No.619591 とある傭兵と戦闘機(SW編番外)”彼女”と”鬼神”雪下 夾矢さん 2013-09-15 10:27:18 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:2320 閲覧ユーザー数:2217 |
あの後解散して、私は”501.5航空戦闘団”の皆が集まる部屋に来ていた
と、言うけど実際は借用中の第三格納庫内部に作られたシェルタールームを集会所にしてるんだけど
ちなみにシェルタールームを構成する壁は整備班長開発のシェルターと同じモノ
「・・・と、いう事で。私はこれから総司令部に行くから」
とりあえず皆には説明しておく
「・・・つまりこの世界の、”人間という敵”の総本山に行くって事か?」
ダウェンポートさんが水を口に含みながら言った
「・・・まあ、戦略的な意味合いでもその軍司令部に牽制をかけるのは悪くない判断だが
その牽制に使うカードは?軍の幹部に牽制をかけるとなるとそれなりの・・・まさかーーー」
うん、多分今ので全部解かったよね
流石副司令官ハミルトンさん。頭のキレは上々の様子
「私自身が、キングとジョーカーの意味を持つ事を知らしめる。目の前でね」
「でも、それでもし考えている方向と真逆に向いたら・・・」
「その時はその時。今はまだ私は相手を”交渉相手”としか思ってない
それ以上だったらそのまま。その価値も無いと思ったら撃滅」
とにかく簡潔に、その旨を伝えて皆の了承を得る
「おかあさん・・・」
「フィア、しばらくはこの基地の皆と一緒に居てね。危険だと思ったら中佐の所に行って」
少なからず安全なはず
そう思って中佐にも万が一の場合の事も話しておいた
「さて、後は・・・ラリーにはちょっと付いてきてもらうから」
「・・・まあいいが、何をすればいいんだ?」
んーそうだねぇ・・・
「護衛を兼ねて教えて欲しい。壇上での戦いを」
「・・・・別に構わないが」
若き頃へ戻ったガルム隊二番機は何とか了承してくれた
でも・・・何でそんなに苦しそうな顔するの?
こっちで再会してから、どうもラリーの様子がおかしい
それこそ・・・あの、光に満たされた空の時のように
「さて、それじゃあ話はこれで終わり。話が円滑に進めば501経由での補給が確実なモノになるしね」
そうしてこの場に居る全員が頷くのを確認して、私は自分の部屋にフィアを連れて戻った
明日・・・明日が私達にとっての運命の日になる
「はぁ・・・それにしてもこの歳で母親になろうとは・・・」
「いいじゃん、かわいいもんでしょ?」
と、自室・・・ヘイトと同室なんだけど机に座ってる
フィアとラプちゃんはベットで一緒にお昼寝中だよ
「それにしても、どう接すればいいかがわかりません・・・」
う~ん・・・こればっかりは私は助言のしようが無いんだよね
「う~ん・・・まあ一緒に居ればわかるから、傍を離れないようにしてね」
ヘイトとラプちゃんの問題だから
「でも、知りませんでした・・・私の機体がこんなにも幼いなんて・・・」
「・・・機体の特性とか他の機体と変わった所は?」
「私の機体・・・ラプターは機動性能を最大限に生かす為に装甲材を極限まで削っていました
打たれ弱いけれど、敵の攻撃は全て回避できました」
成る程・・・だから最初にラプちゃんと話したとき、ラプちゃん少し咳き込んでたんだ
機体の状態・性質そのものが、人の姿に変えても体質として引き継がれるみたい
耐久度が体力、索敵能力が視力・嗅覚・聴覚などの五感、装甲が体質といった所かな
・・・って、あれ?
それなら何でフィアは普通のままの状態なの?
機体寿命ぎりぎりまで消耗した状態で人になったのに・・・
「そういえばヘイト、体に不調は無い?」
「ええ、特に変わった事は無いですね」
・・・・・・・あれ?
