No.647199

外史を駆ける鬼・IS編 第014話

お久しぶりですぅ。

最近めっきり投稿機会も減ってきましたね。
色々忙しかったのですよ。
英雄伝説をやったり、るろ剣を全巻制覇してみたり、パワプロやったり、課題のレポートやったりと。

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2013-12-22 14:27:46 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:1271   閲覧ユーザー数:1137

???「ははは、影ちゃん。君がそう来るのなら、俺はこう打つよ」

 

友人と碁を打ち合い、状況から言っては自身が劣勢の状態であり、自分は「その一手待った」などと無駄な悪あがきをしている。

 

外史を駆ける鬼・IS編 第014話「五反田食堂での一時」

時刻は午前3時。

この日も重昌は大汗を掻いて目覚めた。

周りを見渡すと机などの最低限の家具しかない、何も無い部屋。

昨晩、楯無がしばらく一夏と同居する為に、自身はこの空き部屋に最低限の荷物を持って移動したのだ。

汗のせいで背中にへばりついているシャツが気持ち悪く感じて、そのシャツを適当に床に脱ぎ捨て、自らは直ぐに部屋のシャワールームへと向かった。

ここ数日の間、すっかり日常の一部となってしまった朝風呂曰く朝シャワー。

何故か何時も懐かしい夢を見る。

幸せ過ぎて堪らなく、だが決して戻って来ない時間。

夢から覚めるのであれば……あの時が戻って来ないのであれば、それはただの悪夢以外の何物でも無かった。

 

重昌は只今バイクを走らせて街に出向いていた。

夏休みも終わり、IS学園の次のビックイベントである学園祭が近づいていた。

学園でも学園祭中に一夏争奪戦争のイベントが行われることなど模様されている。

これは何かと言うと、未だ何処の部活にも所属しない一夏に色んな部活より生徒会に対して抗議があったので、今回学園祭で行われる催しで一位を取った部には、一夏をその部活に所属させる権利が与えられるという会長権限が発動して、皆躍起になり盛り上がりを見せている。

ちなみに重昌は既に剣道と茶道に所属しているのでそう言う声は無かった。

それぞれ各クラスも出し物には盛り上がりを見せており、特に男子がいる1、3組の盛り上がりは他とはまたかけ離れており、1組はラウラの案でコスプレ喫茶を行うようであり、3組もそれに対抗しようと女子の支持を集める為に洋菓子店を展開させることに決定した。

ただしそれだけではインパクトに欠けるので、何か衣装でも欲しいとのことでこうして重昌が思案の為に街に出向いているのだ。

とりあえず、ファッション誌に載っていた店や、クラスの女子の行きつけの店、コスプレ販売店やコスプレ喫茶なども巡ってみたが特に有力な情報を得ることが出来ず、気付けば昼も過ぎて時刻は午後2時となっていた。

 

重昌「ふむ、どうしたものか――」

 

目の前の信号が赤であるので、バイクを止めている間も思考する。

1組のコスプレ喫茶は、女子はメイドの服を着て、一夏は執事の服で接客するそうだ。

それではただのメイド喫茶(カフェ)に近しいので特に面白みが無いのであるが、1組は才色兼備の専用機持ちの宝庫であると同時に、天然女殺しの織斑一夏までもいるのだ。

いくらメイド喫茶と言ってもこれだけ豪華であれば自然と客は集まり、こちらが行う洋菓子店もただの洋菓子店であれば太刀打ちなど到底出来ない。

何か手があればと思っていると、重昌のお腹より景気が良い腹の虫が鳴いた。

衣装探しに必死になって、どうやら昼食を忘れていたようだ。

直ぐに何処かバイクが停められるような手頃な場所を探して、彼は商店街を練り歩き、一件の店を見つけた

 

重昌「五反田食堂?」

 

見上げる看板にはそう書かれていた。

以前に知り合った一夏の友達である五反田兄妹の苗字もこんな感じであったのを思い出し、気まぐれでその食堂のノレンを潜る。

 

蘭「いらっしゃい……あれ?重昌さん?」

 

以前に出会った時に焼き付いた、その印象的な赤髪色の女の子は五反田兄妹の妹、蘭であった。

しっかりとエンプロをして、客が帰った後なのか、テーブルを拭いている最中であった。

 

重昌「蘭ちゃんじゃないか。そうか、ここが君たちの実家だったか――」

 

周りを見渡すと昼のランチタイムを過ぎたせいが、客は全く居らず。

しかし床に客が僅かに零したであろうキャベツの千切りや生姜焼きのタレなどが全体的に散らばっており、そばに塵取りが置いている所を見ると、それなりには繁盛している様だ。

 

蘭「き、今日は一体どうしたのですか?」

 

