あの日、あの琥珀の月の下で、華琳と別れてから。
気づけば俺は普通に元の世界の自分の部屋にいて、日にちなんて一日たりとも過ぎちゃいなかった。
夢かとも思った。壮大な、一晩の夢なのかと。
でも、すぐに否定した。
そんなわけない。アレが・・・アレが全て夢だったというのなら、俺はもう何も信じられない。
華琳。
大陸の覇王で、寂しがり屋の女の子。
俺が愛して、俺を愛してくれた、かけがえのない――。
君を失ったことを、どれだけ泣けば忘れることができるだろう。
強くて、でも弱い華琳。
理想を叶えるために、現実を見据え、だからたくさんの敵を作ってしまった。
それがつらくなかったはずがない。
どうしてわかってくれないのかと憤ることも、
どうして自分ばかりが目の敵にされるのかと愚痴を言うこともあっていいはずだ。
それでも華琳は、そんなこと一言も口に出さなかった。
彼女はそれさえも受け入れていたから。
理解されないのも、目の敵にされることも、皆が笑って暮らせる世になるのなら、と。
そんな華琳だから、敵を多く作った以上に、たくさんの人に好かれたんだ。
そんな華琳だから、俺は彼女を愛したんだ。
例え自分が死ぬことになろうとも、それでも彼女の理想が叶えられるならばと、歴史を変えることも厭わなかった。
だけど・・・。
だけどね、華琳。
君がいないこの世界は、俺が生まれ育った故郷であるはずなのに、なにか足りない気がして落ち着かないよ。
そんなふうに弱音を吐く俺を、きっと君は叱るだろうけど。
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一人元の世界に戻った一刀の苦悩・・・かな?