No.587610

魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第八十一話 TCG研究部に入部します

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2013-06-15 21:02:18 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:26177   閲覧ユーザー数:23178

 「「「フェイト、レヴィ、テレサ!!一緒にメシ食おうぜ(ご飯をたべましょう)」」」(ニコッ)

 

 「「「「「「「「「「帰れゴルアアアアァァァァァッッッッ!!!!」」」」」」」」」」

 

 西条、吉満の墓標がグラウンドの一角に追加されたあの体育の日から更に数日経った。

 今は昼休み。

 最早恒例となりつつある目の前の光景。

 学校の教室で昼食を取ろうと俺、レヴィ、フェイト、テレサは1ヶ所に集まっていた。

 そこにやってきたのは毎度お馴染み銀髪トリオ。

 自分の教室で誰も捕まらなかったから俺達の教室にやってきたのだろう。

 普通なら俺達も逃げる所だが天使と称されるレヴィ、フェイト、テレサの3人に手を出そうとするのを良しとしない我がクラスの男子達が立ち上がり、臨戦態勢を取る。

 

 「「「邪魔すんじゃねえよ!!(邪魔しないでくれる?)モブの分際で!!」」」

 

 「「「「「「「「「「貴様等にレヴィさん達の休息の邪魔はさせん!!表出ろ!!」」」」」」」」」」

 

 「「「上等だコラ!!(上等よ!!)」」」

 

 銀髪トリオとクラスの男子達ほぼ全員が教室を出て行く。残ってる男子は俺と謙介ぐらい。

 

 「…行ったわね」

 

 「アイツ等いるとせっかくのお昼ご飯が美味しく感じられないからねー」

 

 開いた教室の扉を見ながらテレサとレヴィが喋る。

 

 「いつもクラスの皆が追い払ってくれるけど毎回毎回悪い気がするよ」

 

 フェイトはクラスの男子達に迷惑を掛けていると思ってる様だが、お前のためならアイツ等神風特攻ぐらい平気ですると思うぞ俺は。

 ちなみにウチのクラスの男子達は暁の事も敵視しております。

 何でも『あの銀髪共と同じ感じがする』と言っていた。

 まさか直感でヤツの本性を見抜くとは。男子達も少しずつ人外に足を踏み入れて行きそうで怖い。

 

 「モグモグ…」

 

 「…で、何で俺の弁当からおかずを取っているのかね謙介君?」

 

 「勇紀の作る弁当が美味しいからだよ」

 

 「知るか!!自分の弁当食えや!!」

 

 何当然の様に俺達の側までやってきて箸を伸ばし、人の弁当からおかずを強奪していくんだコイツは?

 しかも俺特製のだし巻き奪いやがって。後で絶対殴っちゃる。

 

 「まあまあユウキ。私のお弁当からだし巻きあげますから」

 

 シュテルが自分の弁当箱からだしまきを箸でつまみ、俺の弁当箱に1つ入れてくれる。

 

 「シュテル、悪いな」

 

 「いえ」

 

 ……………ん?

 

 「あれ?シュテるん、何でここにいんの?」

 

 あまりにも自然に加わっていたのでシュテルがいたのに何の疑問も思わなかった俺がハッとした瞬間、レヴィが聞いてくれた。

 

 「あの連中から逃げていたのですがこのクラスの男子達と何処かへ行くのが見えましたので」

 

 どうやらなのは達2組の連中は散り散りに逃げたとの事で教室内にまだ戻ってはいないらしい。

 て事は3組の連中も同様に逃げてる最中って事か。

 

 「これ以上逃げるよりここで昼食を済ませようと思うのですが、ご一緒しても?」

 

 「断る理由は無いわね」

 

 「うん、僕も賛成だよ」

 

 「私も良いよ」

 

 「そこら辺の椅子借りて座れシュテル」

 

 シュテルは俺の指示に頷き、椅子を引っ張ってきて俺達の輪に加わる。

 

 「しかしこのクラスが本当に羨ましいです」

 

 「…苦労してるんだね」

 

 「ええ…馬鹿2人のせいで私のクラスの男子達とはあまり喋れないんですよね」

 

 「「「「「あー…」」」」」

 

 俺、レヴィ、テレサ、フェイト、謙介は容易にその光景が想像出来る。

 

