No.604709 超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 リーンボックス編2013-08-03 21:33:21 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:668 閲覧ユーザー数:649 |
教会の地下、そこは死刑などに匹敵するほどの重罪を犯した者が、牢獄されられる場所である。
その中で、苦しそうに唸る声が一室に響いた。
そこは、蛍光灯など一切の光が存在しない特殊牢屋室726号室だ。
「……ッ……ァ…」
今にでも消えそうな声。まだ成人になっていない到底犯罪に手を染めるような貌でない少女三人は、真っ暗な空間に閉じ込められていた。
その中の一人、コンパは、弱弱しく息をしながら、顔を青くして倒れている仲間を見つめる。
意味も分からず、ネプテューヌが毒を飲まされて、直ぐに治療と病院に連絡しようとしたとき、この大陸でパーティーの招待状や、モンスターのいる地域を親切に教えてくれたイヴォワール教院長の指示でここに無理やり運ばれた。
「……私の……私の所為だ…ッ」
膝を曲げて、腕を回し、蹲った体制のアイエフは自分を責めるように呟いた。
彼女は、元々ルウィー出身でありながら、その女神ホワイトハートを信仰せずにこの大陸グリーンハートを信仰してきた。
しかし、異端者は世の中では忌々しい存在。そんな彼女の真摯な信仰が認められるわけがなかった。
だから、自らの心を偽って今まで生きてきた。そんな時に数日前にパーティで秘密裏にイヴォワール教院長から言われた言葉、『ネプテューヌを亡き者に出来たなら、リーンボックスの正式な一員として女神はあなたを向けてくれる』その言葉は、生まれてきて偽ってきたアイエフの心を酷く動揺させた。
だが、直ぐに正気に戻した。ネプテューヌ達とは短い付き合いではあるが、たくさんのことがあった。誇るべき仲間だ。売るようなことは絶対にできない。
しかし、イヴォワール教院長は、アイエフの信仰する女神であるグリーンハートに一度、会う機会を設けてくれた。条件は特になかったので、これを受けても大丈夫だろうと甘く考えて了承してしまった。その結果がこれだった。
「あいちゃんは、悪くないです……」
「…でも、…私が…」
結果的に、その場の雰囲気で毒をイヴォワール教院長に受け取ってしまい、グリーンハート様と会えた喜びに気が舞い上がっていたんだろうと直ぐに正気に戻り、毒を破棄しようとしたとき、コンパからネプテューヌが料理を食べて起きなくなったと連絡が来て、大急ぎで向った時は既に遅かった。
捕縛されるコンパとネプテューヌ、血相を変えた時に『良くやった』と現れるイヴォワール教院長。ふざけるなと唱えた時には、イヴォワールの手下たちがアイエフを拘束されていた。数々のモンスターと戦ってきても、大人四人に囲まれ武器を出す暇も与えらず襲われては、何も出来なかった。
「大丈夫です……大丈夫です…」
もう三日も、ここに閉じ込められている。
アイエフとコンパが所持している携帯から、なんとか見える状況だ。
携帯の液晶から放たれる光のみで、この暗黒の空間から狂う事なくいられるのは、コンパの応援のおかげだろう。
外からの連絡を遮断するため、この大陸で頼みになる紅夜とは連絡が出来ない。
正に八方塞がりと言ってもいいほどの状況でも、仲間を売るような真似をしてしまったアイエフを咎めることなく、毒でその体を侵されて苦しむネプテューヌの体を冷まさせないようにコンパは手持ちのハンカチなどで拭いている。
「あんたこそ…大丈夫なの?コンパ」
「正直、ちょっと辛いです。でも、ここで凹んでしまったら、立ち上がれないような気がするのです」
