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真恋姫無双~年老いてNewGame~ 十三章・後編

BGM:Billie jean

2013-12-19 23:07:49 投稿 / 全13ページ    総閲覧数:3671   閲覧ユーザー数:2852

大広間に軽快な靴音が響く。

観客たちには彼の口遊む言葉の意味はわからないが、彼のその足運びの凄さは理解できた。

天の国の歌に乗せて踊る北郷たちに、華琳以下全員は釘付けになっていた。

北郷が皆の前で披露しているのは歌謡曲の王様と呼ばれた男の代表的な曲で、その踊りはその王の代名詞である。

 

そう、北郷はいま、関羽や春蘭相手に見せたあの足さばきを皆に披露している。

その名はムーンウォーク。

月面歩行と訳されるそれは、しかし、この時代では説明しづらい。

無重力のような歩き方、と言ってもそれが理解できるのは北郷ただ一人であるから。

重力とは…その説明が通用しない。

常識が違うのだ。

だから、踊り終えた彼はみなにこう説明する。

 

「こうやって、まるで前に進むようにまっすぐ後ろに下がるように歩くんだ。

 まぁ、あの夜にやったのは完璧にこれだけってことじゃないけど、発想は概ねこんなもんだな。」

そういって、北郷はもう一度実演してみせた。

「へぇ…確かに面白い歩法ね…しかしどうしても気になるのだけど…」

居ても立ってもいられず…とはきっと今の彼女のことを言うのだろう、と皆が思った。

北郷が踊っている最中、ずっと華琳がウズウズしていたことに気が付かないものがいないほどだ。

華琳は立ち上がると今しがた北郷の見せた動きをすぐに真似しはじめた。

「えっと、こう…かしら?確かに私達にとって未知の動きではあるけど…」

天に愛された者とはきっとこういうもののことを言うのだろう。

無邪気な顔で踊る彼女に、今度は北郷が釘付けとなる番だった。

なんと華琳はムーンウォークだけではなく、北郷が見せた踊りを真似しはじめた。

素人では当然、一度見ただけは真似できない複雑な動きのはずなのに。

この動きを真似するのに一刀は一月よりも長い時間をかけたというのに。

華琳自身の美貌、踊りの完成度、そして華琳の楽しくて仕方が無いという表情。

北郷の見せた踊りとは比べ物にもならない美しさに、皆が言葉を失う。

踊ることに精一杯で、足さばきもやっとの北郷とは魅せ方が違う。

細かい所作から、ふとした目線から、大胆な体捌きから。

そのすべてに、才を感じる。

彼女の名は曹操。

文学や芸術まで全てを卓越した才能を持ち、「時代を超越した英傑」とまで評された、曹孟徳だ。

天に愛された乱世の奸雄とはここまでのものなのか、と北郷は思わざるを得なかった。

 

「ふふっ…楽しいわね。こんな楽しいことを私に隠していたなんて許せないわ。」

 