 「聖祥時代のなのは達がどれだけ苦労していたのか、今は身を以て理解させられてますから」

 

 『ハア~』と溜め息を吐くシュテル。

 

 「私はその当事者の1人だったからシュテルの今の気持ち、凄く分かるよ」

 

 フェイトもうんうん頷いてシュテルに同情している。

 フェイトはこのクラスで男子達に話し掛けられることが出来て凄く嬉しいらしい。そして話し掛けられた男子も凄く嬉しいらしい。その後、他の男子達に睨まれるか断罪されるのはお約束。

 てか羨ましいなら自分から声掛けたれや。

 こう見えてフェイトの奴、男子の方から声掛けてくれるの待ってたりするんだぞ?

 

 「ま、このクラスは見ての通りだ。アイツ等が現れたら即座に男子達が動く」

 

 『話す前に殺れ!!』が男子達の銀髪トリオに対する行動指針らしいから。

 俺もアイツ等に絡まれる前に男子達が引き受けてくれるから助かっている。1組最高だね。こうして平和に昼食が取れてるし。

 ただ、銀髪トリオがいない時にレヴィ、フェイト、テレサに近付くと睨まれるんだけどね。ちなみに俺はまだ断罪はされてないよ。

 

 「…今後はここに避難してきてもいいでしょうか?」

 

 「「「「「良いと思うぞ(良いと思うよ)(良いと思うわよ)(良いんじゃないかな)」」」」」

 

 俺、レヴィ、フェイト、テレサ、謙介は声を揃えて答える。

 こうしてシュテルを交えた昼食の時間中、銀髪トリオもクラスの男子達も戻って来る事無く平和な昼休みを過ごす事が出来たのだった………。

 

 

 

 「ここがTCG研究部の部室か…」

 

 「みたいだね」

 

 「この学校のファイターの実力は如何程のものか…楽しみだ」

 

 授業が終わった放課後。

 俺はアリシア、誠悟と合流し、中学校卒業までお世話になるであろう『TCG研究部』の部室前に来ている。

 ちなみに風紀委員に入る事を止めたディアーチェと残りの元聖祥5人は何の部活、委員会に入るかを決めかねているらしい。

 レヴィは運動部を全て見学してから決めると言い、今日は部活見学に徹するみたいで保健委員希望のシュテルは保健室に、料理部希望のユーリは家庭科室に向かった。

 

 「じゃあ入るか」

 

 俺はドアノブを回し、扉を開いていく。

 

 「「「すみません、TCG研究部に入部したいんですけど?」」」

 

 「今年入った新入生か?いらっしゃい」

 

 部室の中にいたのは1人の上級生だけだった。

 

 「…お一人だけですか?」

 

 「他の部員はまだ来てないよ。今日部活に来れない部員を除くと掃除当番で来るのが遅れているんだろう」

 

 上級生の人はそう言って部室の中にあったパソコンを起動させる。

 

 「それよりも君達は『入部したい』って言ってたけどここの部活が何をするかは知っているよね?なら君達のプレイするカードゲームは何だい?」

 

 「「「ヴァ〇ガー〇です」」」

 

 「ふむ、現在人気の高いカードゲームだね」

 

 そう言う上級生の人は何故か少し落胆したかの様だ様に軽く肩を落とす。

 

 「何か気に障りました?」

 

 「いや…『スク〇ンブル〇ャザーをやっている新入生が入ってこないか』と期待していたんだが…」

 

 「スク〇ンブル〇ャザーですと!!?」

 

 俺は思わず声を上げる。

 この先輩もスク〇ンブル〇ャザーをプレイするのか?

 

 「む?その反応…君はスク〇ンブル〇ャザーを知っているのかい?」

 

 「知ってるどころかガチのプレイヤーです!!」

 

 忘れて貰っては困るが俺はヴァ〇ガー〇だけじゃなくスク〇ンブル〇ャザーもプレイするのだよ。

 

 「君もプレイするのかい!!?」

 

 「勿論です!!」

 

 興奮した様子で尋ねてくる先輩さんに俺は即答で頷き返す。

 

 「そうか!!いや、スク〇ンブル〇ャザーをプレイできる部員が僕しかいなくてね!!他のカードゲームも嗜むけど実は毎日寂しい思いをしていたんだ!!」

 

 「分かります。あのカードゲーム面白いけどプレイヤー少ないんですよね」

 

 俺もうんうんと首を縦に振って先輩さんに同情する。

 

 「君が入部してくれたのも何かの縁かもしれないな。どうだい?僕と一戦交えないか!?」

 

 「良いッスよ。お相手致しましょう」

 

 目を輝かせながら対戦を申し込んでくる先輩さんと俺は空いている席に移動する。パソコン点けっぱなしだけどいいのかな?

