No.579224

魔法先生ネギま ~疾風物語~ 第二十二話

遅れてしまい申し訳ありません。
第二十二話です。お楽しみいただければ幸いです

2013-05-23 01:39:14 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:6613   閲覧ユーザー数:6093

暗い…ここは何処なんだ…?

まるで光の届かない深海に放り出されたのかと錯覚する

しかし呼吸は普通に出来る。少なくとも海ではないらしい

警戒しつつ周囲に目を向ける

が、当たり前のように目に映るものは何も無い

 

 

とりあえず散策をして脱出を計ろうと思い、足を動かす

しかしその足は空を蹴り、歩くことが出来ない

それどころか歩こうとするほど、何かに足をとられ動かなくなっていく

 

ならば、と両手の指に嵌められた指輪に魔力を集中する

光が無いのなら、生み出せばいい

 

「ラファール・ノワール・アヴニール『火よ灯れ(アールデスカット)』」

 

両手の上にランタンほどの大きさの炎が灯り、周囲を照らし出す

その瞬間―――

 

「熱ッ!?」

 

―――炎が一気に業火と化し、橙色の暖かい炎は、漆黒の暗く冷たい業火に変化した

その漆黒の炎は空間をまるでカーテンを焼き払うかのように燃え広がる

 

目の前の空間のカーテンが炎に食い尽くされ、見えた光景は―――

 

 

 

うわぁあぁあ!俺の腕がぁぁぁ!!   家には息子がいるの!誰か助けて!!  お母さぁん!熱いよぉ!   早く逃げるぞ!!あの子はもう手遅れだ!!

 

何なんだよ、この暗い火は!!   吸血鬼の仕業か!?   だから早く殺しちまえって俺ぁ言ったんだ!!

 

神父さん!早く吸血鬼を殺せ!!   駄目だ、神父様も両足が焼け焦げてる!   だったら俺たちで!!   炎がこっちに来た!うわぁぁぁ!!

 

 

 

―――地獄。その一言に尽きた

先ほどの漆黒の炎が街を喰らい尽くし、人を焼き払い、蹂躙していた

 

「うっ!」

 

込み上げる嘔吐感を口に手を当て無理やり押し込める

 

 

あいつだ!あの黒いマントの奴だ!!

 

 

住民の一人が不意に声をあげ、一点を指差す

その指がさしているのは他でもない、僕

 

「ち、違う。僕じゃない。ぼくじゃ、ない」

 

必死に否定の声を喉から絞り出すが、出てくる声は怯えた掠れ声

罪悪感で押し潰され喉は渇き、目の焦点が合わない

 

ただただ否定を繰り返す僕に向かい、走ってくる屈強な男達

腰が抜けて立ち上がる事さえままならない

彼らが目前まで迫り、思わず両手で頭を庇い地面に伏せる

 

伏せていた時間は数秒だったと思うが、僕自身には何分にも、何時間にも感じられた

だがやがて来るはずの痛みと衝撃がやって来ないことを不審に思い顔を上げる

 

 

男達は僕を通過し背後へと通り抜けていた

ここで初めて僕自身がこの人達に触れることは出来ず、その逆もまた然りであるという事に思い至る

彼らが向かっていたのは、今此処で伏せていた僕ではなかった

しかし今住民たちが、猛牛のごとき勢いで向かっている人影はどう見ても―――

 

「僕…?」

 

―――先程の炎と同じ漆黒のマントを纏い、眼に勾玉らしき文様が浮かび上がっている、僕だった

 

 

 

男達は勇敢にも、映像の中の黒いマントの『僕』に立ち向かおうとする

しかし『僕』が手で何かよく分からない、印のような物を高速で組んだかと思えば、彼の口から巨大な炎の玉が発射される

街を守ろうとした勇敢な男達は、哀れにも一瞬で炭と化し絶命した

 

『僕』は炭化した男達を一瞥すると、教会前の既に焼け落ちた十字架へ向かう

少し歩くと足元で何かが呻き声を上げ、『僕』は少し話したかと思えばその何かに刃物を突き立て、命を奪った

よく見てみるとその何かはカソックを身に付けていた為、恐らくは教会の神父だろう

 