踊り終えた彼女は、本当に嬉しそうに微笑む。

「しかし、それでも不思議ね。この踊り、たしかに未知の物であるけど…」

そう言って華琳はもう一度、地面を滑る。

「だからといって、あの関羽や春蘭をそう簡単にごまかせるものではないと思うのだけど?」

その場で一回転を決めてから席に戻った華琳は北郷に問いかけた。

「たしかにそれは気になっていた。姉者はあれでいて…というかあの通りなわけだしな。

 読みだのごまかしだのを超えた武人相手に、なぜそんな…所謂小手先の技が通じるのだ?」

「せやせや。百歩譲って惇ちゃんがあれでアレだから騙されるのはわかんねんけど、関羽まではさすがに嘘やろ。」

「そうだよおじちゃん!なんであんなのが上手く決まるのさ!」

「確かに立ち姿から一見して何かあるって思えますし…何かこう、コツでもあるんですか?」

「そんな技があるんですか隊長!?」

「凪ちゃんってば大胆なの~!」

華琳のひとことを皮切りに、北郷はたちまち質問攻めにあった。

ただ、北郷としてもこの質問は予想していたことである。

考えれば当然だ。

天の国の踊りとはいえ、有り体に言えば重心と進行方向を誤魔化すだけの小手先の技術である。

体重移動を誤魔化す歩法といってしまえば、関羽や春蘭といった猛将ならば息をするのと同じように使っている。

戦場でその程度の技術があるからといって、それだけで相手を見誤ったり斬り損なうようでは天下に名を馳せることは不可能だ。

その点、関羽は三国においてその名を知られる武神であり、万夫不当の豪傑と呼ばれるほどだ。

そうである限り、ただ関羽が「知らなかった」というだけでは北郷に「当たらなかった」説明にならないのだ。

そこが華琳を始めとする魏の将全員の共通する疑問であるはずだ。

もちろん、それ以外の理由がある。

「わかったわかった。これから見せてあげよう。」

そう言うと北郷は、小さな硬貨をとりだしてみせた。

 

「ここにあるのは俺の世界で使われていた硬貨だ。10円硬貨っていうんだけどこれを今から投げるから、どっちの手でとったか当ててご覧。」

「はぁ?北郷貴様、それとコレといったい何が関係あるというのだ?」

「いいから、関係あるんだよ、さぁ行くぞ。」

「いや、ちょっと待て北郷、お前のことだからそれになにか仕掛けがあるんじゃないのか?」

「あぁ~、誰かいうと思ったんだ。まぁ秋蘭ならそう思うだろうね。

 ほら、何も仕掛けがないから確認してご覧。」

「うむ…。みたところ特に何か仕掛けがあるようではないな。念のため、流琉、お前も確認してみろ。」

「あ、わわ、はい。そうですね、精巧な彫り物ですけど…普通ですね。はい、どうぞ。」

「どうも。まぁどこにでもあるもんだ。さ、じゃあいくよ?」

 

そういうと北郷は硬貨を指で弾き、両手を交差させるようにしながらその硬貨をとった。

 

「ふふん、簡単じゃないか、右だ。」

「ですね…」

「ボクも右!そんなのじゃ簡単に見えちゃうよ!」

「で、北郷、それとこれとは…」

 

春蘭がそう抗議しようとするのを遮り、北郷は右手を開いて硬貨を見せた。

 

「そうか、やっぱり見えちゃうよな。じゃあ、何回でも当てられるよな?」

 

そう言うと先ほどと同じように硬貨を弾き、取る動作を見せる。

 

「はい、じゃあこれを含めてあと二回でいいから当ててご覧。」

 

やりなおしたからといって、彼女らがその動きを見間違うはずもない。

正解を確信して、彼女らは口々に答えを言う。

 

「右やろ?なぁ、こういっちゃなんやけど、多分うちら誰一人として外さへんよ?」

 

それは自信過剰ではなく、紛れも無い事実だ。

彼女らが、硬貨を取る程度の動きを、見間違うはずがないのだから。

 

「ははは、そんなこと、やってみなくちゃわからないだろ?」

 

しかし、そんなことはお構いなしといった表情で北郷は続ける。

 

「みんな、二回目も正解だな、ほら、じゃあ三回目行くぞ。」

 

右の手のひらを開くとそこにはたしかに硬貨があった。

そして北郷は最後にすこし強めに硬貨を弾く。

皆はそれを眼だけでおう。

北郷は、その硬貨をとって両手を皆の前につきだした。

 

「さぁ、これで最後だ。どっちでとった?」

 

なんてことはない。いままでと何ら変わりない正解のわかっている子供だましだ。

北郷が如何に手を交差させごまかそうとしても、見えているものは見えている。

 

「右手だろう?何度やったって間違えるものか。」

 

そう春蘭が言うのを皮切りに、全員が右であると答えた。

その様子に満足そうにうなずき、北郷は左手を開いた。

華琳は、ただただ楽しそうな顔をして、その様子を眺めていた。

 

