No.640503

真・恋姫†無双~黒の御使いと鬼子の少女~ 10

風猫さん

白髪の鬼子と黒の御使いの、守るために戦い抜いたお話

真・恋姫†無双の蜀√のお話です。

オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話なので、大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。

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2013-11-27 22:18:26 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:1406   閲覧ユーザー数:1307

 そこにいたのは、蒼髪紅眼の女性だった。まさしく美少女と呼ぶにふさわしい容姿だが、その表情に浮かんでいるのは何とも意地の悪そうな笑顔だった。

 

「むぅ、そう言われると返す言葉もないが、なら、趙雲にはこの二人の力量がわかるというのか?」

 

 そう言われた女性、趙雲は小さくお辞儀してそれに答える。

 

「当然。武を志す者ならば姿を見ただけで只者でないことは分かるというもの。もちろん、その護衛の方も、な」

 

 その目が、スッと細まりながら俺を見る。その目は、まさしく武人の目。相手の力量を図るための目だ。

 

「それはこちらの言葉でもある。あなたとて相当な実力の持ち主と見えるが」

「ふふっ、さてそれはどうかな?」

 

 なんて会話をしていると、公孫賛が感心したように言葉を漏らした。

 

「へぇ~、星がそう言うなら確かに腕が立つのだろうな」

 

 どうやら、公孫賛は全面的にこの趙雲を信頼しているようだった。まぁ、確かに信頼に足る人物なのは何となくだが、すぐにわかった。

 

「ええ。そうであろう、関羽殿?」

「少なくとも、貴女の全力と張り合えるほどには」

「鈴々もそう見たのだ! でも、鈴々のほうがちょこっと強いのだ!」

「おやおや、それは興味深い」

 

 その言葉を聞いてもなお、趙雲は涼しげにその言葉を流してしまう。やはり、相当な手練れだ。その態度が全てを物語っている。

 

「まぁ、あの趙子龍ならそうだよなぁ……」

 

 なんて言葉を北郷が漏らした瞬間、その態度が一気に鋭いものへと変化した。

 

「……っ!? ほぉ、そんな貴方も、どうやらなかなか油断のならぬ人のようだ」

「へっ?」

 

 言った本人が一番驚いてどうするよ。そんなツッコミを心で入れながら、話の成り行きを傍観することに決めた。

 

「我が字をいつお知りになった? 伯珪殿は我が字を口にはしておらぬはず」

「そうだよな。この場の誰も子龍って字を口にしてないのに、どうして知っていたんだ?」

「え、えーっと……その」

 

 ……このままだと、まずいか? そう感じた瞬間、そこに割って入った胸、もとい劉備がその立派な胸をさらに張って自信満々に告げる。

 

「当然だよ! なんたってご主人様は天の御使いなんだから! エッヘン♪」

 

 おいおい、なんて思ったのも束の間だ。

 

「いや、その理屈はおかしい」

 

 至極真面目な顔で趙雲に真っ当なツッコミを入れられていた。

 

「えぇ? おかしいかなぁ……?」

「そりゃそうだろうさ。理由の説明になってないんだから」

 

 まったくその通りだ。そんなこと言ったら、それこそ何でも天の御遣いだからの一言で済んでしまう。だが、今回の件に関してはそれでも間違いでもないのかもしれない。

 

「いや、まぁ、確かにそうなんだけでどさ。でも、あながち間違いでもないっていうか……」

 

 その説明を聞いた時、それが嘘ではない事を感じたのか、趙雲はさっきまでの鋭い気配を緩めた。

 

「ほぉ、噂を聞いた時には眉に唾を付けて聞いたものだが、どうやら本物の天の御遣いに出会うとは」

 

 だが、北郷はそれに反論する。

 

「本物かどうかは分からないよ。でも、彼女たちが俺を本物だと信じてくれるなら、俺は本物でありたいと思う」

「ご主人様……」

 

 北郷の言葉を聞いた趙雲はにやりと笑う。

 

「……どうやら、かなりの器量を持っているようだ」

 

 それに不安そうに反応したのは公孫賛だった。

 

「おいおい、まさか私を捨てて北郷の元に下るとか言わないだろうな? 星」

「さて、どうでしょうな。しかし、天下を憂うものとしては徳のある主人に仕える事こそ至上の喜び。……北郷殿がどのような主君になるか、楽しみではありますな」

 

