No.639563

【獣機特警K-9ⅡG】狙われた鉄路 Part1【交流】

古淵工機さん

2013-11-24 18:22:32 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:774   閲覧ユーザー数:731

ラミナ市内、カフェ・ラ・ヴォルペ。

その常連客の間では、あるものが話題になっていた。

それを聞いていたモニカがカルロに訊ねる。

「…ねえパパ、あの人たち何を話しているのかしら」

「ああ、なんか最近売り出され始めた『アヌビス350M』ってクルマらしい。新興メーカーのアヌビス社が出したモデルなんだけど、爆発的にヒットしたみたいでね」

「へぇーっ」

「アヌビス350Mか…しかし新興メーカーが一発目で出したモデルにしちゃ飛ぶように売れてるけど、何か裏があるんじゃないかな?」

と、リク。

「ハッハッハ、考えすぎだよリク君は。さ、次のピザを仕込まないと。悪いが手伝ってくれ」

「はい、喜んで!」

同じ頃、ラミナ市内の鉄道高架下を、ラミナ警察署生活警備課のミウとテムナが歩いていた。

「と。ここの肉屋がウチの行きつけや」

「へえ、テムナっていろいろ知ってるのね」

「そらウチ、いろんな街の路地裏歩いてるよってな。おっちゃーん、いつもの頼むで!」

「はいよ。テムナちゃんかわいいからサービスしちゃうよ!そこのお嬢ちゃんのもあわせて半額だ!!」

「わー!おじさんありがとう!」

「でもええんか!?ウチらもう20代も後半やねんけど」

「いいんだよ、二人ともかわいいし」

と、ミウとテムナはから揚げの刺さった棒を受け取る。

 

「な?この店のから揚げめっちゃ美味いやろ!ウチのオススメやで!」

「うん!衣がカリッとしてて、中の鶏肉から肉汁が…」

と、から揚げを食べながら歩いていたミウとテムナの耳に、突然轟音が響いた!!

重い金属同士がぶつかり砕ける音、同じく金属で出来た何かが折れて壊れる音、その中にガラスの割れる音…。

「おい見ろ!アーバンコミューターが脱線してるぞ!!」

「こりゃひどい…一体どうしてこんなことに…」

通りを歩いていた人々が次々に叫ぶ。

 

「なんやて!?から揚げ食い終わってせっかくええ気分なったとこやのに!!」

「とにかく行ってみよう!!」

ミウとテムナは、脱線事故が起きた現場に向かって走り出した…。

翌日、ラミナ警察署。

「そうか、今回の事故では乗客乗員1375人が重軽傷、4人が死亡か…」

署長であるエルザは、昨日現場に居合わせたミウとテムナ、およびその後の捜査に当たったミンスターとミハエルからの報告を聞いた。

 

「しかし妙なんです。これでこの手の事故は今月に入って5回目。あそこまで頻繁に脱線するなんて普段はまずありえません」

と、ミンスターが続ける。

「ミハエル、車両やレールに異常はなかったのか?」

「そのことなんだが署長(アネキ)、アーバンコミューターの運営会社は毎日終電が終わったあとに全線でレールの検査してるって担当の人が言ってたぜ」

「それはどうかなミハエル君」

「な、なんスかミウさん!」

「UC社はあくまで列車の運行会社。線路はファンガルド鉄道の所有なんだから、UC社に聞いたって意味ないでしょ」

「そ、そうなんスか…」

「まったくお前という弟は、捜査課で何を見てきたんだ?呆れ果てて言葉も出ないぞ」

と、ため息をついたあと、エルザはさらに続ける。

「それでミンスター警部、ファンガルド鉄道の方は何と?」

「はい、毎週定期検査をしているそうですが、先週レールの定期検査を行ったばかりだそうです。実際現場に立ち会ったのですが、付近のレールはしっかり整備されていた模様」

「妙だな…ファンガルド鉄道側が嘘の報告を行ったという可能性もあるかも知れん。交通省に問いただしてみるか…」

と、エルザが受話器をとろうとした瞬間であった。

「その必要はない」

会議室のドアが開きプラネットポリス総監のフュアが、司法省刑事局長官アイヴィーを連れて入ってきた。

「フュア総監(ねえさん)、それにアイヴィー長官も!」

「私と長官とで先刻交通省に出向いて詳細説明を受けたが、データの改ざんらしきものは見当たらなかったとのことだ」

「そう。ファンガルド鉄道側は規定どおりに検査を行い、先日の検査ではすべてのレールのゆがみも補正されていたそうよ」

 

フュアとアイヴィーの言葉を受け、再び考え込むエルザ。

「なるほど。鉄道会社側にミスがないとなると、あとは車両メーカーの設計ミスか…」

「ああ。それも疑ってはみたが…現場からもメーカーからも設計ミスとの報告は入っていない」

その話を聞いたミハエルがぼやく。

「あーぁ。レールの保線状態も完璧で、車両側にも欠陥なし、結局脱線の原因は謎のまま。迷宮入りっすね」

「ミハエル君、何を簡単に諦めているんです!月に5回も脱線事故が起きているのですよ?何か原因があるはず」

「でも警部、その原因がわからないんじゃ手も足も出ないじゃないスか…」

その時、一人の警官が息を切らして入ってきた。

「大変です!こんどは南駅を通過していたFREXが脱線、転覆しました!」

「なんだと!?これから事件の真相を解明しなければならんときに!!」

「それと、昨日の脱線事故の現場検証を進めていたところ、レールに妙な傷が」

「妙な傷?」

「はい、特殊な工具を使ってわざと外されたかのような…」

「特殊な工具?」

 

その報告を聞いたフュアはエルザに呼びかける。

「よしエルザ。すぐに現場へ出向こう」

「ああ、あまりに不可解すぎる脱線事故の原因、是が非でも突き止めねば」

「では私は刑事局に戻って、さらに関係各所の情報集約にあたるわね」

「よろしくお願いします、アイヴィー長官」

そんなこととは露知らず、カフェ・ラ・ヴォルペ。

「へー、あのアヌビスってクルマ、今日も売れてるのか」

と、テレビを見ていたのはエルザの息子であるテオ・カシイ・アインリヒト。

「そういえば昨日もカーディーラーの前すごい行列だったよね」

と、テオの彼女であるミク・デハヴィランド。

「なんでも最近、鉄道の脱線事故が頻発してるらしいからね…パンケーキセットお待たせ」

と、モニカがテオとミクのテーブルにパンケーキセットを置く。

「それで、事故ばっかりの鉄道に乗るのが怖くなってみんなクルマを買いに行くってわけか…」

パンケーキをほおばりながらテオが答える。だがその直後、ミクの表情が険しくなる。

 

「…」

「おいミク、どうした?」

「ごめんテオ君、急に用事が出来ちゃった!またあとでね!!」

「あっ…ミク!!なんなんだよあいつ…」

テオの制止を振り切って、ミクは一人店の外へ飛び出していってしまった…。

 

「もしもしセリナお姉ちゃん!例の脱線事故に関する手がかりが見つかったわ!アレは事故なんかじゃない、仕組まれた事件よ!!」

果たして、連続列車脱線事故の原因は何なのか!?

 


 
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