No.600356

しまのりんち3話

初音軍さん

乃梨子と付き合ってからの柔らかい志摩子さんを見て旅行に連れ出したく
なった聖さまが志摩子さん、乃梨子と一緒に温泉旅行に行ってむふふってしまうお話しです。

2013-07-22 15:16:57 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:771   閲覧ユーザー数:760

 

 

乃梨子視点

 

「やぁ、志摩子。乃梨子ちゃん。旅行に出かけよう!」

 

 私と志摩子さんがベッドの上でイチャイチャしている時にどこから湧いてきたのか

部屋の扉を思い切り開けてそんなことを言い出してきた。

 

「お姉さま・・・!?」

「って何してるんですか、聖様!」

 

「おやおや、お楽しみの所に…お邪魔しちゃったようだね」

「わかってるならさっさと出ていってください!」

 

 絶景とばかりに額に水平にした手の平を当てて私達を見ている聖様に

私は近場にあったタオルを投げつけると「おお怖い怖い」と言って部屋から

出ていった。ついでにその勢いで家からも出ていって欲しかったのだが。

 

 少し間を空けてから再度私達の前に登場する元白薔薇さま。

何の遠慮もなく聖さまは椅子にドカッと座ると志摩子さんは嬉しそうに

湯飲みにお茶を淹れて聖さまに手渡した。

 

「それで、旅行って何ですか」

「温泉とか行かない? 思えば妹とまともにデートとかしたことないし」

 

「デ、デート!?」

 

 妹で彼女である私の前で堂々とナンパをするように誘ってくる聖さまに

私はかみつく勢いで聖さまに向かおうとするが、静かに志摩子さんに制止される。

 

「いいですよ」

「志摩子さん!?」

 

「あはは、お姉さま想いで嬉しい限りだよ。ついでに乃梨子ちゃんを誘ってる

ことにも気づいてたでしょ」

「えぇ、もちろん」

「は、はいぃ!?」

 

 私一人だけ二人の会話についてこれずに頭の上に「?」のマークが浮かぶ。

ただ流れだけを汲んでいると、私も一緒に連れていくとのことだけど。

理由がまったくもってわからない。

 

 いつまでも考えていると過去にもあった耳元にフッと息を吹きかける行為を

聖さまがまたしてきたのだ。

 

「ひゃっ!」

 

 顔を赤くして抗議をする私。怒れば怒るほど相手は喜ぶから手に負えない。

志摩子さんも私と聖さまのやりとりを天使の微笑みをしながら見守っているし。

 

「話的には私まで行くことになってることについて!」

 

 聖さまいわく、私の性感帯攻めをし終わった後に私は疑問に思ったことを聞くと

「何を当たり前のことを」っていわんばかりの表情をしている。

 

「私聖さまの妹じゃないんですけどねえ」

「いいから。お祖母ちゃん孝行しておくれよ」

 

 お祖母さんっぽい言い方をした後にボソッと私の耳元に聞き捨てならないことを

囁いた後は私の考えは一気に改めることになるのだった。

 

「わかりました。行きますよ、行きます!」

「よしっ」

「お姉さま、乃梨子になにを仰ったんです?」

 

「それは内緒~」

 

 悪戯をした子供のような顔をして軽く舌を出した聖さま。

もう少し年相応の反応をしてほしいものだ。

 

 私は呆れの感情を込めて溜息を吐くが、二人共それに気づいてくれる

ことはなかった。

 

 

 聖さまの車に乗せられて数時間。予め泊まる宿の予約を済ませているという手際のよさ。

これで断ったら一人で行ってたのかなと思うと、少し申し訳なく感じていた。

 

 前に祐巳さまに聖さまの運転は地獄に落とされたようだと説明された時には

ドキッとしたが乗ってからというもの、そう怖い場面は全くといっていいほどなかった。

 

 祐巳さまが大袈裟に言ったのか、それとも運転の技術が向上したからなのか。

しかし、助手席に志摩子さんを乗せて楽しそうにお喋りしながら運転している姿は

微妙に悔しかった。

 

 他には特にこれといった出来事もなく旅館にたどり着くと、聖さまが先頭で

入り口で予約していた旨を話すと旅館の人が案内を始めてくれた。

 

 私はせめてものお手伝いでみんなの荷物を持って一番後ろを歩いていく。

部屋の中に入ると、新しい畳の匂いがした。

 