 どうやら、北郷に何かを見たようだ。その目から期待感という物が感じ取れる。だが、当の本人はあまり嬉しそうではなかった。

 

「主君、ねぇ。そんな気はないんだけど」

「でもでも、それでも私たちのご主人様なんだよ?」

「あー、その、そういう柄じゃないから、できればご主人様って呼ぶのは勘弁してもらいたいなぁって思っているんだけども」

 

 本心、だろうなぁ。と、言ってもそれは無理という話だ。

 

「だぁーめっ! ご主人様のお願いでもそれは聞けないよ」

「桃香様の仰る通りです。我らの主人となった以上は呼び方なども受け入れて戴かないと」

 

 はぁ、とため息を吐くその様は、どこか諦めのようなものが感じられる。

 

「まっ、諦めろ。この役目を買った以上はそれを最後まで貫き通せ」

 

 で、俺はその諦めの背を押すワケだが。

 

「そういう、もんかねぇ……」

「そういうもんだ」

「……はぁ。って、こんなことは後で話すことだった」

 

 頭を振って北郷は話を戻してしまう。若干面白がっていたのか、趙雲が誰にも聞こえないような小さな舌打ちをしているのが見えた。なかなかいい趣味してるな、ホント。

 

「で、どうだろう? 俺達の参加、認めてもらえるだろうか?」

「そうだな、桃香の実力はよく知っているし、他の三人も星が実力を認めるほどだ。一抹の不安はあるが、私の所には他に人がいない。今は藁にも縋りたいというのが本心だ。だから、どうか私に力を貸してくれ」

 

 差し出されたその手を、劉備は両手でしかと掴む。

 

「もっちろん! 私、すっごく頑張っちゃうんだから!」

 

 ここに俺達の公孫賛陣営への参入が決まった。それを確認した趙雲が俺と関羽たちへ向き合う。

 

「関羽殿、張飛殿、そして御剣殿も宜しく頼むぞ」

 

 その言葉を投げかけられた俺達はそれに力強い返事を返した。

 

「ああ、我が力、とくとご覧じろ!」

「鈴々にまかせるのだ!」

「頼まれた以上、その信頼を裏切ることだけはしないと誓う」

 

 そして、俺達は陣割が決まるまでの間、少しの休息を取ることとなったのだった。

 

~数時間後~

 

侍女に呼ばれた俺達は城門の前へ向かった。そこには、完全武装した兵士達がずらりと整列した光景が広がっていた。

 

「う、うぉぉ……こりゃ、壮観だなぁ」

「…………」

 

俺は、あまりそうは思わなかった。何だかんだで戦場へ向かう兵士の列を何度か見たことがあるからだ。それに、情けない話、若干緊張しているからだ。

 

 今までの戦いとは違う。一対一や一対多数の戦いではない。多数対多数の戦い、それは俺にとって完全に未知の領域だ。当然、行動や思考といった物を広く持たねば、仲間どころか、下手すると自分が死にかねない。

 

(ちっ、我ながら本当に情けない……!)

 

 こんなんでは師匠に顔向けできん。そう思った俺は自身の頬を叩いて気合を入れ直す。と、後から来ていた劉備が北郷と同じような声を出していた。

 

「すごーい! これ、全員、白蓮ちゃんの兵隊さんなの?」

「ああ。と、言いたいところではあるんだが、正規兵半分、義勇兵半分の混成部隊だから、完全な兵、とは言えないがな」

「そんなに義勇兵が……」

 

 北郷が漏らした言葉、だが、それとほぼ同じことを俺も思っていた。正規の軍と同等の人数が集まる。その事実が指し示すことは、民の不安だろう。

 

「それだけ、大陸の情勢が混沌とし、民の心に危機感が浮いてきているという事でしょう」

「……だろうな」

 

 趙雲の細まった目が、その状況を決して良しとしていないのが感じられる。

 

「ふむ……。確かに最近、大陸の各地で盗賊などの匪賊共が跋扈しているからな。無理もない」

「いったい、この国はどうなっていくのだー……」

 

 力なく零れた言葉、それと真逆の力強い声を発するは趙雲。

 

「民のため、庶人のため、間違った方向にはいかせやしないさ。この私が、な」

 

