クリスマス…。
元々はイエス・キリストの生誕を祝う日であるが、今の世間一般では恋人同士がイチャイチャしてラブラブな時間を過ごすと認識されている日である。
まあ彼女なんていない俺にとっては無縁で何の関係も無い事だ。
ただ、休日…小学生では冬休み真っ只中の俺は早朝5時半という時間にも関わらず現在…
「こっちの報告書、出来ました」
「ありがとう。次はコッチのレポートの誤字、脱字が無いか確認してくれない?」
「了解です」
自然保護隊で相変わらずの調査業務を行い、更にレポート、報告書の作成や確認作業をも行っている。
まさかの早朝出勤だ。忙しい忙しい。
「にしても長谷川一士の情報処理能力は『凄い』の一言に尽きるな」
「そうですか?」
「ここまで調査作業が捗るなんて以前は考えられなかったしな」
「密猟者も難なく捕まえるし、高ランクの魔導師がついていても赤子の手を捻る様に簡単に無力化するし」
「そうそう、凶暴な生物が来ても怖くないし」
「回復や補助魔法も使えるし。お前が1人いるだけでコッチは大助かりだよ」
何か凄く持ち上げられてる様な気もするが皆さんの言ってる事に嘘偽りが無いからなぁ。
「それで今日は昼前からこの辺の未調査区域に足を運ぼうと思うんだけど長谷川一士、付き合ってくれるか?」
「…俺、この後もまだ書類作業があるんですけど?」
「じゃあ、俺が代わってやるよ」
「そうですか?じゃあお願いします」
1人の局員さんが交代してくれるらしいので俺は現地調査の担当班になった。
「という事で早めに出発したいから今日の昼食はいつもより早めに食べるぞ」
「「「「「はーい」」」」」
俺を含め、今日の担当である残りの局員さん達も返事して書類の整理やレポート、報告書の作成…俺も誤字、脱字の確認作業に意識を戻す。
午前中はひたすら休む間もなく仕事に勤しんでいたので俺は時間が経つのがいつもより早く感じていた………。
「じゃあ、早速調査に行こうよ」
「……その前に何故お前がここにいる?アリシア]
昼食後、すぐに調査に行こうと俺と局員さん達が準備していた所で突然やってきた本人に俺は尋ねる。
「ん~?だって地球にいてもヒマなんだもん」
「執務官の仕事は?」
「今日は無いよ。ってか、勇紀だけだよ?今日仕事してるの」
「じゃあ学校の宿題は?」
「年が明けてから片付けるよ」
「…俺は今から仕事だからお前の相手は出来ないぞ?」
「うん、知ってる。私、勇紀の仕事見学しようと思ってココに来た訳だし」
…どうしよう?
今日は未調査区域へ行く訳だからなぁ。
アリシアは強いけど、この部隊の所属じゃないし、もし何らかの戦闘や事故なんかに巻き込まれてケガでもしようものなら
「長谷川一士、彼女は?」
局員の一人がアリシアの方を見てから俺に尋ねる。
「俺と同じ地球出身で本局魔導師のアリシアっていう子です」
「アリシア・テスタロッサです。本局所属の執務官です」
「元気があって礼儀正しいね。もしかして長谷川一士の彼女?」
「いえ、違いm「そうなんです。付き合い始めて間もないですけど////」…ってオイ」
何言ってくれてやがんだこの馬鹿は?
「ほほう…長谷川一士、やるねぇ。既に彼女持ちとは」
「しかも執務官。かなりのエリートじゃないか」
「可愛い子じゃないか。大事にしなきゃ駄目だぞ?」
「だからちg「ありがとうございます!私、勇紀と絶対幸せになってみせます!!////」…だからお前少し黙れ!」
「「「「「「「「「「おお~!言うねぇ~~~」」」」」」」」」」
あ、頭が痛ぇ…。
隊の皆さんすっかりアリシアの言う事信じてるし、俺の方見てニヤニヤしてるし。
「長谷川一士、照れなくてもいいじゃねえか」
「ていうかまだ子供なのに彼女持ちとか…三十路で独身の俺って…」orz
「クソ!!俺も恋人がほしい!!イチャイチャしたい!!」
……どないしようかこの空気?
