No.602477

司馬日記・支援の十

くらげさん

ついに大台に乗りました。本家様に少しでも益があれば嬉しいです。

2013-07-28 13:57:47 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:14748   閲覧ユーザー数:9075

とうとう十作目。ガンバッタゾ。今回は宣言通り張松&法正でひあうぃーごー!

ジリジリ。と大地を焦がす音が聞こえてきそうなぐらいに、強い日差しが降り注ぐ。

 

「あっちぃなー」

「言うな……余計暑くなる……」

 

手で庇を作って空を仰ぐ法正。普段は眼を隠している前髪をバサッと掻き揚げ、額に浮かんだ汗の粒を手拭で拭っている。

隣に座る張松は涼しい顔で目を瞑っているのかと思いきや、彼女は顔に汗を掻かないタイプなだけで彼女の豊満すぎる谷間は汗でぐっしょりと濡れていた。

チチデカってこういう時大変そうだなぁ。とか思いながら、法正は上着をばっさばっさやって少しでも涼を取ろうと足掻いている。

 

「色好い返事ってどっかからあった?」

「無しの礫だ。 空の方は」

「わっちの方もありんせん」

「……もう少しで期限が来てしまう。その前に何とかしたい所だ」

「かといって有力な当てがあるわけでもなく、旦那に直談判なぞ出来る訳も無く。 八方塞たぁこの事ですなぁ」

「何とか笑い話にしてしまいたい所だ。 ……所で、先ほどから何やら音が聞こえてこんか?」

 

んー?と法正が耳をすますと、確かにか細い音色が聞こえてきた。

 

「こりゃあ……桔梗の姉御の笛のような……」

「お前もそう思うか?」

「姉御が誰がおるかも分からん所で笛吹くなんぞ珍しい」

 

張松は法正の言葉に視線を彷徨わせなにやら考えると、ずばっと立ち上がると身形を整えた。

と言っても本日は不細工になる化粧をしているので、暑さのあまり気崩した衣服を整える程度の物だったが。

突如そんな事をやりだした親友を法正はポカンと見つめていたが、張松が女として身形を整える理由なぞ一つしかなく、自分も遅れて立ち上がると裾を直した。

 

「旦那、いるかねぇ?」

「居る。と考えるが自然だろう。 桔梗殿に意見を変えさせるなど、一刀様にしか不可能だ」

「それもそだね」

 

か細く華麗な笛の音を辿っていくと、城にある大きな中庭でも、殆ど人の訪れない場所に出た。

別段隔離されている訳でも、進入禁止とのお触れが出ている訳でもないのだが、大きな樹の根元付近には近づかない。というのが暗黙の了解だった。

その場所に着いてしまった法正と張松はしまった。と同時に思ったのだが、今更引き返す訳にもいかずにはっきりと聞こえてくる音色の主を探す。

 

「おや、この場所に客とは珍しい」

「んー? あれ、海に空じゃないか」

 

桔梗の太ももに頭を乗っけたまま、どうしたのー?と聞いている一刀に二人は思わず頬を緩める。

二人が現れた事で桔梗は笛をしまって、代わりに酒を取り出した。

朱塗の高そうな盃に酒を注ぐと一刀に渡し、一刀が酒を零さない様にホンの少しだけ居住まいを正す。

 

「そういえばお主等、なんぞ企んどるそうじゃの?」

「嫌ですよ姉御ったら。 旦那が居るのにそんな事言わないで下さいな」

「あー、そういや詠が何か言ってたな」

 

よっ!と声を出して桔梗の膝枕から脱出すると、一刀は二人に向き直る。

桔梗は内心の不満をおくびにも出さず、空になった盃を受け取ると、地べたに寝転んでいて少々汚れてしまった一刀の背中を優しく払う。

 

「海も空も、今時間あるかな?」

「はい」「勿論でありんす」

「丁度良い時間じゃ、月に飯貰ってくるとしよう」

 

桔梗が送った目配せに空が気付いて軽く会釈し、海がモゴモゴと喋り出す。

ん?と思った一刀だったが、そういえば周囲には隠してるんだった。と海の口元に耳を寄せて彼女の主張を聞く。

 

「成る程。 やっぱりまだそう思ってる子多いんだなぁ」

「というか、旦那が気にしなさすぎるのも原因でありんす」

「最近は皆無茶言う事もないし、堪えて欲しいってのが俺の意見なんだけど、どうかな?」

 