 その目は真剣そのもの。そして、その目に宿る光は、関羽たちと一緒だ。

 

「……趙雲殿」

 

 一歩、彼女へ近寄った関羽は自身の右手を差し出した。

 

「関羽殿?」

「あなたの志、深く感銘を受けた。よければ、我が盟友となってはもらえないだろうか?」

「鈴々もお友達になりたいのだ!」

 

 二人から差し出された手を驚いた顔で見ていたが、すぐにそれは穏やかな笑みへと変わる。

 

「どうやら、志を同じくする者は考えることもにかよるようだ」

 

 その笑顔のまま、趙雲は二人の手を力強く握り返した。

 

「友として、この乱世を共に収めよう」

「ああ!」

「やってやるのだ!」

 

 と、そこへ一つの影が飛び込んでくる。

 

「私もそこに入れてよ~!」

 

 劉備は握られている三人の手に自分の手を重ねた。

 

「皆で、平和な世界を作ろう! 大丈夫! みんなで力を合わせればあっという間に出来ちゃうんだから!」

 

 何て事を言った劉備だが、

 

「そんな気軽に出来るわけないのだ。お姉ちゃんはお気楽なのだ」

 

 と、張飛に言われた挙句、

 

「そう言うな。時にはそういったお気楽さも必要というものだ」

 

 くっくっく、と趙雲に意地の悪そうな顔で笑われながらそんなことを言われる。

 

 やっぱ、こいつなかなかいい性格してんな。なんて思っていると、

 

「そうだな。……我が名は関羽、字は雲長、真名は愛紗だ」

「鈴々は鈴々! 名と字は張飛と翼徳なのだ!」

「劉備玄徳! 真名は桃香!」

 

 三人が改めて真名を含めての自己紹介をする。

 

「我が名は趙雲、字は子龍。真名は星という。今後とも、よろしく頼むぞ」

 

 そして、再び固く握られる手。それは、彼女たちに新しい絆が生まれた瞬間だった。

 

 

「お~い、私だって救国の志はあるんだぞ~」

 

 なんて言いながら公孫賛が4人の元へ近づいていく。

 

「あっ! ごめん、白蓮ちゃん!」

「別にいいけど。次は忘れないでくれよ?」

 

 あ、これは。絶対ヤツが動くと思った時にはすでに動いていた。

 

「まぁまぁ、そこまで拗ねなくてもよいではありませんか」

「ばっ! す、拗ねてなんかないさ!」

 

 そう言いながらも、顔はほんのりと赤くなっていた。そんな様を見ていた皆が噴き出すように笑い出した。

 と、そんな会話をしているうちに陣割が決まった。俺達の部隊は左翼を率いることになったが、

 

「なんつーか、ずいぶんと大胆な采配だな」

「そうですね。新参者の我らに左翼の全部隊を任せるとは。なかなか剛毅な方ですね、白蓮殿も」

「それだけ期待されてるってことじゃないか?」

 

 まぁ、単純に人が少ないだけって可能性もあるが、そうだとしても、左翼全部隊を任せるのは、やはり、それなりに期待されているという事だろう。

 

「俺もそう思う」

 

 そんな会話に入ってきた北郷は少し体調が悪そうに見えた。

 

「おい、だいじょう」

 

 と、聞こうとしたのと同時に、白蓮の出陣の声が上がってしまった。

 

「諸君! いよいよ出陣の時がやってきた! 今まで幾度となく退治し、そのたびに逃げ回っていた盗賊共、今日こそ根絶やしにしてくれよう!」

 

 おおー! とテンションを上げる兵たち。それを聞いた公孫賛は自身の右手を挙げ、さらに演説を続ける。

 

「行くぞ、公孫の勇者たちよ! 今こそ功名の好機! 各々存分に手柄をたてぃ!」

『ぅうぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』

 

 大地を揺るがす鬨の声を聞いた公孫賛は上げていた右手を勢いよく下げながら、出陣の号令を高らかに宣言した。

 

 次々に城門を出て行く兵達に続いて俺達も隊を率いながら城門を抜ける。

 

「盗賊相手に初陣、か」

 

 北郷がそうつぶやいたのだが、相変わらず顔色が悪い。そのことに気が付いたのか、関羽が体を気遣う。

 

「大丈夫ですか? 先ほどから元気がないようですが……」

「あ、あはは。やっぱバレるか」

 