「身長とか体重とか・・・」
「特に変わりはないですよ?」
・・・私だけ?色々変わったの
「失礼しま~す・・・あれ?鈴音さんは?」
と、入ってきたのはF-14Dのパイロットさん
「今は居ないよ~。それと静かに」
指を唇に当てて指示する
「・・・了解しました~・・・」
そうして抜き足差し足でそろ~っとゆっくりテーブルのイスに着く
「・・・ふたりともかわいいですね~・・・」
彼女はお昼寝中のらぷちゃんとフィアをにこにこしながら見ていた
「・・・そうだねぇ・・・」
「・・・ですねぇ・・・」
ぽそぽそと、そうして、皆で微笑みあう
その時に、この部屋という空間に存在するのは
でも悪魔でも死神でも・・・鬼神でもなく
ただの・・・十台半ばの少女達だった
「ふぅ・・・」
F-15の整備を終えた俺はタオルで滴る汗を拭って水を喉越しで飲んでいた
コイツの整備をするのは・・・本当に何年ぶりだろうか
まぁ何だかんだでコイツと飛んでた空は楽しかったんだけどな
「おっし、これでこっちの作業は終わったな・・・どうした?まだ根に持ってんのか?」
「いんや、そんなんじゃねぇよ・・・」
作業を手伝ってもらったダウェンポートに水が入ったビンにタオルを巻いて投げ渡す
ダウェンポートにはアイツの情報を話した
こういうタイプの人間はそういうの関係なく人に接する能力を持ってるんだよな
・・・羨ましくて仕方がねぇよ
「アンタこの情報知ってから相当苦悩してただろ。それにしても絵本の物語顔負けの人生だな
本当にその考えが正しければだが」
「そうだな・・・俺の知っている情報と考えが違う事を祈らざるをえない」
「・・・ま、俺はそんなの関係なく今まで通り”嬢ちゃん”に接するさ」
そういいながら、ダウェンポートはビンをくわえながら休憩室に戻っていった
「・・・そんなに、気軽に何も考えずにいられればいいのにな」
煙草をくわえながら、俺は再び悩みの渦に飲み込まれていった
~翌日~
総司令部へ出発当日、私は私服を着て滑走路の機体に乗り込んだ
「・・・武器は持っていかないの?」
中佐が何故か不自然だと言わんばかりに私を見て言った
「お願いする立場だし、一応敬意は払っておかないと」
服は非武装という事をアピールする為にシンプルに、そして似合う服を基地の皆に聞いて選んだ
That・純白のワンピース
・・・本当に似合ってるのか不思議で仕方が無い程の女の子用の服である
この服ってヘイトが着たほうが似合う気がするよ
「その分俺が一応PPK持っておく。心配しなさんな中佐」
「銃を抜く事態にならない事を祈ります・・・」
「そうだな」
ジャカッと、銃の状態を見ていたラリーがスライドをコッキングして左胸のホルスターに差し込む
警戒しすぎだと思う。その引き金を引けば発砲可能な状態でホルスターに差し込んでいるんだから
「何だ?どうして俺がこんなに警戒するのかってか?」
と、私がそんな目で見てたみたいにラリーが言った
「・・・うん」
「お前はあくまでこっちの”お姫様”な訳だ」
「うん・・・はい?」
「・・・物の喩えだ。そんな無防備なか弱いお姫様の護衛の騎士には剣が必要だろう?」
「・・・・(ジトォ)」
相棒の頭がおかしくなったよぅ・・・
「変な目で見んな。まあ建前上お前の護衛な訳だから、何が起きても対処できるようにって事だよ」
それから少ししてハンナが中佐に写真を一枚渡して、私達を乗せた輸送機は空に上がった
「さて、ハンナはこれからどうするの?」
「お前の行動と、それからだな。後は上官に迎えに来てもらう」
「ならそこでお別れだね」
「そうだな・・・何だか滅茶苦茶な一週間だった気がする」
機内でハンナと同じタイミングでため息を付く
「お前等そんな歳なのに弩級のため息ついてんじゃねーよ・・・ハァ」
「ラリーだってため息ついてるじゃん」
「やかまし」
ゴスッと脳天にラリーの拳が炸裂する
ズキズキと痛みを堪えて蹲る
「・・・お前は何で付いて来たんだ?」
と、ハンナがラリーに訊ねる
「こいつの護衛兼ねて指導してやる為だ」
「何のだ?」
「あんたら実働部隊が行う戦闘とは違う、卓上の戦いとやらをな」
そう、今から私は私が行ってきた戦闘とは違う戦闘をしなくてはならない
だからこそ、私はラリーに指導を頼んだ
その手の戦いに、もっとも詳しい人間に
そうして、連合軍総司令部に到着するまでに私はラリーからみっちり指導をもらい