重昌「昼を食べ過ごしてね。たまたま入った店がここだったわけさ」

 

蘭「な、なるほど。ささっ、こっちにどうぞ」

 

彼が案内した席は、既に床下のゴミは除かれ、机も綺麗に拭かれていた。

メニューを蘭から貰うと、中を確認して重昌は彼女に訪ねた。

 

重昌「蘭ちゃん。この店のオススメ的な物は何かな?」

 

蘭「えぇっと、そうですね。この『業火野菜炒め定食』っていうのが、うちの鉄板メニューですけど」

 

重昌「じゃあ、それでお願い」

 

蘭「は、はい。了解しました」

 

彼女は重昌より渡されたメニューを受け取ると、慌てて店の奥へと引き返していった。

 

重昌「……?どうしたのだろう?疲れてるのか?」

 

一方店奥では――

 

蘭【うわぁ、どうしよう。まさかこんな姿を重昌さんに見られるなんて。すっごい恥ずかしい】

 

今の欄はショートパンツにタンクトップと言った何とも動きやすい格好である。

 

蘭【あれ?何で私、重昌さんのこと意識しているのだろう?】

 

そうなのだ、彼女の想い相手は織斑一夏。

それはまごう事なき事実。

しかし彼女の胸は妙な高鳴りをしていた。

あの時、自分を暴漢者もどきより助けてくれた重昌。

恐らく同じ現場に一夏がいても、彼女が知っている彼ならば同じ行動をするに違いないのだが、未だにその時の重昌の顔が忘れないでいたことも事実であり、それは始めて一夏に出会った時に似ている様にも感じていたのだが――

 

蘭「………まさかね」

 

頭の中を切り替えて、欄は自らの祖父によって作られた『業火野菜炒め定食』を、重昌の座る卓に持っていこうとしたが、流石にこの格好はラフ過ぎるので、上にピンクの薄着のパーカーだけ着た。

 

卓に料理を運ぶと、彼は卓の上に様々なファッション雑誌やらコスプレ雑誌やらを開いて、腕を組み何やら思案していた。

 

蘭「……あの、重昌さん、お待たせ……しました――」

 

余程深く考え込んでいたのか、彼が蘭の存在に気付くと、「あぁ、スマナイ」っと言いながら雑誌を隅にやって定食を置けるスペースを作った。

 

重昌「おや、その服は?」

 

蘭「え、いや、さっきの格好は、今まで働いていて少し暑かったからあの格好していただけであって」

 

そう「ハハハ」と乾いた声で笑いながら誤魔化した。

重昌は合掌をし、箸で野菜炒めを摘んで口の中に放り込み、野菜の景気のいい音が鳴ると、すると突然音が止まり、彼は噛むのを止めた。

次に口に入っている物を飲み込むと――

 

重昌「………蘭ちゃん、これを作ったのは誰だい?」

 

蘭「え、それはうちのおじいちゃんですけど」

 

重昌「………美味い。よく火の入り、ざっくりと乱雑に切っている様で計算されたこの野菜の切り方。そしてなんと言ってもこの歯ごたえ。決して相手を威圧させない完璧ではない8割の計算された料理。これだけの物を作るには相当の労力と鍛錬が必要だぞ」

 

美味い料理に出会えば自身に解説する何時もの癖は健在で、そんなことをブツブツ言いながら定食をあっという間に平らげてしまい、満足そうに食後のお茶を啜った。

 

重昌「ご馳走様でした」

 

そして彼は店の奥に向かって「おやっさん、美味かったよ」と少し声を高くして言うと、蘭の祖父でありこの店の主人である五反田厳が顔を出す。

 

厳「あいよ。それだけ綺麗に食べて貰えば料理人名利に尽きるもんさ。兄ちゃん、熱心に何か言ってたけど、料理するのかい?」

 

重昌「えぇ、『美味い!!』っと思った料理は真似をしたくなるぐらいね」

 

厳「がっはっはっ、そいつは面白い。ワシの野菜炒めを作れたら蘭を嫁にやるよ」

 

すると彼女は顔を赤くしながら、厳を店の奥にまで引っ込めた。

 

蘭「すみませんね、困ったおじいちゃんで……そういえば重昌さん、ずっと気になっていたのですけど、その雑誌はなんですか?」

 

彼女が目をつけたのは重昌が先程広げていた雑誌の数々。

彼は自分がクラスで行う学園祭の出し物についての事情を、どの様な衣装にしようか悩んでいることを話した。

 

蘭「そうですね………和服なんてどうです?」

 

重昌「和服?」

 

蘭「えぇ。前京都に行った時に従業員が和服を来ていた洋菓子店がありまして、印象深かったので覚えていたのですけど………スミマセン、なんか出しゃばったこと言って。第一和服って前値段を見たことありましたけども、高いですよね」

