No.600355

百合世界樹の迷宮1

初音軍さん

新世界樹よりラクーナさんとリッキィの組み合わせ。っていうかその二人しか女性いなかったですね(白目)あの植物少女のボスとの会話ですごく百合百合しかったので書きました。倒す前に書きました(ボス関係なかったという

2013-07-22 14:57:03 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1877   閲覧ユーザー数:1864

【リッキィ】

 

 迷宮奥深くに根付いていた魔物を退治した私たちはエトリアの町で

しばし休憩の時間を取っていた。ハイランダーは装備の手入れ。

アーサーは遊べる場所を探しに。サイモンは施薬院のお手伝いをしている。

 

「ねぇ、サイモン」

「ん、リッキィか。どうした?」

 

 私が声をかけるといつものように冷静に私の質問を聞いてくれる。

最初冷たい印象はあったけどとても優しい人だと

冒険を通して感じ取れる。

 

「ラクーナどこにいるか知らない?」

「部屋にいないのか?」

 

「うん」

「だとしたらあそこかな」

 

 呟いた場所の名前を聞いて私は驚いて聞き直した。

 

「え、だって今昼間だよ」

「特にラクーナの仕事は今んとこないからな。借りてる館の仕事は

ローザに任せっきりだろ。そしたらやることなくて酒でも飲んでるんじゃないか」

 

「まぁ、ここんとこ忙しかったしね・・・」

「ずっと盾の仕事ばかりやらせてたからな」

 

「ありがとう。ちょっと顔を出してくるね」

「おう」

 

 

【ラクーナ】

 

 酒場であり、依頼も扱うこの場所は昼も夜も賑やかさが失うことはない。

情報もいっぱい流れていて話を聞くにはここほど有意義な場所はないだろう。

しかし、今日の私はその用事で来たわけではなく。

 

「かんぱーい!」

 

 迷宮での疲れを癒しに私は大ジョッキでビールを注文する。

ここんとこ火を使う魔物が多くて暑くて熱くてたまらなかったから

冷たいビールが五臓六腑に染み渡るようだった。

 

「うまーい」

 

 カランカラン

 

 入口から人が入ってくる気配を感じて私は視線を音がした方に

向けるとそこには銃を所持している天使が私の前に来て困惑した表情で

私を見下ろしていた。

 

「あら、リッキィじゃない。どうしたの?」

「えっと・・・その・・・」

 

「立ちっぱなしっていうのも何だしここに座りなよ」

「うん」

 

「あら、フレドリカちゃん。何か注文したいものある?」

 

 私がリッキィを座らせると、女将さんがいつもの優しい笑顔で注文を

取りに来た。リッキィは少し考える素振りをしてから。

 

「オレンジジュース」

「わかったわ。ちょっと待っててね」

 

 女将が注文を聞くと一度お店の奥に入っていった。

それから私はほろよい気分でリッキィに問いかけてみる。

 

「私に何か用?」

「うん、ちょっと言いたいことが・・・」

 

 言いにくそうにもじもじしているのを見ていると無性に頭を

撫でたくなってくる衝動に駆られる。

 

 しかしいきなりそんなことされてもリッキィは困るかもしれないと

なんとか自分に言い聞かせる。

 

「ここじゃ言えないことなんだ。ごめん」

「そっか。じゃあ、もう少ししたら人気のないとこに行こう」

 

「え?」

「だって内緒話みたいなものでしょ。だったら人がいない方がいいじゃない」

 

「そうだね」

 

 リッキィは何でわかるのっていう顔をして私を見ていたけれど、

私の言葉に頷くと一息吐いて椅子によりかかった。

 

 賑やかな空間で他愛のない話を私たちやほかの冒険者と共に

話して楽しい時間を過ごした。

 

 入ったのは昼間だったのに出たころには夕方近くになっていた。

私はリッキィに謝ると、大丈夫と両手を小さく横に振って見せた。

 

 町から少し外れた場所に移動すると、リッキィが少し赤らめた顔をして

話し始めた。恥ずかしいことなのだろうか、それとも恋バナ?