左右を見回し、誰にも聞かれていない事を確認してから海が先程とは違う滑らかな言葉で一刀の反論を塞ぐ。

 

「私共が一刀様をお慕いしております事は承知されておられるとは思います」

「うん。 ありがたいと思ってます」

「実際問題、旦那がビシッと締めた訳じゃないですからねぇ。 惚れた男を蔑ろにしている女が傍に侍ってるのは我慢ならんって事です」

「素直になれない子もいるし、蔑ろにされてるって事はないよ空」

「一刀様。その様な事は当たり前です」

 

海の強い主張にうーん。と唸ってしまう一刀。

一刀としてはもう昔の話な訳で、今更ほじくり返してもなぁ。というのが正直な所なのだ。

 

「この話は長くなりそうだから、この場で結論急ぐのはやめておこうか。

えっと、二人とも中央勤務に鞍替えしたいって聞いたんだけど?」

「はい、各国の知人に口を利いてもらっているのですが、中々……」

「地方で何か嫌な事あったの?」

「旦那の傍に居たいんですよ。言わせないで下さいよ、恥ずかしい」

「空、今日は前髪上げてるんだね、可愛いよ」

 

ニコッと微笑みながらそう言われて、空は一気に顔を赤く染めると「ど、どう、も……」と俯いてしまう。

一方海はといえば、親友が褒められた事に喜びも感じ、自分も褒めて欲しいという嫉妬も感じ、でも今の自分は不細工女だし。とグルグル悩んでいた。

今日一刀に会えると分かっていればキチンとお化粧もしたし、一張羅だって着てきたのに。なんで私はこうなんだろう。と落ち込み始めたのですかさずフォローいれる一刀さんパネェっす。

 

「海は相変わらず良い匂いするね」

「え?! あ、相変わらず、です、か?」

「うん。 最初に会った時から思ってたけど、海からすっごい良い匂いする」

「そ、そんな事ないです。 そんな、私気にした事、ないですし」

「いや、アンタはガキの頃から十分気にしてる。 幼馴染のわっちが言うんだから、間違いない」

「お館様」

 

ん?と三人が首を回せば、桔梗が月と、何故か冥琳を連れて帰ってきた。

桔梗と月の手には料理の乗った盆が持たれていたが冥琳は手ぶらで、女二人を侍らせている一刀を見てやれやれ。と溜息を零していた。

 

「どうしたの冥琳? 今日って休みだっけ?」

「桔梗殿に連れて来られたのさ」

「ワシが無理矢理連行したような口振りじゃな。 お館様の事で話があると言った「んんっ!! 兎も角、食事にしようか」

 

月がクスクスと笑いながらも、一刀の前に食事を置いてお茶を準備する。

急ごしらえだったのか、簡単な物だけだったがその代わり六人で食べても十分な量があった。

 

「んじゃ、頂きます。 今日のお昼って流流が作ったの?」

「はい。 頑張ってお時間作られてましたよ」

 

ニコニコとしながら、一刀へ給仕を行う月は久しぶりに嬉しそうだ。

詠の言い分も分からないではないのだが、やはり自分には一刀のお世話をしている方が性に合っている。

口に出した訳ではない月の内心は全身から溢れ出して居る訳で、御飯を食べる前だというのに冥琳と桔梗はごちそうさま。と苦笑する。

 

「あ、冥琳居るなら丁度いいじゃん。 二人とも相談してみたら?」

「はい?!」「しゅ、周喩様にですか?!」

「ん? 何か問題でもあるのか?」

「い、いえ、問題って程の事は無いんです、けど……」

 

ガチガチに固まってしまった二人を尻目に、一刀はモグモグと御飯を食べながら桔梗に気になった事を尋ねる。

 

「ねぇ、なんで二人はあんなに緊張してるのかな?」

「地方勤務の平役員が美周朗に直接上奏賜るなぞ、肩に力が入っても仕方の無い事ですからな」

「でも蜀だと結構普通の光景じゃないの? 朱里とか雛里とか良く下からせっつかれて『はわわ』『あわわ』って涙目で処理してるじゃん」

「ですから、【美周朗に】と申し上げたでしょう」

「冥琳さんは迫力ありますから」

 

月。と一刀に声を掛けられ、すかさず両者の間に入ってお茶を注ぐ月。

ご主人様もご存知の事ですから。と促された冥琳は肩を軽く竦ませるとお茶を飲んで口を湿らせる。

 