「…もういいかお前等?とっとと出発するぞ?」
「えー!?もう少し色々聞きたいッスよー」
「そうッスよ。こんな子供の内から彼女を作れるなんて何か秘訣がある筈ッス!!」
だからアリシアは彼女ちゃうし。
「そういうのは帰って来てからでいいだろ?今は仕事に意識を切り替えろ!!」
「「うい~ッス」」
むしろもう追及しなくていいです。
俺達は準備を念入りに行い、未調査区域へ行く事にした。
………アリシアという今の俺にとって頭痛の種を連れて………。
「ほえー…」
「はー…」
「こりゃあまた…」
「でっかい湖ですねぇ」
俺、アリシア、局員の人達が目の前の湖を見て口を開く。
俺達が未調査区域に足を踏み入れ、2時間程調査してウロウロしていたら、湖のある場所に辿り着いていた。
デカいなこの湖。
水は底が見える程澄んでおり、綺麗なものだ。
夏場にここで水遊びしたら気持ち良さそうだなぁ。
「むむむ。水が超気持ち良さそう」
湖を見てウズウズしてる様子のアリシア。
「まさかとは思うけど飛び込むなよ?まだ水の成分とかも調査してないんだから」
「わ、分かってるよ…」
…俺が注意しなけりゃ飛び込んでたなコイツ。
季節は冬なんだから水着なんかで湖に入っても風邪を引くのが目に見えている。
それに水の成分をちゃんと調べておかないとこの水が地球やミッドと同じで人間に無害だとは限らない。
「長谷川一士、俺達はこの湖の水質を調べるから周囲の警戒をお願い出来るか?」
「了解です。ついでに散歩がてら周りの地形も調べてきます」
もし局員の人達に何かあった時のためにすぐ転移で戻って来れる様、マーカーも設置しておく。
「じゃあ行こう行こう」
「…ついて来るのか?」
「うん」
即答のアリシア。
「勝手にウロウロして迷子になるなよ?」
「分かってるよ(むしろ二人きりになれるのにどっか行く訳無いじゃん♪)//」
俺の隣に来て腕を絡めてくるアリシア。
「「クソー!!長谷川一士はデートかよ!!」」
「違いますからね!?」
俺ちゃんと『地形調べてくる』って言ったじゃん!
にも関わらず後ろでギャーギャー言う隊の皆さん。
…これ以上ここにいても時間の無駄だな。
俺はアリシアを連れて湖を離れ、森の中に入る。
木々の隙間からは太陽の光が差し込んでいるのでそれ程暗くは無い。
「うーん…森の中も空気が澄んでいて良い環境だねー」
「そうだな」
奥まで行き過ぎて迷子にならない範囲でなら森林浴にはもってこいの場所だな。
俺は周囲の地形をダイダロスに記録して貰いながら少しずつ森の奥へと足を進める。
「ねーねー勇紀ー」
「ん?」
「コッチに道っぽいのがあるよ」
アリシアが指差したのは一本の獣道。
「行っちゃう?」
「そうだなぁ…」
少しばかり考える。
隣のアリシアは瞳をキラキラ輝かせている。
「(行きたいんだなコイツ)」
アリシアの表情から考えを読み取って軽く溜め息を吐く。
けど地形を把握するために行く価値はあるし…
「…行っても良いけど危険だと判断したらすぐに引き返すからな?」
今の所危険な生物とかには出会ってないけど油断は禁物。
「ダイジョブダイジョブ。私だって戦えるんだし♪」
「それだけは却下だ。お前を戦わせると後処理が面倒なんだ」
管理局員とはいえ、援軍として来て貰ってる訳じゃ無いし、本局所属というのもちょいマズい。
地上本部の偉いさん達は本局アンチ気味な方々ばかりだし。
「じゃあ言わなきゃいいじゃん」
「報告書に嘘書く訳にもいかんだろ」
