No.638261

【獣機特警K-9ⅡG】奇妙な密猟者【戦闘】

古淵工機さん

ちょっぴりサスペンスでミステリアスな話。
流血描写があるのでちょっと注意。

あと、ある方のあるキャラがゲストで出てます。みゃぁ。

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2013-11-19 23:44:51 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:1038   閲覧ユーザー数:951

「では次のニュースです。昨夜から続いている大量乱獲事件ですが、今回エノーカー郊外のティグレス国立公園にて…」

ここはラミナ近郊にある自然保護区のベースキャンプ。レンジャーたちの間には緊迫した雰囲気が漂っていた。

緑色のピューマ形ファンガー・ミランシャがマイとナディを呼び寄せて状況を説明していた。

 

「…密猟者の数は減ったとはいえゼロになったわけじゃない。この付近にもまたいつ現れるかわからないわ」

「自分勝手な理由で動物さんたちの命を奪うなんて、許せません!」

「ナディもそう思う。密猟者、絶対許さない!」

ミランシャの話に、決意を新たにするマイとナディ。だがその時、遠くの方で銃声が響いた!!

「…なんだ!?銃声!?」

ミランシャがその音に反応する。

「また密猟者ね!最近出ないと思ったら…」

「もうガマンできない!ナディ、悪い奴懲らしめてやる!!」

そう言ってナディは装備を持ち飛び出していった。

「待ってナディさん!わたしも!!」

ナディに続き、マイが飛び出していく。

 

二人を待っていたのは、ウサギ形ファンガーの女性隊員だった。

「早く!マイちゃん!ナディちゃん!すぐに行くわよ!」

「はい!」

「おうっ!」

女性隊員は車をフルスピードで走らせる。目指すは銃声の響いた方向。

さて、大草原の真っ只中では、銃声に驚いた動物が逃げ惑う真ん中にアナグマ形ファンガーの女性がいた。

彼女の姿を見ると、毛皮のついた服で着飾っている様子である。

「ふふふ…上手い具合に驚いてくれたわ…」

 

と、女は手に持っていた散弾銃を再び上空目掛けて発砲する。

弾こそ入っていないが大音響を出すには十分であった。

 

一方その頃。

「見てナディさん!あそこ!!」

マイが指差した先には、毛皮の服で着飾った女性。手には散弾銃が握られている。

「あいつ…密猟者か!許せん!マイ、ここで待ってろ!!」

ナディは弓矢を手に、女のもとへと駆け出す!!

「ふふふ…来たわねおバカなレンジャーさん」

「オマエ、密猟者か!動物たちみんな生きてる!ナディ、オマエ許さない!!」

ナディが女に食って掛かるが、女は嘲るように高笑いをする。

「おーっほっほっほ!ええそうよ。ご覧の通り私は毛皮を頂きに来たのよ」

「オマエ、何する気だ!トラか!シマウマか!!そんなこと、絶対させない!!ナディ、動物たち守る!!」

 

ナディは弓矢を構え、女に詰め寄る。

「ふふふ…何もわかっていないのね。私が今一番欲しい毛皮は…」

しかし女は躊躇うことなく散弾銃に弾丸を込める。

「やめろ!動物たち撃つな!!」

ナディは怒鳴りながら、弓を引き女に狙いを定める。

しかし女は微動だにすることなく銃を構える。その銃口が向いた先は…!

 

「…私が欲しいのは…」

「なっ…!?」

突然の状況に、ナディは思わず怯んだ。そしてその直後、女は撃鉄を引いた!!

「うわ!うわああああ!脚が…ナディの脚が…!」

左の太ももに銃弾を喰らい、血を流すナディを見つめながら女は笑う。

「はははははは!緑色の山猫…そう!アナタの毛皮…ずっとずっと探していたのよ。さぞ美しいコートになることでしょうねぇ」

「オ、オマエ…最初から…最初からナディ狙って…!!」

「そうよ。最初の2発はあなたをおびき寄せるための空砲だったってわけ。こんなにあっさり引っかかってくれるなんて思わなかったけどね!あっはっはっは!!」

左の太腿から血を流しながら、ナディは女をにらみつける。

 

「どうしたの?立ち上がって足掻いてみなさい?狩りの相手が逃げ回らなかったらつまらないじゃない」

「ぐ…っ…!」

太腿の出血と痛みで、立ち上がれないナディ。

女は散弾銃を手に、さらに詰め寄る!!