「いまいち釈然としない物が残るが、話を聞こう」

「なんかゴメン。 えっとね、海に空なんだけど、今蜀在住の地方勤務なんだ」

 

チラッと一刀が視線を送り、冥琳も続くと二人は首を縦に振る。

さてどうなるか。と桔梗は盃を傾け、月は懐から扇子を取り出すと一刀を優しく仰ぐ。

 

「ありがと月。 二人は何とか中央勤務に鞍替えしたいって思ってて、その為なら仕える国を変えても良いって言ってるんだけど、冥琳どうにか出来ないかな?」

「ふーむ……まぁ仕える国云々は良いとして、色々と問題が出てくる話ではあるな」

「なんで? 二人ともめっちゃ優秀だよ?」

「分かっている。 一刀、地方から中央勤務に変わりたい女がどれだけ居ると思ってるんだ?」

「分かったゴメン。 色んな問題って、その事で?」

「まぁ、元々その国に仕えている者はいい気はしないだろうな」

 

そう言うと冥琳は盆の上から適当な物を摘んで口に入れる。

法正と張松をチラリと見ると、二人で何やらコソコソと話していたので、諦めた訳ではないらしい。

その通りで、話はまだ終わらなかった。といっても、続けたのは一刀だったが。

 

「でもさ、冥琳。 可能性が全く無いって訳じゃないんだろ?」

「まぁそうだな。 文官の立場から言わせて貰えば、戦時より平時の方が仕事は多い。優秀な人材なら、喉から手が出るほど欲しいぐらいだ」

「って事で、冥琳が頑張ってみてくれるってさ二人とも」

「流石はお館様。孫呉の脊柱が形無しじゃの冥琳殿」

「茶化さないで頂きたい。 言っておくが一刀、湧き出た不満までは責任持てんぞ」

 

分かってる分かってる。と右手をプラプラ振って返事を返すと、良かったね。と一刀は二人に微笑む。

頭を悩ませていた問題が一瞬で良い方向に転がっていくのを感じた二人はホッと胸を撫で下ろす。

 

「有難く心遣い頂戴致します」

「ありがとうございます。わっちの名は法正孝直。真名を空と申します。周喩様には是非とも受け取って頂きたく」

「有難く頂戴致す。 所で一刀、優秀な人物を推挙するのは結構だが、その能力の一端でも見せて貰いたい所だが?」

「丁度良い。 お館様、アレを相談されては如何かな?」

 

あー。と一刀は唸り、一頻り悩んでから月に酒を持ってくる様に頼む。

日の出てる内はあまり飲みたがらない一刀に月は確認するが、素面じゃ話せないと言われては仕方が無い。

月が小走りで去って行くのを見ながら、冥琳は小声で口を開いた。

 

「一刀の話を聞く前に、私の方から一つ話させて貰いたい。実はな、三国の何処にも角が立たない職場が、一つだけあると言えばあるのだ」

「ほぉ。 それは何とも興味のある話じゃ」

「ど、何処で御座いますか?!」

「決して他言無用。そして詮索は厳禁。探る事も禁ずる。この三つを約束出来るのであれば、お話ししよう」

 

法正と張松、桔梗の三人が首を縦に動かすのを見届けてから、冥琳は周囲の気配を探りながら続ける。

 