『僕』は十字架に掛けられていた少女を観察していた

少女は既に肌が焼け爛れ、顔も判別できず最早助かるとは思えない

しかし『僕』は処置をしようとしたのか、膝を付き彼女に手を翳そうとする

 

 

 

 

その時だった

少女の体が発光したかと思うと火傷を負っていた皮膚が剥がれ落ち、その下から真新しい皮膚が覗く

焼けて無くなっていた髪の毛も高速で伸び、金色の糸は膝裏までに達した

やがて傷が完全に消えた少女が眼をあけ、映像の『僕』が自身の名を告げる

やはりと言うべきか口から出た名前は『なみかぜはやて』

 

 

そしてそれに応えるように少女も名前を告げる

 

 

『エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル』

 

 

その名前を聞いて思い出す

セラスさんが連れてきた、魔法の師匠が彼女だったということ

そして彼女を見た途端、記憶の奔流が自身の脳を焼き尽くしたこと

 

 

 

もしやこの映像はエヴァンジェリン、彼女が見せているのではないか?

そう思いたったところで不意に背後に気配を感じる

背後に立っていたのは漆黒の剣士、映像の『僕』だった

剣を構えていたので少し焦ったが、この映像の登場人物は自分に干渉できないことを思い出し、胸を撫で下ろす

 

「よう、()

 

だが『僕』が不意に話しかけてきた

何故だ?ここの人物は僕に話しかけるどころか、見えていないのではないのか?

混乱している僕だが、それを気にも留めずに『僕』は話を続ける

 

「聞いてるのかな?まあ良いや。この光景は俺たちの記憶だ。あくまでも一部分だけどね」

 

やはりこの映像は僕の記憶だったらしい

ならばあの街の人々を殺したのは間違いなく僕だ

再び込み上げる嘔吐感。しかしそれを飲み込み、『僕』に質問をする

 

『なぜ今更、しかも一部分だけ記憶が戻ったんだ?』と

 

それに対して『僕』は不満気な顔で答える

 

「それは俺にもわからない。ただお前がキティと会ったことは少なからず関係していると思う」

 

現に見た記憶はキティと出会った部分だろ?と『僕』は言う

確かにそうだ。彼女と出会う前の記憶と他の記憶はほぼ戻っていない

ヴィジョンに出てきたところを、もやがかかった状態でおぼろげに思い出せる状態だ

 

「お前は彼女達を忘れていて申し訳ないと思わないのか?悲しいと思わないのか?」

 

『僕』が怒りと悲しみが混じった複雑な表情で訴えてくる

彼女『達』?

複数形を使ったことを疑問に思いつつ、その問いに答える

 

「…申し訳ないに決まっているし、悲しいさ。悔しいさ!僕のせいで迷惑を掛けるなんて耐えられないさ!だけどどうすればいいのか分からないんだ!!どうすれば記憶が戻るんだよ!!」

 

行き場の無い怒りを爆発させる

現実で表に出さないようにしていた焦りが首をもたげる

自分が何者かも分からない状況は、かなりの負担を心身に強いていた

それがこの空間で自分の過去をほんの少し見せられ、しかも街の人たちを虐殺していたという事で一気に表出した

 

「ならば力を付けろ。キティと修行をして、ジャック・ラカンと戦っても死なない力を。そうすれば自ずと道は開ける」

 

そう『僕』が言葉を切った途端僕の足元に小さく、そして何処までも続くような深い穴が現れた

突然の出来事で反応が出来ずに、そのまま吸い込まれるようにして下に落ちていく

 

「さて、お前は全てを思い出して…みんなを救えるのかな?」

 

穴を覗き込みながら言った『僕』の言葉が不思議と頭に沁み込んで行った

遅れてしまい申しわけありませんでした

高校の中間試験が始まり、パソコンをいじる時間がありませんでした

次回ももしかしたら遅れるかもしれませんが、必ず更新は致します

 

さて次回の投稿をお待ちください


 
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