スカイに肉薄したユウキとアスナは、右手の剣で彼に斬りかかる。

大きく弧を描いた薄青い白銀と紫がかった黒の２つの斬撃は、アバターの体重と突進による運動エネルギー、そして筋力パラメータの補正により恐るべき重さをもってスカイに叩きつけられる。

アスナ&ユウキ『ハアァァァ・・・ッ！』

しかしスカイは慌てることもせず、そっと剣を持ち上げると片手でそれを振り回す。

そのあまりの速さに、オブジェクトを構成するポリゴンが一瞬ぶれ、ノイズが混じった。

常識外れの動きで２人の攻撃を弾いたスカイは、正確に“２人が防御出来る場所目掛けて”剣を横薙ぎに振るう。

アスナとユウキは、間一髪のところで攻撃を防ぐがデュエル開始時に立っていた場所まで後退させられる。

同時方向からの攻撃では効果がないとわかったアスナとユウキは、今度は二手に分かれて接近する。

そして、左右両方から攻撃を仕掛ける。

しかしスカイは全く動じず、左右両方から飛んでくる無数の突きと斬撃を、前を向いたまま淡々と弾く。

スカイ「そう言えば、言い忘れてた。ソードスキルが一回でもヒットしたら君たちの勝ちでいいよ。僕は君たちのHPが０になったら勝ちだけど。」

アスナ&ユウキ『！？』

２人は一瞬だけ驚愕の色を浮かべたが、すぐに意識を戻すと攻撃を続ける。

次の瞬間、スカイは素早く大振りして、ユウキの剣を横に弾いて体勢を崩し、その隙に反対側のアスナを攻撃する。

レイピアの上側に刀身を打ち込むと、そのまま捻るようにしてアスナの剣を弾き上げる。

慌てて後退しようとするアスナだが、スカイはアスナが下がる前に彼女の腕を掴むと、ぐいっと引っ張って自分の方へ引き寄せ、振り上げたままの剣を叩き付ける。

アスナ「きゃあああ・・・！！」

ユウキ「アスナ！」

飛び込んできたユウキが、アスナに体当たりしたことによって、アスナへ向けられた攻撃はユウキの左肩から下を突き抜けた。

ユウキ「ぐっ・・・！！」

重い衝撃に、ユウキが顔をしかめた直後、彼女の体はエンドフレイムを巻き上げて砕けた。

アスナ「ユウキ！！」

ユウキの消滅にアスナが叫ぶ。

その間にスカイは、振り切ったばかりの剣を引き戻してもう一度振り上げる。

ガキィィィン！！

しかし、その斬撃がアスナに届く前に間に割り込んだデュオが、スカイの剣を受け止めた。

スカイ「ありゃ？何でデュオくんが混じってくるんだい？」

デュオ「自分で言ったはずだ。２人一緒にかかって来てもいいと。ユウキがいなくなった今、アスナは１人。つまり俺が加わっても問題はない。」

デュオが剣ごとスカイを押し返すと、スカイは後退して満足げに呟く。

スカイ「さすがは僕の弟だ。よく兄の話を聞いてる。」

腕を組んでうんうんと頷くスカイをよそに、デュオが叫ぶ。

デュオ「キリト！スイッチ！」

その瞬間、右手に【エリュシデータ】、左手に【ランベントライト】を装備したキリトが、空中からスカイに斬り掛かる。

キリトの攻撃が届く直前で剣を持ち直したスカイは、キリトが放つ超高速の連撃を弄ぶかの如く弾く。

デュオ「今の内にアスナはユウキに蘇生魔法を。」

アスナ「う、うん・・・！」

デュオの言葉で慌てて立ち上がったアスナは、ユウキのリメインライトに向かって蘇生魔法の詠唱を始める。

一方キリトとスカイは、以前ほとんど目視不可能な攻防を繰り広げていた。

２人とも攻防の速さは大差無く両者一歩も譲らないという状態にある。

違いがあるとすれば、キリトが二刀流でようやく達している速さに、スカイは両手剣（しかも片手持ちの状態）で達していることと、スカイのHPだけが１ドットも減っていないことだ。

