「くっ、」
ナノハはアマルナの攻撃を防いだ後、すぐさまアマルナから距離を取るように離れる。
そしてすぐに状況分析をする。あの様子からして自分に敵対していることはすぐに理解でき、自分を殺そうとしたこともすぐに分かった。しかし、言葉をまだ発していないために操られているのか、自らの意志でやっているのかはエメリアがアリシアとシルフィア姉妹を呼ぶときの通話を聞いていないためにわからなかった。
とにかく、殺す気で攻撃を仕掛けてきているというのはすぐにわかり、フェイト達を後回しにしてアマルナの方へと体を向ける。
「……操られているのか、自分の意志で動いているのかはわからないが、私に勝てると思っているのか?」
「……聖王ナノハと対峙して勝てる可能性は11.2%。任務である足止めを遂行することが私の役目」
「前者か。それに、足止めが役目ということはあいつらを逃がすことがお前の目的というわけか……」
操られているということはアマルナの口調からすぐに理解した。彼女はナノハ達の目的――ミルティオルを逃がすための足止めであり、殺されても構わないような事なんだろう。そうとわかるとナノハは歯を噛み締め、これ以上時間をかけてられないと思い、急ぐことにした。
「エメリアには悪いが、攻撃させてもらうぞ。アマルナ・ラスティル!!」
「……標的に動きあり。聖王ナノハの足止めを開始します」
刹那、ナノハとアマルナの二人は一瞬に姿をけし、そしてすぐに現れ、その時にはナノハのティルヴィングを素手で止め、アマルナの足蹴りを左腕で防いでいる姿が見えた。そしてまたすぐに姿を消したかと思えば少し離れたとこでまたしてもぶつかりあい、お互いに防いでいた。
そんな一瞬の出来事を一部始終見ていたフェイトやはやて達はあまりの速さに驚きを隠せないでいた。お互いに姿見えないほどの速さを出しているというのにもかかわらず、お互いに攻撃を防いでいるのだから――
「……なんなんや。あの二人の攻防」
「どう見ても次元が違いすぎるだろ!!」
そのナノハに私たちは戦っていたのかと思うと、正直恐ろしくて鳥肌が立つほどだった。フェイトやはやても魔導師ランクとしては上位の人間であるはずなのに、それよりもはるかに上回るような強さに思えるほどだったのだから――
しかしフェイトは目の前の光景に驚きながらも、冷静にナノハと対戦している人物について考えてた。ナノハはアマルナ・ラスティルと言っていたから、容姿からしてエメリア・ラスティルの妹にあたるのだろうが、ナノハと対戦しているからしてフェイト達の味方なのかはわからなかった。ナノハが言うには操られているということらしいが、誰がどうしてこのようなことをしているのかということがわからない限りは、アマルナに対して警戒を解く事は出来なかった。
と、そんなところまで考えていると、シグナムがフェイトに向かって話しかけてきた。
「テスタロッサ。あのアマルナ・ラスティルとなのはが言った子、どう思う」
「うん、なのはが言うには操られているとはいうけど、こちらに襲ってくるということはまだ考えられる。足止めとは言っていたけども……」
「アマルナ・ラスティルの言葉からして、なのは達の目的はその人物のようだね。多分、管理局でも将官ほどの人間……」
「だろうな。一体誰なんだ……」
フェイトとシグナムはようやくなのは達の目的が見えた気がした。管理局を壊滅させるだけが目的ではなさそうだと思ったし、わざわざ時空管理局地上本部を残してミッドチルダを全壊させたのにも理由があるとは思っていた。しかし肝心な部分は尚も解らずじまいなため、結局のところさほど進展はない状態ではあった。
そんな二人の会話が聞こえていたはやては、ふとなのはに言われたことを思い出していた。
(――『夜天の書を闇の書に書き換えた張本人を知りたくない?』か……)
知りたいか知りたくないかと二択で言えば知りたい。誰がシグナム達をこんな目に合わせ、リィンフォースを離れなければならなくなった原因。そうでなければシグナム達に会えなかっただろうが、はやてにとってはシグナム達を苦しめた張本人を知りたかった。
ナノハはそれが誰なのかを知っているが、仕事に私情を挟むわけにもいかない。だからこそ事件が終えてからナノハに聞くつもりでいたが、知りたいという気持ちが次第に強くなっているのははやて自身がわかっていた。
と、そんなことをはやてが考えていると先ほどからお互いに防いぎながらも攻撃を何度も仕掛けているナノハが舌打ちをし、思わぬ言葉を吐いていた。
「ちっ、意外としつこいな!! オリヴィエ聖王女の記憶を持っているから知ってるが、
(ぇ――)
今も昔も――と、ナノハは言った。思わず口から出てしまった言葉なんだろうけども、その言葉ははやてにとって衝撃的な言葉であった。
ナノハが目標としている人物は、要するにオリヴィエと対峙した人物の子孫。ナノハがオリヴィエの記憶を持っているということを今知ったため、ナノハはオリヴィエの記憶を見て闇の書の一件を知ったのではないかと、はやては思った。
わざわざナノハが期待させるような言葉を言った理由として考えるに、その一族が関係していないのではないかとはやては推測した。そして管理局の将官の中で、かつてオリヴィエ聖王女の下で働き、管理局が設立した時から続いている一族が一つだけあり、その人物のことをはやては知っていた。
ミルティオル・ベスカ中将――ベスカ一族の末裔であり、なのはと同様に管理局のエースと呼ばれたもう一人の人物――
「……フェイトちゃん、シグナム、ヴィータ。少しここを任せてええか?」
「はやて? 急にどうしたの?」
「ほんの少し確認したいことがあって、地上本部に向かう。少々気になることがあってな」
「なら、あたしも着いていくぜ!! はやてが危険な目に合わないためにも――」
「いや、一人で十分や。別に戦うわけでもあらへんからな。ほんなら行ってくるわ」
はやてはこの場をフェイト達に任せ、時空管理局地上本部へと向かった。闇の書の一件の真実を知るためにヴィータやシグナムには聞かせない方がいいと思い、一人で行くことにしたのだ。
多分、ミルティオル・ベスカはナノハ達が目的としている人間なんだろう。危険だということは承知の上で、はやてはミルティオルに会いに行くことにしたのだ。
それに、ミルティオルは突然特務六課に特別任務として任務を与えてきた。他の管理局員は各々に任せると決まったのにもかかわらず、特務六課に対しては強制的にナノハ達と戦うように命じてきた。元々戦うつもりではいたためにさほど気にしてはいなかったが、考えてみたらどうして特務六課だけにそんな命令を命じたのかということが怪しいとはやては今になって思っていた。
このことについてはミルティオルがはやてに直接伝えたことであるため、フェイトやシグナム達は何一つ知らない。だから――フェイト達がミルティオルを怪しむことはナノハの言葉だけではなかっただろうし、はやてだけが知っていたことだ。ミルティオルは多分闇の書の一件については知らないだろうけども、裏で人体実験等をしていたリーダーとして取り締まることもするつもりだとはやては考えていた。
しかしこれが、はやての運命を大きく変えることになるとはこの時知らなかった。そして、ナノハの方から教えなかった理由もはやては知ることになるのだった――
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J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。
その青年はなのはに関わりがある人物だった。
だがなのはにはその記憶が消されていた。
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