半ば子守唄本位で聞いていたハンナも最終的には私のとなりでしっかりその話に耳を傾けていた
「まもなく連合方面軍総司令部です」
と、パイロットから伝えられて私は窓から外を見た
目下には広々と街が広がっており、滑走路と思しき広い道路の脇に少し街の建物と比べて大きい建物が建っていた
「これより連合方面軍総司令部基地に着陸します。着陸に備えて着席して下さい」
そんなパイロットからの通達を聞いて、私達は地面に足が着くのに備えた
無事、輸送機は滑走路に降り立ち、そして少し広めのエプロンにタキシング
「到着致しました」
パイロットがグッドサインを出して、私達は輸送機から降りた
久しぶり数時間ぶりのしっかりした地面を踏みしめ、私達は”敵かもしれない連中の本拠地”に到着した
「ティナ~おかえり~」
と、カメラ片手に携えた・・・日本の巫女装束?みたいな人がハンナに駆け寄っていた
頭にはゴーグルを着けており、先述の服装から日本・・・扶桑人だと思われる
「ケイ、相変わらず忙しそうだな」
「そりゃあもう。これからマルタ島奪還作戦という二つの航空団のエースが臨んだ作戦の独占インタビューよ」
カメラを問答無用で構えてシャッターを切るその姿は、明らかに記者の姿だった
「うーんやっぱりハンナはいつでも写真映えがいいわね~・・・あれ?」
と、今度はこちらに向いてピタっと動きを止めた
「ええと・・・あの・・・ティナ?」
「ん?ああ、紹介しよう」
一呼吸置いて、ハンナは私の事を彼女に紹介した
「彼女が”蒼の霞”だ」
「えっえあっ?ちょっ・・・ぇええぇぇえええ!?」
うん、もう見飽きたリアクションでどう返そうか悩むなぁ
「うそっ、わ、私、あの霞の英雄を前にしてるの!?」
うん、そして一人で凄いはしゃいでるねこの人
「取材どころじゃないわっ!!大スクープよ!!新聞の記事のトップを飾るネタは
これ以外考えられないわ!!しかも凄い美少女!!」
えぇ~さっきのハンナの取材どうしたんだろう
ハンナはというと・・・にこやかに、そしてこんな事が顔に書いてあった
”ようこそ道連れだ★”
☆が真っ黒だよこの子・・・
というか、早速思わぬ時間を取りそうだ・・・本命にたどり着くのはいつになるのやら
「ふむ、マルセイユ大尉が到着したか」
と、施設のとある一室より滑走路の輸送機を見下ろす人影があった
「マルタ島奪還作戦は無事完了、これより報告を受けましょう」
「そうだな・・・。ほう、他にも連れが居るのか?」
「大方、飛べもしないあのウィッチの整備兵でしょう。放っておいても問題ないかと」
聞いていた総司令部総括の一員である男はそんな言葉に不快感を感じた
その男は胸に大きな軍証を付け、軍将用正装をきっちり着こなした男だった
「ほう、まるで飛べないウィッチは唯の子供だという言い方だなダートル」
「使えない者を使える場所に持っていくのは厄介払いとは言わんのですよ」
そんな事を恥じもせず、堂々と口にする軍階級大将
「(全く、そんな事を言いながら対ネウロイ戦闘をほぼにウィッチに頼っているのだろうが。不愉快極まりない)」
そう思いながら、普通の将校用の制服を身につけている男は目下の輸送機に目を向けた
「(・・・向こうでは元気にしてるのかね。私の娘は・・・)」
胸の裏ポケットから手帳を取り出し、その一枚目に挟んである写真を見つめる
そこには空軍基地の格納庫・・・F-16が並ぶ格納庫の前でその基地のパイロット全員で撮った写真
その中央に写る、若き頃の自分と一人娘
「(今となっては話す事も叶わない・・・寂しいものだな)」
ポケットに手帳をしまい込んで、将校のダートルから一枚の写真を受取る
「この写真が唯一、彼女の姿を捉えたものか」
「全く、とてもじゃないが特定できるものではないですな」
望遠カメラで最大望遠で撮影されたその写真は白黒でぼやけているが
長い髪を風になびかせて、背中に大きな翼を広げて
艦隊を守るように空に浮かぶ、ストライカーを装備していない生身の少女
白い服を雲と混じり合わせて、その長い髪ですら空と同化しかかっている
そうして、一年前の決戦の時はそのまま空に姿を消した
あたたかも、そのまま溶け込んでしまったかのように
「(・・・何故だ?なぜこの写真を見る度にこう胸を締め付けられる感覚に苛まれる?」
少し息苦しくなる
何故だ?
