No.636985

英雄伝説~光と闇の軌跡~ 849

soranoさん

第849話

2013-11-15 09:04:25 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:997   閲覧ユーザー数:933

車の状況を確かめるついでにロイド達は懐かしの支援課のビルに寄った。

 

~特務支援課~

 

「………特務支援課………」

「帰って来た………わね……」

ビルの中に入ったロイド達はキーアと過ごした日々を思い出した。

 

あ、帰って来た!おかえり~!

 

行って来ます!

 

―――よし。それじゃあ鍋を始めよう。キーアが準備してくれたから肉、魚、野菜―――タップリある。たくさん食べて、早めに休んで……明日に備えよう!

 

いただきます!

 

「…………………」

特務支援課で過ごした日々を思い出したロイドは複雑そうな表情で黙り込み

「……ハハ。何だか懐かしすぎるぜ。」

「はい……」

口元に笑みを浮かべて言ったランディの言葉にティオは頷き

「フフ………さすがに感慨深いね。」

ワジは静かな笑みを浮かべた。

「でも、思ったよりも荒らされていませんね……てっきり国防軍の捜索が入っているかと思いましたが。」

一方周囲を見回したリーシャは不思議そうな表情をした後微笑み

「ひょっとして、キーアへの配慮があるかもしれない。大統領サイドにとってあの子は余りに重要な存在だ。大切にしていた場所を荒らして機嫌を損ねたくないのかもしれない。」

ロイドは静かな笑みを浮かべて推測し

「……なるほどねぇ。」

(まあキーア頼りの大統領サイドにとってはキーアの機嫌を損ねたら一瞬で崩壊するのは目に見えていただろうしね。)

ロイドの推測を聞いたランディは頷き、ルファディエルは納得した様子でいた。

「なんか露骨ですが……変わってないのは嬉しいです。」

そしてティオが呟いたその時

「ニャ~。」

支援課のビルにロイド達が来る前から住み着き、ロイド達が世話をしている黒猫――――コッペがロイド達に近づいてきた。

「コッペ……!」

「そう………無事でいてくれたのね。」

コッペを見たロイドは驚き、エリィは明るい表情をし、ティオはコッペに近づいた。

「にゃーご。にゃう、にゃん。」

「……そう、お疲れ様。ええ、ええ……少し留守にしていただけです。また………きっと戻ってきます。」

「なんて言ってるんだ?」

コッペと会話しているティオを見たランディは不思議そうな表情で尋ねた。

「どうやら、あれからずっとここで暮らしていたみたいで……わたしたち”同居人”のことも一応、気にかけてくれたようです。」

「はは、そっか。」

「ふふっ、ネコにしては珍しいくらい律儀ね。」

「せっかくだからエサも用意してあげようか。」

その後ロイド達はコッペにキャットフードを用意した後、それぞれの部屋の状態を確かめた後キーアの部屋に入り、部屋の机の上に置いてある石に気付いた。

 

「これは………」

石を見たロイドは驚いた後考え込み

「へえ、白い石か。なかなか綺麗じゃねえか。」

「これって確か……ミシュラムでロイドさんがキーアにプレゼントした……?」

ランディは感心し、ティオはロイドに尋ねた。

「ああ、ミシュラムのビーチでキーアにあげた『ホワイトストーン』だ。」

「キーアちゃんが置き忘れて行ったのかしら……?」

ティオの疑問にロイドは頷き、エリィは考え込み

「けど確か未来のキーアはその石をペンダントにして肌身離さず持っているよね?」

ワジは不思議そうな表情で言った。そしてロイドはホワイトストーンを手に取った。

 

ねぇ、ロイド………みんな

 

その時ロイド達の頭の中にキーアの声が響いてきた!

「…………ぇ……………」

(――――残留思念……!まさか契約している私にまで聞こえてくるなんて……!)

(ほう~、あのガキんちょ、我輩達の予想以上のとんでもない力の持ち主だな。)

(へえ?今のはあたいも驚いたよ。)

(……さすがは”至宝”の存在といった所か………)

(”創られた存在”とはいえ、まさかこんな真似ができるとは………)

頭に響いた声にロイドは呆け、ルファディエルは驚き、ギレゼルとエルンストは興味深そうな表情をし、ラグタスは重々しい様子を纏い、メヒーシャは真剣な表情で呟いた。

 

キーア、しあわせだったよ

 

だけど

 

だけど

 

だけど

 

さよなら

 

「………………………」

頭に響いたキーアの声を聞いたロイドは呆け

「い、今のは……キーアちゃん……?」

リーシャは戸惑い

「間違いねえだろう。………だが、どこから……?」

ランディは目を細め

「ロイドさんが手にしたそれに、残留思念のようなものが込められているのを感じます。………哀しみや迷いを無理やり押し込めたような……」

ティオが複雑そうな表情で説明した。

「キーアちゃん……」

「……やれやれ。あそこまで無邪気だった子が……未来のキーアもきっと同じ事をこの時代の僕達に教えたんだろうね………」

(まだ幼子だというのにこれほどの哀しき決意をさせるとは……!)

(外道め……!いくらエリィの知り合いとはいえ、奴等は滅すべきだ……!)

