No.604303

真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う・結」(最終回)


 お待たせしました!

 それでは一年半近くに渡ってお送りしてきました

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2013-08-02 20:42:09 投稿 / 全15ページ    総閲覧数:9072   閲覧ユーザー数:6633

 外史の世界にて。

 

 既に一刀達がいなくなってから数年余りが経過した後のお話である。

 

 

 ~建業にて~

 

「ねえ、母様」

 

「どうした、甘述?」

 

 思春は娘の甘述を連れて買い物に来ていた。甘述は普段はただじっと手を

 

 繋いでいるだけであまり話しかけてくる事も無い娘なのだが、その日に限

 

 り、珍しく話しかけてきたのであった。

 

「私の父様ってどういう人だったの?」

 

「む…そうか、お前もそういう事を気にする年になったんだな」

 

「この前、蓮華様に『甘述は少し一刀にも似てるわね』って言われたんです。

 

 今まで母様から父様の事はあまり聞いた事が無かったので私には良く分か

 

 らないのですが、私は父様に似てますか?」

 

 実際の話、甘述は見た目はほとんど思春を小さくしただけなのだが…。

 

「そうだな。お前が持つ雰囲気というか人を惹きつける何かは間違いなく父

 

 親の持っていたものだな。お前の父はそれは多くの人を惹きつける魅力を

 

 持っていた男だったからな」

 

 思春は娘にそう優しく答えながら心の中で呟く。

 

(北郷…いや、一刀よ。お前と私の娘はこんなにも成長したぞ。見せてやれ

 

 ないのが残念だ。お前はそっちで元気にやっているか?)

 

 

 

 ~洛陽にて~

 

「こりゃ、劉康!またお前という奴は勝手に抜け出して街に出おって。少し

 

 は身分という物をわきまえぬか!」

 

 命は息子の劉康に小言を言っていた。

 

「ぶう、だって宮中にいるだけでは民の暮らしは何も見えないって言ったの

 

 は母上ではありませぬか。それに去年亡くなった王允のじいが『ああ言っ

 

 ている母君も昔はすぐ城を抜け出してじいを心配させたものですじゃ』と

 

 言ってましたけど?」

 

「じいの奴…最期の最期に余計な事を。じゃがそれとこれとは別じゃ!もし

 

 お前に何かあっては妾は一刀に何と言って詫びたら良いか分からんではな

 

 いか!」

 

「そこで父上の名前を出されても…そもそも父上ってどういう人だったので

 

 すか?僕は会った事も無いし誰もちゃんと話してくれた事も無いからよく

 

 知らないのですが…」

 

 息子にそう言われ、命はそれまであまり一刀の事を語ってこなかった事に

 

 思い至る。そして目の前の息子が一刀を子供にしたらこんな感じになるの

 

 ではないかという位にそっくりな顔立ちをしている事にも気付く。

 

「そうじゃの…父上は誰よりも強く、そして誰よりも優しい男じゃった。漢

 

 を建て直す事が出来たのも、父上がいたからこそじゃ」

 

 それを聞いた劉康は納得のいかない顔をする。

 

「何じゃ?何か不満そうじゃの」

 

「今、母上は父上が誰よりも優しかったと仰いましたが、僕はそう思えませ

 

 ん。優しい人が何故母上と僕を置いていなくなるのです?母上は時々空を

 

 見上げては父上の名前を呼んで泣いている事があります。僕が父上だった

 

 ら、母上が泣いて名前を呼んでいたらすぐにでも母上の側に参りますのに」

 

 

 

 

 劉康のその言葉に命は涙が溢れそうになるが、必死に留める。

 

「そうか、そうよな、一刀はこんな可愛い子を置いていなくなったのじゃか

 

 ら優しくないかもしれんな」

 

 命はそう言って息子を抱きしめる。

 

「でもな、これだけは覚えていてほしいのじゃ。父上はな、決して本心から

 

 妾とそなたを置いていきたかったわけではないのじゃとな」

 

 母親の言葉から何かを感じとったのだろう、劉康は大きく頷いていた。

 

「さて、それはそうと…今、お前は妾が泣いて名前を呼べばすぐにでも来る

 

 と言ったの?なら、妾が何時も泣いておれば抜け出す事は無くなるという

 

 事じゃな?」

 

「…むう、母上はずるいです」

 

 劉康は頬を膨らませ、そっぽを向いていた。

 

 それを命は微笑ましく眺めながら心の中で呟く。

 

(どうじゃ、一刀。お主と妾の子はこんなにも立派に育ったぞ。本当に見せ

 

 てやれんのが残念じゃ。お主は朱里達とそっちで仲良くやっておるか?)

