No.600994

英雄伝説~光と闇の軌跡~ 608

soranoさん

第608話

2013-07-24 08:52:19 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1090   閲覧ユーザー数:1019

同日、20:45――――

 

その後クロスベル市に戻ったロイド達はセルゲイに病院での出来事を報告し、さらに病院で手に入れたファイルも見せ、その後すぐにセルゲイから話を聞いてやってきたダドリーもロイド達から報告を聞いて、ファイルに目を通した。

 

~夜・特務支援課~

 

「クッ……何を考えている!?ヨアヒム・ギュンター………一体どういうつもりだ!?どうして自分が不利になる情報をわざわざ残したりする!?」

「フン、確かにな………」

ファイルに目を通し終えたダドリーはファイルを睨んで怒鳴り、ダドリーの言葉に頷いたセルゲイは考え込んだ後、ロイド達に振り向いて尋ねた。

「――お前達。偽装の可能性はどう思う?」

「……正直、この状況で偽装する意味はないと思います。全ての状況が彼を指し示し、ルバーチェや議長との関係も明らかにされていますし……」

「”銀(イン)”やリウイ陛下達の行動を見る限り、黒月や共和国派、ラギール商会やメンフィル帝国の仕掛けの可能性も低いのではないかと……」

「ま、これ見よがしに誇示してるだけじゃねぇのか?あの秘書野郎の態度だってかなりイッちまった感じだったし。」

「……同感です。その2つのファイルからは自己顕示欲と合わせて、何らかの狂信的なメッセージを感じました。それも恐らくキーアについて……」

「なるほどな………そこまで拘らせる何かをあの子が持っているのか……?」

「ば、馬鹿馬鹿しい………ただの能天気な子供でしょう!?こんな事をしてまで一体何をしようって言うんです!?」

ロイド達の話を聞いて考え込んでいるセルゲイにダドリーは信じられない表情で意見した。

「さてな………だが、この白いファイルに彼女の写真が挟まっていた事の意味………―――ロイド、どう思う?」

「……はい。6年前までに行われていた幾つもの非道な”儀式”の数々………その締めくくりとしてキーアを利用するというメッセージかもしれません。」

(もしくは”儀式”に使う”供物”として何らかの特別な価値がある可能性も考えられるわね………)

そしてセルゲイに尋ねられたロイドは推理し、ロイドの身体にいたルファディエルも推理していた。

「っ………」

「チッ………」

「………絶対にさせません……」

ロイドの推理を聞いたエリィは怒りの表情になり、ランディは舌打ちをし、ティオは決意の表情で言った。

「ああ……もちろんだ。―――ダドリーさん。上層部の方はどうですか?」

「………間が悪いことに例の拘置所襲撃の報せがあってな。しかも拘置所の近くにあった警察学校と訓練所も襲われたらしい。そちらへの対応で警察本部は蜂の巣を突いたようになっている。」

「わかりました………これ以上はアテには出来ません。……そういえば、気になっていたんですがセティ達はまだ起きていないのですか?」

ダドリーの話を聞いたロイドは溜息を吐いた後セルゲイに尋ね

「そっちも間の悪いことにお前達が出発してから1時間後ぐらいにあのユイドラ領主ウィルフレド・ディオンが妻達と共に支援課(ウチ)に来た後、セティ達とエルファティシアに留学中やエルファティシア自身の事を聞きたいからと、4人を連れてどこかに行っちまった。……まぁ、今日中に帰すつもりだと言っていたから、そろそろ帰って来る頃だと思うが………」

「そうですか………」

「………リウイ陛下達の言う通り、ウィルさん達も来ていたんですね……」

セルゲイの答えを聞いて溜息を吐き、ティオは静かに呟き

「全く………この非常時にメンフィルの皇族や武将がほぼ勢ぞろいしてクロスベルに滞在しているだけでなく、あのユイドラ領主達すらも滞在しているとは………!ただでさえ今のクロスベルは非常事態だというのに、そこに他国の皇族達がプライベートでクロスベルを訪問だと………!?一体何を考えている、”英雄王”達は!」

「おまけにガイの元婚約者が今では”英雄王”の側室の一人だとはな………クク、世の中何が起こるかわからんな。」

ダドリーは溜息を吐いた後怒りの表情で叫び、セルゲイは溜息を吐いた後口元に笑みを浮かべた。

「そういや、お嬢。病院であの秘書野郎が”剣皇”に殺気を向けられた時、”リウイお義兄様”って言ってたよな?ありゃ、一体どういう事だ??」

その時、ある事を思い出したランディがエリィに尋ね

「………………フウ……………もう誤魔化せないわね…………あの時私が”リウイお義兄様”って言ったのは気が動転して義理の兄となったリウイ陛下の普段の呼び方でつい呼んでしまったのよ………」

尋ねられたエリィは疲れた表情で溜息を吐いた後説明し

「……ハア?」

「へ………」

「………………」

「………………」

エリィの説明を聞いたランディとロイドは呆け、ダドリーは固まり、セルゲイは咥えていた煙草を落として口を開けて黙り込みんだ。

 