「真面目だねえ勇紀は。ちょっとぐらい嘘吐いてもバレないって」
「執務官がそんな発言していいのか?」
少なくとも俺以上に法を守らないといけない立場なのに。
「今日は局員として来た訳じゃないも~ん♪」
『なら大人しくしといてくれ』と俺は切に願いながら獣道のある方へ進む。
奥へ行く度に少しずつ陽の光が当たらなくなっていき、周囲が暗くなってくる。
「うーん…結構深いな」
「もう先の方が暗闇で見えないね」
「まあ周囲に生物はいないみたいだし、ここでいきなり襲われる事は無さそうだ」
[???何で周囲にいないって分かるの?」
「『
「
『
あらゆる人々の動きを温熱感知によって探知する能力。習熟する事によって個人の特定も可能。効果範囲はそこそこ広く、更に任意で効果範囲を広げる事も可能だが、広げれば広げる程能力の精度は下降する。ちなみに俺は熱源があるなら人間だけじゃなく動物や昆虫、機械の動き、位置も探る事が出来る。
「…てな訳だ」
「ほえー…便利だねー」
この能力があれば魔力探知すら避けられるガジェットⅣ型のステルス機能が発動していても関係無く見付ける事が出来る。
機械は動力が稼働している以上、熱源を常に発生させているからな。
「でも私としては見えないと不安だよ」
「…しょうがない。
アリシアと腕を組んでいない方の手の平を上に向け、テニスボールぐらいの大きさにした火の玉を作る。それを自分達の1メートル程前の位置で浮かせたまま松明の代用として使用する。
「これで奥の方に入っても周囲は多少見えるだろ」
「おお!確かに」
進行方向の明かりは確保出来た。
「というよりも辺りの木を燃やした方がより明るくなって良いと思うよ?」
「お前怖い事言うな!?」
「冗談だよ♪」
いや、冗談じゃなかったらこの場で俺は逮捕するぞ。
まさか『木に放火して火事を起こせ』と犯罪行為を勧めてくるとは…。
こんな奴が本当に執務官で大丈夫か管理局?
フェイト……いや、リニスさんに報告して説教して貰った方がいいかもな。
「そんな事よりも早く行こうよ」
…ハア~。
精神的に疲れ始めてる俺とは裏腹にアリシアのテンションは下がる事無くむしろ上がっている様だった………。
獣道を歩いているとやがて光が進行方向から差し込んでくるのが見えた。
どうやら陽の光が当たる場所がある様だ。
「出口だね」
「ああ、獣道に進路を変えてから20分ってトコかな」
アリシアと会話をしながら出口に向かって歩く。
もう松明代わりはいらないな。
俺は
そして森を抜け、出た先は
「「おお~~~~~~」」
見渡す限り一面の花畑だった。
その光景に俺とアリシアは同時に感嘆の声を漏らす。
「凄い!!綺麗!!」
「こんな場所があるからこそこの世界での開発を禁じられてるんだよなー」
この世界は自然が豊富だからなぁ。
開発するなんて以ての外だ。
花畑に駆け出そうとするアリシア。それに俺は『待った』を掛ける。
「むぅ…何で止めるの?」
「まずは確認。ダイダロス?」
「………大丈夫だよ。ここに咲いている花からは有害な花粉とかは出ていないから」
「ありがと。つー事でアリシア、好きにはしゃいでいいぞ」
「わーい♪」
許可を出した途端に花畑へ駆け出すアリシア。
「(やれやれ…)」
その後をゆっくり追い掛ける。
花畑を駆け回るアリシアは何つーか……子供だね。
やっぱフェイトの『姉』っつーより『妹』の方がしっくりくるわ。
「よし。この辺りの花は持ち帰って…」
「止めんか!!」
スパアンッ!!