 

 

 

 そして現代の世界。

 

 当の一刀達はというと…。

 

「ご主人様、朝ですよ。起きてください」

 

「ううん、朱里…後三分…」

 

「起きてください!」

 

 その瞬間、布団が一気に剥がされる。

 

「ふわ~っ、うう~ん…まだ六時じゃないか。もう少し寝かせてくれても…」

 

「ダメです!もう樹刀(みきと)と刀朱(とあか)はおじい様やおばあ様と

 

 一緒に起きて食卓についています!後はあなたが起きるだけです!」 

 

 ・・・・・・・

 

「おはようございます」

 

「おはよう、一刀。でもさすがに一番最後というのはいただけないわね」

 

「そうじゃぞ、子らを少しは見習え」

 

「とおさま、おそ~い」

 

「とおさま、ねぼすけ~」

 

 一刀がリビングに行くと、そこには一刀と朱里の子(しかも双子である)の

 

 樹刀(男)と刀朱(女)が祖父母の側にちょこんと座っていた。

 

(ちなみに『おそ~い』と言ったのが樹刀、『ねぼすけ~』と言ったのが刀朱

 

 である)

 

「だって昨日は遅くまで宿題やら補習の課題やらで…」

 

「それとこれとは別じゃ。それを言ったら朱里とて同じじゃろうが」

 

 一刀は言い訳じみた事を言うが、そこは天刀にピシャリと言われる。

 

「一刀、子供の前で親がそんな言い訳じみた事を言うものではありませんよ」

 

 さらに樹里にまでそう追い討ちをかけられ、もはやぐうの音も出ない一刀で

 

 あった。

 

 

 

「「それじゃ、いってきます」」

 

「いってらっしゃい」

 

「車に気をつけてな」

 

「「はやくかえってきてね~」」

 

 俺と朱里はじいちゃん、ばあちゃん、そして子供達に見送られて学校へ向かう。

 

 …実を言えば俺達はまだ聖フランチェスカ学園の生徒のままである。こっちに

 

 帰ってきた後、朱里の出産・育児の為、およそ一年程の休学を経て復学して早

 

 や一年近くになる。(ちなみにじいちゃんとばあちゃんは子供の世話の為に鹿

 

 児島の家を引き払いこっちに引っ越してきてくれている)

 

 しかし…。

 

 ・・・・・・・

 

「なあ、何で及川が普通にいるんだ?」

 

「それはどういう意味や、かずピー?そんなにワイがいるのがおかしいんか?」

 

 学園の俺のクラスには悪友・及川が普通に学生として通学している。実を言え

 

 ば及川だけでなく、学園の面々は俺が外史に行く前とまったくと言っていい程

 

 変わっていない。

 

 正直、俺も朱里も困惑の色合いを隠せなかったのだが、じいちゃんが『儂が二

 

 度目に帰ってきた時もそんなもんじゃったぞ』の一言でもう悩むのをやめたの

 

 であった。どうやら世界の修正力的な何か大きな物が作用しているようだ。

 

「おい、かずピー、返事せんかい!」

 

「ああ、悪い、悪い。どうもお前のその顔を見てると世の中の不条理を感じずに

 

 いられなくてな」

 

「不条理を感じとるんはワイの方や。何時の間にか朱里ちゃんとの間に子供なん

 

 ぞこさえおってからに…このリア充が!」

 

 そして何故か俺と朱里が正式に結婚して子供がいる事も普通に受け入れられて

 

 いる。正直何故大丈夫なのか理解は不能だが、考えていても答えは出ないので

 

 俺も朱里も考えるのはやめにしたのであった。

 

 

 

「まあ、ええ。それよりも…かずピー聞いたか?」

 

「何を?」

 

「どうやら転校生が来るっちゅう話や」

 

「転校生?随分季節外れだな」

 

「ちっちっち、分かってへんな~。こういう時に来る転校生こそ運命の出会いを

 

 果たす為に来るって決まってるんやないか!」

 

 …正直、及川の言っている事がほぼ理解出来ない。

 

「あまり良く分からんのだが…誰と誰が運命の出会いとやらを果たすんだ?」

 

「とりあえずリア充かずピーには訪れんやろうから…此処はワイ一択やな!かあ

 

 ~っ、遂にワイにもこんな日が…こりゃきっちりセットしとかんとな!」

 

 及川はそう言いながら何処からか取り出した櫛で髪をとかしていた。

 

 ていうか転校生が男だったらどうするつもりなんだろう?それでもこいつは運

 

