No.643755

【獣機特警K-9ⅡG】謎めいた二輪の花(後編)【交流】

古淵工機さん

前後編にわたりお届けしてきましたこの事件。
いよいよ解決編です。

■出演
トリッカーズの皆さん

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2013-12-08 18:53:16 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:726   閲覧ユーザー数:659

謎の死を遂げたアビー・アクトンと入れ替わるように出現したアシュリー・アッカー。

その関連性を調べるべく動き出したトリッカーズがまず目をつけたのは、アシュリーを製造した場所であった。

そこは裏通りの小さなロボット開発センター。その製造履歴を管理するコンピュータに、怪盗バニーがハッキングを仕掛けていた。

 

「…えっと、『7ヶ月前にアビー・アクトンの依頼で女性型ロボットの製造開始。アビーはそのまま当店でメンテナンスを実施』か…」

手持ちのパソコンで次々にセキュリティを突破し、必要と思われる情報を片っ端から引っこ抜いていくバニー。

サーバーの履歴を1日、また1日と追っていく。

同じ頃、ラピヌとルプスはアシュリーの後を追っていた。

9to10Ⅱの通用口から出てきたアシュリーの背中に、気づかれないように発信機を取り付けていたのだ。

「アシュリーはあの車に乗ったみたいね」

「一体どこへ行くつもりなんだろう?ラピヌ、ディアとヴィクセンに連絡を」

すぐさま、ラピヌはディアに連絡を入れる。

 

連絡を受けたディアとヴィクセンは、どこから持ち出したのか、ハンググライダーを使ってアシュリーの乗った車を追いかけていた。

「あれね…ラピヌたちがいってた車は。…ん?速度を落とし始めたわね」

アシュリーを乗せた車は、住宅地の中にある低層ビルの手前で停まった。

「あのビル…半年前にアビーが飛び降りたっていう…」

ディアの勘は当たっていた。半年前の事件現場でもある、アビーの自宅だったのである。

アシュリーは車を降りると、その家を目指して歩き始めた。

 

「アシュリーさん、どこへ向かうつもりでしょうか?」

「わからない…地上に降りて様子を見てみましょ」

ディアとヴィクセンは近場の河川敷に着陸すると、アビーの家へと忍び寄る。

 

「頼みましたわよ」

と、きつねまんじゅう形のマイクを壁際に設置する。壁伝いにあらゆる音声を拾うことが出来るという優れものだ。

ディアは、すぐに受信装置を用意する。

 

『ついに帰ってきたわ。久しぶりの我が家…!』

「我が家?アビーは死んでるはず…だいたい、アシュリーはアビーと全く別のロボットよね?」

「でも、彼女はこの家に帰ってきて『我が家』という言葉を発しています。何か引っかかりませんか?」

ディアはルプスとラピヌに連絡を入れる。

「ルプス。ラピヌ。あなたたちの見立てどおり、やっぱり何かおかしいわよ」

無線の向こうではルプスが答える。

「わかった。アビーの身辺を洗ってみるよ」

さて、ハッキングをしていたバニーは…アビーが死亡した日時のデータを発見していた。

「アビー・アクトンが自殺した日はこの日のはず…こ、これは!?」

バニーが驚いたのも無理はない。そこには驚愕の内容が映し出されていた。

 

『アビーの依頼により製造されていたロボットが起動、逃走を図る。その際にアビーの行動データのバックアップが盗難された模様』

「…これだわ!」

バニーはさらに複数のコンピュータにハッキングを試みる。

すると出てくるのは、アビーの人格や行動パターン、すなわちアビーの『心』がコピーされ、例のロボットに移されていたというのである。

 

「これで第一の謎は解けたわね…でもなんでわざわざ、別のロボットに心を移したのかしら…」

バニーはすぐに作業を終えると、風のようにその場を立ち去った。

一方、市庁舎のコンピュータルームに侵入したルプスとラピヌも、アビー・アクトンの身辺に関する情報を盗み出すことに成功。

早速調べてみると、やはり不可解な文字列が浮かんでいた。

 

「『死亡保険に加入』…ね。確かアビーって一人暮らしだったよな?」

「そうね。子供や兄弟姉妹がいるならともかく、一人暮らしなのに保険に入る理由は…あ、待って!?」

「ラピヌ、どうした!?」

「…バニーから入った情報よ。アビーは死の直前に人格を別のロボットに移し変えてたみたい」

「そのロボットの機体データはどうなってるんだ?」

「それも一緒に送られてきたけど…調べてみるわね」

ラピヌは機体データを、現時点で登録されている市民IDと照合していく。

すると、ある一人の人物がヒットしたのだった。

「アシュリー・アッカー…!?あのロボットってまさか!?」

「どうもおかしいぜ!アシュリーのデータも調べよう!」

ラピヌが驚愕する中で、ルプスは盗み出していたアシュリーのデータを調べる。

すると、とんでもない事実が浮かんでいたのである。

 

