感じでしょうか、、、笑

 

 

ちなみに魏の屋敷に残っていた人たちは完全にstsの好みでの人選でした。(あ、でもそれだと秋蘭と凪もいれないと、、、)

 

夏候姉妹三羽烏稟ファンの方申し訳ありませんでした。(実は稟は校正の時点で忘れてることに気づいてたり、、、汗)

 

 

それでは、次回からは通常通り、御遣い伝説を投稿していきます!

 

今年もどうやら週一投稿ペースに戻せそうにありませんが、気長にのんびり楽しんでいただけたらと思います。

 

 

それではまた次回お会いしましょう!

 

 

 

今年も8日18日28日の0時投稿を目標にしてます。御遣い伝説、どうぞよろしくお願いします!

 

 


 
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