「…………」
よくに言う空元気、それがコンパを支えている物だ。アイエフは罪悪感に悩みながら、立ち上がり状況を確認しようと携帯を持って、牢屋の扉から外を確認する。
蝋燭だけが、道を照らして、耳を澄ませば自分たちと同じように飛び込められている罪人のうめき声が聞こえ直ぐにその場から離れて、コンパにネプテューヌの様子を尋ねた。
「どう、様子は…?」
「ねぷねぷの体…毒でどんどん体温が下がっているです…このままじゃ」
ーーー死ぬ。それは言わずとも分かった。
どうすれば、どうすればとアイエフは必死にここから脱出する方法を考えるが、思いつく答えは無理だった。
少なくても、鍵は厳重で武器も取り上げられているから物理的な逃亡は無理、なら一体どんな手があるというのだ。
思考が闇に染まっていく。どうしようもない状況に悔しさを隠せず、強く手を握ったその時、何かが走ってくる音が聞こえた。それは、徐々に近づいてきて、ちょうどアイエフ達の牢屋の前で止まった。
何事かと、アイエフとコンパが扉に視線を向けた瞬間、六つの閃光が扉に走り、粉々になった。そして、その中から懐かしい声が聞こえた。
「お前らーー大丈夫か」
「紅夜!?何でこんなところーーーに……」
思わず声が止まった。驚愕は更なる驚愕を呼んだ。
焦っていたのか、肩から呼吸をしていた。
手には双剣モードの黒曜日が握られていた。
そして、紅夜は血を吐きながらアイエフ達を見ていた。漆黒のコートの上からでも分かるほど銃痕が見えていた。そこから治まる様子を見せず血がドクドク流れて地面に落ちていく。
「あ、あんた……!」
「驚いている暇は…ゴフッ…ないぞ…!。ネプテューヌは、どうなんだ!?」
「こ、こぅさん…ぁ、ああ……ぁ…!」
世界が反転しかける。血だらけの姿にコンパの思考はオーバーヒート目前だ。
紅夜の耳には、撒いた警備員達がこちらに向かってくる音がはっきりと聞こえた。時間がない、紅夜の額に焦燥の汗が流れる。
「………大丈夫、だ」
未だに驚愕のあまり、その場から動くことが出来ないアイエフとコンパに対して、紅夜は一旦地面に黒曜日を置いて、二人の頭に手を置いて優しく撫でた。
血だらけだ。生きていることが不思議なぐらいに血が流れている。そんな状態でも、紅夜は出来るだけ穏やかな表情で、二人を落ち着かせるように空元気を振りまいた。
そんな紅夜の表情に、アイエフとコンパは落ち着いてくる。今の現実を認識する。
「ネプ子は、毒を受けて……急がないと…!」
「……俺が道を開ける。その隙にお前らをここから逃げろ。どこでもいいとにかく逃げろ…!」
「こぅさんは、どうするんですか!」
「そうよ!ネプ子以上にあんたが不味いじゃないの!!」
再び黒曜日を手に紅夜は立ち上がった。既に紅夜の立っている床は血床となっていた。
少しでも意識を抜けば、指一本でも押されたら、紅夜は暫く立ち上がることは不可能だと言ってもいい。
「……お願いだ、言うとおりにしてくれもうすぐで厄介な奴らが来る」
「見捨てろっていうの!?」
「……違うな、置いていけって言っているんだ」
ラステイションでのあの時は、偶然空がその場にいたからどうにかできた。
しかし、もう一度、同じようなことが好都合よく起きる可能性はない。
「俺は大丈夫だ。お前らは行け」
「ッ……また、会えるよね」
「当たり前だ」
しっかりと倒れないように踏みとどまりながら、紅夜は立ち上がる。
出来るだけ殺人はしないようにした、やっぱり殺すより殺さない方が難しいと痛感した。
見た限りでは、死人はいない。攻撃は、斬撃系の場合は手や足を、格闘系は腹部などをある程度手加減してここまでやってきた。
紅夜の目的は、あくまでネプテューヌ達の救出だ。
