政務も終わり、日が暮れた頃。時計が無いからよくわからないがおそらく7時か8時ってところか。
時計が無いと不便だし今度どこかに日時計でも作るか。
あったらあったで余計に時間に縛られそうなきもするし、夜は無意味だけど。
俺は星の登っていた屋根の上に上り、晩酌と洒落こんでいた。
「主も登ってみては?」
と勧められて最初は渋々登ってみたのだが、慣れるとどうってことはない高さだし、屋根も頑丈だから不安もないし
何よりここから見る町が好きになったのでちらほら登るようになっていた。
最近はよじ登るのが億劫になってきたので、近くにハシゴを隠してある。
愛紗に見つかるとすっごい怒られるんだけど。それでもここに来たくなる魅力がある。
しかし、ここで酒飲んでるなんてバレた日には何いわれるやら。
「最近は夜の街も出歩く人が結構見れるようになってきたなぁ……」
つきと夜の町を肴に一杯。
誰か誘えばよかったかな。っていっても誘える人間といえば……
星、霞、華雄ぐらいのものか。こんな所に誘ってついてきそうなのは。
鈴々は史実準拠なら酒は強いハズだけど、飲んだとこ見たことないから酒癖悪いと怖いしな。
高いとこだし何かあったら事だ。
軍師3人組は無理そうだしなぁ……。
しばし空を見上げて考える。一人で酒を飲むのもいいかと思ってここにきたのだが、飲んでるうちにそういう気分じゃなくなってきた。
町を歩いてる人を見れば、家族連れやら恋人同士みたいなのもちらほら見えるし寂しくなってきたのだ。
特に家族連れを見ると急に一人というのを実感して心細くなってしまう。この世界には俺の家族は居ないから。
「桂花のとこにいってみるか」
前に酔った桂花にべったり甘えられてから、なんとなく気まずくて酒には誘ってない。
でも、また部屋にきてくれないとイヤって言われてるしそろそろ行かないともし思い出したらその時が怖いし。
屋根から降りて、今度は飲ませすぎないようにするか早めに退散しないと、などと考えながら桂花の部屋に向う。
部屋の前について軽くノックすると、開いている、との声。
「また晩酌に付き合ってほしくて来たよ」
酒を掲げて見せながら、桂花の部屋に入る。
「ん、そうね、いいわよ」
向かい合って座り、杯に酒を注ぐと、桂花はそれを煽る。
またストレスためてるんじゃないかこの飲み方……。酒に誘って正解だったかな?
「あなたは飲まないの?」
「ん、さっきから飲んでたから控えめにはするけど、飲むよ。
どうにも一人で飲んでると寂しくなっちゃってさ」
そういって桂花の注いでくれた酒をちびちびとすする。
そこそこ酒が入っているのは自覚してるので、桂花に合わせて煽ったりはしない。
「だからってなんで私の所にくるのよ。華雄でも霞でも星でも酒好きの人はいくらでもいるじゃない。
酒代だすのは私じゃないからいいんだけど」
「桂花と話しながら飲みたい気分だったんだよ」
そういうと、照れ隠し、とでもいうようにまた酒を煽る。
何だか最近桂花は随分丸くなった気がする。
罵られる回数が減った感じがするし。
まぁ俺以外の男衆には相変わらずキツくあたってるらしいから俺に対してだけだろうけど。
この前とか、桂花と話してるところを近くで見てたヤツに、荀彧さんとまともに話せるのを尊敬します。とか真顔で言われたし。
桂花も素直ならもっと可愛いのになぁ。
「何か失礼な事を考えてる気がするわ」
「気のせい気のせい」
ごまかすように空の杯に酒を注げば桂花がそれを煽る。
なんで弱いのにこんな一気にいくんだか、いくら小さめの酒器だっていってもそんなグイグイ行ったらすぐ回るとおもうんだが。
結果、やはり酒が回るのは早かったらしく……。
桂花の甘えん坊モードが発動してしっかり捕まってしまった。
呼び方が名前に変わったのでマズいかなと思い、立ち去ろうとしたのだが、この前と同じく服の裾を握りしめて
「もうちょっと居て」
なんて、上目遣いに言われたらもう両手を上げて降参。無理です、抗えません。
で、結局これまたこの前とおなじように、隣に座った桂花にもたれかかられている。
「ゆっくりしていけばいいのに、なんでそんなすぐに部屋に帰ろうとするのよ」
「桂花は深酒するとこんな風にかえしてくれなくなるし。
この前も寝るまでこうして離してくれなかったしね」
それに酒を飲ませてこういうふうにするのって何か嫌だし。
甘えてほしくないといえば嘘だけど、こういうのは何か違うきがする。
できればやっぱり素面の時に、と思う。正直、素面の時に甘えてくれる気がしないけど。
「一刀はいつも他の人と居るんだから私だってたまにはこうやって独占したいのよ。
特に月なんか、顔に好きですって書いてあるようなものだし、よく部屋で二人きりなのを思えば……」
