No.575756

ゼロの使い魔 ~魔法世界を駆ける疾風~ 第二十六話

第二十六話です。お楽しみいただければ幸いです

2013-05-12 23:25:27 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:8964   閲覧ユーザー数:8380

魔法学院の門を王女一行の馬車がくぐると同時に、整列した生徒たちと衛士はそれぞれ杖と剣を掲げる

本塔の玄関にて王女の一行を迎えるのは学院長だ

王女は見目麗しい美少女だと聞くが、流石に学院長も公衆の面前―と言うか、王族にセクハラはしないだろうと思う

 

一抹の不安を振り切り、再び馬車に目を向ける

既に馬車の扉の前には所謂レッドカーペットが敷き詰められている

呼び出しの衛兵が緊張した声と面持ちで、王女の登場を告げる

 

「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおなーーーーりーーーーーーーー!!」

 

 

高められた期待感とは裏腹にガチャッと開かれた扉から姿を見せたのは、やせ細った高齢の男性

恐らくあれが枢機卿―マザリーニだろう

生徒達は一斉に鼻を鳴らす。露骨に肩を竦める者も多々見える

しかしマザリーニは意に介した風でもなく馬車の横に立ち、続いて降りてくる王女の手をとった

 

 

 

 

 

生徒から歓声が上がり、学院内が一気に沸く

王女はにっこりと薔薇が咲くような微笑みを浮かべながら、優雅に手を振る

 

「あれがトリステインの王女?ふん、あたしの方が美人じゃないの」

 

キュルケはつまらないといった顔を隠しもせずに呟く

 

「ねーぇ。ダーリンはどっちが綺麗だと思う?」

 

キュルケがルイズの後ろに控えている俺に話を振る

 

「そうだね。俺はキュルケの方が好きだよ」

「好き!?な、何故そう思うの?」

 

褐色の肌をほのかに赤らめながら彼女は続けて尋ねる

 

「俺は姫様のように可憐で清楚な女性より、キュルケのようにフレンドリーで活発な女性が好きだからかな。綺麗かどうか、なら甲乙付けがたいけど、俺個人としてはキュルケの方が好きだよ」

 

キュルケの顔が茹でダコのように真っ赤に染まる

なるほど。キュルケは自分からグイグイ行く割りに、押されるのは苦手なのか

目の前でショート寸前の少女の思わぬ一面を発見して、思わず顔がほころぶ

 

「は~や~て~?浮気はだめだよ!はやてには姉さん達とわたしがいるんだからね?」

 

ふと横から可愛らしい叱責が聞こえてくる

 

「わかってるよテファ。これ以上嫁さんを貰ったら、義父上と義母上に殺されかねないしね…」

 

ブルッと体を震わせながらテファの流れるような金髪を撫ぜる

 

「♪」

 

頭を撫でられてテファはご満悦のようだ

 

「ルイズさっきから黙ってるけど、どうしたの?…ルイズ?」

 

テファが先ほどからまったく喋らないルイズに尋ねる

見るとルイズは複雑そうな顔をして、姫様の馬車―いや魔法衛士隊の一人を見つめている

 

 

ルイズの視線の先には見事な羽帽子をかぶり、黒いマントを羽織った凛々しい青年貴族の姿があった

鷲の頭部と獅子の胴体を併せ持った幻獣―グリフォンに跨っている

あれがワルド子爵だろう

こうして傍から見ていても隙が無い

衛士隊の隊長という、年齢に不相応と言える高い地位も頷ける

しかし、原作で彼はトリステインを―ルイズを裏切った

 

 

この世界が原作とまったく同じである、と言うつもりは無い

事実、原作でレコン・キスタ(貴族派)に与していたマチルダはこちら側についている

だが警戒しておくに越したことは無い

 

 

そんな事を考えてワルド子爵を睨みつける

自らの横で、青髪の少女がその様を見ていることを知らずに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、俺はエレンとカトレア、マチルダとテファと一緒にルイズの部屋に集まっていた

俺は使い魔なのでともかく、彼女らが集まった理由は一つ

ルイズが昼間からずーっと呆けているからだ

 

「ねぇ、あなた?ちびルイズは一体どうしたのよ。さっきからぼーっとして」

「さあ?今日は姫様が来たから、関係してるのはそれだと思うけど…」

「でもあんたが見ていた時は貴族のダンナを見つめてたんだろう?まさかの男絡みかい?」

「ルイズに限ってそれは無いんじゃないのかなー?」

「ああ、確かルイズは姫殿下の遊び相手だったから…」

 

各々が勝手な予想をするが、ルイズは気付いた素振りを見せずに溜息を吐く

 

 

ルイズの溜息回数が二桁に入る頃、突然ドアがノックされた

 

「誰かしら?こんな時間に」

 

とエレンが立ち上がり扉を開けようとする

 

「待ってエレン。俺が視る」

「…そうね。あなたの言っていた、『彼』も来ているようだし」

 

万が一も無いが、ワルドである可能性も捨てきれない

そう考えて白眼で透視して、正体を確かめる

 

しかし白眼を発動する前に、規則正しいノックが耳を叩く

初めに間隔を長く二回、それから短く三回

ルイズがはっとした顔になり、俺を押しのけて扉を開ける

 

そこに立っていたのは、真っ黒な頭巾をすっぽりと被り顔を隠した少女だった

 

「……あなたは…?」

 

ルイズが驚いた声を上げる中、俺とマチルダは身構えていた

こんな夜更けに尋ねてくるなんて怪しい事この上ない

素早く取り出せるよう懐のクナイを握り締める

頭巾を被った少女は静かにして、と言わんばかりに口元に指を立てる

そして頭巾と同じ漆黒のマントの袖から杖を抜き―――

 

「杖を収めてください。貴方が誰か分からない以上、使い魔として杖を抜くなど見過ごせません」

 

―――杖を持つ腕を押さえ、首にクナイを当てる

マチルダも既に臨戦態勢で錬金のルーンも唱え終えている

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいな!わたくし決して怪しい者ではございません!!」

 

少女は慌てて杖を離し、床に落とす

その杖をマチルダが拾って懐にしまう

 

「不審者は決まってそう言うんですよ。さてマチルダ。彼女を魔法衛士隊に突き出してくるから、付いて来てくれないかな」

「ああ、勿論さね。この中ではあたしが一番戦闘経験も豊富だしね」

 

勿論俺は演技だが、マチルダは本気だ

だからこそ俺の演技に真実味が出る

 

「ちょっ、ああもう分かりましたわ!これで良いのでしょう!?」

 

少女は頭巾を取り、その顔を晒す

 

「姫殿下!?」

 

ラ・ヴァリエール家の三姉妹が慌てて膝を付く

そこから出てきたのは昼間に生徒達に持て囃されていたアンリエッタ王女の顔だった

 

「お、お久しぶりね。ルイズ・フランソワーズ」

 

アンリエッタは涼しげな、しかしどこか焦った様な声色でそう言った

ワルドとアンリエッタが学院に襲来致しました

ようやっとアルビオンのプロローグが見えて参りましたよ

筆が遅くて申し訳ないです…

 

 

ところで皆さん、何か作業用BGMにいい歌とかは無いですか?

小説を書いているときは何も聴いていないので、筆が早くなるかなーと

 

 

 

では次回の投稿をお楽しみに


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
9
4

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択