「痛っ!?何するの!?」
「それはコッチの台詞だ!!何勝手に花を引き千切ろうとしてんだよ!!」
「お母さん達のプレゼントにしようかと思って」
「うん。動機に関しては納得してやらんでもない。けど『この世界の自然や生物には極力手を出さない事』って管理局自体が決めてるんだ。だからお前がその花を勝手に持っていこうとしてたら俺はお前を逮捕せざるを得なくなるんだよ」
「えーーー!?別に少しぐらい良いじゃん!!」
「駄目です」
「ぶー…」
頬を膨らませてブーたれるアリシアを無視して俺は花畑に咲いている花の成分を調べたり、写真を撮ったりしてレポート・報告書に書く資料としてデータを保存する。
「勇紀はマジメだねぇ」
「お前、元々は『俺が仕事してるのを見学するために来た』って言ってたよな?」
「そ、そうだったかな?」
…コイツ、すっかり目的忘れてるじゃねえか。
「そう言ったぞ。だからこうやって仕事してる姿を見せてる訳だから」
「そんなの後にして一緒に遊ぼ?」
「お前、俺にケンカ売ってる?」
少しこめかみをヒクヒクさせながらアリシアに尋ねる。
「や、やだなー。冗談だよあはははは…(今下手な事言ったら間違い無く殺られるよ)」
「だったら大人しく見ててくれ。それが無理なら一人で遊んでてくれ」
「ふぇーい…」
さて…続き続き、っと。
俺は仕事を再開する。そんな俺から離れ、再び花畑を駆け回るアリシア。
とりあえずここにある花はほとんどが別の場所でも咲いているので実際に調べるのはまだ発見されていない数種類だけだ。
先程ダイダロスが調べてくれた通り、人間にとって有害な花粉、成分は無いので安心して調べる事が出来る。
「……ふむふむ、この花は二酸化炭素の吸収率が半端無いな」
この花…地球で育てたら二酸化炭素の増量による地球温暖化の解決に大いに貢献出来るな。
しかしそれは出来ないのが残念だ。
「チョウチョ~♪チョウチョ~♪」
アリシアの奴はチョウチョを追い掛けるのに夢中になってるし。
…あれってモンシロチョウだよな?何でこの世界にいんの?
…一応、モンシロチョウがこの世界にいるのもレポートに書いた方がいいのかな?
「トンボー♪トンボー♪」
今度はトンボかよ。
しかも『アキアカネ』……一般的に『赤とんぼ』と呼ばれてるトンボだな。
これもレポートに書いておく…か?
「カイロスー♪カイロスー♪」
カイロスか。
虫タイプでくわがたポケモンだな。今の俺とほぼ同じぐらいの身長だ。
これもレポートに……ん?カイロス?
「待てー♪待てー♪」
「いやいやいや!!何でカイロスがいるんだよ!!?」
実在してたのか!?ポケモンはゲーム内の存在なんかじゃなく実在してたのか!!?
「よーし…こうなったら攻撃して弱らせたところをゲットしてやる」
「止めんかあああぁぁぁぁぁっっっっ!!!」
スパアンッ!!!
俺は即座にソニックムーブを使い、アリシアの側まで寄って頭を叩いた。
「痛っ!?また叩いた!!?」
「さっきも言っただろうが!!ここは自然と生物に手を出すのは禁止なんだよ!!」
「でもでも!!カイロスだよ!!?欲しいんだよ!!!」
気持ちは分かる。俺だってポケモンはハマったゲームの一つだ。
目の前にそのポケモンが実在するんだから捕まえたい気持ちは痛いほど分かるんだよ。
けどそれ以前に俺達は管理局員なんだから生物は守らないといけないんだ。攻撃するなんて以ての外だ。ていうかアリシアよ…
「そもそもモンスターボール無いのにどうやってゲットすんだよ?」
「そうだった!!モンスターボールが無いとやっつけて経験値しか稼げない!!」
うん。やっつけるなよ?逮捕するからな?