 

 「……あの~、私達はどうすれば?」

 

 「勇紀と先輩だけで話が進んで俺達置いてけぼりなんですけど…」

 

 小さく手を上げるアリシアと誠悟。

 

 「ああ、すまない。君達も入部希望だったね。入部届は後で書いて貰うとして他の部員が来るまではカードゲームで遊ぶなり、そこのパソコンで情報を集めるなり好きにしてくれていいよ」

 

 「…だ、そうだけどどうする伊東?」

 

 「ヴァ〇ガー〇やりますかテスタロッサさん」

 

 「そうだね。じゃああそこの席借りよう」

 

 2人も移動し、カバンの中から自分のデッキケースを取り出す。

 こうして俺達は入部して早速カードゲームに興じるのだった………。

 

 

 

 「俺の特殊効果フェイズ。バズーカを本体に撃ちます」

 

 「ま…また負けた……」

 

 あれから1時間ちょい経ったかな?

 俺は先輩さんとスク〇ンブル〇ャザーをひたすらやっていたのだが5戦5勝…ぶっちゃけ全勝である。

 

 「何故…何故勝てないんだ?」

 

 自分のデッキを何度も確認しながら先輩さんは呟く。

 

 「デッキのバランスが悪いのでは?」

 

 「むう…そうなのかな?」

 

 「そうですよ。そもそも回復系のカード入れてないんですか?」

 

 「うむ。攻撃に全てを懸けているからね」

 

 「このゲーム、回復系は結構重要ですよ。どうしても入れないスタイルでいくならもっと攻撃が当たり易いデッキにするべきです」

 

 先輩さんのデッキの問題点を指摘していく。

 デッキに必要そうなカードの名前や枚数等々…。

 

 「…成る程。なら家に帰ったら早速それらのカードを探してみるよ」

 

 改良すべき点がハッキリと分かった先輩さんの顔は満足そうだ。

 

 「……で、君達の話はもう終わったか?」

 

 そこへ俺達でもアリシア、誠悟でもない第三者の声が俺の耳に聞こえてきた。

 ていうかいつの間にやら見知らぬ人達が。

 

 「部長、来てたんですか?」

 

 「15分程前にな。君達全然気付かずにゲームに没頭してたから声掛け辛くてね」

 

 先輩に部長と呼ばれた人達が苦笑しながら言う。俺と先輩さんは揃って頭を下げ、謝る。

 

 「「すみませんでした」」

 

 「謝る必要は無いだろ。TCG研究部にとっちゃ、それが当たり前なんだからな」

 

 「「「「「そうそう」」」」」

 

 後ろにいた他の先輩らしき人達も首を縦に振り、声を揃えて答える。

 これで今日部活に来れる部員全員なのかな?

 アリシアと誠悟もゲーム自体終えて俺達の対戦を遠巻きながら見てた様だし。

 

 「とりあえず全員注目。この部に新入部員が入ったみたいだし、新入部員が1日でも早くこの部に溶け込める様、上級生はこれから仲良くしてあげる様に。新入部員の君等も分からない事とかはドンドン先輩に聞いてやってくれ」

 

 「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」

 

 「じゃあ新入部員の子はこっちに並んで自己紹介してくれるか?」

 

 部長さんの指示通り俺達は並び、先輩部員の方を見て自己紹介する。

 

 「1年1組の長谷川勇紀です。プレイしてるゲームはヴァ〇ガー〇、スク〇ンブル〇ャザーです。これからよろしくお願いします」

 

 「アリシア・テスタロッサです。1年2組在籍です。ヴァ〇ガー〇一筋です。どうかよろしくお願いします」

 

 「1年3組の伊東誠悟です。俺もヴァ〇ガー〇しかやっていません。対戦大歓迎ですのでよろしくお願いします」

 

 俺達が自己紹介を終えると部員の皆さんから拍手を頂く。

 皆さん気さくでいい人達そうで良かった。ここの部活は当たりだな。

 