「三国の地方勤務の者達が中央在住になりたがる理由は偏に一刀の傍に仕えたい。という欲求から来る事は違え様の無い事実だ。

そして、一刀の傍に侍る仕事がある事も周知の事実。

以前、稟・朱里・桂花・雛里に私と穏、そして詠の面々で話し合ったのだが、月と詠の表と裏の仕事を増やし、両名の受け持っている一刀の侍女という仕事を募る」

「そりゃあ早計というもんじゃろう。 それでは確かに三国に角は立たんが、月が何と言うやら」

「桔梗殿の仰る通り。 詠が打診したらしいが、月は考える間も無く断ったらしい」

「あのー周喩様。 流石にわっち等もあの天衣殿に喧嘩売る真似はしたくないですよ」

「現状、月の発言力は計り知れない者がある。 桃香殿に蓮華様、華琳殿の三名でも、月の発言には首を縦に振らざるを得ない時がある。

傍若無人を絵に描いた雪蓮ですら無闇矢鱈におちょくる真似は出来ないのがあの天衣殿だ。

地方の者であっても、一刀の傍に常に控える天衣殿に対する畏敬の念は持っていると伝え聞く。となれば、それを利用しない手はないだろう?」

「確かに、仰る通りでありんす」

「お館様は、どうお思いですかな?」

「んー。月を何処かに配属っていうのは難しいと思うよ。月ってアレで結構頑固だから」

「彼女の性格だ。 なんやかんやと理由をつけて侍女候補を推薦すれば、一廉の教育は施してくれるだろうが―――その座を明け渡すかと問われれば、恐らく無理だろうな」

「……つまり、一時的に一刀様のお傍に居る事は出来てもその後が、という事ですか……」

「んー。でも月の事は俺も悩んでるんだよね。散々勿体無い勿体無いって言われているし、俺もそう思うし」

 

張松の言葉は非常に聞き取り辛く、またもそもそとした物であったため冥琳の眉が少し上がるが、内容自体は的を得た物であった為に冥琳は何とか堪える事が出来た。

そう言えば華琳を烈火の如く怒らせた才女が居たな。と思い出し、それが彼女だと思い当たる。

 

「ご主人様、お待たせしました」

「ん、ありがと。 そうだ月。ちょっと聞きたい事あるんだけど良いかな?」

「は、はい。私でお答え出来る事でしたら……」

「もし二人が呉でも受け入れられなかったら、月の部下にするって有り?」

 

一刀の発言にぎょっとする法正と張松だったが、桔梗が牽制した為に声を出す事だけは免れた。

 

「え、えぇ?! わ、私の部下なんて、そんなの無理ですよぅ……」

「いやほら、前に詠も交えて話したじゃん。月はちょっと頑張りすぎてるって。

休みが無さ過ぎるとは俺も思ってたし、良い機会になるんじゃないかなって思うんだけど」

「で、でも私は、ご主人様のお世話が大変だなんて、思った事ないです」

「あーうん。勘違いしないで欲しいんだけどさ、月が嫌になったとかそういうんじゃないの。いっつも感謝してる。

だから余計に心配というかね、そのうち倒れちゃうんじゃないかって不安な訳さ。

でも月、俺が強く言わない限りは休むとかしないでしょ?だったら、決め事にしちゃえば良いんじゃないかなって思うんだけど」

「で、でも……」

 

ちらっと月は冥琳と桔梗を見るが、冥琳はそっと視線をずらし、桔梗は諦めい。と酒を飲む。

 

「実は華琳達からも結構言われてるんだよ。『月をもう少し貸せ』って。だから、俺を助けると思ってさ?

細かい話なんかは追々詰めていけばいいし、月の意思は最大限尊重させるって約束するよ」

「は、はい……あの、本当に、私が何か不手際をしたとかでは無いんですよね?」

「部外者ながら、それについては否定させて頂きますよ天衣殿」

「端的に申しますと、貴殿は少し優秀過ぎた」

 

月の心配は法正と張松が相次いで否定し、二人の言葉を後押しするように一刀が頷き、月は少しだけホッとする。

 

「ま、なるようになるわい。 嫌なら突っ撥ねるのも一つの答え。その折は事情を知る者として、お主の味方をすると約束しよう」

「桔梗さん……」

「私は月を貸せ。と言っている者の側だが、無理強いをする心算はないし、出来るとも思っていない。一刀の説得でもダメなら諦めるさ」

「冥琳さん……あの、すいません、我侭で……」

「それだけ誇りを持ってるって事でしょう。 さ、天衣殿、旦那に酒を飲ませて下さいませんと、わっち等の試験が始まりません」

 

あ!と声を出して、月は急いで一刀に酒を注ぐ。

それをぐっと呷った一刀は直ぐに杯を差し出しもう一杯を強請る。

 

「お館様。 その様な飲み方は頂けませんな」

「お願い」

「やれやれ……月、酒を貸せ。ワシが酌をした方が良いじゃろう」

「はい、お願いしますね」

 

二度三度、と一刀が酒を飲んで、くらーっと来た所で漸く口を開いた。

 

「あのさー……言い辛いんだけど、最近本気で悩んでる事があるのね」

「自棄酒を飲む程に追い詰められてる所から察するに、璃々嬢の事かな?」

 

冥琳の指摘に一刀は首を横に振る。

これを見て驚いたのは全員で、桔梗も月もてっきりその事だと思っていた。

 