 命だとか言ってそいつに声をかけるのだろうか?それはそれで…朱里みたいな

 

 のが喜ぶのだろうが。

 

 ・・・・・・・

 

 その頃、学園の門前では…。

 

「此処が聖フランチェスカ学園…あやつのおる所だな」

 

「ええ、やっと会えます…待っていてください」

 

 黒髪のロングの女の子とツインテールの女の子が感慨深げに学園を眺めながら

 

 校門をくぐっていった。

 

 

 

「ええ~、早速だが今日は転校生を紹介する。男子ども、喜べ。女子が二人だぞ」

 

 朝のHRで開口一番、担任よりそれが告げられた途端に教室中の男子(俺以外)

 

 が狂喜乱舞の状態となる。

 

「よっしゃ~っ!運命の出会い決定や!!」

 

 特に及川は俺の前の席でそう騒いでいた。

 

 俺は誰が来ようがあまり気にならないので少々引き気味に見ていたが、そこに

 

 現れた者の姿を見た瞬間、驚きの余り危うく立ち上がりそうになった。

 

「初めまして、『東乃 輝里(とうの かがり)』です。よろしくお願いします」

 

「『皇 命(すめらぎ みこと)』じゃ。よろしくの」

 

 そこにいたのは…どう見ても輝里と命であった。そんなバカな…さすがに本人

 

 ではなく、おそらく名前と顔が同じなだけの別人なのだろうが…でも見れば見

 

 る程そっくりだな。

 

 俺がそう思って見ている中、クラスの男どもは現れた美少女二人に狂喜乱舞の

 

 度合いを高める一方であった。

 

「輝里ちゃ~ん、命ちゃ~ん!!こっち!こっちの席が開いてるでぇ~!!」

 

 特に及川は両手をブンブンと振り回してアピールしまくる。

 

 その猛アピールぶりに苦笑を浮かべながらそちらを見た二人の眼が俺の姿を捉

 

 えた瞬間、その顔が驚きと喜びに包まれたようになる。

 

 そしてそのままこっちに小走りに向かってきた。

 

「よっしゃ~、二人ともゲットや!ワイの名前は及…あれ?」

 

 それを自分の事と勘違いした及川が自己紹介しようとするのを二人は完全にス

 

 ルーして俺の所に駆け寄り、

 

「一刀じゃな!?会いたかったぞ~っ!!」

 

「一刀さん、一刀さんですね!?いきなり会えるなんてやっぱり私達の出会いは

 

 運命だったんですね!」

 

 そう叫ぶなり俺に抱きついてきた。

 

 

 

「えっ!?何で…一体どういう事だ、これ?」

 

「それはワイの台詞や!朱里ちゃんいうもんがありながら何時の間に二人も手ぇ

 

 出したんや!!」

 

 及川の台詞はそのままクラスの男子全員の心の声であった。

 

 ・・・・・・・

 

 昼休み。

 

 クラス全員からの突き刺さるような視線から逃れるように、俺は二人を連れて

 

 中庭へ行く。

 

「改めて一応確認するんだけど…あの外史から来た本人というわけでは無いんだ

 

 よね?」

 

「うむ、妾達は間違いなくこっちで産まれた人間じゃ」

 

「それに実際、つい最近まであちらの世界の記憶は無かったんです」

 

「それが何故いきなり?」

 

「私達にも分かりません…最初は夢で見る位で、何処のおとぎ話かなんて思って

 

 いたのですが、段々その内容が鮮明になってきて…そして命も同じ夢を見ると

 

 いう話を聞いて、二人で話していたらこれはおそらく…」

 

「いわゆる『前世の記憶』というものなのではないかとな、そういう結論になっ

 

 たのじゃ」

 

 前世…それじゃ二人は輝里と命の生まれ変わりというわけか?何だか頭が混乱

 

 してきたけど…どうやら事実として受け入れるしかないようだな。

 

(ちなみに輝里と命はこちらでは元々幼馴染であるそうだ)

 

 

 

 その時、携帯が鳴り、見ると朱里からの着信であった。朱里からかけてくるな

 

 んて珍しいな。(朱里はまだ何となく携帯に慣れないらしく、自分から使う事

 

 は少ないのであった)

 

「どうした、朱里?」

 

『ご主人様、今どちらに?』

 

「中庭だけど…そうだ、実は大変な事が…」

 

『こっちも大変なんでしゅ!すぐそっちに行きましゅから!』

 

 そしてこっちが返答する間もなく切ってしまう。どうしたんだ?カミカミなの

 

 は何時もの事だが…。

 

 ・・・・・・・

 

「ご主人様~!」

 

 しばらくして朱里が息せき切って駆けてくる姿が見えたので、返事をしようと

 

 したその時、その後ろから現れた者の姿を見て俺は驚きの余り開いた口が塞が

 

 らなかった。

 

「まさか…雛里、風?」

 

 そう、現れたのは雛里と風であった。まさか彼女達も…?