スカイ「よっと。」

キリト「ぐわっ・・・！！」

一瞬の隙に繰り出されるスカイの攻撃を、ギリギリ防ぎつつ攻勢に転じようとするが、岩壁のように重く、閃光のように速い剣撃がそれを許さない。

その上、たとえ攻撃が成功しても正確に勢いを殺され、ダメージを通すことさえ出来ない。

キリトはダメージ覚悟でソードスキル【ヴォーパル・ストライク】を発動する。

キリト「う・・・らぁ！！」

ジェットエンジンに似た轟音とともに、エクストラ効果で加速されたランベントライトの刀身がスカイへと一直線に向かう。

スカイは自分の剣の刀身にキリトの剣の刀身を滑らせるようにしてあっさりと受け流す

だが結果的に、キリトは一旦距離を取ることに成功する。

スカイ「なかなかいい反応速度と運動神経だ。」

キリト「どの口で言ってんだか・・・」

スカイ「見ての通り、この口さ。」

スカイは演技っぽく肩を竦めた後、自分の口を指差して答えた。

スカイ「さてと、絶剣クンは復活したようだけど。次はどの２人が挑んでくるのかな？」

スカイの言葉に、キリトが振り返ると復活したユウキと２本目のレイピアを構えているアスナが立っていた。

スカイ「待ってるから、相談してきたら？」

キリト「いや、もう決まってるみたいだ。」

キリトがそう言って下がると、前に進み出たのはユウキと二刀流装備のデュオだった。

スカイ「おやおや、今度は君たち２人か。」

デュオ「不満か？」

スカイ「いやいや、僕もちょうど君たちの全力が見たかったんだよ。」

ユウキ「今度は負けないからね。」

スカイ「よし。いいよ。子供は元気じゃないとね。」

デュオ「行くぞ！」

デュオの言葉を合図に、３度目の打ち合いが始まる。

２回の攻撃で、正面一方や左右同時攻撃は意味を成さない。

だとすれば通用する可能性があるのは、前後から同時攻撃。

そう考えたデュオとユウキは、スカイに接近する途中でデュオの背中を足場にユウキがスカイの上を飛び越える。

スカイはそれを気にせず、前方から放たれるデュオの二刀流連撃を捌く。

その間に着地したユウキは、勝負をかけるべくOSSを発動した。

青紫色の輝きを纏った黒曜石の剣が、スカイの背中に向かう。

するとスカイは、デュオの剣を下に弾いてバランスを崩させ、自分の剣を地面に突き立てる。

そして、それを軸にして体を空中に躍らせた。

ユウキ「そんな・・・！？」

完全には停止出来なかったOSSの６連撃が、体勢を立て直したばかりのデュオに直撃する。

デュオ「ぐわぁ・・・！」

デュオのHPが大幅に削られ、ユウキには硬直時間が課せられる。

スカイ「コラコラ。絶剣クン、デュオくんを殺さないでよ。」

着地したスカイは、倒れているデュオとユウキを見て言う。

ユウキ「デュオ、大丈夫？」

デュオ「何とか。それより、お前は少し下がっててくれ。」

ユウキ「どうして？ボク足手まといだったかな？」

デュオ「いやそうじゃない。巻き込む可能性があるから一定範囲内から出てて欲しいんだ。」

申し訳なさそうにするユウキに、デュオは優しく声を掛けるとユウキは「わかった。」と言ってアスナたちのいる場所まで下がる。

それを確認したデュオは立ち上がると、カリバーンをストレージに戻し、ブレードダスクの柄を両手でしっかりと握り、後ろに流すように構える。

スカイ「おや？二刀流は終わりかい？」

デュオ「ああ・・・本気で行かせてもらう。」

そう言った直後、デュオの瞳から光が失われる。

デュオ｢｢・・・排除・・・｣｣

２つのノイズが重なったような声でそう言うと、スカイが若干驚いたような顔をする。

スカイ「あらま・・・自分でその状態を抑えられるんだ。」

スカイが呟いた次の瞬間、瞬間移動のようにして接近してきたデュオと激しい打ち合いになった。

その速度は常識のレベルを遥かに上回るもので、振るっている剣は２本のはずなのに、実際に見える刀身の数は１０という異常な現象が起きている。

しかもそれらは霞んでいて、刃がぶつかり合う時のエフェクトフラッシュも追いつけていないので、ランダムにエフェクトフラッシュが発生しているようになっている。

その時、スカイは剣を左手に持ち替えた。

すると、先程倍近い速さで剣が振るわれ、デュオを吹き飛ばした。

突然のスピードアップに防御で精一杯だったデュオは、受け身を取れず地面に叩き付けられて転がる。

シリカ「デュオさん！！」

一気にＨＰがレッドゾーンに達したデュオに、シリカが駆け寄る。

シリカはデュオを抱き起すと、ポーチから出したハイポーションをデュオに飲ませる。

それによって、デュオのＨＰが回復を始めると、それを見たスカイが満足げに笑う。

スカイ「いい仲間を持ったじゃないか。」

そして、剣を地面に突き立てると「降参(アイ・リザイン) 」と言ってデュエルを決着させた。