 旅館の人が部屋を出ると、荷物を置いて窓から覗く景色を見るとかなり絶景。

山々と反対の方向を見ると海も見える位置にあった。

 

「どうしよっか」

「とりあえずお茶にしましょう」

 

 ここに来ても志摩子さんから積極的にお茶を淹れていた。

こういう時は私がしてもよかったんだけど、志摩子さんが淹れるお茶の方が

美味しいからこれで良いのかもしれない。

 

 3人分の緑茶を注いでから3人でほぼ同時に一口啜り、一息つくような

溜息をみんなで吐いた。

 

「うん、志摩子のお茶はどこいっても美味しいね」

「そうですか」

 

 

 ズズズッ

 

 しばらくの間、誰も何も口にしないでお茶を啜る音だけが辺りに響いていた。

別に言葉は必要ない。その存在が近くにあるだけで私やここにいる全員がそう

感じているというのがわかる。

 

「ふぅっ」

 

 誰が吐いたかわからない溜息をした後に、聖さまが急に立ち上がって私達に

声をかけてきた。

 

「そろそろ入りに行こうか!」

「どこにですか?」

 

「ここに来たら温泉に決まってるじゃない!」

 

 景色とかではなく、温泉を色々調べてここに決めたらしい。

聖さまの言葉に私達は頷いて立ち上がって温泉へと向かう。

先頭は聖様に続いて志摩子さんが歩いていく。私は志摩子さんの後姿を

眺めながら、いつもと雰囲気が違うのを感じていた。

 

 すごく、妹っぽい感じ。聖様のことが羨ましく思える。

軽く嫉妬をしながら歩いている内にすぐ脱衣所に辿りついた。

 

 時間のせいなのか偶然なのか、その場所には人の気配がほとんどなかった。

というか居ないようなものか。

 

 だからというわけでもないけれど、私と聖様はちょっと親父心が芽生えて

脱いでる途中の志摩子さんの裸をじろじろと目を見開いて見ていると。

 

「ちょっと、お姉さま!乃梨子!」

 

 恥ずかしそうにタオルを体に巻いて上手い事隠していた。

タオルについてちょっとからかうように志摩子さんに教えてあげた。

 

「温泉に入るときはタオル外さないといけないんだよ」

「わ、わかってるわよ」

 

 志摩子さんのことだから知ってるとは思うけれど、こういう表情を見せるのは

珍しいから少しでも長い間堪能していたかった。

 

 そんな私の気持ちを知ってか知らずか志摩子さんはすぐ「姉」の顔に戻って

私に柔らかく微笑んでくれる。そういうとこも可愛いんだけど、今は妹な

志摩子さんを満喫したかったとかそういうワガママを頭の中で呟いていた。

 

 しかし、後ろの方で私達を見てる聖様はどこか嬉しそうに見つめていた。

 

「姉な志摩子はあまり見たことないから新鮮だったよ」

「私も妹な志摩子さん見たことないからもっと見たかったですよ・・・」

 

 ちょっとテンションの落ちた私達がお湯に浸かってさっきの志摩子さんの

話に華を咲かせてると遅れて脱衣所から出てきて私達の傍に近づいてきた。

 

 なぜ遅れたかというと、少し髪をアップさせるのに時間がかかったということ。

恥ずかしそうに巻いていたタオルを外すと、世間でいうとこの理想の

体形が目の前に露になる。細いけれどほどよくついた肉とふわっと空気中に

漂う志摩子さんの匂いがしていて私は心底ムラムラしていた。

 

「乃梨子ちゃん、厭らしい目つきしてるよ」

「そ、そんなことないですよ!」

 

 バシャッ!

 

 聖様の指摘が的を得すぎていて私は両手で顔を隠した後についお湯の中に

潜ってしまった。いつもお風呂入る時見ているはずなのに、こういう開けた場所だと

感じ方が全然違う。

 

「プハっ」

 

 私は息が続かなくなったので顔を水面から出すと聖様と志摩子さんが私の

両隣にいてニヤニヤにこにこ笑っているではないか。

 

「乃梨子ちゃん恥ずかしがってかわいい~」

「えぇ、乃梨子可愛いわ」

「ぐぬぬ」

 

 私は二人に遊ばれてると思って悔しそうに唸り、志摩子さんへと若干向きを

変えた途端、聖様がここぞとばかりに私の脇腹をくすぐりだした。

 