「何回も言ってるけど、璃々ちゃんとか幼達ちゃんとかのって麻疹みたいなモンだからさ。

璃々ちゃんは紫苑とか桔梗とかの大人が―――まぁ、俺と良い仲だし、幼達ちゃんはお姉ちゃん達が好意寄せてるから私もーって感じだと思うし」

 

ダメだこいつなんにも分かってねぇ。とでも言いたげな冥琳の眼に気付く事無く一刀は続ける。

 

「だからまぁ今の気分が抜けるまで俺がきっちり回避すれば大丈夫だと思う」

「はぁ。 それでは一体、お館様は何をお悩みで?」

「……まぁ何人か居るんだけど、その中でも愛紗と思春の事なんだ」

 

此処最近一番HOTな二人の名前が上がって、法正と張松は「「うわぁ」」と一声。

月は「あー」と納得し、桔梗は自分の国の筆頭武官の名前に頭を抱え、冥琳は内容を察して酒を飲んだ。

 

「こう、さ。 あの二人って、あんまり素直に好意を示すタイプじゃない訳じゃない?でもまぁ有り難い事に俺の事は好いてくれてる訳で、だから俺も調子に乗って強引に行った時があったのが悪いんだけどさ。

もう此処最近の要求が凄いんだよ……どうにかならないかな?」

「あの……一体愛紗さんと思春さんは、どんな風に?」

「一応先に言っておくけど、俺はやってないからね?あくまで要求されただけだからね?」

 

そこ分かっておいてね?と言われて全員が首を縦に大きく動かす。

 

「まず……思春なんだけど、こっちはまだマシっちゃマシなんだよ。五十歩百歩だけど。

要求も【嬲れ】とか【縛れ】とか、受け取り用によっちゃ軽いモンだからさ。いや十分重いんだけど。

でもね、俺は確かに閨で女の子苛める時もあるけど、痕が残るぐらい強く縄で打つとか、髪の毛掴んで無理矢理咥えさせるとか嫌な訳さ。

誰だって好きな子が泣いてたら萎えると思うよ?俺そこまで本職のSじゃ無いから、泣かれたらもう無理だもん。

でも思春は止めると『私が泣いてからが本番だろうが!』ってすっごい怒るの。二回ぐらい俺殺されると思ったもん。いや三回、四回ぐらい覚悟したかもしんない。

それぐらい怒るのさ、途中で止めると。でも止めないとますます思春の要求ってエスカレートするのね?

『私を人間と思うな』って言われても無理だよ、だって抱きしめると暖かいもん。優しくしたいもん。

同じツンデレでも桂花なんかは楽な方だよ、桂花はやって欲しい事はちゃんと言ってくれるし楽しんでくれるし。

でも思春って違うのね。『考えるな、感じろ』を素で実践させるのよアイツ。最近はヤッてる最中に名前呼ぶとすっごい怒るの。

『おい』とか『駄犬』とか、そういう言い方しないと満足してくれないの。満足してくれないと満足するまで付き合わされるの」

 

全員どん引きだ。月の顔が引き攣るとか凄い事だと思います。

 

「あ、あの、旦那……甘寧殿、まだマシ、なんですよ、ね?」

「愛紗に比べれば」

「どれだけ業が深いんだ愛紗は……」

 

冥琳の言葉が引き金になったのか、一刀は直接酒瓶に口をつけるとそのまま飲んだ。

あ゛ー!と唸る一刀に思わず桔梗が立ち上がり、体を持ち上げて横にさせる。

 

「水」

「は、はい! どうぞ」

 

桔梗の膝枕に頭を乗せたまま水を飲むと幾分落ち着いたのか、酩酊しだした一刀のぶっちゃけ悩み相談は佳境を迎える。

 

「愛紗はもう凄いよ。ほんとどうしてこうなったって言葉で一杯です」

「……海。わっち、この試験乗り越えられる気がしない」

「奇遇だな。私もだ」

「一刀。もう全部ぶちまけて楽になれ。後は私たちが悩もう」

「愛紗、最近悩んでるんだってさ」

「……禄でもない悩み、なんでしょうな」

「ほら、恋が首輪付け出したろ? 今恋が付けてるのは散々せがまれて俺が真桜に作って貰ったヤツなんだけど、元々は愛紗の私物持ってきたの」

「どんだけー」

「んでさ、直接は見てないし聞いてないんだけど、凪も首輪持ってるんだって。

でもその首輪がちょっと問題で、喉の所に名前彫る所があるんだって。

その噂聞いた愛紗が『こうなったらもう顔に刺青入れるしかない』って言い出したらしくて」

「あぁ、聞きましたぞその話。随分下世話な噂話じゃと思っておりましたが……」

「愛紗、顔に【所有者:一刀】って刺青入れたいんだと」

「上級者すぎませんか、愛紗さん……」

「俺もうそれで愛紗が満足するならいいかなって思い出した。その程度で愛紗が満足するなら良いんじゃね?って言いそうになったもん」

 