そんな世界を救った英雄の後姿が、私が遺してきてしまった娘と頭の中で重なってしまうんだ?
妙な違和感を覚えながら、帽子をかぶり直す
「すみません、取材とかそういうのはご遠慮ねがいます」
今は取材なんかに時間をとられている場合じゃない
「じゃあ、一つだけお聞かせ願います」
「?」
「何で、総司令部に?」
ん~・・・まあ、アレだね
「”友人と友人が守りたいものの為に”かな」
実際そうだし
そう言い残して私はハンナと共に司令部の門をくぐった
・・・くぐったの門じゃないけどね
とあるでっかい扉の前で、ハンナが先に入って何やら重い空気を感じた
それにしても同じ状況が前にもあったような気がせんでもないね
「サイファー、そろそろ約束の時間だ」
腕時計を見て、ラリーが私にゴーサインを出す
「さて、とりあえずノックして・・・」
コンコンッ
「誰だ!!今は報告会議中だぞ!!」
あれ?怒られた
ま、関係なく入るだけなんだけどね
「失礼します」
「おい!!勝手に入るとはどういうーーー・・・」
バカみたいに天井が高い部屋の、大きな机の右端に構える中年の高官は怒号を発しようとして、やめた
「一応ここに来るのもあなた方にお会いするのも初めてですね」
ハンナがニヤリと笑う
私がこの場に入るタイミングは良かったって事だね
「私は、あなた方達が”蒼の霞”と呼ぶ者です」
「ほう・・・まさかご本人がご登場なさるとはな」
うん、やっぱりなんか見下した感じだね
馬鹿にしている視線が不愉快こと極まりない
それでもってーーー
「私が此処に来た用件は手短に説明しましょう
まず、501への嫌疑について・・・確かに一年前も私はあの基地に居ました
ですが、私はあくまで手伝いをしていただけであって別に隠れようとはしてません
そして今回は、その事を正式に容認して頂く為に此処に来た所存であります」
「・・・はっ!!小娘如きが何を言い出すと思えば、我々の再三の通達に返事もせず
一年間姿をくらましていた子供が何を言う?」
「第一、貴官が本物だという事の証明も存在しないというのに、それにあまりにも一方的な要求ではないか?」
「もしや、偽者ではないのか?」
・・・凄いあり得ない程に低脳っぷりを露呈させてるねこのクズ三兄弟
それにしてもど真ん中一人だけ、顔を見せないようにしてるのか考えてるのかわからないけど
手を組んで帽子を深々と被っている男・・・雰囲気もド低脳三人とは違う、”兵”の雰囲気を纏っている
でも、あの雰囲気ってどこかで・・・
「お話はつきましたか?」
「おや、一般人の小娘如きが英雄の姿を気取るとは身分知らずのする事ではないのか?」
・・・・・・・・・
馬鹿がここにいるよ・・・
何を妄想したか知らないけど、とにかく酷い偏屈な考え方だね
ま、この腐れっぷりは予想してたけどね
「いらん冷や汗を掻かせてくれたな。このような真似をこの場所で平然と行うとは
全く・・・”育てた親の顔が見てみたい”ですな」
腐った頭の無能な高官の言葉に、私の思考がが停止する
ーーー今、何て言った?
今、何を侮辱した?