「アビー・アクトンは保険金の受取人をアシュリー・アッカーに指定。アシュリーはアビーの保険金1500ホーンを受け取った…そうか、そういうことだったんだな!!」

「これで、謎は全部解けたわね!!すぐにディアたちに報告しなきゃ!!」

ルプスとラピヌは、すぐに残りのメンバー全員に連絡を入れた。

…翌日、ラミナ警察署・生活警備課。

「な、なんやて!?トリッカーズが複数の場所から情報盗ったん!?」

驚きの声を発したのはテムナだった。

「そうです。そしてそれらをまとめたと思われる封書が我々の元に届きました」

警備課に入ってきたミンスターが、一つの封書を手渡す。

ミウが恐る恐るその中身を開けると、そこに書かれていたのはにわかには信じがたいような事実だった。

 

「…なるほど…アシュリーはアビーだったってわけね…」

「死んだフリして保険金受け取るんが目的やったんか!あいつめ!!どうりで服のデザインが似すぎてる思うたわ!!」

「でもこの場合、容疑はなんになるのかな…」

「決まっとるやろ!自殺した思わせてまんまとカネせしめたんや。つまり保険金をダマし盗ったっちゅうことや!!」

「よし!すぐに現場に出向くわよ!!」

…そして、ラミナ郊外の小さな低層ビル。例の事件現場である。

そこに一台のミニパトが停まると、ミウとテムナが降りてきた。

「失礼します。アシュリー・アッカーさんですか?」

ドアが開き、中からアシュリーが出てきた。

「ええいかにも。私がアシュリー・アッカーです…あら、あなたたちは確か9to10Ⅱで展示会を見に来てくれた…」

と、アシュリーが言い切らないうちにテムナが切り返す。

「それはそれはよう覚えてはりますなァ、アシュリーさん…いや、アビー・アクトンさん?」

 

その名前を聞いたアシュリーは一瞬面食らったが、何事もなかったかのように笑ってみせる。

「あ…アビー・アクトン?さぁ、あの方は半年前になくなったと聞きましたが?」

「ええ、確かに書類上ではね。でもあなたはこうして生きてるじゃありませんか」

「待って。あ、あなたたち、言ってることが…ちょっとわからないわ。と、とりあえず少し落ち着いてはいかがかしら…?」

平静を装ってみせるアシュリーだが、その声は明らかに震えている。

「へー。せやったらなんで声が震えてはるんですか。目も泳いではりますけど?」

「そ、それは、その…あ、アビー・アクトンは、私に保険金を、私に、アシュリー・アッカーに、渡して…」

「そうそう。その保険金のことでね…こんなのが出てるんですよ」

 

ミウがアシュリーに突きつけたもの。それは逮捕状だった。

「あ、わ、私は…そんな、アビー・アクトンが、保険金を、私が、アシュリー…わたし…アビー…わた、ワタ…アシュ、アビー…?」

「どうしたんですか?素直に吐いたらどうですか。それともこのままシラ切り通すつもりですか?」

「わた、わたし、アビー…アシュ、リー…わたしがっ…わた…」

呂律が回らなくなっているアシュリーは顔面蒼白になり、目からは涙がこぼれ始めていた。

「ねえ!?どうなんですか!!アビーさんっ!!」

押し迫るミウの気迫に耐えかねたのか、ついにアシュリー…いや、アビーはその場に泣き崩れてしまった。

 

「わっ、私が…私がっ…アビー・アクトン…ですっ、うぁ、うああぁぁぁぁぁぁぁ…!!」

テムナはアビーの背中に手を置くと、優しく語りかけるように告げた。

「よう自首しましたなアビーさん。…さ、ウチらと一緒に署まで来てもらえますか?」

「うっ、ぐす…は、はい……」

自らの死を偽り、保険金を騙し取った美人ロボットの逮捕の瞬間であった。

『アシュリー・アッカーと名乗っていたアビー・アクトンは昨日、保険金詐欺の容疑で逮捕され…』

カチャーシーの店内のテレビから流れるニュースを見て、ユキヨとタカトは考えていた。

「…なんだか、こうしてみるとアビーさんって可哀相だよな…」

「自分の死を偽って保険金を受け取るなんて…でも、考えてみると本当に悲しいわよね…」

「今頃どうしてるかな…あの人刑務所の中なんだろ?」

 

すると隣のテーブルに座っていたテムナが答える。

「いや、あの人はきっと帰ってくるで。今度こそ真面目なロボットになってな」

「テムナさん!」

さらにミウが続く。

「嘘をついたことを相当後悔してたみたいだし…これで懲りてくれればいいんだけどね」

「ま、重苦しい話はナシや!蘭さーん!いつもの頼むわー!!」

「はいよ!すぐ作るからね!!」

…後日、アビーは獄中で執筆した自身の著書の中でこう綴っている。

 

『人生は一度しかない…。私はその事実から逃げ出したかっただけなのかもしれません。

 しかし、一度人生を捨てて生まれ変わったつもりでも、実際にはそんなことはなかったのです。

 心が生きている限り人生は続いているものであり、結局のところ私はその続きを生きているだけにすぎないのです…。

 死を偽ってまで欲しかった物…でもそれは私が本当に欲しかった物だったのでしょうか?』

 


 
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