高等部の校舎に居た士樹は目の前の光景を見て、どうするべきか迷っていた。何故か、アインハルトがシャーリーに軽く説教染みたことをされていたのだ。拉致が明かないので、自分から話しかけることにした。
「いったい何があったの?」
「士樹君か。いや、アインハルトの生活ぶりが女の子としてどうなのかと思ったのよ」
アインハルトは基本的に格闘一筋で生きてきている。部屋は綺麗に片付いているが、ダンベルやサンドバッグなどが内装代わりに置いてある為、何も知らない人間は彼女のお淑やかな外見とのギャップに驚く。士樹はそういう面も含めて好きになったことと、自分らしさを大事にしてほしいという考えもあり、あまり口出ししていない。
「あまりオシャレとかしていないようだし、年頃の女の子としての自覚を持った方が良いって話をしていたの。この前、部屋に上がった時はパンツ一丁で寝ていたし」
「それも良いんじゃないかな? パンツ一丁のアインハルトが寝ぼけ眼で抱きついてくる所はかなり可愛かったし」
「そ、その話はしないでください!!」
「ハハッ、恥ずかしがることはないさ」
顔を赤くしたアインハルトは士樹の身体を前後に振るが、そのほっこり顔は崩せなかった。
「と・に・か・く!! そういうわけだから、これからデパートに行くよ!!」
シャーリーはアインハルトの腕をがっしり掴み、強制連行しようとする。
「行ってらっしゃい」
身体の自由を取り戻した士樹はアインハルトとシャーリーを見送るべく手を振る。
「何言ってるの!? 君も来るんだよ」
「へっ?」
僕も……と聞き返す間もなくシャーリーのもう片方の腕が士樹の腕を拘束し、そのまま学校を出ていった。
★★★★★
「う~ん、これも何か違う。こっちはどうかな?」
高等部から離れた所にあるデパートのファッションコーナーでアインハルトはシャーリーによって着せ替え人形にされていた。次々と服を手に取り、アインハルトの前に持ってきては合わせるの繰り返しを20分ほど行っていた。士樹はその様子をわくわくしながら遠くから眺めていた。少し時間が経つと、シャーリーが士樹の方へと近寄ってきた。
「服選びは順調?」
「いまいちと言ったところね。何かピンと来ないのよ」
シャーリーは左手を右ひじに、右手を顎に持って行き、考えごとをする。
「その癖、ルルーシュにそっくりだね」
「えっ? そうかな?」
気付いていなかったのかシャーリーは顔を赤くする。どうやら、恋人の影響を知らず知らずの内に受けていたようだ。
「その話は良いとして、少し手伝ってくれないかしら? 君の眼があると、アインハルトも意識するだろうし」
「僕に出来ることなら喜んで手伝うさ」
それまで傍観していた士樹もアインハルトの服選びに合流し、白熱した議論が繰り広げられながら少しずつ進展していった。士樹の提案を考慮した上で服を数点ほど選び、アインハルトが実際に試着する段階に至った。
「さて、仕上がりはどんな感じかな?」
「楽しみで待ち切れないよ」
「もう少しお待ちください」
アインハルトでどんな格好で出てくるのか、特に士樹は胸が躍ってしかたなかった。口調はじゃっかん明るい程度だが、表情が明らかに浮き浮きしている。
「着替え、終わりました」
着替えを終えたアインハルトが恥ずかしげに試着室のカーテンを開いた。試着室から出てきた彼女はデニムのミニスカートとパステルグリーンのシャツを身に着けていた。大人しい彼女らしく派手すぎない程度に明るく、鍛えれられた脚線美を存分に引き出していた。しかし、士樹は心の中で引っ掛かりを感じていた。
「(何か物足りないな……)次の奴、見せてくれる?」
「分かりました」
アインハルトは再び試着室の扉を閉め、着替え始めた。程なくして出てきたアインハルトは水色のティアードミニスカートを着用し、パステルオレンジのTシャツの上に黒い袖無しのジャケットを羽織っていた。それを見て、士樹の顔が綻ぶ。
「うん、さっきよりも今の方が断然かわいいよ」
「そ、そうですか」
近寄ってくる士樹にアインハルトは嬉しそうに顔を赤くする。
「黒のジャケットがどんな感じになるか心配だったけど、そんなことはなかったね」
「目的はある程度達成したわけだけど、どうする?」
士樹がシャーリーに話を振る。
「その前に少しお腹が空いちゃったし、何か食べない?」
「なら、マグロナルドへ行きませんか? 私、ちょうどマグロナルドの割引券持ってます。この間、ヴィヴィオさん達と行った時に店員から貰いました」
「マグロナルドか。あそこのブラックペッパーポテト、美味しいんだよね。最近、ポテトを食べたい時はいつもあそこに行くよ」
「ハンバーガーか……。たまには良いね」
袋の大半をを握りしめ、小腹を満たすべく士樹は2人と共に歩きだした。
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