「そうだな。じゃあこの賭けは俺の勝ちってことで。」

 

その左手には、あるはずのない硬貨が握られていた。

……

………

 

「意識の誘導…ねぇ。」

 

城壁の上で、華琳は先ほどの答えを口にした。

 

「本来見られたくない場所から目を逸らさせるために他の場所に視点や意識を集中させる。

 簡単な話よね。」

 

たばこを一本、指の上で転がしながら彼女は続ける。

 

「硬貨をどちらの手でとったか当てる。彼女たちからすれば答えの見えているようなものだもの。

 それならば多少不利に思える条件でも飲んでしまうでしょう。

 だから、貴方が三度当てたらなどと言ってもなんの反論もなかった。

 そして最後の一回。左手だけを開いてみせたけど、貴方、右手で間違い無くとっていたわよね?

 でも皆は、左手の中の硬貨にしか気が行かず、右手を検めることもなかった。

 フフフ…

 あとから説明してみればなんてことはないただの子供だましだけれど…」

「いい度胸してるだろ?」

 

北郷は笑った。

 

「その調子じゃ華琳には最初から左手にも同じ物をもってたのがバレてたんだな。」

「あら、私はてっきり最後に高くこれを飛ばした時にこっそり忍ばせたものかと思っていたけど…

 でもそうね、貴方、最後以外左手を一度も開いてないわね。

 普通騙そうという気があるならば、せめて左手でも取るふりくらいするのではと思っていたけど…

 まさかそれまでが計算だったのかしら?」

 

彼は、心底楽しそうに喉を鳴らす。

 

「いや、さすがにそこまでは考えてないよ。

 ただ、そうだな。答えを誘導しようしてたのは最初からだし、ある意味そうなのかもしれない。」

 

悪びれもせず、彼はそう説明した。

 

「自分が有利な状況にある、なにかやらかすのではないかと警戒している、怪しそうなところを観察してやろう。

 そう思った時にはすでに意識の誘導がなされているというわけね。

 そして、それを利用し、本来騙されることのないものに騙される。

 全く、恐れいったわ。」

「なに、運が良かっただけさ。関羽にしろ、春蘭にしろ、ね。」

「種さえわかっていれば。少しでも冷静であれば引っかからない。

 そんなものは敗者の言い訳よ。

 一刀、形はどうあれ貴方は彼女たちを騙し、打ち破り、今まだ生きている。

 その方法が詐欺師まがいの技術であってもね。

 貴方は、今、生きているのよ。

 そのことを誇るべきよ。」

 

彼女は相変わらずたばこを弄びながら、彼をそう評した。

 

「たとえそれが如何に難しく、如何に複雑であっても、使えなければ意味ないの。

 逆に簡単な、単純なものであっても効果さえでれば立派な技術よ。

 まぁ、それであの子たちが納得できるかは別の話だけれど。」

「まぁな。」

 

相槌を打つ彼は、自らの体を見返す。

先ほどの席は、結局北郷の勝ちという結果で幕を閉じるのだが、彼の説明とその結果に皆が皆、納得などできるはずもない。

インチキだの卑怯だのと彼は散々もみくちゃにされ、やっとのことで華琳のもとに逃げ延びた。

その場を収めたのは華琳の一言。

『見抜けなかったあなた達の負けよ。』

その事実に皆衝撃を隠せず、とぼとぼと大広間をあとにした。

 