その程度って……と思わず張松が零し、あぁそう言えば肝心の話をしてなかったわ。と幾分すっきりしたのか一刀が本来の悩みを話し出した。

 

「……陳琳って皆知ってる?」

「無論。 時折小蓮様の指導をして貰っているしな」

「最近陳琳がめっちゃどギツいエロ小説書いたんだけど、その中でも一際ヤバいのがあってさ。

あの陳琳が書き終わって推敲してる時に『こんな物発表したら私の人格疑われる』って禁書にしたんだ。流石に燃やすのは出来なかったって。

で、罪滅ぼしなのか俺に見せてくれたのねそのお話。笑えなかったよ、だって全部身に覚えのある話だったもん」

「……あの、旦那。 もしかしてそれ『縛従』って名前の話だったり、しませんか?」

「なんで知ってんの!?」

「……曹操様曰く『死ぬ気で暗記した』って」

「待って、ちょっと待って。もしかしてアレ出回ってんの?!」

「残念ながら……」

 

おいおい待てよ……と頭を抱えて悩み出した一刀を痛ましげに撫でて落ち着かせる桔梗。

そんな反応をされては、知りたくなるのが人情というもの。又の名を死体蹴り。

 

「あの……どの様な、お話なんでしょうか?」

「あー……すんません天衣殿。わっちも、そこまで女捨て切れて無いもんで」

「一刀。とりあえずお前の要望を聞こう。 お前はどうしたいんだ?」

「なんとか、愛紗と思春を落ち着かせる方法って無いかな?」

「無理です。 あの本の内容が関羽様の想い其の侭なのであれば、諦めさせる方法などありはしません」

「お館様。ワシは件の話を知らんのじゃが、どの様な話なのかお聞かせ願いたい。でなければお館様の悩みを解決出来ませんのでな」

 

一刀は逡巡し、酒。と言った。

 

「―――ダメだ、どれだけ飲んでも、喋れる気がしない」

「触りだけで結構。そこまでワシも無慈悲ではありません」

「掻い摘んで話すと―――まぁ、愛紗が俺に苛められる話」

「旦那、アレはそんな可愛気のある話じゃありんせん。 どんだけ荒く見繕っても、女が牝に変えられる話って所です」

「なにそれこわい」

「あのね、月。俺はそれを現在進行形で強請られてるの」

「……冥琳。これまでの話で、何か策は」

「人生とは無常だ」

「お館様。いや空、続きを。もう此処まできたら一蓮托生じゃ」

「確か、冒頭は女の語りから始まるんですよ。 『縄を下着として身に付ける事に、抵抗が無くなってきた』みたいな感じで」

「あーあーきこえない!!」

 

身に覚えのある台詞が飛び出した事に一刀は自分に出来る精一杯の抵抗をした。だが無意味だ。

 

「凄かったですよ。 いっちばん軽いので『公衆の面前で四つん這いになって犬の真似する』でした」

「軽い……?」

「最終的には劉備様の眼前で寝取られ報告プレイを……」

「……お館様。それ、愛紗は―――」

「『プレイですから!プレイの内容ですから!!』って……」

「おうふ……」

「『想像の産物ですからのーかんです!』って……『本気でやって下さるならむしろばっちこいですけど!!』って……」

 

酒は涙か溜息か。

顔を覆って、何とかそれだけを搾り出した一刀の背中を桔梗が優しく擦り、月はハンケチで涙を拭ってあげた。

そんな三人を見ながら、法正と張松は周喩に向かって土下座する。

 

「周喩様。我等二人の事、なにとぞ宜しく願います」

「何卒…何卒っ!!」

「めっちゃ努力する」

 

法正と張松の、明日はどっちだ。

あとがき。

 

脳内設定の陳琳エロ小説一覧。

 