俺はアリシアがカイロスを襲わない様にいつでもバインドを使う準備をする。
そんな俺を警戒するアリシア。
お互い、無言で相手の動きを探り合っている内に
「あれ?……ああ~~~~!!?カイロスが~~~!!?」
いつの間にかカイロスはいなくなっていた。
良かった。何とかカイロスを無事にこの場から逃がす事が出来た様だ。
「うう~~~……カイロスぅ~~……」
ションボリするアリシア。
……リボンが垂れている様に見えるのは気のせいだろうか?
……気のせいだと思いたい。
「ハア~…家帰ってポケモンしたらいいじゃねえか」
ならカイロスなんて捕まえ放題な訳だし。
「むぅ、私はゲームより現実のカイロスが欲しいの!」
さいでっか。
「ていうよりカイロスが存在してる事には何の疑問も感じてないんだな」
「だって考えても答えが出る訳じゃ無いし」
「てか考えるのが面倒なだけだろ?」
「うん」
即答しやがった。
「…まあ、お前からちゃんとした答えが聞けるなんてこれっぽっちも期待してなかったけど」
「酷っ!?その言葉は流石のアリシアさんも傷付くよ!?」
はいはい。
「とりあえず必要なデータは取り終えたからレポートの作成には問題無いな」
そういや、向こうの調査班はどうなっているかな?
俺は通信を繋げて向こうの調査班に連絡を取る。
『ん?長谷川一士、どうかしたか?』
「いえ、多少はこの辺りの地形とまだ未発見の植物を見付けたので一通りデータを取り終えたんですが、これからどうしようかと。そっちの手伝いに行った方がいいですか?」
『いや、コッチも現在結果待ちで特にする事は無いな。結果が出るまで1時間程掛かるから1時間後にコッチに合流してくれないか?』
「了解です。それでは1時間後に」
通信を終え、一息吐く。
「じゃあ勇紀、あそこの草原でお昼寝しよう」
アリシアが指差したのはこの花畑で唯一花が咲いていない草原。
「いきなり何言ってんだお前は?」
「だって眠たいんだもん」
「……………………」
つまりシートでも出せって事か?
「うん!このまま寝転がったら服が汚れるから」
「……ハア~」
溜め息を吐きつつも草原まで移動し、シートを出して敷いてやると靴を脱いだアリシアが寝転んで大の字になる。
「あ~~♪お日様ポカポカ気持ち良い~~♪」
目を閉じてそよ風に当たりながらリラックスするアリシアの隣に俺も腰を下ろす。
「ん~?勇紀は寝ないの?」
「気持ち良いのは同感だけど寝たら1時間後に起きれるか分からんからな」
アリシアみたいに横になると眠気を引っ張り出され、寝てしまうだろうからな。
冬とはいえ、陽気に当てられてる今はあまり寒く無く、丁度心地良いぐらいだ。
「大丈夫だよ。1時間後に起こして貰えばいいんだから」
「誰に?」
「ん」
アリシアが指差したのは俺のデバイスであるダイダロス。
確かにダイダロスに頼めば確実だけどどうしたもんか…
「ユウ君が寝たいなら別にいいよ?時間来たらちゃんと起こしてあげるし」
「……なら頼んでいいか?」
「任せて」
ダイダロスに時間がきたら起こして貰う様に頼んで俺も横になる。
「あ、こりゃ気持ち良いや」
寝転がるとすぐに目を閉じ、陽気の心地良さを堪能する。
あー…日光浴はいいもんだ……。
1時間後…。
ダイダロスに起こされ、転移魔法を使って隊の皆さんと合流した俺とアリシア。
「「デートは楽しかったか?」」
「合流早々の開口一番に言う言葉がそれですか?」
「凄く楽しかったです♪//」
お前は黙れ。
「で、どこまでいったんだ?」
「キスぐらいはしたのか?」
「だからですねぇ…」
「それはこれからです♪」
「は?お前何言って…」
そこから先は言葉に出来なかった。
隊の皆さんがいる前でアリシアは
目の前にはアリシアの顔……唇に感じる柔らかい感触……。
「…んっ……////////」
「…んうっ……////」
俺の両頬にアリシアの手が添えられる。
隊の皆さんもアリシアの突然の行動に目を見開いたまま固まっている。
誰も言葉を発さず、静寂が周囲を支配する中、しばらくしてアリシアがゆっくりと顔を離す。
「…ふう……ご馳走様です////////」
「ご、ご馳走様ってお、おま、お前な…////」
「「おいおいおいおいおい~~~~っっ!!!」」
アリシアに反論しようとした途端周りから声が上がった。
「くそっ!!やっぱり彼女なんじゃねえか!!見せ付けてくれやがって!!」
「リア充死ね!リア充死ね!俺にも女の子紹介して!!」
「…長谷川一士、仕事中だからそう言うのは控えてくれ」
「俺からした訳じゃないんですけど!?」
何で俺からキスした事になるんだろうか?