「ひゃっ!」

「もう、お姉さま…」

「いひひ、だって乃梨子ちゃん面白いんだもん」

 

「乃梨子は私のですよ」

 

 そういって志摩子さんは私の体を志摩子さんの方に引き寄せてきた。

ぎゅっと抱き締められて志摩子さんの豊満な胸が私の腕にぶつかって

柔らかくて気持ちがいい。

 

 後、妹っていうのが抜けてるだけですごい発言に聞こえる。

まぁ付き合ってるし普通のことなんだろうけど。改めて言われるとすごく嬉しい。

 

「いやぁ、しかし二人の若い体を見れて触れて私は満足だ」

 

 爽やかな笑顔で言うにはオヤジっぽい言い回しに私と志摩子さんは苦笑した。

しかしそんなセクハラ発言も信頼できる人だからこそ安心して一緒にいられるのだろう。

 

 それから、お喋りしながらお風呂に入ってご飯を食べて、夜になって布団を引いた後は

みんなで枕投げ。聖様がやってみたかったことの一つらしい。

こういう人は積極的にやってそうなイメージなのだけど。

 

「2年まではそれどころじゃなかったし、3年でも当時の志摩子は誘いにくかったしね」

「お、お姉さま…」

 

「乃梨子ちゃんと出会ったおかげでこの旅行も実現できたわけさ」

 

 聖様からすると私の影響を多々受けてるようだと言っていた。

出会う前の志摩子さんを見たことがないから私としては実感が湧かないので

半端な返事しかできなかった。

 

 だけど色々昔話をするときに、恥ずかしそうにして嫌がる志摩子さんの

様子が可愛かったので、私としてはこの一時は眼福で幸せなのだった。

 

 昔は笑えなかった出来事でも、今では笑って過ごせる。

中には乗り越えられないこともあるのだろうけど、やっぱり時間ってすごいなって。

志摩子さんを見てるとそう思えるのだった。

 

 そうして聖さま含めた3人で今日という日を過ごした中で互いに知らない

志摩子さんの部分を教えあったりした。

 

 そんな私達を見ながら志摩子さんは終始苦笑しながら仕方ないなぁって顔をしていた。

けど、嫌な顔はせずに優しい眼差しで私達のことを見守っているようだった。

 

 楽しい日の時間は過ぎるのがあっという間で私達は旅館をチェックアウトして

車に乗って帰る途中に聖様がふと言葉を漏らした。

 

「またみんなで行きたいね」

「そうですね…」

 

 志摩子さんは疲れて眠っているのか。私は助手席に座って聖様の言葉に頷いた。

最初はあまり乗り気じゃなかったのに、今ではこんなに楽しい気持ちになっている。

聖様って不思議な雰囲気を持ってる。

 

「志摩子の裸また見たいしね」

「そうですね!」

 

 ここは同じ薔薇の家系のせいなのか、とても共感できた私は力強く頷いた。

私の言葉で起こしてしまったか、後ろで寝ていた志摩子さんがもぞもぞ動いたかと

思うと。

 

「うぅ…ん…お姉さま…乃梨子…」

 

 振り返った私は志摩子さんの寝言に胸がキュンッとしてしまい言葉が詰まって

しまう。キラキラしていて愛くるしい、私のお姉さまで恋人の志摩子さん…。

 

「あはは、こんな無防備なの初めてだよ」

 

 志摩子さんの寝言に笑いながら運転をしている聖さま。

 

「よほど落ち着けるんだね。乃梨子ちゃんといると」

「いやいや、さっき聖様のことも言ってたじゃないですか」

 

 再び視線を車の前に戻しながら聖様に言うと「確かにそうだ」と再び笑った。

大好きな人にこれだけ信頼されるのは嬉しいことだ。

 

 そんな私の気持ちを透かして見たかのように聖様は頷いてから。

 

「これだけ好きでいてくれるんだ。志摩子のこと私達が幸せにしてやらなきゃな」

「はい」

 

 当たり前のようなことを再び口にすることで決意が深まっていく。

しっかりもので儚い彼女を私たちが支え支えられるようにならないといけない。

 

 楽しいだけではない道だけど、私達はこの道を悔いなく進もう。

好きだから、純粋に愚直にゆっくりと…前に進んでいくのだ。

 

お終い


 
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