 

「そちらこそ…ご主人様の横におられるのって、輝里さんと…陛下でしゅか?」

 

 朱里は朱里で俺の横にいる二人の姿を見て驚いていた。

 

 そしてそれは朱里だけでなく、その場にいる全員が驚きで固まっていたのであ

 

 った。

 

 

 

「それじゃ…二人も?」

 

「はい、最近外史での記憶が戻ってきて…」

 

「何だか引き寄せられるようにこの学園に来たのですよー」

 

 どうやらこの雛里と風も輝里や命と同じらしい。

 

「しかし何でまた…仮に前世がそうなのだとしても、このタイミングでこれだけ

 

 の人数が揃いも揃って…」

 

「世の中不思議な事もあるものですね…」

 

 さすがのこの展開に朱里の頭もついていけてないようだ。

 

「まあ、なったものは仕方ないのですよー。とりあえず、やはり風はお兄さんと

 

 共にある存在であると証明されたということですねー」

 

 風のその言葉に他の全員が反応する。特に、

 

「ダメでしゅ!向こうではともかく、こっちではご主人様は私だけのご主人様で

 

 しゅ!!」

 

 朱里は必死にガードするかの如くに俺の前に立つ。

 

「…朱里ちゃん、向こうでもほとんど独り占めしてた」

 

「うん、あんまり変わってない。だったら…」

 

「風は別に一番にこだわるわけではないから大丈夫ですよー」

 

「何なら、妾はデキた時は認知だけしてくれればそれで」

 

 ちょっ、何皆さん恐ろしい台詞を…。

 

「ダメでしゅ、ダメでしゅ!!」

 

 朱里はその台詞のみを繰り返していた。

 

 

 

「それはそうと…私達だけなのかな?」

 

 突然の輝里のその言葉に皆の動きが止まる。

 

「どういう事、輝里ちゃん?」

 

 同じ事を思い当たったのだろう、少々震えた声で一応の確認をしてくる雛里に

 

 答えたのは風であった。

 

「他の皆もこの世界に転生している可能性があるって事ですねー」

 

「妾達がこうしておるのじゃ、その可能性は高いじゃろうな」

 

 命も頷きながらそう答える。

 

「はわわっ!?そんな…それじゃ」

 

「記憶が戻っていれば皆、此処に来るという事ね」

 

 マジか、それ…。俺はこれから起こるであろう騒動を思うと、頭を抱えていた。

 

 ・・・・・・・

 

 その頃、一刀の家にて。

 

 子供の世話をしていた天刀と樹里の許に一人の老女が訪ねてきていた。

 

「久しぶりね。さすがに鹿児島は遠いからあまり行けなかったけど、此処にいる

 

 ならこれからはちょくちょく会えるわね」

 

「はい、私もこうして櫻花様のお元気な姿を見れて嬉しいです」

 

「しかし櫻花はあまり変わらんのぉ~、本当に儂らと同年代なのか?」

 

「あらあら、天刀くんはまだ私の事を口説くのかしら?さすがは『沛の種馬』ね」

 

「ほう、天刀さんはまだ櫻花様を…」

 

「待て待てぇぃ!何故そうなる!?そして樹里、その黒いオーラをしまってくだ

 

 さい、お願いします」

 

 

 

 慌てた様子で土下座モードになる天刀を見て、樹里と櫻花は顔を見合わせて笑

 

 っていた。

 

 実はこの櫻花という女性、天刀達が行った外史における『漢の高祖・劉邦』の

 

 生まれ変わりである。天刀達が戻ってきてすぐに外史における記憶と共に天刀

 

 達の前に現れ、以来数十年友誼を交わしてきたのであった。

 

「冗談よ、大体もう私達も何時お迎えが来て先に逝った皆の所へ行ってもおかし

 

 くない年なわけだしね」

 

「ううっ、そういう冗談はやめてくれ。心臓が止まりそうになったわ」

 

「そうですね…少なくとも樹刀と刀朱が成人するまで二人とも元気でいたいから、

 

 此処はやめておこうかしらね」

 

「ふふ、そこでお昼寝してる子達ね。いいなぁ、私もこっちでも子供が出来てた

 

 ら今頃こんなひ孫がいたのかしらね~」

 