「でも、俺は本当に運が良かったのさ。

 関羽の時は一度は恋に助けられての勝利、もう一度は奇襲している敵への横槍で止めたようなもんだし。

 それで相手が警戒してくれた上に夜だった。仕込みも見え辛い。煽れるだけ煽れた。

 相手の警戒心はこれ以上ないくらい高まってただろう。

 それに、こっちが鋒を揺らしてたのも効果があったんだろうな。

 そんな状態だったらそりゃムーンウォークもデコピン殺法も…まぁ、通用するってもんだろ?」

「私はそうは思わないけど?」

「そうかい?実際春蘭相手にしたときはバッチリバレてた上に反応されてるしな。

 あの時はあの時で、春蘭が俺が何をしようとも上から叩き斬る気迫がみなぎってたから一撃入ったようなものだったし。」

「運が良かったというのはね、一刀。振り返った結果、たどってきた道が細く見えるからそう思うのよ。

 あなたは、今、自分の手で一見道のないところを歩ききった。

 その上で生きているということを自覚なさい。

 そうでなければあなたは何度死んでいたことか。

 すこしでも自分の技術を信じきれなければ、それだけで結果は大きく変わるのよ。

 たとえば関羽と対峙した時、あなたがちょっとでも足元に気が向いていたら、貴方は関羽に切られていたわ、間違い無くね。

 ほんの少しでも手を抜く素振りがあったのなら、貴方の首は春蘭に跳ね飛ばされていたことでしょうね。

 そしてなによりも、貴方が本当に自分を信じられなければ、ほかでもないあの時に。

 月や詠たちを誘拐しに行ったあの時に死んでいるわ。

 いい?あなたはね、一刀。大馬鹿なのよ。

 あなたとあった時から私はそうずっと言っているわ。

 もしも貴方がもう少し利口だったら、貴方は死んでいたのよ。」

華琳は一刀に、たばこを差し出した。

「私の軍に中途半端はいらないといったのを覚えているかしら。

 その時に、私は言ったわよね。貴方は中途半端ではない、大馬鹿だと。

 まさか自軍が危機の時にまで敵に手を差し伸べるほど馬鹿だとは思わなかったけれど、あなたの螺子切れた馬鹿さ加減は十分本物だってことよ。

 もっとも、あの時はそういうつもりで言ったのではないけれどね。」

一刀は、たばこを受け取らなかった。

「いや、それは最後の一本だから、華琳が預かっといてくれ。全部終わったらその時吸うよ。

 それで…どういうつもり、だったんだ?」

「あら、そう。なら預かっておこうかしら。

 それで…あぁ、そうね。どういうつもりだったか…

 理想を追い求める難しさを自覚して、なおそれを追える強さなんて…あの時の私にはなかったわ。

 だからね、私は決めたのよ。自分の手の中の物だけを守ろうと。

 そして、その範囲を少しずつ広げようと。

 私の手の中にすべてを治めればすべてを守れる…とね。

 そして、あの子にもなかった。あの子はその難しさを理解して、なお私のやり方を否定した。

 あなたに命を助けられたあの戦の前の舌戦でね、彼女は私を否定したわ。

 時に、力にものをいわせる私の方法は間違っていると。

 でも、あの子にも力があったわ。他人を黙らせるだけの力があった。

 それを自覚的には使わず、理想を語る。

 話してみてダメだったら力を使う。私と違うのはその順番だけ。

 あの子は時にそれを見ないふりをし、時代のせいにし、結局私と同じことをする。

 でも、それがあの子の強さだった。理想を抱き、困難であっても捨てない勇気を持っていた。

 それは、私にはできないことだった。

 だからこそ、なおさら…

 どちらが正しいか、なんてものはわからないわ。

 どちらにに正しさがあるかどうかなんてわからない。

 でも、私の眼にはあの子がそう映った。

 だから言ったの。中途半端だとね。

 あなたにくらべて、中途半端。

 あなたのなんと非力なことか。腕っ節では並の兵士より弱い。字もろくに書けない、読めない。

 そんな男が噂だけを頼りに、まさか何百という将を出し抜き、何十万という兵の目を盗んで月を助けだすとはね…。

 それはあの子の目指すべき理想であり、私の目指せなかった理想であったわ。

 皆を助けたい。皆が笑っていられる世界を作りたい。

 誰だってそれを考える。

 ただその『皆』が違うだけ。私は私の持つ全てを『皆』と決めた。

 そうでなければ救えないから。

 あの子は、あの子の関わった全てがそう。

 あの子はすべては救えないとわかっていながら、そう決めた。

 境界に立つ人間には、時には泣いてもらわなければならない。

 それでも私は私の手の届くところだけを救うと決めた。

 あの子は、境界の向こうまで救いたいと願った。

 時に自分が傷つくことがわかっていながら、難しいことだとわかっていながら、そう決めた。

 それに比べてあなたはどう?