私を育ててくれたーーーお父さんやお母さんを?
あの優しいーーー私の家族を?
「・・・回を要求します」
「ん?何か言ったかねーーー」
「私の家族を侮辱した事についての発言の、撤回を要求します」
睨んだんだ私を見て、少し驚いたような顔をする将軍B
「な、何だその目は・・・」
もう・・・限界だ・・・
今すぐ、あれを殺したい
ここまで人相手に怒った事は無いのに
硬く拳を握る私の手は、痛みを感じない程に強く握り締められている
そんな・・・心が折れる寸前の私は確実に頭に沸騰した血を上昇させている
解かっていても、その上昇力は失速知らずで上がっていく
「ふ、ふん。やはり無能の子供の目は違うなーーー」
「ほう?私の娘が無能だと言うのか?」
と、熱暴走を起こしかけていた頭をその一言で急冷された
「な、何を言い出すんですかな総司令。それはどういう事でしょうか?」
何を言い出すんだこいつはと言いたげな顔をしながら
無能馬鹿は隣にいる伏せた将軍に話しかけた
「名前は、フィリア・フェイリールド」
と、その将軍と思しき人は席を立ち、そしてそのまま私の横に並び立った
「私の、正真正銘の一人娘だよ」
帽子を外したその横顔を、私は思い出した
「それにお前は親である私を馬鹿にした挙句、最愛の家族も侮辱したな」
ああ、この人の声に聞き覚えがある理由がわかった・・・
この優しめの声と、そして身に染みるあの雰囲気
「お父さん・・・」
「!?」
隣でハンナが驚くような目をして私の方向を見る
「さて、本題に戻ろう。まずお前の501への参加権について。ストライカーなどの備品は後に送るが
承認するのは今すぐにでも手配しよう。階級は・・・今ままでの戦果も含めて少佐かね」
「待って下さい、私は承認していませんぞ!!」
ダッと、三人同時に立ち上がる
「いい加減認めろ。確かに蒼の霞が愛娘だったという事は知らなかったが、それでもその蒼の霞だった場合は
空母一隻を一撃で大破させる攻撃力の持ち主だ。戦術的な価値は他のウィッチよりは高いぞ?」
「ぐっ・・・」
「そんな英雄が自らを支援の要請をしに頭を下げにに来た。これは共闘の意志があるという証明であるだろう
わざわざ隠者を送り込んで、危険な目にあわせ続けるよりよほど事が簡単で堂々としてるじゃないか」
「なっ・・・何の事やら・・・」
「とぼけるな。しかも、丁度私が不在の時にその話を隠密に進めていたみたいだな。小汚い、肝が小さいにも程があるぞ
大体こちらから蒼の霞にした通達というのは何だ、あの脅し文か?
相手のカードが正確に判らない状況で完全に見下してしかも脅迫にかかるとは無知の暴力、慢心だ
いずれ足元を掬われるぞ」
「そうですね・・・実際私は交渉が拗れた場合、相手が強硬手段に出た場合
そして仲間を傷つけるような事態になった場合、その要因たる者を全力で排除しようと思っていました
それと私は501統合戦闘航空団と、第31統合戦闘飛行隊とは友好関係にあります
あなた方の行動で彼女達にそういった危険が及ぶ場合は、どんな事が起こっても覚悟だけはしておいて下さい」
私は言い切って、そしてお父さんの方を見た
「・・・だそうだ。あんまり下手な事すると自分達の命の行く末に影響するって事だな」
そうして頭を撫でられる
それにしても・・・何で私はこうこっちに来ると色々な人に会うんだろう?
