No.640342 真・恋姫†無双~黒の御使いと鬼子の少女~ 9風猫さん 2013-11-27 07:57:14 投稿 / 全6ページ 総閲覧数:1594 閲覧ユーザー数:1403 |
酒家での話し合いから数時間後、俺達の目の前には兵士の格好をした人間がずらりと並んでいた。ただ、雪華は完全に怯えていて、俺の腰をガッチリとホールドしているが。
「こりゃまた、結構集まったな」
「だな。ここまで集まれば予想よりもいい結果を出しそうだな」
北郷と一緒に集まった人間を少し呆然としながら見ていると、関羽がこちらによって来た。
「どうでしょうか?」
「いや、十分どころか十二分だよ」
「よかった。ご主人様から預かったぼぅるぺんが破格の値段で売れましたからね。おかげで百人ほど集めることが出来ました」
「そっか、それだけ居ればホントに十二分だよ」
だが、張飛は少しだけ納得がいって無いようだった。
「でも、せっかくのお金を全部使うのはやりすぎだと思うのだ。ちょっとくらい残しておいても良かったんじゃないかなー?」
まぁ、張飛がそう思うのも無理はない。金が全て、とは思わないが、無いよりかはある方がいい。だが、この場合はこれで正解だ。
「いや、この場合はこれで正解だ。下手に出し渋って中途半端になるより、ここで出し切った方が相手に対する印象は良くなる」
それに頷いて北郷は話を繋ぐ。
「全部使って陣容を整える。それが今の俺達にとって一番大事なことだよ」
言い終えた後で、彼は劉備へと視線を向けた。
「あとは桃香のハッタリ次第だな。頼んだよ、桃香」
「まっかせなさぁい!」
と、立派な胸をさらに張る劉備を、不安そうに、しかし、少しだけ心強いような眼で北郷は見ると、その視線を公孫賛の城へと向ける。
「それじゃ、行こうか」
その一言で、皆が城へ向けて足を進めて行った。
~公孫賛の城:城内~
「……今のところは、図に当たってるかな?」
北郷が小さく呟いた言葉。それはこの状況が彼の予想通りの展開だったからだろうか?
門へたどり着いた俺達は少し待たされ、それから丁寧な扱いで玉座の間へと通された。それが意味しているのは、やはり期待されている、という事だろう。人材不足な陣営、という話を聞いていたが、あながち間違いではなかったようだ。
「では、こちらへ」
侍女らしき人に案内され、俺達は玉座の間へと足を踏み入れた。
~公孫賛の城:玉座の間~
「桃香! ひっさしぶりだなー!」
「白蓮ちゃん! きゃー! 久しぶりだねー!」
……あれ、これいいのか? 何て言うのか、いいのこれ? 公孫賛と劉備はきゃっきゃとはしゃぎながら抱き着いている。年頃の女子らしい行動ではあるが、はたして、三度目だが、いいのか?
「慮稙先生の所を卒業して以来だから、もう三年ぶりかぁ。元気そうで何よりだ」
その表情は、太守、というよりは一人の友としての顔だった。余程仲が良かったのだろう。
「白蓮ちゃんこそ、元気そうだね♪ それに、いつの間にか太守様だもん。すごいよー!」
「いやぁ、まだまだこれからだよ。私はこの位置で止まってらんないよ、太守とて通過点の一つだ」
和やかな雰囲気で話す二人。それが、少しだけうらやましいと思ってしまった。とっくに失くした感情だと思っていたが、まだ残っていたようだ。そのことに驚いていると、公孫賛が劉備に今までの行動について聞いていた。
「桃香、お前はどうしていたんだ? 全然連絡取れないし、噂も聞かなかったから心配してたんだぞ?」
「んとね、色々なところで人を助けてた!」
「ほおほお、それで?」
「それでって、それだけだよ?」
いい笑顔で言ったその言葉を聞いた公孫賛は一瞬固まった後、
「はぁーーーーーーーーーーーーーーー!?!?!?」
玉座の間を吹き飛ばしかねないぐらいの大声を出していた。
「ひゃん!?」
劉備は可愛らしく驚き、雪華は腰をがっちりホールドってか、痛い痛い! 何かがキマって、イタタタタ!?