発禁処分本。

【縛従】:愛紗編。

『愛紗を自分の物にしてから、どんどんとエスカレートしていく一刀の要求。逆らえもせず、愛紗は身も心も嬲り変えられていく……』

発禁理由。こんなの発表したら表歩けなくなる。

【紅蓮の空】:詠編。

『董家に婿入りしてきた男の世話係になった詠。主人を裏切る形で抱かてしまった詠は……』

発禁理由。月殿に喧嘩売るとかマジ勘弁。

 

比較的軽い内容

【伐】:稟編。

『方針の違いで対立してしまった稟と一刀。 妥協は出来ぬまでも、せめて歩み寄りたいと思う稟はその心中を見抜かれ、抵抗も虚しく押し倒されてしまう』

著者感想。神算の無駄遣いと思える程に現実味のある内容。郭嘉仕事しろし。

 

みんなのおとも。

【覇王哀歌】:華琳編。

『部屋で、通路で、外で、閨で。 本気で抵抗出来ないのを良い事に、今日も明日も一刀は私を……』

著者感想。一刀様にいぢめて貰いたい女必見。入門書としても最適です。華琳様マジ有能。

【離別】:思春編。(連作)

『蓮華を救う為、一刀に陵辱の限りを尽くされる思春。しかしとうとう、心の支えである面会の時間にまで……』

著者感想。覇王哀歌と合わせて、入門書に是非。本人曰く十部からなる超大作になるとか。ははっ、わろす。

 

 

思春と愛紗は心の友だから、内容が似通っているのは仕方ないね。あとhujisai様マジでごめんなさい。

法正さんは何となく廓言葉を使わせたかった。ちっぱいだけどエッロいお姉さんなイメージ。

張松さんは本気出せば不倫中の人妻の如く色気漂う艶女なイメージ。解れた黒髪はエロいと思うのです。

そんな二人でも容赦なくいてこます一刀さんパネェっす。そんな一刀さんを追い込める愛紗と思春はマジパネェっす。

お礼返信。

 

 

T.K69様       あれ、なんかおかしな事になってきてるww

 

七夜様       華琳「いや別に深い意味はないのよ?たまにはいいかなーって思っただけだから!ほんと、偶々気分転換した日が偶然一刀ぐふふな日だったの。ついてないわー」

 

hujisai御大     陳琳、ゲットだぜ!!

 

いじり様      なにそのR-18映画、チケット何処で買えるの。

 

D8様        仕方ないんや……仕方なかったんや……

 

平野水様      種馬様マジパネェっす。

 

呂兵衛様      願わくば、このまま育って欲しいですw

 

月光鳥~ティマイ~様  そうそう、ショウガナイヨ。

 

よしお。様      こいつはとんでもない血統だ……

 

happy envrem様    おっと、私をTINAMIから追放する気だな、受けてたってやんよ(キリッ マジレスすると、書いてます。

 

zero様        愛紗「あくまで希望の話だからのーかん!」

 

HIRO様        全てはhujisai様のお心次第であり、私に出来る事は何も無い。よって責任もな(キリッ

 

kaz様        今すぐhujisai様にショートメールを送るんだ!!

 

帽子屋様      一刀「俺の中の獣が目覚めた」 あとご指摘ありがとうございました。

 

BellCross様     祭に雪蓮なんかは釣られないんじゃないかとマジレス。だって普段からゲフンゲフン

 

前原 悠様      美羽「何時から仲間だと錯覚していた?」

 

tyoromoko様     ほら、あの二人は許されてる感があるから……

 

悠なるかな様     仲達とは違うのだよ、仲達とは!

 

ちきゅさん様     淑女美羽ちゃんマジ天使。

 

叡渡様        あれ、可笑しいな。かなり控え目に書いた筈なんだが……

 

SRX-001様       そうすると支援出来なく(いじれなく)なるじゃないですかーやだー

 

Alice.Magic様     無論バンバン落としてますよ。その内実験室という名の調教部屋が(ry

 

shirou様       恋する美羽は切なくて、主様を思うとつい他人を売っちゃうの(・ω<)

 

観珪様        一刀がやれっていったら二つ返事ですよ。一刀さんは心に傷を負ってるので言いませんけど。

 

朱月 ケイワ様    一刀の懐刀って、ある意味七乃さんな気もします。あれ、俺も策に落ちてる?

 

メガネオオカミ様    美羽ちゃんの可愛さで変態共がヤバイ。


 
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