No.636915 英雄伝説~光と闇の軌跡~ 848soranoさん 2013-11-15 00:23:02 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:1013 閲覧ユーザー数:952 |
街の探索をしていたロイド達は山道方面にある聖堂に顔を出した。
~クロスベル大聖堂~
「おぬしは………」
自分に近づいてきたロイド達の中にいるある人物―――ワジを見たエラルダ大司教は表情を厳しくし
「やあ、エラルダ大司教。お久しぶりだね。」
ワジは呑気に挨拶をした。
「……そういうことか。ワジ・ヘミスフィア、おぬしはやはり……シスター・リースを隠れ蓑に、この私の目をまんまと誤魔化したというわけだ。………”封聖省”の考えそうなことだ。」
ワジを睨んだエラルダ大司教は呟いた後表情を厳しくした。
「フフ、その件に関しては改めて謝罪させていただくよ。だけど、僕達を受け入れなかった事が原因でゼムリア大陸中が混乱に陥り、”国”同士の力関係も大きく変わる事になった上、さらに西ゼムリア大陸内での教会の権威が落ちた事も関係している気がするけど?」
「おい、ワジ……!」
ワジの言葉を聞いたロイドは声を上げ
「………確かに今回の件に関しては、頑なにおぬしらの介入を拒み続けたこの私にも一因があろう。糾弾こそすれ、謝罪などされる義理はないはずだ。実際今回の件で教会はむざむざと二大国がメンフィルとクロスベルの連合によって滅ぼされる事を容認するという聖職者とはとても思えない信じ難い判断をしたのだからな。………そして教会がそう判断せざるを得ない状況を作ってしまった原因の一人である私も教会の判断を糾弾する資格は最初からない。」
エラルダ大司教は重々しい様子を纏って答えた。
「大司教さま………」
「相変わらず厳しいお人だよなあ。」
エラルダ大司教の言葉を聞いたエリィは複雑そうな表情をし、ランディは溜息を吐いた。
「まあ、あなたの立場を考えると詮無いことだとは思うけどね。フフ、今後は僕達の行動に少しだけ目を瞑ってくれるようにしてくれると嬉しいんだけど。」
「お、おいおいワジ……」
「要求が露骨すぎです。」
ワジの提案を聞いたロイドは戸惑い、ティオは呆れ
「やだなあ。ケビンの船にいる”彼女”に頼む事と比べればこの程度、大した事ないよ。」
「ア、アハハ………」
「た、確かにそうだね………」
「あの方が教会に口を出したら、教会の方達はみんな従わざるを得ないものね………」
静かな笑みを浮かべて言ったワジの言葉を聞いたリーシャとノエルは苦笑し、エリィは疲れた表情で言った。
「………二つ返事で答えることはできぬ。だが、改めて検討はさせてもらおう。この私も、頭を冷やして自分を見つめ直す時間が必要なようだ。」
一方エラルダ大司教は重々しい口調で答えた。その後ロイド達はそれぞれの家族―――ガイやノエルの父の墓参りをした後、ある墓の前にいる墓守の老人が気になり、近づいた。
「おお、おぬしらか………あの障壁が消えたと思うたら、とんでもない事が起こってしもうたのう。あの独立宣言以来、墓参りに来る物も減ってしまった。こんな状況でわしにできるのは、墓の掃除をしてやることくらいじゃ。」
「………あの。こちらの墓は一体、どなたのものなんでしょうか?」
墓守の話を聞いたロイドは考え込んだ後墓に視線を向けて尋ねた。
「なんじゃ、知らなかったのか?………ふむ、まあおぬしらなら特に問題はあるまい。”彼”とも親しいようだしな。」
「えっ………」
「俺達の知り合いなのかよ?」
「………うむ。ここに眠っている者達の姓は『グリムウッド』………つまり、イアン・グリムウッド殿のご家族なのだ。」
「イアン先生の……!?」
「そ、そうなんですか……!?」
墓守の話を聞いたティオとエリィは驚いた。
「……まごうことなき事実じゃ。15年ほど前に、ある不幸な事故で奥さんとお子さん二人の命が失われてしまってな……いつも週末のたびに墓参りに来てはご家族のことを偲んでおったよ。墓石は風雨で痛んでしまったが………何やら願掛けをしておるらしくてな。それが成るまではあえて修繕せずに手入れするよう頼まれておるのじゃ。」
「そうだったんですか………」
「あの先生も色々あるらしいな………」
墓守の説明を聞いたエリィは疲れた表情をし、ランディは複雑そうな表情をし
(”不幸な事故”ね……………アリオスの妻やシズクと一緒の理由だとしたらイアンも協力している可能性はあるわね………今回の件を引き起こすまでディーターは最初は国際社会に詳しい彼に相談しながら”クロスベル独立国”の法を決めようとしていたか―――――――!!まさか………!ディーター……アリオス………マリアベル………この3人を繋げる事ができ……さらに国際情勢をよく知る人物で該当するのは……!そうなると………ガイを殺害した”第三者”は…………………)
ルファディエルは考え込んだ後ある事に気付いて目を見開き、そして厳しい表情をした。
「あの独立宣言以来、彼も忙しいのかなかなか訪れていないが……よかったら、これからはお前さん達も参ってやるといい。……彼女たちも寂しかろうしな。」
「……………はい、わかりました。」
その後イアンの家族の墓の目の前で黙祷をしたロイド達は街に戻り、途中でアルカンシェルに寄った。
~アルカンシェル~
「ああ、あなたがたは………!」
「特務支援課の皆様ではありませんか……!」
アルカンシェルに入って来たロイド達を見た受付は驚き、支配人は明るい表情をした。
「お二人とも、ご無事でしたか。」
「もしかして、他の方達もこちらに?」