「ちょっと待て桃香! お前、慮稙先生から将来を嘱望されていたぐらいなのに、そんな事ばっかやってたのか!?」
何とかホールドを少し弱めたところで俺は少し驚いた。慮稙という人物がどんな人間かは知らないが、あの劉備が嘱望されるほどの才を持っていたことにだ。どんな人間であれ、嘱望されるという事は、そいつに何かがない限りはされるもんじゃない。
「う、うん……」
何故だか申し訳なさそうに頷く劉備を公孫賛はそのままの勢いでさらに問い詰める。
「どうして!? 桃香ぐらい能力があったら都尉ぐらい余裕でなれるだろうに!」
……どういった役職なのかは分からんが、少なくともそれなりの地位であることは容易に想像できた。この話を聞くと、実は凄いやつなのか? もしや、普段の態度や行動は計算されているのか? なんて考えてしまうが、劉備はそういった類の人間ではないと一蹴する。なぜなら、
「そう、かもしれない。でもね白蓮ちゃん。私、どこかの県に所属して、その周辺の人達しか助けられない、それが嫌なの。その陰で泣いている人を見過ごせないの」
まぁ、要はこういうことだ。劉備にとって手の届かない人を助けられない地位なぞ論外、という事だ。そんな人間が計算して行動なんてできるとは思えない。
「だからと言って、お前一人が頑張っても高が知れているだろうに……」
公孫賛の言い分は尤もだ。実際、彼女たちも自身の行動に限界を感じていたからこそ、天の御使いの噂を信じて行動していたわけだし。だが、今は違う。
「そんなことないよ? 私にはすっっっごい仲間たちがいるんだもん♪」
「仲間?」
そう言われ、公孫賛がようやく俺達へ視線を向けた。
「桃香が言っているのは、この5人のことか?」
「そうだよ。んとね、関雲長、張翼徳、それに管輅ちゃんのお墨付きの天の御遣いの北郷一刀さんと、御剣雪華ちゃんと、その護衛の御剣玄輝さん!」
その説明に出てきたある人物の名前を聞いて公孫賛が驚きの声を上げた。
「管輅? 管輅って、あの占い師の?」
「うん! 白蓮ちゃんも聞いたことない? 東方より飛来する二つの流星と共に天の御遣いが舞い降りる、って占い」
その話を聞くと、公孫賛の眉根に皺ができる。
「聞いたことはあるさ。最近じゃ城下でもかなりの噂になってたからな。でも、眉唾物だと思ってたよ」
「そんなことないよ! 一刀さんと雪華ちゃんは本物だよ!」
「ふーん」
だが、その目は完全に疑っている。彼女も劉備の性格を知っているからだろう。こいつら、劉備をだまくらかしてるんじゃないか、と思っているのだろう。公孫賛は俺達に近づいてきて頭の先からつま先までじろじろと見ていく。それに思わず北郷がたじろぐと、その様子に劉備が抗議の声を上げる。
「あー! 白蓮ちゃん、私の事、疑っているの!?」
「いや、桃香のことは疑ってないよ。一度も嘘を吐いたことがないの知ってるし、そんなことはしないって信じてるよ。だけど……」
そこで言葉を区切ると、再び北郷を横目で見ながら口を開く。
「それっぽくないなぁ、って思ってさ」
だが、そんな言葉をものともせず、劉備は自信満々で公孫賛に言葉を返す。
「そんなことないよ。私には見えてるもん。二人の背後に暖かい後光が!」
それに少し気恥ずかしそうな顔で北郷が続いた。
「後光があるかどうかは別として、一応、桃香たちと行動をさせてもらってる。宜しく、公孫賛さん」
「と、桃香お姉ちゃんには、お、お世話になってます。よ、よろしく、です」
その言葉を聞いて、公孫賛は少し驚いた顔をするが、すぐに笑顔になって北郷へ右手を差し出してきた。