 櫻花がそう言って横目で天刀を見ようとするのを樹里が完全にガードする形で

 

 間に入る。

 

「天刀さんは私のです。お諦めを」

 

「はいはい、本当に樹里ってば相変わらず天刀くん命なんだから」

 

「当然です。何せ私の運命の人ですから」

 

 臆面もなくそういう台詞を言う樹里に天刀は顔を赤らめ、櫻花は呆れ気味の顔

 

 となる。

 

「あっそう…それはごちそうさま。それにしても…一刀くんだっけ?彼ももしか

 

 したら私達と同じよう話になってるんじゃない?」

 

「十分あり得るな、それは」

 

「そうね…まあ、そっちは朱里が頑張る話ですけどね」

 

 三人はそう言って笑いあっていたのであった。

 

 

 

「はっくしょん!」

 

「くしゅん!」

 

「どうした?二人とも、風邪か?」

 

「いや、そういうわけでは」

 

「私も違います。誰か噂でもしていたのでしょうか?」

 

「それはきっとこの世界にいる他の皆が噂してるという事ですねー」

 

 風…それはあまりにもあり得すぎて笑えないのだけど…。

 

「…しかし一体これからどうなるんだ?」

 

 俺がそう呟いていると、それを無視するかの如くに、

 

「とりあえずは…一刀の子供を見に行こうぞ!」

 

「命、話がぶっ飛び過ぎよ。それは放課後になってからよ」

 

「あわわ、ご主人様と朱里ちゃんの子供…とても可愛いですよね、きっと」

 

「ふふふー、それは楽しみですねー。それにお兄さんのおじいさんとおばあさん

 

 にもちゃんとご挨拶しませんとねー」

 

 四人は俺と朱里を置いて話し始める。

 

「…どうすりゃいいんだ、これ?」

 

「ふふ、これから大変ですね。でも…」

 

「でも?」

 

「外史に居た時みたいにまた皆で楽しく出来るんですよね?だったら多少の事は

 

 …でも、ご主人様」

 

「うん?」

 

「浮気はダメですからね?」

 

「は、はい!それはもちろんですとも!!」

 

 俺のその言葉に朱里はにっこりと微笑むと、話の輪の中へ入っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 それを見ながら俺は、これから起こるであろう騒がしくも楽しい日々と変わら

 

 ず守り続けていく大切な女に思いをはせていったのであった。

 

 もう外史へ行ったり戦乱の中に身を投ずる事は無いのだろうけど、これからの

 

 人生もまた劣らず楽しいものとなると信じて…。

 

「それじゃまずは…教室へ戻るぞ!」

 

『はいっ!』

 

 俺の言葉に皆はそう力強く答えていたのであった。

 

 その顔を見ながらつくづくと思う。

 

 

 

 

 

 ―これからも俺と朱里と仲間達に変わらずに幸あらん事を―

 

 

 

 

 

 

                真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」これにて完結!!

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。 

 

 一刀と朱里の人生という名の物語はこれからも続いていき、他の皆も学園に

 

 やってくるのですが、 私より紹介させていただくのは此処までとさせていた

 

 だきます。

 

 

 約一年半に渡ってお送りしてきた「伏龍は再び天高く舞う」も此処に完結を

 

 迎える事が出来ました。ここまで続けてこれたのもひとえに応援してくださ

 

 った皆々様のおかげでございます。皆様から寄せてもらったコメントや応援

 

 メッセージが書いていく上での参考になった事も多々ございました。

 

 小説を書くという事・自分の書いた物を人に見せるという事も初めての経験

 

 であった故に、作中の描写や文章の足りなさで読んでいてご不快になられた

 

 方も多数おられたかとは思いますが、改めてご容赦の程を。

 

 

 一応ここで注釈を一つ。

 

 外史での命の息子の名前である『劉康』なのですが、本当は劉協の孫で、劉

 

 協の後を継いだ人の名前でございます。此処では劉弁の子として、漢王朝の

 

 第十五代皇帝となり、その後の漢王朝のさらなる発展を築いたものの、誰に

 

 似たのかその周りには多くの美女が侍り、『中山靖王の再来』だの『大陸の

 

 種馬』などという二つ名もついた…なんていう設定を妄想していたりします。

 

 

 それでは、これにてしばらくのお別れにてございます。

 

 何時かまたお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 追伸 次回作?何それ、美味しいの?…とかいう冗談はさておき、

 

     一応は頭の中で考えている事はあります。

 

     題名は「真・恋姫†無双 異伝『空と命と夢の狭間に』」

 

     メインヒロインは…秘密です。

 

 


 
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