 「よし!じゃあ新入部員の3人はコッチで入部届を書いてくれ。他の者は今日も部活動に励む様に」

 

 「おーし、遊〇王やろうぜ」

 

 「リ〇やらね?」

 

 「俺達もヴァ〇がるか」

 

 先輩達はすぐにデッキからケースを取り出し、対戦し始める。

 遊〇王にリ〇にヴァ〇ガー〇。スク〇ンブル〇ャザーも入れるとこの部活でやってるカードゲームは4種類…いや、まだ他のカードゲームもしてるかもな。

 入部届に必要事項を記入しながら部活動の風景を眺める。

 

 「「「………書けました」」」

 

 俺達は同時に入部届を書き終え、部長さんに提出する。

 

 「確かに。これで君等3人は今日から正式にTCG研究部の部員として登録されるから。ようこそ!TCG研究部へ!!」

 

 笑顔で迎え入れてくれる部長。

 

 「それでこの部活の内容なんだがハッキリ言ってカードゲームするだけなんだよね。後はデッキ構築したり意見を出し合って特定のデッキ対策を練ったりパソコンで情報得たりとカードゲームに関する事なら何してくれてもいいから」

 

 「「「分かりました」」」

 

 「それとカードショップで行われる公認大会に参加する時は出来るだけ対戦相手のデッキ内容やプレイ内容を細かくレポートに纏めてくれないか?可能なら店の店員さんに頼んで試合内容を録画させてもらったりとか」

 

 そう言って部長がパソコンのフォルダの中にあるデータを見せてくれる。データの内容は対戦記録や戦術、戦略面に関するレポート。更に当時の対戦風景の動画などがビッシリと保存されていた。

 

 「…ていうかこれ、データが一つのフォルダに統一されてるんですね?」

 

 「そうだけどそれが何か問題でも?」

 

 「フォルダを複数作ってカードゲームの種類毎に分けて保存した方がレポートとか呼び出す際に探す手間が省けるんじゃないですか?」

 

 確かに誠悟の言う通りだ。一つのフォルダに全てのカードゲームの記録が纏められており、探すのが面倒だ。ヴァ〇ガー〇ならヴァ〇ガー〇、リ〇ならリ〇とカードゲーム毎に分けた方が探す側は手間が省けるし効率は良いに決まってる。

 

 「言われてみたらそうだな。よし、データ分けは俺の方でやっておこう。君等ももういいよ。後は部員と対戦するなり今日は帰るなり自由にしてくれていいから」

 

 部長は早速パソコンの中にあるデータの分別をし始める。

 

 「…どうする勇紀?伊東?」

 

 「とりあえずヴァ〇がるか?俺まだ今日はヴァ〇ガー〇やってないし」

 

 「俺もまだ時間に余裕はあるから別に良いぞ」

 

 「じゃあ、あそこの席でやろっか。一番負けの多かった人が帰りにジュース奢りって事でいいよね?」

 

 「「オッケー」」

 

 俺達は3人でカードゲームにのめり込む。

 この日は日が沈み始めるころまで部室でひたすらカードゲームに明け暮れていた。先輩達とも結構仲良くなれたし。

 ちなみにジュースの奢りは言い出しっぺのアリシアだった………。

 

 

 

 「…という訳で俺達がTCG研究部で過ごす初日は悪いモノじゃなかった」

 

 「随分楽しそうな部活で良かったな」

 

 俺は家に帰ってきてリビングでディアーチェと喋っていた。

 

 「ディアーチェはまだ決めてないんだよな?」

 

 「うむ」

 

 「期限は4月末までだったっけか?」

 

 「担任はそう言っておったな。期限を過ぎて無所属だった場合は勝手に何処かの部活か委員会に放り込まれるらしい」

 

 ランダム任せっていうのも1つの手だけど、本人の趣向に合わない所に入れられる可能性もあるからなぁ。

 

 「シュテルは保健委員、ユーリは料理部…と自分の希望通りの場所に所属出来たんだよな?」

 

 「うむ、それとレヴィも女子バスケ部に入部したと連絡があったしな」

 

 「ああ、俺の携帯にもメールが届いてた。『僕、女子バスケ部に入部したよ』って」

 

 「おかげで我だけが未だに無所属だ。といってもまだ4月末までは多少時間がある。焦らずにじっくりと品定めするつもりだ」

 

