No.619361

真・恋姫†無双―天と地の神速―

ユウヤさん

羽生なのです。
短編です。
ではどうぞ

2013-09-14 15:44:30 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:6332   閲覧ユーザー数:4735

真・恋姫†無双―天と地の神速―

 

 主人公―北郷一刀

 

 ヒロイン―霞(しあ)

 

 

  虎牢関 正門前

 

 兵の罵声と各陣営の矢が飛び交う戦場、その正門前に飛龍偃月刀を抱え立つ武人張文遠、真名を(しあ)対して居るのは魏(今はまだただの曹操軍)の懐刀、北郷一刀、獲物は“白龍偃月刀”。二人は互いの目を見つめまるでその場所だけが静かに時が流れているようだった。そして・・・・

 

 霞「はあああああああああああああ!!」

 

 一刀「だりゃあああああああああああ!!」

 

 二人はその偃月刀をぶつけ合う。1合、2合、3合その打ち合いは周囲の兵の目を奪う美しく早い打ち合い。まるで演武のように・・・

 

 霞「なんでや・・・・」

 

 がきぃ!

 

 一刀「?」

 

 ずざぁぁぁ

 

 霞「なんで・・・・ウチやないんやぁぁぁ」

 

 ぶぉん!!

 

 一刀「・・・・・」

 

 すっ

 

 霞「いっつもや。何度繰り返しても一刀に最初に会えへん・・・・」

 

 ぶぉん、がきん!

 

 一刀「霞・・・・」

 

 この二人は外史という言葉は知らない。だが覚えている。何度繰り返しただろう。一刀はもはや呂布ですら相手にならないくらい強くなっていた。霞も同様である。

 

 ざっ

 

 霞「そしてどうあってもウチと一刀は敵対しとる。必ず・・・・・最初は敵としてや!!」

 

 だっ、ぶん!

 

 一刀「それが・・・・天命なのかもしれない。」

 

 すっ、ずがぁぁぁぁん

 

 霞「そんなん認められん!!」

 

 ぶん!

 

 一刀「それは・・・・」

 

 がっ!

 

 霞「一刀は何でそないな平気な顔しとるん!!ウチと殺し合うんは嫌やないんか!!」

 

 たったったった、ぶぅん

 

 一刀「そんなこと・・・・・あるかぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 ぶぉんぶぉん!

 

 霞「っ!!」

 

 一刀「俺だって霞とこんなことはしたくない!」

 

 ぶん!

 

 一刀「願いがかなうなら霞と一番長くこの大陸で生きていたい!!」

 

 ぶぉん!

 

 一刀「それでも叶わないのなら、俺が君を負かして君を手に入れる!!」

 

 がき!

 

 一刀「それが俺の出来る最善だ!!」

 

 ずがぁ!!

 

 霞「そないな・・・・・勝手な事ぉ!!」

 

 どが!

 

 一刀「ぐっ」

 

 

 霞「はあはあはあ」

 

 一刀「ぜえぜえぜえ」

 

 二人は距離をとり息を整える

 

 霞「なあ一刀」

 

 霞が語りだす

 

 一刀「なんだ霞」

 

 一刀はそれに答える

 

 霞「ウチ等が一緒に死んだら・・・・幸せかなぁ?」

 

 霞は語り続ける

 

 一刀「そうだな、一緒なら幸せかなぁ」

 

 霞の問いに一刀は迷わず答える

 

 霞「・・・」

 

 一刀「・・・」

 

 一瞬の沈黙

 

 霞「決着・・・付けるで」

 

 一刀「ああ」

 

 二人はたがいに何を考えたのか分かる互いにもう終わりだと悟る。だから・・・

 

 霞「かずとーーーーーーーー!!」

 

 一刀「しあーーーーーーーーー!!」

 

 二人は最後の一撃を繰り出す。そして・・・

 

 どしゅぅ!

 

 霞「一刀・・・」

 

 一刀「霞・・・・」

 

 二人「願わくば・・・次の世界では・・・」

 

 その言葉が続く事はなかった。周囲には張遼隊、北郷隊の兵士がその光景を見ていた。

 

 北郷隊は一刀から霞の事を聞いていた。こうなる事を兵全員は何となく感じていた。

 

 張遼隊は霞に一刀の事を聞いていた。この結末を覚悟していた。

 

 まだ戦闘は続いている。

 

 二人は倒れる事はなかった。

 

 互いの偃月刀を互いの心臓に突き立て二人は抱き合うように事切れていた。

 

 そして・・・・

 

 

 北郷隊副官「この二人の御遺体他の物に蹂躙される訳にはいかん!全体このままここに方円陣を敷きお二人の御遺体、お守りするぞ!!」

 

 張遼隊副官「全体北郷隊に合わせ方円陣を敷け!!我らが隊長、張遼様とその思い人北郷一刀殿をお守りする!!」

 

 その二つの隊は連合、董卓軍両方から離脱虎牢関正門前にて完全防御体制となる。

 