 そもそもそんな境界線などなかったかのように平気でいったりきたり。

 あなたは貴方に関わらないものまで救おうとしたわ。

 救えないとか、力がないとか、そんなこと一言も言わずにね。

 それだけでも大馬鹿者だというのに、あなたは本当に救ってみせた。

 救いたいと思ったもの、すべてを救ってみせた。

 私達の当たり前を、あなたは平然と壊していった。

 使者を送る?話し合い?馬鹿をおっしゃい。

 この時代に、そんなことをしたらあっという間に捕らえられ殺されるのが関の山よ。

 だから私達は先に拳を握ってみせる。それが当たり前の時代だというのに…。

 でも、あなたはどう?まず話し合おうとする。

 空手で近づいて、握手をしようとする。

 そんなこと、この世界にいる誰一人だって、考えなかったことよ。

 貴方のやったことはね、誰もが望んで、誰もが諦めることなのよ。

 それを、運が良かったというだけでやられてしまっては…

 私の立つ瀬がないじゃない?」

 

今にも泣き出しそうな顔で、華琳は笑った。

「でもさ、やっぱり俺は運がいいんだよ。

 こっちに来てから、華琳に拾われてからずっと、俺はみんなに支えられてきた。

 何か一つでも違っていたら、俺はとっくに死んでだから。

 あのとき風達に会わなかったら。華琳たちに拾われなかったら。季衣や凪達に会わなかったら。月たちに会えなかったら。

 華琳が死んでしまってたら。関羽に負けてたら。黄蓋を止められなかったら。

 こんな年なのに、年長者らしいこともできずにさ。死んでたんだ。

 でも生きてる。みんなが俺を信じてくれたから。

 生きられた。みんながやらせてくれたから。

 立場が違ったら。華琳やあの子が俺と同じ立場だったら、きっとお前らにだって出来たことだ。

 むしろお前らのほうがうまくやっただろう。

 それがわからないほど若くもないし、見ないふりができるほど…人間できちゃいないさ。

 いままで俺のしてきたことを、華琳はそうやって評価するけどね。

 俺はすべてを助けたかったわけじゃない。

 ただ、ちょっとだけ、みんなに笑っていてほしかったんだ。

 俺は平和な時代に生まれたから。そこでずっと育ったから。

 ずっと、みんなの力になりたかった。支えるとまでは言わないさ。

 ただ、ちょっとだけでもいい。みんなに教えたかった。

 お前たちの今は、全部つながってるって。

 俺が、何の気なしに笑っていられたあの世界に。

 俺のいた世界につながってるんだって。

 なぁ華琳。俺はお前の役に立ててるのかな…」

 

今にも泣きそうな顔をしながら、一刀は微笑んだ。

俺は、お前たちを助けたかった。

お前のために戦っていた。

そんな簡単なことが、恥ずかしくて言えなかった。

年をとったつもりでも、まだ青臭い。

そんな心を知ってか、華琳の顔は先程よりも柔らかくなった。

「まだまだね。」

 

華琳は笑う。

 

「そういうと思った。」

 

一刀は笑う。

「天下をつかむまで、なんて半端なことはもう言わないわ。

 我が覇道の終わりまで、必ず一緒に来なさい。」

 

手を差し伸べる華琳は王妃のように。

 

「終わりなんてつまらないこと言うなよ。

 どこまででも、一緒に行こう。」

 

手を取る一刀は王のように。

 

「ちょっと気障だけど、こんな時にしかいえないし。

 どうですお姫様、正解の褒美ということで…

 Shall we dance?」

 

城壁の上、沈む夕日の中に踊る影が二つ。

物語の終わりは、徐々に近づいていた。


 
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