「なあフィリア、この将軍は・・・」
「うん、私のお父さん」
唖然、本当に驚いたような顔でこっちを見ていた
「さて・・・話も纏った事だ。後で作戦完了記念のお茶会でも開くかね
マルセイユ大尉、加東少佐もこちらに来ているのだろう?」
「ああ、呼んでくるか?」
「お願いする」
そうしてこの会議はお開きとなった
ちなみにゴミクズ三兄弟は完全論破されて頭を伏せていた。多分色々負けたんだろうね
先にハンナが扉を開いて、廊下をスタスタと歩いていって
曲がり角あたりで走り出した・・・一応会議室前の廊下は走らないって事なのね
「さて、・・・久しぶりだな、フィリア」
「うん・・・」
静かな廊下で、邪魔する物は何も無い
私は、私の原点で目標である父親に向かった
「あれから何があったか知らないが、お前が銃を握っているという事は俺と同じ道を歩んでいたんだな」
「そうだね・・・私は・・・」
「なぜその道を選んだ?お前にはまだ選べただろう?」
「・・・選べなかったよ・・・私にはその道以外に生きる道は残されていなかったから」
あの時、私は目の前で教官を失い
このままじゃ自分も同じ目に合ってしまうと思った私はパイロットを失った戦闘機を勝手に持ち出した
考える暇を、飛んできた所属不明機は与えてはくれなかった
無我夢中、実際に私は覚えていない
でも、気がついたら私以外に空に存在する機体は存在しなかった
”味方も敵も”ただ、それだけだった
「そうか・・・後で話がある。今後に関わる重要な話だ」
何の話?と聞き返そうとしたらハンナともう一人の記者さんが廊下正面より歩いてきた
「連れて来たぞ」
「わざわざすまないな。久方ぶりだね加東少佐」
少・・・佐?
「ええ、お久しぶりですね。フェイリールド連合軍大将」
そしてお父さんが上層部のトップぅ!?
「知り合いなのか?」
「色々私達もお世話になってるのよ。さて、立ち話も何ですし・・・」
「おお、そうだな。私の執務室のテラスでお茶会でもいかがね?」
「謹んで参加申し上げます」
そうして、口論しに来たハズの私は何故かお茶会に参加する事になった
「・・・で、これは一体どんな状況なんだ?」
「さあ?、流れるままにこうなった」
横で納得行かないという顔をしている相棒はカップに口を付ける
たった今現在、私達はちょっと広めの執務室のテラスで簡単なお茶会を開いていた
「ふぅ・・・と、いう事だ。もちろん私はアフリカの部隊の解散など認める理由はない」
「ありがとうございます」
「大した事ではない。むしろ、ダイヤ並の硬度のお頭を誇るの馬鹿の独断を許した
私からのお詫びとして受取ってもらえないか?」
「構いませんよ。それに面白い情報頂きましたし」
と、お父さん直筆のさっきの会議報告書をピラピラと捲る
多分情報公開・・・と、言うより暴露話だろうね
「ええと・・・”とある連合軍将校は様々な隠蔽工作の下行われた駄作戦を正当化せんとばかりに手を回し
挙句の果てにはとあるウィッチの部隊を解散しようとするなど高潔な軍人としてあるまじき暴挙を行っていた
また、目の前で私の愛娘と妻を侮辱したりという軍人以前に人として行ってはならない行為も”・・・
フェイリールド総司令のご家族をですか?目の前で行うとはそれはまた勇気ある行動ですね」
「そうだな。それに娘が頭を下げにに来たのを下らん言いがかりを付けて蹴ったのにも腹が立ったのでな」
「娘さんがそこに来たんですか?」
「ああ。今、君の目の前に居るじゃないか」
「?」
「フィリア、まだ自己紹介も済ませてないのか?」
「うん、だってそんな時間が惜しかったから」
「え・・・まさか・・・」
あ、なんか凄い驚きの目で見られてる?
まあ、自己紹介のタイミングなので
「私の名前はフィリア・フェイリールド、リーディアス総司令は実の父になります」
「・・・嘘でしょ?」
「いや、私もさっき知ったのだ」
横で同じように不思議な顔をしているのはハンナで、さっきから凄い疑り深い視線を送ってきている
「あ、私は加東 圭子。第31統合戦闘飛行隊”アフリカ”隊長を務めているわ」
「と、いう事はハンナの・・・?」
「そうね。肩書き上の上官なんだけど、面倒な書類仕事ばかり。今は従軍記者としての活動が主よ」
「そうなんですか・・・」
恐ろしく大変な部下さんをお持ちで・・・
「それと、我が部隊の行く末についての手回し・・・深く感謝を申し上げます」
と、またしても頭を下げられてしまった
「いえ、友人が困っていたら助けるのは普通の事でしょう?」
そう言いながら、私は斜め向かい側に座るハンナを見てふっと微笑んだ
その瞬間を見逃さんばかりに、圭子さんは持っているカメラをこちらに向けてシャッターを切った
「はい、一枚頂きました~」
「撮るのはご自由ですが、私そんなに写り映えしませんよ?」
「何を言うんですか、寧ろ凄く綺麗に写るわよ?」
えぇ・・・何で?
