No.586923

司馬日記外伝 事後シリーズ7

hujisaiさん

11月23日翌々日の、『その後』の風さんと一刀さんです。

2013-06-13 21:47:36 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:14105   閲覧ユーザー数:8850

「……魏の誇る種馬は…こんなものでは、ないはずなのですよー…」

「いや…こんなもんだ…」

 

隣で天井を見つめたまま荒い息を吐く風の声に、俺もはーはーと息を切らせながらもなんとか答える。

「…所詮風の貧相な身体では、この程度でお寝んねなのか、おらおらーですー…」

「それもう三回目だから…それに貧相だなんて思ってないって」

「つまりお兄さんは風のような幼児体型に欲情して、ここまでまみれにする変態ロリペド野郎ということですかー?」

「…前半は肯定して、後半は後世の…いや、風の評価に委ねる。あと、言うほど風は幼児体型なんかじゃない」

「……では評価を下すと、お兄さんは天下御免の変態野郎なのですよー…」

「さいですか…」

のろのろと身体を起こして、手水鉢に備え付けられた濡れ手拭いで風の顔から身体を丁寧に拭っていく。その間も彼女は天井を見つめたままだ。

 

 

拭きながら、我ながら凄えな、よく頑張ったなと少し思う。

風とは普段こういう時間を持っても大体1、2回、多くても3回だ。彼女自身そんなに何度も求めてくると言う事が余り無いし、大体一度終わると疲労具合が見てとれてしまうしその華奢な身体を抱きしめていると壊してしまいそうに思えるというのもある。

しかし今日だけは違った。

漸く四人を宥めすかして何とかなったと思った昼食時に、風を何とかして下さいと稟が半泣きで部屋に飛び込んできた。その語るを聞くには、一昨日の件で風も激怒しているという。

正直、やっぱりなーとは思った。一昨日の会議のあの場面でみんな何かしら、怒るなりおろおろするなりの『見てわかる』反応を見せていた中で、一人だけ無反応に見えた彼女に

『ヤバい』とは一瞬思った。しかし今目の前で殺し合いをしかねない祭さん達をほっとけなかったので後回しにしつつ、本当は怒ってなかったらいいなぁとか甘過ぎる希望的観測に縋っていたら先に稟の方が音を上げた…っていうか上げさせてしまった。

怒っている風。

見たことない。

て言うか見たくない。

とは言ってもほったらかすのはもっと嫌なので彼女の部屋を訪ねた。正直、この二日余裕が無さ過ぎて何にも考えてない。風の事だからきっと抑揚無く、容赦無い言葉で罵ってくれるだろう、この豚野郎とか腐れ○○○とか。もうそれ御褒美でもいいからどうか機嫌直して。

そう思いながら、一刀だけどと言いながら部屋をノックすると風が姿を見せた。

「ああ、お兄さんじゃないですか。まあまあどうぞ入って下さい」

「ああうん、お邪魔するよ」

実はそんなに怒ってる訳じゃないんじゃないか?

余りにも変わらない風の姿に一抹の期待を抱きながら扉を閉めて、振り向いたらもう唇を奪われていた。

 

力一杯に首筋にぶら下がるようにしてその可憐な桃唇を押し付け、迷い無く舌を絡めてくる彼女を抱きとめる。身長差で上向きになる風に合わせて軽く腰を折り、やや抱き上げるように抱きしめると、彼女の両腕も背中に回された。かと思うと風にしては乱暴に俺の服の中にその細い手を潜り込ませて背中を撫で回し、舌は更に深くへと押し込もうとしながら色っぽく鼻を鳴らす。

一声長く、んむぅんと悩ましげに鼻を鳴らすと唇を離し、見たことの無いような扇情的な瞳で俺を見つめて、

「お兄さん。今日は風を、滅茶苦茶にしてみませんか」

と喘ぐ様に言った。

 

 

 

その結果が、まあ今なわけで。

直後から彼女は虚空を見つめたままではあるけれど、最中の反応は決して悪いものではなかったと思う。というかむしろ普段よりも積極的で大胆で、互いの震えを感じ合えるほどにきつく抱きしめあい、日頃の冷静な姿をかなぐり捨てて本能から来る感情を見せてくれた。…少なくとも、身体的には。

 

「…お兄さん」

「…何?」

体を拭き終え、上掛けを二人にかけて横になると風が口を開いた。

「あっちを向いて欲しいのです」

「…うん」

肩を押され、風に背を向けるように横向きに寝る。体で騙される様なタイプじゃないよな、とは思ってもまだ怒っているのかと思うと少し寂しい。

 

そう思っていると、ベッドから離れた背中にぬくもりを感じた。

「お兄さん」

「うん」

「風を嫌いになりましたか」

「そんな訳無いよ」

「風はずるい女です。お兄さんがそう答えるのを知ってて聞いてます」

「知ってても聞かれるのは嬉しいよ」

「風は面倒臭い女です」

「そうかもね。でもそんな風が好きなんだよ」

「お兄さんのジゴロっぷりには流石の風も心底呆れます」

「俺も少し呆れてるよ。でも好きなんだよ」

我ながらひでえ開き直りだとは思う。

 

「…風は」

肩に添えられていたほっそりとした腕が胸元に廻されて、背中には押し付けられた彼女の鼓動と、耳元に響く熱い吐息。

 

「貴方の事が好きなの、どうしようもなく好きなの。私は貴方の一番ではないと思うけれど、私は貴方の事を一番知っているつもりなの。貴方が他の人を抱くのはいいの、でも他の人が貴方について判ったような事を言うのを見ると叫びそうになるの、『それは違う』、貴方の事をどれだけ見ているというの?って。私はずっと見ている、だって貴方は私の日輪だもの。昼は明るく強く私を照らし、夜は月を介して優しく照らす。私の心がその日輪を、貴方を見ていない時は無いのよ。

…私、今でも後悔してる。初めて会ったあの時、『貴方のお嫁さんにして下さい』ってどうしていわなかったんだろうって。初対面でそんな事言えるはずが無いのにね。明日死ぬかもしれないって思っていたあの頃から見れば、今こうしてるだけだって十分過ぎるくらい幸せなのに、それでも貴方の一番の理解者でいたい、出来れば少しでも貴方に愛されたいって。…想う気持ちが、止まらないの」

 

「…風」

「見な、いで」

 

そんな事を言われても。

振り向いてその瞳に口付けて、きつく抱きしめながら彼女の名前を何度も呼ぶ以外に何が出来る?

 

 

 

 

 

「…こんな事を言う風は風ではないのです。…混乱した政治による疲弊が齎した一時の気の迷いなのですよー」

「うん」

その瞳から溢れるものを止めて、腕の中に収まっている彼女がひどく愛しい。

「むしろ演技かもしれませんねー」

「それでもいい。風、愛してる」

「………チョロい種馬のお兄さん相手には、たまには拗ねてみるものですー」

「ああ、もっと拗ねてくれ。我侭も言ってくれ。もっと、風を愛したい」

 

そう返すと、彼女は口元を緩めて俺を押し倒して馬乗りになると、優しく口付けてきた。

 

「……お兄さんが優しすぎて、気持ち悪さのあまりなんだか体がむずむずします。一体どういう事なのか、御子息さんにこってりと伺うので覚悟するといいですよー?」

「はは、お手柔らかに頼むよ…」

「聞けない相談なのです、よぉぅ…ん………っん、ぅ…」

瞳を閉じて眉根に皺を寄せながら緩やかに蠢き出す彼女の小さなお尻を、出来るだけ優しく抱え込んだ。

 


 
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