 馬に揺られながらも頭を掻くその姿は、頼りない。いや、普通ならこうなるのが当たり前か。

 

「こういうの、初めてだからさ」

 

 そう言って手綱から離された手は、震えていた。

 

「俺が住んでた世界じゃさ、戦いなんて他人事で、戦争が起きたなんて言われても全然ピンとこなかったんだ。でも、今その戦いへ身を投じようとしている。……それが、怖くてさ」

 

 平成の学生がいきなり命のやり取りをする戦場へ放り出される。その恐怖は計り知れない。俺は飛ばされた先で戦う術を持ってから戦国の世へ出て行った。だからこそ、まだマシだったと言えるだろう。北郷はその術もなく戦場に出る。むしろ、しっかりと話せるだけで評価できるレベルだ。

 

「天の国って、戦は無かったの?」

 

 不思議そうに聞いた劉備へ弱々しい笑みで返事を返す北郷。

 

「天の国って言っても所詮は人の住む所だよ。争いや戦は当然あったよ。でも、俺のいた国、いや、俺の周りは平和でさ。ケンカとかはあったけど、戦みたいな戦いは無かったんだ」

 

 空を見上げる北郷。その瞳は必死に心の中で戦っているように見える。

 

「桃香や愛紗、鈴々、玄輝達は平気そうなのに、俺だけが怖がってたら世話ないよな」

 

 乾いた笑い。だが、それは違う。

 

「馬鹿を言うな。戦いに赴く人間は皆、恐怖と戦っている」

「玄輝?」

「俺とて、慣れない戦いに、正直言えば怯えている。今まで一対一か一対多数の戦いばかりだった。そういう意味じゃ俺もお前と同じようにこの戦が初陣だと言える」

「でも、そんな風には……」

「そんなモンに怯えてなんかいられないのさ」

 

 俺は手綱から少し右手を離して、軽く握って、再び開く。

 

「それは、関羽や張飛、劉備も変わらんだろ?」

 

 俺の問いかけに関羽は“ええ”と言いながら力強く頷いた。

 

「戦いを怖がるという事は人として当然の事、何も恥じることはありませんよ」

「そうだよ。戦うっていうことは人を傷つけること。本当なら、そんなこと、やっちゃいけない」

「だけど、不条理な暴力には、それに向かって敢然と立ち向かうしかないのだ」

「まっ、要は怖がっていたら助けたい者、守りたい者が守れないって事だ」

 

 一瞬驚いた顔をするが、すぐにさっきまでの気弱な顔に戻ってしまう。仕方ないと言えばしかないのだが。

 

「強いな、四人とも」

 

 だが、その顔は次の一言で少しだけ持ち直す。

 

「えへへ、私のはカラ元気だけどね。愛紗ちゃんや鈴々ちゃんみたいに武芸の嗜みもないし」

 

 苦笑しながらそういう彼女の手も、よくよく見れば、北郷と同じくらい震えていた。

 

「そう、なんだ。じゃあ、俺の方がほんの少しだけマシ、なのかな?」

「ご主人様は何か武芸の嗜みが?」

「これでも一応、剣道部員だったんだ。それに、爺ちゃんから剣術を叩きこまれていたから、それなり、かな? まぁ、木刀だけしか扱ったことはないんだけど」

「剣術? どこの流派だ?」

 

 純粋に気になってしまった。まぁ、そこらへんは癖のようなものだ。

 

「何て言ってたっけな? 覚えてないけど、とにかく先手必勝を叩きこまれたなぁ……」

「先手必勝、か」

 

 おそらく師匠の剣術ではないだろうな。たしか、示現流といったか? その流派がそれを叩きこんでいると言った噂を聞いたことがあるから、それだろう。

 

「んー、木刀って木でできた刀の事なのかぁー?」

 

 俺と同じように気になったのか、張飛がそんなことを聞いてくる。

 

「うん。だから、真剣は今まで使ったことがないんだ」

 

 そう答えた北郷は腰に携えている剣を慎重に撫でた。パッと見ただけで安物とわかるが、それでも立派な剣だ。十二分に殺傷能力がある。

 

「……人を傷つける物だって考えると、なかなか抜けないな」

「ですが、ご主人様の身を守る術は腰間に佩く三尺の秋水のみ。……お優しいことは大事ですが、己の価値というものを、どうかお考えください」

「そうそうなのだ! お兄ちゃんと弱い者イジメする奴とでは命の価値が違うのだ!」

 

 はたして、それはどうだろうか?