 「そうしろ。風紀委員みたいな明らかに残念な部活、委員会もあるかもしれないからな。最悪俺達の誰かと同じ所に所属すればいいだろ」

 

 「うむ。どうしても自分で選べ無さそうな場合はそうさせて貰う」

 

 ディアーチェは頷く。

 

 「ところで今日の夕食担当ってディアーチェじゃなかったっけ?」

 

 「その事だがユーリから連絡が入ってな。今日はユーリが『1人で作りたい』と言ってきたのでな」

 

 「1人で?アイツ、料理が作れるほどの腕前じゃなかっただろ?」

 

 基本誰かの手伝いという形で料理に関わっているユーリ。そんな彼女を1人でやらせて良いモノかどうか…。

 

 「料理部で早速1種類作れるようになったらしい」

 

 「待て待て待て!今日入部したばっかりだろアイツ?」

 

 基本放課後は午後3時前後から。そして今は夕方5時半過ぎ。

 僅か2時間半で料理を作れる様になったのか?長谷川家のドジっ娘担当であるユーリが?火の加減具合とかが苦手なユーリが?

 

 「だが電話越しに聞いた本人の声色は自信に満ち溢れていた様だったぞ。それだけ料理部の顧問の教えが上手かったという事では無いのか?」

 

 「む…」

 

 そう言われると納得せざるを得ないかも。ドジっ娘とはいえ、簡単なお手伝いは出来るユーリだ。教える側の人間が優秀であるなら料理の1つぐらいは出来る様に導けたのかも。

 

 「だから今日はユーリに任せてみる事にした。買い物にはシュテルが付き合っているから下手に食材を買い過ぎるという事も無い筈だ」

 

 「そうか…なら今日はユーリに任せてみようかな」

 

 リビングでのんびりディアーチェと喋っていた所で

 

 「「ただ今戻りました」」

 

 今し方話題になっていたユーリと買い物に付き合っていたらしいシュテルの声が玄関から聞こえてきた。

 

 「「2人共おかえり」」

 

 俺とディアーチェはソファーに座ったまま視線だけを向けて返事する。

 

 「ユウキ!!今日は私が夕食を作ります!!異論はありませんよね!?」

 

 「ディアーチェから聞いてるし、俺としては反対しない」

 

 「そうですか!!なら楽しみに待っていて下さい♪」

 

 上機嫌で食材をキッチンに運ぶユーリ。

 

 「シュテルもお疲れ」

 

 「いえ、それ程多く買い物をした訳でもありませんから」

 

 ソファーに腰を下ろし、目の前にコップを置いて麦茶を注いでやると『ありがとうございます』とお礼を言い、小さく頭を下げてから少しずつ飲んでいく。

 

 「???レヴィはまだ帰ってきてないのですか?」

 

 「みたいだな。靴無かったし」

 

 「あやつ…まだ部活しておるのではないだろうな?」

 

 「「…有り得そうだ(…有り得そうですね)」」

 

 シュテルと言葉が重なり、ディアーチェがテレビを点けたので視線をテレビに移す。

 ニュースが流れ始め、しばらく3人でテレビを観ていると

 

 「たっだいまー♪」

 

 玄関から元気な声がリビングに届いた。

 

 「お帰りー……って、ずいぶん汗掻いてるな」

 

 「へっへー♪部活が終わって全力で走って帰ってきたからね」

 

 「レヴィ、先に風呂に入ってこい。その汗をまずは洗い流せ」

 

 「お風呂沸いてるの?」

 

 「我が用意しておいた。もう追い焚きも済んでいる筈だ」

 

 用意がいいねぇ。

 

 「じゃあ、先に入るね♪」

 

 「着替えは私が準備しておきますから、そのままお風呂に行って貰って大丈夫ですよ」

 

 「ありがとうシュテるん」

 

 ドタドタと足音を立てて、風呂場へ向かうレヴィ。

 

 「じゃあ、私はレヴィの着替えを取ってきますね」

 

 「なら我はメガーヌとルーを起こして来よう」

 

 シュテル、ディアーチェもソファーから立ち上がる。メガーヌさんとルーテシアはディアーチェが家に帰ってきた時、すでに部屋で寝ていたらしい。

 ここ最近は気候も良いから昼寝したくなるのも頷ける。

 リビングには俺1人ポツンと取り残される形になってしまった。

 

 「ほわあっ!!」

 

 「んおっ!?」(ビクッ!)