そういって顔を赤くして、ボソっと。
「ケダモノ……」
確かに詠は表に出ない範囲で朱里達を手伝ってもらったり、ってことがあるから侍女の月と2人きりが多いのは事実だけど……。
「何を想像した何を。政務の合間にそんな暇なんてあるわけないだろ」
そういいつつため息。全く、一体俺を何だと思ってるのやら
「口付けぐらいはしたんじゃないの?」
「ないない……。残念ながら誰とも無い
こういう装飾品だって、まだ桂花の他の子にはあげてないし」
月と詠のメイド服に関してはノーカウント、の条件付きだけど。
なんだかんだ言いながらも、あれからずっと愛用してくれてる髪飾りに視線を向けてみる。
「……」
信用してないのかじーっと見つめてくる視線と沈黙が痛い。
どうしようかと考えていると、桂花の顔がぐっと寄ってきて、その唇が俺の唇に重なる。
「!?」
急な事で避けれずにそのキスを受けてしばし呆然。
軽く重ねるだけで、すぐにゆっくりと離れるとそっぽをむいて恥ずかしそうな顔をする。
「こういうのは、素面の時にして欲しかったなぁ……。っていっても桂花は明日になったらまた忘れてるだろうけど……」
「そうね……。街に行く約束も、言われても思い出せないぐらいだったし。あの時はごめんなさい」
今度はしょんぼりと申し訳なさそうな顔。酔ってるといつも以上にころころと表情が変わる。
「そういえば、この前政務を手伝ったお礼、まだもらってなかったわよね?」
「ああ、確かに……。桂花にも紫青にもまだだな」
「それなんだけどね……」
言いにくそうに小声で言われた桂花の希望は、抱きしめて欲しい、とのこと。
キスもされたことだしその程度のささやかな願いなら聞いてもいいか、少し考えてそう結論を出して
体に手を回し、軽く抱きしめる。体勢的には後ろから抱きしめてる感じ。
そうしてみると想像より華奢で、柔らかくて、いい匂いがして……。
桂花はといえば、普段はまず見せない嬉しそうな顔で、なんだかこちらまで幸せな気分になる。
ここに来る前に感じていた寂しさなんて吹き飛んだ。
「これで他の子より少し先に……」
桂花がそういったが、それは俺には聞こえず、ぼそぼそと何かいったのが聞こえただけ。
問いかけてみても何でもない、としか答えてくれなかった。
「この前は、私一刀にもたれたまま寝ちゃったのよね」
しばらく他愛無い話しを続けていると、桂花がそう切り出してきた。
「だよ。朝まで居てあげてもいいかと思ったんだけど、朝に部屋から出るとこ誰かに見られでもしたら後が大変だろうしね。
それに、お酒が抜けた桂花に色々言われるかもって思うとね」
「ということは、この前は寝台まで運んでくれたのよね?
また運ばせるのも申し訳ないから、そろそろ戻っていいわよ」
「ん、んん、じゃあそうさせてもらおうかな?」
何となくそっけないなぁ、なんて思いながら、桂花の言葉のままに部屋から出る。
去り際にまた来ないと許さない、なんて言われながら……。
────────────────────────
翌日、やはり昨夜のことは忘れているのか桂花はいつもの調子。何だか気まずいのは俺だけか、なんて思っていたらさらに翌日。
朝に俺と目があうなり、ゆでダコのように真っ赤になりながら逃げられた。
それからだいぶ後になって聞いたところによると、前回全部忘れた事を反省して寝る前に日記に書いたらしい。
そっけなかったのは日記を書く余裕が欲しかったようで……。
自分で引き止めた事から、キスをしたことも、抱きしめて欲しいとねだった事も。
他にも、俺が立ち去った後の妄想も数ページにわたって垂れ流しで書き綴ってあったとか……。
で、日記を書こうとして開いてその文章を読み、それはもう大変なことになったらしい。
あとがき
どうも黒天です。
今回は酔った桂花さんのデレ回でした。
なんでここで月や詠、紫青より先に桂花さんを持ってきたかというと。
タイトルにメインヒロインとして掲げるからには、やっぱりキスとか一番でないと!
っていう理由からです。普通にやってると終盤になりそうなので酔わせました
今回は日記という形で覚えてるので、この後桂花さんのデレ度があがります。
さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。
また次回にお会いしましょう。
**追記**
メインPCが故障したので修理に出すことになりました。
サブPCで更新していく予定ですが、
変換で出ない漢字の人名がカタカナになったり、更新が滞ったりするかもしれません。
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今回も桂花さんオンリー!
酔っ払ってデレまくってます。