 

重昌「……和服……か――」

 

少し思考し――

 

重昌「いいかもしれない」

 

あっさりと答えを出してみせた。

 

蘭「え!?そんなにあっさり。でも重昌さん、和服って普通に買っても20万ぐらいするんじゃないですか?」

 

重昌「大丈夫。作るから」

 

蘭「作るぅ!?」

 

流石に蘭もこの時ばかり大きな声を出してしまった。

 

重昌「まぁ、こう見えても裁縫は得意でね。和服ぐらいだったら作れるよ」

 

彼はメモを取り出して、今頭に浮かんだことを、鮮明にメモを取っていく。

 

重昌「蘭ちゃん、他にどんな意見があるかな?」

 

蘭「え?えぇっと――」

 

こうして暫く、二人の話し合いは続き……

 

重昌「なるほど、着物の試着体験か」

 

蘭「そうです。余分に用意しておけば、きっとお客さんの受けもいいですよ」

 

彼女のおかげで3組の行えそうな企画案が大体固まってきた所で。

 

重昌「蘭ちゃんありがとう。これで何とか乗り切れそうだ。そうだ、何かお礼をしなければな」

 

そう言って取り出したのは、IS学園の学園祭のチケットである。

このチケットは生徒一人につき一枚配られており、これがなければ学園に入ることは出来ないのである。

 

重昌「これはIS学園の学園祭招待チケットだ。そうだ、確か一夏のクラスはコスプレ喫茶だから、彼が執事服を着て接客すると聞いた気がするぞ」

 

蘭「一夏さんが執事服姿ですか!?」

 

それを聞くと頭の中では執事姿で自分に接客してくれる凛々しい一夏を容易に想像してしまい、つい顔が綻んでいると――

 

弾「何やっているんだ、お前?」

 

蘭の気づかないうちに、彼女の兄である弾が帰宅。

背中にはギターケースの様な物を担いでいるので、恐らくは友達との練習を終えて帰ってきたなどであろう。

 

蘭「あ、お兄ぃ!」

 

弾の姿を見るやいなや、蘭は重昌に貰ったチケットを背中に隠した。

 

弾「ん?何隠したんだよ?」

 

蘭「え、な、なんにもn「IS学園学園祭の参加チケットだよ」重昌さん!!」

 

重昌の言葉を聞くやいなや、弾は目を大きく見開き――

 

弾「し、重昌さん。俺の分は「無いよ」そんな、何とか手筈でも整えて「私から貰うのは諦めろ」………」

 

スッパリと言い切られた弾は床でorzの形で気落ちしていると――

 

弾「蘭、それよこせ!!」

 

蘭「い~や~だ~!!」

 

いきなり妹が貰ったチケットを巡って兄妹ゲンカが勃発した。

だが弾の目が尋常では無かったので、重昌は鉄扇を取り出し弾の頭を軽く叩き、彼は涙目で頭をさする。

 

重昌「落ち着け、”私から貰うのは”と言っただろう。まだ一夏君がいるじゃないか。チケットを譲ってもらえるかどうか聞いてみたらどうだ?」

 

弾「そうか、その手があった」

 

重昌「だが普通に聞き出せ。今の君だったら返って不信がられるからな」

 

弾は直ぐに携帯を取り出して、目にも止まらぬ指さばきで携帯を打ち込み、一夏にメールを送信した。

 

重昌「そういや、弾君。ベースでもやっているのかい?」

 

弾の背中に指を指して聞いてみると、弾は背中のケースからベースを取り出した。

 

弾「よくわかりましたね。普通の人は大抵エレキギターだと思うのに……重昌さんも音楽をやるのですか?」

 

重昌「まぁ、ベースはかじった程度だがね」

 

そのような自然な流れで重昌は弾よりベースを受け取ると、足を組んで何か適当な曲を奏でてみる。

曲はスピ〇ツの『チェリー』。

ただし、ベースだけで表現するのは難し過ぎるので少しアレンジを加えながら、一番だけを軽く引き終えると、聞いていた二人から拍手を貰った。

 

弾「重昌さん、すげぇじゃないですか!これはとてもかじったレベルじゃありませんよ」

 

蘭「ホントです。私も音楽に精通しているわけではありませんが、思わず聞き入ってしまいました」

 

弾「これから時間あります?ちょっと色々教えて欲しいのですけれども」

 

重昌は腕時計で時間を確かめると――

 

重昌「いいよ。まだ少し時間もあるし」

 

そしてその日は弾と共にスタジオに2時間程滞在して一日の主な出来事は終了した。

その間に弾の一夏へのメールは返ってき、彼の学園参加も確定出来たことにより、弾のその日のテンションがおかしなことになっていたのは後の話。

 


 
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