 

 私はその表情から繋がる話のネタを探っていると。

 

「あのね、いつも守ってくれてありがとう」

「なーに? 今更感すごいけど」

 

「なんかね、改めてそう思ったの」

「んまぁ、確かに今回の敵はかなり大物だったからねえ。私もしんどかった」

 

 町の外壁に背中を預けて笑う私に、リッキィは潤んだ瞳を浮かべて

私をジッと見てきた。熱を帯びたその眼は風邪か恋焦がれてる時のような

雰囲気に見える。

 

「いざ言おうとしても今まで言えなかったけれど、今日こそ」

「うん?」

 

「私、ラクーナのことが好きみたい」

「私もリッキィのことが好きよ」

 

 あまりに可愛らしくて私は我慢していたものを解除して思い切り

俯き顔だったリッキィの頭を撫で回した。

 

 そんな私の腕を掴んで、消え入りそうな小さな声で呟くように言う

リッキィ。ややその手が震えてるのを感じて私は本気なんだと感じた。

 

「そういう意味じゃなくて、違う意味でラクーナが好きなの」

「ふふっ、お姫様にそんなこと言われるなんて騎士の誉れきことね」

 

「ふざけないでっ」

 

 腰に手を当てていつものように笑う私に、ちょっと怒ったリッキィが

俯いていた顔を上げた瞬間に私は一気に距離を詰めて

優しくリッキィの唇に触れた。柔らかくて甘い香りがする。

 

 とてもこの子が1000年前のこの世界にいた女の子とは思えない。

私が唇を離すと、呆けていたリッキィは気づくと両手で唇を覆って

涙ぐんでいた。

 

「こうじゃなかった?」

「そ、そうだけど・・・びっくりして・・・あとムードとか」

 

「あらっ、リッキィってけっこうロマンとか気にするんだ」

「当たり前じゃない・・・」

 

 でも嫌そうじゃない顔をしていたことにホッとした。

本気の気持ちをぶつけてくれたリッキィの言葉はうれしい。

私もこんな可愛い子を愛せるのだったら迷うこともないのだが。

 

「でも私たちは女同士よ。それでもいいの?」

 

 それは世間的な目、私たちの生まれの立場からして

ずっと幸せに過ごすのはかなり難しいと思っている。

私だって出来ることならリッキィと恋人になれたら

どんだけうれしいか。普段から考えてないと言ったら嘘になる。

 

「いいわ」

 

 意志の強い目を向けられて私は微笑んで返す。

 

「ありがとう」

「ラクーナ・・・」

 

「じゃあ、セルを倒せたら私たちの街に来てくれるかしら。

家族を紹介したいから」

「うん!」

 

 あまり聞いたことのないリッキィの強い返事。どれだけ嬉しいかが

感じ取れた。

 

 私はリッキィと抱き合うと回した手に力を入れてリッキィと

約束をした。

 

 もうすぐ6階層にたどり着く、死も隣り合わせな状況だけど

こういう大事なことはきちんと約束しておきたい。

 

「ラクーナ・・・」

「リッキィは私が命に代えても護ってみせるから」

 

「死なないでね」

「お互いにね」

 

「うん」

 

 強く抱き合ってお互いの顔が見れないけれど体が震えてる

リッキィを慰めるように背中を撫でる。

 

 唯一の友人すら失い、寂しい気持ちもあっただろうに。

リッキィは強い子だ。これからは私たちが彼女を守り、

そして守られる存在にならなければいけなかった。

 

「しばらくは、仲間としてもよろしくね。リッキィ」

「こちらこそ、ラクーナ」

 

 離れた後にお互い見つめあってからもう一度キスをした。

今度は不意打ちではない。二人の心からのキスを長く長くしていた。

 

 

「さぁ、いっくわよー!」

「お、ラクーナ。今日はずいぶんやる気だな!」

 

 探索の準備を終わらせて気合いを入れると茶々を入れるように

アーサーが私に声をかけてきた。しかしアーサーもやる気は十分に

あるように見える。

 

「いっぱい探索して早くセルを倒せるように」

「あぁ、その通りだ」

 

 リッキィとサイモンも力強くうなづき、ハイランダーの子も

意志の強い目をしていた。

 

 私たちの連携があればどんな状況でも乗り切れる。

そう気持ちを強めて私たちは部屋を後にする。

 

 私が先頭に歩いてると後ろからリッキィがくっついてきて

笑顔を見せた。私は今この笑顔を守れる自信がいつもよりも

湧いてくる。

 

「リッキィ、援護頼むわね」

「任せて」

 

 力強い返事に私は嬉しさを感じながら私たちは迷宮に向かった。

エトリアと世界と私たちの平和のために。

 

お終い


 
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