 

 そんな時に、キッチンの方から何やら奇声の様なモノが聞こえた。

 今、あそこにいるのはユーリだけの筈。

 ……料理に失敗して慌ててるとか?

 何だか胸中に一抹の不安を感じた俺はキッチンに足を踏み入れる。そこには

 

 「ほわっ!ほわあっ!!」

 

 ガシャッ…ガシャッ…

 

 片手で中華鍋を持ち、もう片手で木製のしゃもじを握っているユーリの姿があった。中華鍋を振りながらしゃもじで鍋の中をかき混ぜている。

 うむ…確かに料理が作れる様になったというのは嘘では無かった様だ。

 作っているのは炒飯の様だ。ただ…

 

 「ほわっ!ほわあっ!!」

 

 あの奇声(…というか掛け声?)はどうにかならないのか?

 しゃもじで炒飯をかき混ぜ、炒めている姿は様になっているのに『ほわあっ!』の一声で何か色々と台無しになっている様な気がする。

 

 「あのー…ユーリ?」

 

 「ほわっ!ほわあっ!!」

 

 「ユーリさんや…」

 

 「ほわっ!ほわあっ!!」

 

 「聞こえてますかー?もしもーし?」

 

 「ほわっ!ほわあっ!!」

 

 全然聞こえちゃいねぇ。熱中し過ぎてる。

 

 「……は……せん。……はい……です……」

 

 ん?

 さっきまで『ほわ!ほわ!』って言ってたのに突然静かになったかと思うと、今度は何やらブツブツと呟いている。

 少し聞こえにくいので俺はユーリに近付き、こっそり聞き耳を立てる。

 

 「私は火を恐れません。火を支配するんです。私は火を恐れません。火を支配するんです」(ブツブツ…)

 

 怖っ!!?なんか怖っ!!?

 低い声で暗い雰囲気を晒し出し、ブツブツ呟く姿は俺の恐怖心を煽る。

 これで手に持っているのが包丁だったらユーリはヤンデレキャラだと言われても仕方ないと思う。

 それぐらいのプレッシャーなんだよ、今俺の見ている『元・紫天の盟主』さんは。

 

 「ほわっ!ほわあっ!!」

 

 また『ほわ!ほわ!』言い出した!!?

 俺が側にいるのにも気付かず、炒飯をひたすらに炒めるユーリ。

 それから何度声を掛けても気付かず、コッチに振り向かないので俺はそっとキッチンを後にし、リビングへ戻るのだった………。

 

 

 

 「「「「「「美味しい(美味しいですね)(美味しいよ!)(美味いな)(おいしー♪)(美味しいわね)」」」」」」

 

 「良かったです、皆の口に合ってくれて」(ホッ)

 

 夕食時…。

 ユーリの作った炒飯は長谷川家の誰もが認める程美味かった。作った本人もホッと旨を撫で下ろし、安堵の表情を浮かべている。

 

 「これで私も今後は料理を覚えていって炊事担当になれる様に頑張ります(料理の出来る子がユウキの好みだった筈…これで一歩前進です)//」

 

 『むん!』と意気込んでいるユーリ。

 

 「つーか、料理作っている最中の奇声と呟きはどうにかならなかったのか?」

 

 「「「「「奇声?呟き?(きせいー?つぶやきー?)」」」」」

 

 「はわっ!?き、聞いてたんでしゅか!?」

 

 ユーリは噛むほど動揺している。

 

 「最初にリビングに聞こえた時は『何事!?』って思って様子見に行ったら…って事だ」

 

 「は、恥ずかしいでしゅ…////」

 

 また噛んでる。

 

 「で、アレは何だったんだ?」

 

 「えっとですね。顧問の先生に言われたんです。『料理は気迫に呑まれたら負けだ』って。『とにかく自分に気合を入れて呑まれない様にしろ』って」

 

 顧問の先生はユーリに何を言ってるんだか…。

 

 「それと『火を恐れるな。火は支配するものだ』と…」

 

 そういや、そんな事もブツブツ呟いてたね君は。

 

 「コレを支配出来る様になった時、私は『光魔法キラキラ』が出来る様になるらしいんです」

 

 ……OK、ちょっと待とうか。

 

 「『光魔法キラキラ』?ユーリ、それって何なの?」

 

 「さあ?先生は『火を完全に支配出来る様になった時、火の剣を生み出せるだろう』って言ってましたけど」

 

 「火の剣!?何それカッコ良さそう!!」

 

 「かっこよさそー!!」

 

 レヴィとルーテシアは目をキラキラ輝かせている。興味津々の様だ。

 

 「魔法…ねぇ。その先生も魔導師って事かしら?」

 

 違います!違いますよメガーヌさん!!断じて魔導師なんかじゃないです!!