エリィは悲しそうな表情をし、ワジは複雑そうな表情で言い、ラグタスとメヒーシャは怒りの表情になった。

「…………なあ、みんな。キーアが何故イーリュン教に入信して”太陽の聖女”と呼ばれるようになったか知っているか……?」

「ロイド……?」

「まさか……未来のキーアから聞いたのですか?」

複雑そうな表情で言ったロイドの言葉を聞いたエリィは不思議そうな表情をし、ティオは驚きの表情で尋ねた。

「ああ――――」

そしてロイドはエリィ達に何故キーアがイーリュン教に入信し、”太陽の聖女”と呼ばれる事になったかを説明した。

「キーアちゃんがそんな事を………」

「やれやれ………確かにそんな事を想っているのなら、”聖女”と称されてもおかしくないし、僕達も”聖人”認定するだろうね………あの無邪気だった子が変われば変わるもんだね………」

説明を聞いたリーシャは驚き、ワジは溜息を吐き

「未来のキーアがどことなく陰りのある笑みをたまに浮かべる事がありましたが…………まさか今回の件の事をそこまで自分を責めていたなんて………」

「過去の奴等(俺達)が未来を何故知ってはいけないかの意味がようやくわかった気がするな………」

「ええ………変えられるものなら変えたいわね………キーアちゃんが罪悪感を持つ事はないのに……」

ティオやランディ、エリィは複雑そうな表情で呟き

「…………これでもう…………迷いの一片も完全に無くなった。キーアがあんな……心を押し殺したような気持ちでずっといたなんて…………そんな状況は、絶対に間違っている!」

ロイドは怒りの表情で呟いた。

「そうね………そんなのが正しい事であるわけがないわ。」

「……こうなったら、なにがなんでもキー坊の元に辿り着かなきゃな!」

「ええ、未来のキーアが浮かべていたようなわたし達のキーアの笑顔を取り戻すためにも……!」

ロイドの言葉に続くようにエリィ達は決意の表情になり

「ああ……行こう、みんな。(キーア……待っててくれ。絶対に迎えに行くからな……!)」

ロイドは力強く頷いた。そしてロイドはキーアが残したキーアの力が宿ったホワイトストーン――――『零の神珠』を回収してビルを出て車に近づいた。

 

~西通り~

 

「俺達の車………二台とも何とか無事みたいだな。」

車の状態を確かめたロイドは明るい表情をし

「しかしこれって確か、1台はディーター市長にある程度、融通してもらって、もう一台はヴァイスハイト局長のコネで手に入れたんだよね?フフ、それらを使って局長とギュランドロス司令が彼を処刑しに行くなんて皮肉が利いているじゃないか。」

ワジは笑顔で言った。

「…………そうね、本当に。」

「洒落になっていません……」

ワジの言葉を聞いたエリィは疲れた表情で頷き、ティオはジト目で言った。

「ま、経緯はどうあれ、こいつらも支援課の一員だ。ちゃんと使えるかどうか、中もチェックするとしようぜ。」

「ああ、そうだな。」

そしてロイド達は1台の車の中に乗った。

 

「わぁ…………初めて乗りましたけど素敵な内装ですね。」

車内を見回したリーシャは微笑み

「はは、サンキュ。」

ロイドは笑顔で答え

「この車、キーアもお気に入りでしたよね。」

ティオは口元に笑みを浮かべて言った。

「――――整備状況もいいし、問題なく動かせそうだな。この様子だともう一台の方も大丈夫だろう。」

「ああ、後で念の為に確かめようぜ。」

そしてロイドの言葉にランディは頷いた。

「それに実際の突入の時はノエルとリィンにそれぞれ運転してもらった方がよさそうだな。」

「ま、あの二人はプロだからな。」

「これで突入用の車輛は確保できましたが…………いったん課長達の所に戻りましょうか?」

「そうね、最終的な段取りも聞いておきたいし………」

ロイド達が考え込んだその時何かの音が聞こえ始めてきた。

「これは………」

「車載の通信器だな。何処かからの連絡みてぇだ。」

「……ロイド、どうするの?」

「ああ………とりあえずONにしよう。みんな、念のため声は立てないように頼む。」

そしてロイドが通信器の部分をONにした。

「―――お久しぶりね。特務支援課のみんな。キリカよ。キリカ・ロウラン。」

するとなんとキリカの声が聞こえてきた。

 

「ええっ………!?」

「キリカさんッスか!?」

キリカの声を聞いたロイドとランディは驚き

(泰斗の”飛燕紅児”…………)

リーシャは真剣な表情になった。

「カルバードの諜報機関のお姉さんか………まだクロスベルにいたとはね。」

「………私達の動きを全て把握しているんですか?」

ワジは静かな表情で呟き、エリィは真剣な表情で尋ねた。

「この状況であなた達がどう動くか予測しただけよ。……まあ、”六銃士”と”英雄王”によるあの”宣言”はさすがに予測できなかったけどね。忙しい中、時間を取らせて申し訳ないのだけど………”情報交換”をする気はないかしら?」

「それは……………―――了解です、キリカさん。どちらに行けばいいんですか?」

「クロスベル駅、3番ホームに停車している列車の2番車輛に。駅に人気は無いから安心するといいわ。」

「わかりました。3番ホームの列車の2番車輛ですね。ところで………レクターさんもそちらに?」

「フフ、ご明察。―――それでは待ってるわ。」

「……相変わらず千里眼みたいな人ですね。」

キリカが通信を切るとティオはジト目で呟き

「しかもレクター大尉もいるみたいだけど……」

エリィは複雑そうな表情で言った。

「ま、行ってみるしかねえだろ。」

「ああ……クロスベル駅に行こう。」

「フフ、了解。」

「……もしもの時のために備えはしておきましょう。」

その後もう一台の車の状況を調べたロイド達は駅に向かった…………

 


 
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