「ふむ・・・しかしお前があの蒼の霞だとはな」
「お父さんだって、何でそんなに階級高いの?」
「地道な努力と僅かな幸運って所だな」
それから身の上の話を少しながらお茶を嗜む
「(あの娘が蒼の霞・・・しかも、現連合軍最高総司令の御子女さまって・・・超エリートじゃないの」
世界中に広まった伝説の英雄のウィッチ
曰く、一撃で戦艦クラスのネウロイに致命傷を与える
曰く、音よりも速く空を駆ける
曰く、その姿は空に溶け込むように悠然と美しい
一、二つ目はまだしも三つ目は本当だと思う
笑顔は本当に優しく美しく・・・そして、彼女の服装がほんのり優雅な雰囲気を醸し出している
純白の、飾り気ないシンプルなワンピースに真っ白い帽子を頭に乗せている
蒼い髪が、本当に空と同じ色をしていた
自然と、その姿にカメラの照準を合わせてシャッターを切る
ティナをアフリカの女神とするのなら、彼女は・・・空の蒼姫ね
それにしても・・・一撃で近頃のネウロイを粉砕するって、戦艦の主砲並かそれ以上だ
アハト・アハトでも担いで飛んでるのかしら?
「えっと、質問いいかしら?」
その辺が少し気になった私は考えるより先に質問していた
「はい、なんでしょう?」
「その・・・武器は何を使っているの?」
大方、対空砲か高射砲を想像していた私はその答えに絶句した
「えっと・・・リー・エンフィールドライフルと、西洋剣が一本・・・ですね」
「・・・は?」
えっと・・・それは私が知らない新型の大砲ですか?
明らかに、私が扶桑海事変で使用していた銃と同じような単発式ボルトアクションライフルの名前だけど?
それと西洋剣一本?
何処にも、それだけの威力を出せる要因なんて存在しない
固有魔法が関係してたりするのかしら?
「ストライカーは何を?」
「使ってません」
と、こちらもまあ予想外すぎる返答で戸惑うしかない
「じゃあどうやって・・・」
「こうやってです」
と、彼女が魔法力を開放する
すると、彼女の背中から大きな鳥の翼が生える
彼女の体を全て包める程大きな翼だ
鷲のような強かで力強い、圧倒的なその存在感は空の覇者を思わせる
「流石は私の娘だ」
と、総司令が誇らしげに彼女の頭を撫でる
それをとても心地よさそうに、少し恥ずかしそうにする彼女の表情は見た目歳相応だ
不思議な人だ・・・一緒に居るこっちの方が何故か落ち着くし心和らぐ
多分、彼女が意識せず絶えず放っているあの魔法力のお陰でもあるのだろう
このテラスという”空間”が、その魔法力を含んだ空気で満たされている
多分、これが彼女の”本質”
そんな彼女の力は、境界という制限を知らない
私達の頭上に、ただ広く存在する空そのものであるという事を
私は本能的に感じ取っていた
「よし、記念撮影でもしましょう。”星と蒼”として」
そして私はティナとの圧倒的な違いを記録に収めるべく
愛用のライカに手をかけた
はい、言わずもがな恒例の駄文&更新遅れの謝罪です・・・
今回は実に迷走しまくりそうな流れでどう表現するかも試行錯誤でした
今回は前編、次回は・・・どうなります事かな?
エスコン要素が抜けそうで、でも抜かさない(キリッ
次回・・・近日更新(大嘘
意見感想募集中
よろしくお願いします
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二つの部隊を守る為、彼女は上層部に赴いた
”人”との戦いを熟知する彼女は覚悟を決めていた
しかし上層部で彼女を待っていたのは予想外の人物と
そしてーーーー真実だった