「桃香が真名を許した、という事は一角の人物なのだろう。私の事は白蓮でいい。友の友は私にとっても友だ」
……こいつ普通にいい人だ。決して目立つことはないけど、周りの人からいい人だって分かってもらえているタイプだよ。なんだかんだで信頼されるタイプの人だよ。
差し出された手を、北郷はしっかりと握って、改めて挨拶をする。
「えっと、俺は北郷一刀。よろしく」
「よろしく頼む」
そういうと今度は雪華へ手を差し出す。
「よろしくな!」
「あ」
差し出された手を慌てて雪華は握る。それを爽やかな笑顔で頷いく公孫賛を雪華は少し憧れたような眼で見ている。
「よろしく、お願いします……」
「ああ」
そして、俺の方へと視線を移す。
「よろしくな」
「こちらこそ」
差し出された手を握ると、彼女は俺の顔をじっと見る。
「何か?」
「いや、思ったよりも若いなぁと思って」
「……はぁ」
この玉座の間に入る前から頭巾は外している(雪華は俺が適当な理由を押し通して外していない)のだが……。
「いや、遠くから見るとそこそこ歳いっているように見えたからさ」
「それは、老け顔、ということで?」
「あ、いや!? す、すまない! 悪気があって言ったわけじゃないんだ!」
慌てて否定する様子を見て、小さく笑った。
「あなたと会ったばかりだが、そんな人間ではないことぐらいは分かる。確かに老け顔と呼ばれてもおかしくはないのは自覚している」
おそらく、整えられないで伸びっぱなしになっている髪が原因だろう。あとは、無精髭か。今度剃らねばなるまい。
「そ、そうか。いや、すまないな、ホント」
そういって公孫賛は俺から目線を逸らして劉備へと再び戻す。
「……で、だ。桃香が私の事を訪ねてきたのは旧誼を暖めに来たわけだけじゃないと思うんだが? 本当の要件はなんなんだ?」
「やっぱ、わかっちゃうよね」
えへへ、と笑う劉備がその次の言葉を口に出すときには既に真剣な表情へ変わっていた。
「白蓮ちゃんのところで盗賊さんを退治するために義勇兵を募っているって聞いたから、私たちもお手伝いしようと思って」
その言葉を聞いた瞬間、公孫賛の顔が一気に花開いたように明るくなる。
「本当か!? それは助かる! 兵数はそれなりに揃っているんだが、指揮のできる人間が少なくってな。ずっと悩んでいたんだよ!」
劉備の手を握って上下に激しく振る様を見ていると、どうやらかなり深刻な悩みだったようだ。たしかに、万の兵がいても率いる人間が二人じゃどうしようもない。まぁ、逆もまた問題ではあるのだが。
「で、聞くところによれば、かなりの兵を連れてきてくれたらしいけど……」
「あ、ああ! う、うん! たくさん居るよ、兵隊さん」
……おいおい、動揺しまくりじゃないか。こっそり横目で北郷を見れば、肩を落として苦笑いをしていた。
「そうかそうか。……で?」
公孫賛の口調から俺はすべてを悟った。ああ、もはや終わったな、と。
「で、でって何かなぁ?」
「本当の兵士は何人くらい連れて来てくれているんだ?」
やっぱりなぁ。そりゃバレるよなぁ。あんなあからさまに動揺してたら、どんな人間でも疑うよな。
「あ……あうぅ……」
で、劉備は凄く気まずそうな表情で小さくなってしまった。それを小さく笑いながら公孫賛は劉備に話しかける。
「桃香の考えていることは分かるさ。でもな、私に対してはそんな小細工はしてほしくなかったな」
「うぅぅ……バレてたんだ」
むしろ、あれだけ動揺していてバレていないと思っていたのか?