ギャーギャー騒ぐ隊の皆さんは俺の言う事を全く聞かず、妬む様な視線で見てくるし。
「ふう…やっぱこうやって外堀から埋めていけば勇紀も逃げ場が無くなるよね////」(ボソボソ)
…何だろう?聞こえなかったけどアリシアの呟きにそこはかとない不安を感じたんだが。
「「どうか女の子を紹介して下さい長谷川様!!」」
土下座して様付けで呼ぶ隊員さん。
この後、俺は地球に帰るまで『女の子紹介して』とひたすらせがまれるのだった………。
~~アリシア視点~~
「じゃあ翠屋に行こうか♪」
「…何しに?」
「皆が『クリスマスパーティーやる』って言ってたから今日は翠屋を貸切りにしてるんだよ」
私は勇紀と腕を組んだまま会話する。
ああ、良いねえ良いねえ。世間がクリスマスで浮き足立ってるせいか何となく私も恋人気分を味わえているよ。
時折すれ違う人達も若い男女のカップルが多い。
「(今はまだ恋人同士じゃないけどいつかは私もカップルの仲間入りしたいなぁ…)//」
勿論相手は言うまでもないんだけど。
「お、翠屋が見えてきたな」
「むぅ…」
もう少しゆっくり歩くか遠い場所に転移して貰えば良かった。ならもう少し腕を組んでいられるのに。
そのまま勇紀は翠屋の扉を開け、入り口から中に入って行く。
「すみません、今日は貸切りなんで……って勇紀君か。それにアリシアちゃんも」
「美由希さんどもッス」
「お邪魔しまーす」
出迎えてくれた美由希さんに挨拶していつもの席…皆がいる場所に行く。
参加メンバーはいつもの皆にルー、メガーヌさん、お母さん、リニス、アルフ、守護騎士の皆、リンディさん、エイミィ、クロノ、ユーノ、士郎さん、桃子さん、恭也さん、美由希さん、忍さん、亮太に椿姫といったフルメンバーが揃っていて結構な大人数だ。
それから、楽しそうに話していた皆だけどコッチ見た瞬間、メガーヌさん、ルー、桃子さん、忍さん、男性陣以外が睨んでくる。
ふふん♪羨ましいか♪
お母さんは複雑そうな表情浮かべてるなぁ。
「さて、皆も揃ったみたいだし、クリスマスパーティーを始めましょうか」
桃子さんが皆に聞こえる様に声を上げ
「「「「「「「「「「メリークリスマース♪」」」」」」」」」」
一斉に皆も声を上げてパーティーが始まる。
皆、各々が好きな食べ物を小皿に取って雑談しながら食べ始める。
私はお腹が空いていたので誰かと話すより食べる方を優先する。
勇紀は現在、シュテルと雑談中。
むむむ…浮気はいかんよ浮気は。
「さてさて、パーティーが始まってまだ少ししか経ってないけどプレゼント交換しちゃう?」
エイミィがそう言って皆に聞く。
反対意見は出ない。むしろ皆乗り気だ。もっとも誰のプレゼントを狙っているのかは皆の視線の先を見れば一目瞭然だけど。
当の本人はその視線に気圧されて冷や汗垂らしてるけど。
「ていうか勇紀は何用意したの?」
私は気になって聞いた。
「プレゼントか?…俺そもそも今日はパーティーする事自体知らなかったからなぁ。用意してないぞ」
…そうだった。勇紀は今日、朝から仕事に行ってたからパーティーする事自体誰も伝えてなかったんだよね。パーティーするって決まったのも今日だったし。
その言葉を聞いて私を含め、残念そうな表情になる皆。まあ、今回は仕方ないよね。