 

「……なぁ、張飛。一つ聞きたいのだが、いいか?」

「んにゃ?」

「もし、お前が斬ろうとしている賊が、家族の命を守るために仕方なく賊をやっているとしたら、それも悪だと斬り捨てるのか?」

「そんなの当り前なのだ! どんな理由があってもそんなことしちゃいけないのだ!」

「……たとえばの話をしよう。たとえば、そうだな。劉備が餓死寸前、明日にでも死んでしまいそうになってしまったとする」

「え、ええぇ!? 私!?」

 

 突然名前が出たことに驚いているが、あえて無視する。最初は関羽を使おうかと思ったが、どうにもそんなことになりそうにない。彼女ならそんな状態になる前にどうにかしてしまいそうだったからだ。

 

「でだ、お前は当然金なんて持ってないし、自身もここ四、五日食事をしていない。そんな時、目の前に食べ物をたくさん積んだ商人の一団が通り過ぎようとしている。手には農作業に使う鎌がある。襲えば自分の命だけでなく、劉備の命も救える。だが、ここで見逃せば劉備は確実に死んでしまう、そんな時、お前はどうする?」

「それは、商人にお願いして分けてもらうのだ!」

「それが無理だったら? “売りモンを乞食になんざ渡せるか!”なんて言われたら?」

「…………」

 

 少々キツイ質問かもしれないが、どうにもさっきの言葉が癪に障ったのだ。命に価値などない。だからこそ俺は平等に扱う。賊だろうがなんだろうが人は人、殺す以上は人として殺す。そこに善悪を持ち込むつもりはない。

 

「……それでも、ダメなのだ。弱い者から奪う事だけはダメなのだ!」

「たとえ、劉備を失うことになってもか?」

「…………」

 

 張飛は、俯いたまま頷いた。この場でそう言い切るという事は、彼女にもそれなりの理由があるのだろう。そう考えるまでに至った、理由が。

 

「……そうか、お前はそう決断するのだな」

 

 俺は馬を近づけて張飛の頭をやさしくなでる。

 

「すまなかったな。少し意地の悪い質問だったな」

「……う~」

 

 だが、張飛は頬を膨らませて拗ねたように顔を背けてしまう。まぁ、当たり前の反応と言えば、そうなのだが。

 

「この戦いが終わったら飯でも奢ってやるから、な?」

「……本当?」

「生憎、約束を破るのは趣味じゃない」

「なら、許してあげるのだ!」

 

 で、あっさりと機嫌を直すちびっ子猛将、張翼徳なのであった。

 

「玄輝殿」

 

 後ろから話しかけてきたのは、関羽だった。横に並んでさらに小声で話しかけてくる。

 

「先程の話なのですが……」

「……すまなかったな。ちょいと俺が大人げなかった」

 

 だが、関羽は首を振って話を続ける。

 

「いえ、あなたの話にも一理あります。ただ、気になったのです」

「俺が、どっちを選ぶのか、か?」

 

 彼女はそれを無言で肯定する。

 

「……俺は迷わず商人を襲う」

「っ!」

「だが、絶対に死人は出さないし、怪我人を出さないように最大限の努力はするだろうさ」

「……玄輝殿」

「俺は、賊だろうがなんだろうが人は人、そう考えてるってだけの話だ」

 

 と、そこでさっきから考えていたことを彼女に提案した。

 

「関羽、少し頼みがあるんだが……」

 

あとがき~のようなもの~

 

どうも~、おはこんばんにゃにゃにゃちわ、風猫です。

 

ついに、メンマ、じゃない、趙子龍こと星の登場です! そういえば、星の声優さんって云々と書いたこともありましたが、自分の勘違いでした! 恥ずかしいw てなわけで、この部分を修正です。

 

さて、いよいよこの時代においての本格的な戦闘が始まります。果たして、玄輝の頼みとは? 期待せずに、待て、次回!

 

てなわけで、何かありましたらコメントの方にお願いします~(ネタバレは、悲しみしか生まないって、分かれ!……ネタですよ?)では、また今度!


 
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