 盾などもう使い物にはならない。

 

 袁紹軍、袁術軍両者の弓の良い的となっていた。

 

 両隊の兵はそれでも動かない。

 

 倒れない。

 

 ただ互いの主を守る為に。

 

 ただ主の願いを守る為に。

 

 そして・・・・連合軍は足を止めざるを得なくなった。

 

 北郷隊、張遼隊共に全滅。

 

 全滅のはずだ。なのに・・・

 

 両隊合計5千人そのすべて・・・その体に無数の矢を生やし・・・

 

 直立不動・・・倒れない

 

 その死にざま主の抱擁を守る為に。

 

 その死にざま主の愛を守る為に

 

 連合軍は近付く事が出来ない。

 

 もしかしたら動き出すかもしれない。

 

 死してなお動き主を守るかもしれない。

 

 それが・・・・怖いのだ。

 

 麗羽「な、何をしてますの!!あのような薄汚い死体など我が袁家の進軍の妨げにはなりませんわ!相手は死人!押し倒し、踏みつけて進軍なさい!」

 

 しかし、袁紹の大号令の元その恐怖の象徴を踏みつぶそうと進軍を開始した。

 

 

 華琳「・・・・一刀」

 

 春蘭「一刀が死んだだと!!そんなの認められるか!!」

 

 季衣「兄ちゃん・・・・」

 

 3羽烏「隊長・・・」

 

 秋蘭「華琳様、袁紹が“あれ”を踏みつぶしながら進軍するようです。」

 

 桂花「華琳様、ここは共に進軍したほうが・・・」

 

 華琳「これより我が軍は・・・・一刀と張遼を守る!!」

 

 全員「な!?」

 

 華琳「一刀が命を賭けて成そうとした事、我らは忘れてはならない!!私の覇道と共に進んできてくれた皆よ。覇道をこの場で捨てる私を・・・・許して」

 

 華淋は覇道を捨てるという。たった一人の男の行動がそれをさせた。

 

 将兵は動揺した。だが・・・・

 

 春蘭「秋蘭・・・私は北郷を守るぞ・・・」

 

 秋蘭「姉者、言わずもがな。私も同じ気持ちだ」

 

 季衣「兄ちゃんは僕が守るんだ!!」

 

 凪「隊長の切なる願い!」

 

 真桜「ウチ等北郷警備隊が!」

 

 沙和「守らなきゃならないの!」

 

 華琳「皆・・・ありがとう」

 

 曹操軍に迷いなど無かった。彼は華琳達をそこまで変えられる存在だったのだから。

 

 

 恋「ねね」

 

 音々音「なんですか?恋殿」

 

 恋「霞、北郷、守る」

 

 音々音「・・・・分かりましたぞ!」

 

 恋「皆、付いて来てくれる?」

 

 呂布隊兵A「勿論です!!」

 

 呂布隊兵B「張遼様に北郷殿、あのお姿は守らねばならないと我ら一同思っております!」

 

 呂布隊副官「呂布さま。ただあなたは我らにあのお二人の為に死ねとお命じください。」

 

 恋「皆・・・ごめん、恋の我がままの為に・・・・死んで」

 

 呂布隊「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 恋は、呂布隊の面々は、迷わない。

 

 自分の主の友人の死にざまを目の当たりにして、その心を、覚悟を・・・決めていた。

 

 

 

 北郷一刀の主曹孟徳率いる曹操軍

 

 霞の友人にして天下の飛将軍、呂奉先率いる董卓軍

 

 両軍はこの二人の死にざまにそれぞれの信念を曲げたのだ。

 

 曹操は覇道を、董卓軍は主の守護を。

 

 袁紹、袁術両軍の前に立ちふさがる。

 

 両軍は激突する。それは一方的な戦いだった。

 

 連合側は味方に裏切られたショックで士気は見るも耐えないものだった。

 

 逆に呂布、曹操は士気は高くまるで古くからの友であるかのように連携が取れていた。

 

 連合は大敗した。その後董卓の噂は袁紹のでっちあげだと証明され袁紹はその地位を落としめた。

 

 そして虎牢関では・・・

 

 華琳「一刀、私はあなたの、あなた達の聖域を守る事に決めたわ。どうかしら?あなた達のいた場所をお墓にして此処を聖域墓地としたのよ?きっとあなたは向こうで張遼と幸せにしてる事でしょうね。この大陸はまだ乱世の真っただ中、色々大変だけど劉備、董卓、孫策も協力してくれる事になったわ。きっとこの国は良くなる。願わくばあなたの願いがかなう事を祈ってるわ。」

 

 その宣言は蒼天に溶けていく。以降1000年この聖域墓地だけは戦争の炎にはさらされなかったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  涼州

 

 ???「流れ星?なんや不吉やな。でもなんやろ・・・・いかなあかん気がするわ・・・・」

 

 二人の願いは、いつかきっと―――――

 

 

 Fin

 


 
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