結局今年のパーティーは勇紀のプレゼントが無いままプレゼントの交換会が行われた。
それからは再び雑談組と食事組に別れる。
「ねえ勇紀。どうして姉さんと一緒にいたの?」
お?私の愛しい妹、フェイトが勇紀と会話してる。
「いや、アイツが勝手に俺の仕事場に来たんだよ」
「そうなの?」
「おかげで今日は精神的にかなり疲れた。仕事場では『彼女です』なんて自己紹介するし…」
ビキッ
空気に罅が入る様な音がした。
これって……マズい?
「隊員の皆の前でき、キスされたし…//」
ビキビキッ
ああ!!?一部の人達が手に持つこ、コップに罅が!?
私はそっと立ち上がる。
「おかげで保護隊の人達には恋人同士に認定されたしな」
ガシャーーン!!
ひいっ!!?皆がコップを握りつぶしてバラバラにしちゃった!!
けど手には怪我一つ負ってないよ。
私はゆっくりと入口へ向かう。
「姉さん、ドコイクノ?」
ポンッと私の肩に手を置かれた。
声の主は聞き違え様の無い私の妹だ。
「ちょ、ちょっと疲れたから家に帰って寝ようかな…なんて。あはははは…」
「そう…でももう少しだけ付き合ってくれませんか?」
シュテルも現れた!!?
「ここじゃなんだからアッチでO☆HA☆NA☆SHIしようね?アリシアちゃん?」
「今日何があったか聞きたいしな」
シャマルとリンスに逃げ道を塞がれ、絶体絶命だ。
「何か言い残す事はあるか?」
シグナムの問いに
「わが生涯に一片の悔いなし!!」
私は高らかに宣言する。
「そうですか。なら安心して逝けますね?」
リニスの無情な返事が返ってきた。
しまったああああぁぁぁぁぁっっっっ!!!!台詞を間違えたああああぁぁぁぁぁっっっっ!!!!
「ゴメン!今の無し!!悔いは残りまくっているのでまだ逝きたくないです!!」
「却下♪だよ」
お母さん!助けて!!
「ああ…アリシアが。でも、勇紀君との関係がそんな事になったのは羨ましいし、少し妬ましいし…何よりここから攻撃したらフェイトまで巻き込んじゃうし…どうしたらいいの?」
良いよ攻撃して!!メガーヌさんとルーに見られない様になら攻撃してくれて良いから!!
お母さん昔はフェイトに遠慮無い一撃を浴びせてたじゃん!!今だけは私が許すからこの修羅共を滅して下さいお願いします!!
けどお母さんは悩むだけで結局私は皆にO☆HA☆NA☆SHIされてしまった………。
~~アリシア視点終了~~
~~あとがき~~
今日、5月14日は自分がこの小説をにじファンで初めて投稿した日、『魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~』の投稿デビュー日だったりします。
つまり『祝・1周年』って感じです。
『何だかあっという間に1年経ったんだなぁ』と少し感慨深いモノがあったり…。
そもそもここまで飽きる事無く小説を書き続けた自分を褒めてやりたいです。
『これからも飽きる事無く書き続けていけたらいいなぁ…』と思ったカルピスウォーターでした。
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神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。