 

 「ユーリよ。そこのところはどうなのだ?」

 

 「どうなんでしょう?先生になる前は何処かの国で料理大臣をしていたらしいんですけど…」

 

 「料理大臣ですか…『何処かの国』というのはミッドチルダの事でしょうか?」

 

 シュテル…真剣に悩んで答え出そうとするな。

 

 「ユーリ!火の剣使える様になったら僕に見せてね!!」

 

 「わたしも!ゆーりおねーちゃんのひのけんみたい!!」

 

 「あっ、はい!出来る様になったらお見せしますね」

 

 出来んでいい、出来んでいいからなユーリ。

 

 「ところでシュテルはどうなんだ?保健委員になったんだろ?」

 

 「ええ、今日は保健委員を纏める先生にも挨拶しておきましたし」

 

 「…どんな先生?」

 

 正直不安でしょうがない。

 体育=ウィグル。料理部=火の王。

 なら保健委員を纏める先生って一体?

 

 「まあ、口が悪い先生ですね」

 

 「「「「「口が悪い?」」」」」

 

 「うー?わるぐちいうのー?」

 

 俺達は首を傾げ、聞き返す。

 

 「はい。毒舌を吐きまくるチョイ悪系の先生です。しかし特定の女性には受けがいいです」

 

 何だその銀髪トリオ先生バージョンは?

 

 「いえユウキ、あの3人とは違いますよ」

 

 「だから何でそう簡単に俺の心は読まれるんだ?」

 

 日輪庭園(ヘリオスガーデン)涙目なんだが…。

 

 「読んだと言うよりも顔に出ていましたよ」

 

 「……出てたのか」

 

 自分では全然気付かんかった。まあ、鏡を持ってる訳じゃ無いしポーカーフェイスしなきゃいけない訳でもないしな。

 

 「ええ…。で、あの3人と違うと言ったのは先生が毒舌を吐くのは『男女関係無く』ですから」

 

 「「「「なら違うな(なら違うね)(なら違いますね)」」」」

 

 シュテルの言葉に頷く俺、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ。

 けど、男女関係無く毒舌吐くのか。あまり関わりたくないなぁ。

 保健室には出来るだけ近付かず、寄る事の無い様にしよう。

 

 「がっこーたのしそー」

 

 「ルーが入るのはもう少し大きくなってからだな」

 

 ディアーチェの言葉に頷く。

 俺達が高校生の年齢になったらルーテシアも小学生。つまり後3年後だ。

 

 「ルーが通うとしたら聖祥か?海小か?」

 

 「単純に家からの距離を考えたら海小、少しでも良い所に行かせるなら聖祥だな」

 

 「ルーはどっちに行きたい?」

 

 「うー?」

 

 俺とディアーチェがルーテシアを通わせる学校について考え、レヴィはルーテシアに直接聞くが当の本人は首を傾げるだけだ。

 まあ、『どっちの学校に行きたいか?』なんて聞いても今のルーテシアに分かる訳ないわな。それにまだ先の話だし今討論しても仕方の無い事か。幼稚園に入園させるかどうかも未定だし。

 ワイワイと会話しながらも夕食を食べ終え

 

 「…さて、デザートのアイスいる人ー?」

 

 俺が尋ねると全員が手を上げる。

 俺はキッチンに向かって冷凍庫からアイスを取り出し、皆に配ってから再び腰を下ろす。

 今日もまたゆっくりと時間は進み、一日は終わるのだった………。

 

 ~~あとがき~~

 

 この小説を読んでいる人でスクランブルギャザーを知っている人、またはプレイした事ある人っているんですかねぇ?

 自分が一番ハマっていたカードゲームだったんでちょっと気になったり…。

 


 
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