「はい、スタッフもアーティストも皆さん一通りそろっています。」
「ちなみに今は、新しく再構成した舞台の練習に一丸で取り組んでいる所でして。突然の戒厳令と外出禁止令には戸惑いましたが………自宅に戻るくらいなら、ここで練習をしていようと全員で話し合って決めたのです。」
「なるほど………頭が下がります。」
支配人の話を聞いたティオは目を伏せ
「………………」
リーシャは複雑そうな表情で黙り込んでいた。
「もしかして……そちらにおられるのはリーシャさんですか?」
その時リーシャに気付いた受付は驚き
「リーシャさん………」
支配人は静かな表情でリーシャを見つめた。
「………ご無沙汰しています。皆さんがご無事で何よりでした。」
リーシャは目を伏せて軽く会釈をした後微笑んだ。
「いえ………リーシャさんもよくぞ顔を見せてくれましたね。色々と事情がおありなのは承知していますが………よろしければ、練習の様子を見て行ってあげて頂けませんか?シュリさんをはじめ、皆さん全力で取り組んでいらっしゃいますので。」
「……………そう………ですね………少し覗いていく程度なら………」
「リーシャ………」
支配人の言葉を聞いて呆けていたリーシャは微笑みながら答え、リーシャの答えを聞いたロイドは明るい表情をした。そしてロイド達は劇場の中に入った。劇場の中に入ると舞台には多くの劇団員たち、そして踊り娘の衣装を身につけてたシュリが演技をしていた。
「これは………」
「フフ、『金の太陽、銀の月』の追加シーンだね。」
「シュリさん、すごいです………」
シュリの演技を見ていたロイドは驚き、ワジとティオは静かな笑みを浮かべて呟き、そして舞台に近づいた。
「おや、君達は………リーシャ君――――リーシャ君じゃないか!」
近づいてきたロイド達を見た劇団長は目を丸くした後リーシャに気付いて驚いて声を上げた。
「リーシャ姉………?」
劇団長の言葉を聞いたシュリは演技を止めてロイド達を見つめ
「ほんとだ、リーシャじゃないか!」
「はは、何かの間違いじゃないよな。」
「……間違いない、確かにリーシャだ。」
「ふふ、これで最後の気懸りがなくなったわね。」
シュリに続くように劇団員達も明るい表情でリーシャを見つめた。
「………皆さん………あの、本当にすみませんでした。」
劇団員達の反応を見たリーシャは驚いた後頭を下げた。その後ロイド達は劇団長達に事情を軽く説明した。
「そうか、今は支援課の皆さんと一緒に………」
「はい、今はまだ全てをお話しできませんが………ですが、けじめを付けたらその時はちゃんと………」
劇団長の言葉に頷いたリーシャが静かな笑みを浮かべたその時
「ふふ、リーシャったら何をそんなに追い詰められたような表情をしているの?」
「え………?」
微笑みながら答えた劇団員の言葉を聞き、リーシャは呆けた。
「そうですわ、誰もあなたにそんな顔をしてくれだなんて頼んでいませんし。」
「ああ、ホント。せっかくの美人が台無しだな。」
「プリエさん………セリーヌさん、ニコルさん……」
「とにかく………やることをやったら一刻も早く戻って来てくれ。」
「だな、俺もまだまだリーシャと試してみたい演技もあることだし。」
「テオドールさん、ユージーンさん………」
「ふふ、私も衣装を準備して待っていますからね。」
「私は舞台装置を準備して、ね。」
「カレリアさん、ハインツさん………」
次々と自分にかけられる励ましや応援の言葉を聞いたリーシャは一筋の涙を流して目を伏せ
「…………リーシャ姉……」
「シュリちゃん………」
「ここは………アルカンシェルは………リーシャ姉の居場所だから。リーシャ姉が何を抱えているか、オレにはわからないけど………ここはリーシャ姉の………そしてイリアさんやオレの帰ってくるべき場所でもあって……」
「………シュリちゃん………」
そして涙を流して自分を見つめて言ったシュリの言葉を聞いたリーシャは涙を再び流し始めた。
「オレ……何があってもこの場所をずっと守ってるから………だから…………」
「うん………うん………シュリちゃんの気持ちは十分伝わったわ。ちゃんと戻ってくるから………だから心配しないで、約束する。」
シュリの言葉に頷いたリーシャは微笑んだ。
「約束………本当だな、リーシャ姉。嘘つきは針千本なんだからな!」
「うん………わかってる。」
「リーシャ………」
二人の会話を聞いていたロイドは明るい表情をし
(フフ、よかったわね………)
(クク、闇の住人を光へと導いたイリア(あの女)も只者じゃないが………何より闇から引き揚げたロイド(この男)は凄すぎだね…………)
ルファディエルは微笑み、エルンストは口元に笑みを浮かべた。
「……ロイドさん、そろそろ行きましょう。みんなも練習があることだし………私達も急いで目的の場所に向かわないと。」
「ああ………そうだな。」
そしてロイド達は劇場を去って街の探索に戻った
~西通り~
「………………………(さっきのピート君、クイントさん、そしてニールセンさんの話………)」
施錠されてあるイアンの事務所の前まで戻ったロイドは考え込み
「ロイド………どうかしたの?」
「イアン先生の事務所に何かあるんですか?」
「今は留守みてぇだが………」
ロイドの様子を見たエリィ達は不思議そうな表情をして尋ねた。
「……いや、なんでもない。今は行くとしよう。」
(…………………)
エリィ達の疑問に疲れた表情で答えたロイドはエリィ達を促し、ロイド達が歩いている中、ルファディエルは目を細めて考え込んでいた…………………
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第848話