左手を上げる。暗い空間の中で禍々しく光りオーラを放つのは、闇色の宝玉。
「デペア」
『
紅夜の意思に反応して、闇色の宝玉から莫大なオーラが紅夜を一瞬にして飲み込み、ドラゴンを模った黒甲冑を纏った紅夜は、デペアの補助を頼りに牢屋から一歩外に出る。
懐中電灯を持った目前までやってきていた。デペアの魔力で強化された黒曜日に自身の魔力を螺旋状に回転させる。
「……精一杯の手加減だ」
『
本来であるなら、双剣モードの黒曜日を両方使用して、尚且つ自身の魔力とデペアの魔力を二重螺旋で放つ所を紅夜だけの魔力で放った漆黒の嵐は、軽々と警備員達を飲み込み吹き飛ばした。
「もう一発!」
『
今度はデペアの魔力を使用して、しかしこれも片手で放ち、天井に風穴を開けて脱出口を使った。
派手に暴れまくったので、紅夜の場所は全て牢獄に集まっている。
「行くぞ!」
紅夜の掛け声に、ネプテューヌを背負ったアイエフとコンパが紅夜に掴む。
黒曜日を一時的に消して、三人が落ちないように腕と兜から伸びた触手で固定して、背中の噴射器から魔力の火を吹かして、一気に上昇。
教会のホームに出た。一瞬、周囲を見渡し先ほど放った
「よし、アイエフ、コンパ。お前達が逃げ切れる時間を稼ぐ遠くへ逃げろ」
「……本当に、本当にまた会えるですか?」
「心配性だな。……大丈夫さ」
心配性で優しい、コンパの頭を勇気づけるように撫でた。
ネプテューヌを抱えたアイエフに目を向けると力強く頷く、こちらは心配はなさそうだ。
「行くわよ。コンパ!」
「は、はい…です!」
何度か、コンパやアイエフは俺をチラチラと見ながら群衆の中に消えていく。
完全に目撃を消すことは無理だが、人の記憶と言うのは何事も強烈な物が残る。
故に、紅夜はこの状況下を予想して、行動はすべて決まっている。とにかく、暴れまくり人々の記憶にアイエフやコンパの印象を吹き飛ばすほどの強烈を与えるのが紅夜の目的だ。
「……ま、無理に近いけどな」
自分で言って笑ってしまう満身創痍の体に鞭を打って、一体どれだけ動けるか分からない。
けど、精々、華やかに豪華に散る覚悟だ。相手は銃を持って訓練された警備員。
幾多の悍ましいモンスターと戦ってきた紅夜には、いくらいても話にならないだろう。しかし、条件として出来るだけ殺さないことだ。今の所は殺してないが、急所を外しても深く切ってしまった人もいる為、結果的に殺人を犯しているかもしれない。
そこまで考えて、鼻で笑うーーーやっぱり、零崎 紅夜の在り方はいつでも変わらない。
手に握る黒曜日を力強く握りしめる。眼前には警備隊どころか軍人もちらほら見えて、今度も蜂の巣だろうか、それとも焼かれるだろうか?どんな殺し方をしてくるのか、紅夜は苦笑しながら構えた時だった。
「引きなさい」
たった、一言、放たれた言葉に、全員の視線が持って行かれた。
警備員や軍人たちは、後ろから来る存在を見た瞬間、モーゼの奇跡のように列を作った。
「……は、はは」
思わず紅夜は笑った。ここを襲撃するときから絶対に会いたくないと思っていた人物が目の前に現れたからだ。
姿を現す。エメラルド色のポニーテールを揺らしながら、いつもの微笑が似合うお姫様からまるで戦姫のように鋭い眼差しをしている。その身に纏うのは騎士のような誠実さと見る者を威圧するプロセッサユニットを纏っていた。その手には白銀の巨大なランスが装着されている。
「---なぜ、どうしてこんなことを」
「---仲間の為だ」
この大陸、雄大なる緑の大陸の
そして、紅夜にとって自分の時を動かした恩人。
その名は、グリーンハートーーーベールだった。
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その14