「これでも太守をやっている身だ。これぐらいの事を見抜けなくては、生き残っていけないさ」
苦笑しながらそう言っている公孫賛の目は、少し悲しそうに見えた。だが、それを察してか、そうでないかは分からないが、北郷が一歩前に出る。
「ごめん。それは全部、俺の作戦なんだ。だから桃香は悪くないんだ」
そして、劉備を背中で庇いながら深々と頭を下げた。その様子を見て、公孫賛はその表情を変化させる。その顔はまるで誰かに教える先生のように見えた。
「いや、気にはしてない。私も同じ状況ならきっと同じ手を使ったとは思う。でも、友としての信義をないがしろにする者には、決して誰もついてこない。それだけは気を付けろよ?」
「下手な小細工をするより、誠心誠意で人に当たりなさい、ってこと?」
「いや、少し違うな。赤心を見せる相手を見抜く目を養いなさいってことだ。分かるか? 天の御遣い」
その言葉に、右手をあごに当て、少し考えるそぶりをする北郷。
「……真心が通じる相手を考えろ、そういうことか」
やがて、口から出た答えに公孫賛は小さく頷いた。
「そっか……ありがとう、勉強になったよ。公孫賛さんがいい人で良かったよ」
「ば、ばっか! そんなんじゃない。ただの老婆心ってやつだよ」
素直なお礼に顔を赤らめてそっぽを向く公孫賛は、やはりいい人だと思っていると、彼女は咳払いをして、話を元に戻した。
「で、で? 結局、兵は何人なんだ? まだ答えてくれてないだろう?」
その問い、劉備はとても答えづらそうにしていたが、やがて意を決してその口を開いた。
「そ、そのね、実は……一人もいないの」
一時の静寂、後、爆裂する大声。
「は、はぃいいいいいいいいぃいぃいぃぃぃいぃぃぃいぃぃぃいぃ!?」
驚嘆している公孫賛へ北郷がフォローを入れる。
「い、いや、桃香と一緒に旅をしているのはここにいる五人、関羽、張飛と俺達なんだ」
「関羽と張飛って、後ろの二人の事か?」
その言葉を聞いた二人は礼の姿勢を崩さずにその場から大きな声で答えた。
「我が名は関羽。字は雲長。桃香様の第一の鉾にして幽州の青龍刀。以後お見知りおきを」
「鈴々は張飛なのだ! すっごく強いのだ!」
二人の自己紹介を聞いた公孫賛は少し顔をしかめながら劉備に顔を向ける。
「よろしく頼む、と言いたいところではあるんだが、正直言うと二人の力量が分からん。どうなんだ、桃香」
「二人ともね、すっごく強いよ! 私、胸張って保証しちゃうよ?」
「保証ねぇ……桃香の胸ぐらいの大きさの保証があるならそれはそれで安心なんだけど……」
そんな未だに信じられない様子の公孫賛の後ろから皮肉めいた声が飛んできた。
「先程、人を見抜く目を養えと言った伯珪殿がその二人の力量を見抜けないのでは話になりませんぞ?」
あとがき~のようなもの~
おはこんばんにゃにゃにゃちわ、風猫です。
いよいよ、普通な御人、公孫賛の登場です! へ? 原作ほぼ準拠なんだから当たり前だろうって? ……まぁ、そうなんですけどね。前回のあとがきモドキで書いたので、一応載せたほうがいいかな、と思いまして……
で、話変わりまして、過去作の閲覧数を見ていたら、なぜだか5が一番トップになっていたんですが、なにが原因なのだろうかさっぱりわかりませぬ。誰かおせーて、えr、じゃない、偉い人!
と、いうわけで、何かありましたらコメントの方お願いいたします。(ネタバレ、だめ、絶対!)
それではまた次回~
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白髪の鬼子と黒の御使いの、守るために戦い抜いたお話
真・恋姫†無双の蜀√のお話です。
オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話なので、大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。
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