その頃、マイが乗っていた車の上では…。

「ナディさん!?」

「そんな…あの『密猟者』…狙いはナディちゃんだったのね!?」

「どうして…どうしてナディさんが!!」

驚き叫ぶマイの声に、女性隊員は語る。

 

「…ナディちゃんのような緑色の毛皮を持った子は極めて珍しいの。ファンガルドでも特定の地域にしかいない。悲しい話だけど、同じような理由で彼女に似た部族が数百年前に大量虐殺されたという記録もあるのよ…」

「そんな、ひどい…わたし、ナディさんを助けます!!」

「あ、マイちゃん!!」

マイは短銃を手に取り、車から飛び出していった。

…一方…。

「さぁ、次はどこがいいかしら?尻尾?右腕?それとも右脚がいいかしらね…」

じりじりと詰め寄る女を、ナディは睨み付ける。

「それとも…命乞いをするなら生きたまま持って帰ってあげてもいいのよ?」

 

「…ふざけるな…オマエ、密猟者より悪い奴!!オマエ、悪魔だ!!」

ナディの言葉に、先ほどまで不気味な笑いを浮かべていた女の表情が一気に険しくなる。

「悪魔…?誰に向かって?どの口が言うのかしら?」

銃口がナディの額に突きつけられる。

 

「ナディ、覚悟できてる。殺すなら殺せ!でも…ナディの友達、絶対オマエ許さない!!」

「そう…そんなにお望みなら一瞬で楽にしてあげるわ!!」

女が撃鉄を引こうとした、まさにその時だった!!

「ぎゃあああああ!!」

散弾銃を持っていた女の手の甲に銃弾が命中。女は右手から血を流して倒れこんだ!

「ナディさん!大丈夫ですか!?」

「マイ…!ナディ、左脚撃たれた…!!」

「なんですって!?よくも、よくもナディさんを…!」

 

マイは逃げようとする女に視線を移すと、勢いよく飛び掛った!!

「はぁ、はぁ…ぐっ!?」

「観念しなさい密猟者…いいえ…あなたは密猟者なんかじゃない!殺人鬼よ!!」

「ええい!放しなさい!あんたみたいなクソガキに用はないわ!!」

「きゃ!?」

取り押さえようとしたマイを振り落とし、車に逃げ込もうとする女。

だが次の瞬間、数発の銃弾が彼女を掠める!!

 

「なっ…!?」

女がその方向に目をやると、数台のパトカー。

その目の前にはラミナ警察署K-9隊・7号機のジョニーが銃を構えて立っていた。

 

「ジョニー!」

「ジョニーさん!!」

ナディとマイが、思わず声を上げた。

 

「おい、まだ若い女の子の脚を銃で撃ったんだ。覚悟は出来てるな?」

「くっ!何故よ!何で警察がこんなトコに…!!」

「殺人未遂の容疑で現行犯逮捕だ。アンタにゃ聞きたいことがたっぷりあるんでな。大人しく来てもらうぜ」

かくして女の手にはしっかり手錠がはめられ、自然保護区を襲った奇妙な『密猟』は幕を閉じたのだった…。

再びベースキャンプ。

「…まさか、そんなことがあったなんてなあ」

と、ブタ形ファンガーの隊員・ネルソンがコーヒーを淹れて持ってくる。

「わたし、このお姉さんから聞いたんです。ある民族はその毛皮の色が珍しがられて虐殺されたことがあるんだって…きっと、きっとナディさんも…!」

と、泣き出すマイをミランシャとネルソンはただじっと見つめていた。

 

その時、ベッドの上に寝ていたナディが、マイに声をかける。

「泣くなマイ」

「ナディさん…?」

「ナディ、オマエ思ってるほど弱くない。ナディ、自然大好きだ。そして、オマエ大好きだ。ミランシャタイチョーも、ネルソンもみんな好きだ。だからナディ、カンタンに死なない!」

と、拳を握って誇らしげな顔を浮かべるナディだったが、次の瞬間その顔が苦痛にゆがむ。

「イタタタ!」

「もう、まだ傷がふさがってないんだからムチャしないの!」

「くすくす…」

「ハハハ…」

と、ナディの肩を押さえるミランシャを見て、マイとネルソンの顔にはわずかばかりではあったが笑顔がこぼれていた。

夕刻、ベースキャンプの正門前。

「本当に、今回はどうもありがとうございました」

と、マイとミランシャがジョニーに頭を下げる。

「いや、いいんスよ。これが仕事ですし。それに…女の子を傷つける奴なんか許しちゃおけねえ。そんだけでさ」

と、ジョニーは照れくさそうにカウボーイハットのつばを下げる。

「さて、じゃあ俺はこの辺で失礼しますよ。…マイちゃん、ナディちゃんによろしく言っといてくれ」

「はいっ!ありがとうございますジョニーさん!」

マイとミランシャが見送る中、ジョニーはバイクに跨り夕陽の彼方へと走り去っていった…。


 
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