ピッピッピ…
ベットの上に一人の男性の老人が呼吸器をつけ他状態で寝ていた。
心電図が規則正しく動いている。しかしその脈は弱弱しく、今にも止まってしまいそうなほどだった。
彼の名前は五代雄介。かつて日本を襲った未確認生命体たちから人々を守るため、自ら彼らと同じ存在『クウガ』となり、何度もその命と精神を削った戦いをした。まさに現代の英雄と言われても過言ではない人物であった。
彼はあの戦いが終わり、平和が戻った世界でまた冒険の旅に戻った。その後よき人と結婚し二人の子供をもうけても冒険家として各地を旅し、大陸横断や数々の山を制覇し、冒険家として世界的な有名人となったのだ。しかし丁度孫が生まれ順風満帆な生活であったときに転機が訪れた。
末期がんを宣告されたのだ。
もう転移が進み手の施しようが無い状態で長くても4ヶ月の命だと言われた。家族や親交のある人々は当然悲しんだ。しかし彼はその悲しみをこう言って吹き飛ばしてしまう。
「大丈夫!」
サムズアップと共に言うその言葉はまさに魔法の言葉だった。
彼は一切の延命治療を受けず、今ある分の寿命を使い切ると決めた。そこからの彼はいろいろな所に出かけた。家族と共にフィンランドへオーロラを見に行ったり、事件のときから親友である一条薫、椿秀一とインドネシアへの旅行、沢渡桜子家族と五代家族との温泉旅行。先生、おやっさんの墓参り。そして長野にある九朗ヶ岳の遺跡。そのどれもが彼の決して忘れることの出来ない思い出として刻まれた。そして彼は今その寿命を終えようとしていた。
「ああ…そろそろお迎えが来たみたいだ…」
「五代…」
「五代君…」
「お兄ちゃん…」
病室には彼の容態の急変を聞きつけた家族や友人たちが詰めかけ、個人の病室は満員となっていた。
「なぁみんな…」
「どうした五代?」
「俺さ…今まで生きてて色々あったけど…やっぱりこの世界に生まれて本当に良かったと思うよ…」
その瞬間何人かが泣き出した。しかし笑みは絶やさない。五代が死ぬときは笑顔で逝くと言ったのだ。その言葉に一条は「あいつが笑顔で逝くのに俺たちが泣いてちゃいけないだろう」と言い、皆で笑顔で送ると決めたのだ。
「そうだなぁ…心残りは自分の孫の成長した姿が見られないってことかな…」
そういいながら娘が抱っこしている赤ん坊を優しく撫でる。娘も泣きそうになるのを我慢し、笑顔で父の手を撫でる。
「直子(妻の名前)こんな俺についてきてくれてありがとう。大介(息子)さっさと結婚しろよ。恵美(娘)幸せにな」
妻はうなづき泣きながら微笑む。大介は苦笑し、恵美は涙をぬぐった。
「一条さん、桜子さん、椿さん、今まで色々迷惑かけました」
みんな気にするなといい、微笑みながら来世で会おうと約束を交わす。
「みのり、俺より長生きしろよな」
妹のみのりは任せといてといい、先生とおやっさんによろしくねと告げる。
「じゃあみんな今まで…お世話になりました」
皺のついた顔で輝くような笑顔とサムズアップをしながら、五代雄介はこの世を去った。
享年64歳であった。
一方その頃リベール王国地方都市ロレントの外れにある民家にて。
「あら大きい流れ星…」
「うむ、何かの凶兆でなければいいが…」
赤ん坊を抱えた夫婦が何かを感じ取ったかのように空を見上げていた。
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仮面ライダークウガのDVDを全て見たらムクムクと妄想が止まらなくなってしまった…。
初心者の駄文ですがそれでもよければどうぞ。