「「えええええええええええええっ!?」」

「何だとっ!?」

「義理の兄………という事はお前の姉があの”英雄王”の側室にでもなったのか?」

そしてロイドとランディ、ダドリーは大声で叫び、セルゲイは考え込んだ後尋ねた。

「いえ…………お姉様はリウイお義兄様の”正室”としてメンフィル皇家の一員となっています。」

「正室!?エリィ、まさか君のお姉さんは………!」

「病院で会ったあの”英雄王”と一緒にいた”聖皇妃”かよ!?」

エリィの話を聞いたロイドとランディは驚いて尋ねた。

「ええ………”聖皇妃”イリーナ・マーシルン………旧姓はイリーナ・マクダエルで私の血の繋がった姉よ………」

「………………………」

「おいおいおい………!マジかよ………!まさかこんな身近な所にあの”英雄王”達の関係者がいるなんて………」

そしてエリィの説明を聞いたロイドは口をパクパクし、ランディは驚きの表情で叫んだ。

「し、信じられん………!………待て。という事は現クロスベル市長であるヘンリー氏の背後にはまさかメンフィル帝国が控えているのか!?」

一方ダドリーは信じられない表情で呟いた後ある事に気付いてエリィに視線を向けて尋ね

「………いえ。私とおじい様とリウイお義兄様達との関係はあくまで”家族”としてです。お姉様がリウイお義兄様に嫁ぐ際、クロスベルの状況を知っていたリウイお義兄様がおじい様にメンフィル帝国の力で何とかする事も可能だと申し出た事があるそうですが、おじい様は断ったそうです。……それをやってしまうとハルトマン議長達と同じような事をするようなものですし、何よりクロスベルがメンフィル帝国領になる恐れもありましたから………ですからお姉様の旧姓からおじい様との関係を疑われない為にメンフィル帝国がわざわざお姉様の出身を偽装していたんです。」

「そうだったのか………………けどまさかエリィのお姉さんがあの”聖皇妃”だなんて………」

「滅茶苦茶驚きの情報だよな………ん?そういや、ティオすけは全然驚いていないよな?」

エリィの説明を聞いたロイドは疲れた表情で溜息を吐き、ランディは苦笑した後ある事に気付いてティオに視線を向け

「わたしは皆さんの自己紹介の時点でエリィさんの名前を知った時から、知っていましたので。”影の国”でイリーナ皇妃からエリィさんの事は聞いていましたし。」

「へっ!?という事はティオはエリィの名前を知った時点でエリィがイリーナ皇妃の妹だとわかっていたのか………!」

「そういやティオすけは”聖皇妃”達と知り合いだったな………」

視線を向けられて答えたティオの話を聞いたロイドは驚き、ランディは納得した様子で呟いた。

「………そう………やっぱりティオちゃんは私とお姉様の関係を知っていたのね………でも、どうしてお姉様は私にティオちゃんの事を教えてくれなかったのかしら?確かその”影の国”という場所から脱出したのは私がまだメンフィル帝国に留学していた時期だったし………」

一方エリィは静かな表情で言った後不思議そうな表情をしたが

「確か………エリィさんを驚かせるために黙っているような事を言っていましたね。」

「お、お姉様……………」

ティオの説明を聞いて表情を引き攣らせた後溜息を吐いた。

 

「さて………話を戻すがロイド。ヨアヒム・ギュンターの狙いがキーアだとわかった今、あの子をどうする?」

「………――――遊撃士協会に頼んでキーアを外国に逃がしましょう。」

そして話を戻したセルゲイに尋ねられたロイドは考え込んだ後答えた。

「ロイド、それは……」

ロイドの意見を聞いたエリィは驚いてロイドを見つめ

「もちろんアリオスさんか、エステル達に任せる事が条件だ。リベールあたりなら安全だろうし”教団”の手も届きにくいはずだ。」

見つめられたロイドは答えた。

「フン………確かにそいつが一番安全かもしれんな。―――だが、いいのか?お前自身の手であの子を守れなくなっても。」

一方セルゲイは納得した様子で頷いた後ロイドに確認し

「……俺の拘りやプライドなんてどうでもいいんです。みんなは反対かもしれないけど………あの子が少しでも安全なら俺はそちらの可能性に賭けたい。」

確認されたロイドは複雑そうな表情で答えた後、決意の表情で答えた。

「ロイドさん……」

「やれやれ………仕方ねぇか。」

ロイドの決意を知ったティオは驚き、ランディは溜息を吐いた。

「………そのつもりなら急いだ方が良さそうだな。国際定期便の最終便は確か9:30だったはずだ。急げば今夜中にリベールへあの子を逃がせるかもしれん。」

「よし、ギルドに連絡しろ。アリオスあたりが戻っていたらそのまま任せればいい。ヤツなら娘とキーアの2人、何があっても守り切れるだろう。」

「はい……!」

そしてダドリーの提案とセルゲイの指示に頷いたロイドはエニグマで通信を開始した。

「はいはい。こちら遊撃士協会、クロスベル支部よ。」

「ミシェルさん。支援課のロイドです。今、よろしいですか?」

「あら、坊やだったの。どうしたの?ウチのメンバーはまだ戻ってきてないけど………」

「そ、そうですか………アリオスさんあたりがいつ戻るかわかりませんか?」

「ああ、彼ならそろそろ戻ってくるはずだけど―――」

ロイドの通信相手―――ミシェルが答えかけたその時、通信の向こうから大きな音が聞こえ

「なっ………なんなの、アンタたち!?ここは遊撃士協会(ブレイサーギルド)――――」

ミシェルの驚きの声が聞こえた後、なんと銃撃が聞こえ

「……くっ………」

ミシェルの唸る声と共に通信は切れた……………!


 
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