No.571177

超次元ゲイムネプテューヌ『女神と英雄のシンフォニー』チャプターⅡ第9話『加速する陰謀』

月影さん

ガードナー、それは女神と共にあり大陸を、そして女神を守る存在。人を捨て、その存在になることを選んだアゼル。友が遠くにある事、それを寂しく感じながらもその生き方を祝福し、そして自分はどうしたいのか己に問い掛ける中、ケイトはノワールからある事実を聞かされる。ネプテューヌ、彼女こそプラネテューヌの女神なのだ、と

2013-04-29 18:08:37 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:893   閲覧ユーザー数:886

(女神戦争……か)

 

 女神はゲイムギョウ界の平和を守る存在、だが今現在その4人の女神は真の女神の座をかけて争っている。

 

『先代の女神様から他の三人の女神は自分勝手に大陸を支配し、その所為で人々が苦しんでいる。それを何とかできるのは私だけ。全ての女神を倒して、もう一度下界と神界を統一しろって言われたのが全ての始まり。それを成し遂げた時、私は真の女神になれる、ってね』

 

 勿論、他の大陸の人々が苦しんでいるというのはノワールもウソだと理解している。なら、何故ノワールは戦っているのか?それを訪ねると――

 

『だって、他の女神にそれを言っても、あいつらは聞く耳を持ってくれないんだもの』

 

 それでなくてもその事実を知っているのは、アゼルから他の大陸の様子を聞いた自分だけ……結局、ノワールも途中から彼女達の説得を諦めた。それに何より――

 

『それに私達はいわば、女神のクオーターみたいなモノ……私一人じゃ、人々の為に世界はおろか自分の大陸一つ作りかえる事すら出来ない。だからこそ私は真の女神となって、このゲイムギョウ界を導いていきたい……それは私の望みでもあるの』

 

 ウソは承知の上、けれどそれでも真の女神になるべく、あえてそのウソに乗ってノワールは今も戦っている。

 

「どうかしたのケイト? 私の顔に何かついてる? あっ、ダメダメ! このジュースは私のだよ」

 

「いや、別に要らないって……」

 

 向かいに座ってジュースを飲んでいるネプテューヌを見つめていたらその視線に気付き彼女がこっちの方に目を向けて人の気も知らずにそんな事を言ってくる、そして相変わらずな様子に苦笑を浮かべていると――

 

「おっ! 先についてたか」

 

 ドアが開き、そこからアイエフ達が入ってきて、それぞれが席に座る。

 

「さて、そっちの方も報告したいことはあるだろうが、まずはこっちからな。良い報告と悪い報告が二つある。どっちから聞きたい? と言いてぇ所だが、あいにくこの二つは繋がってるんでな、良い報告から先にさせてもらうぜ。結論から言うと、博覧会が再会される事になった」

 

「何だって?」

 

「それって、本当なの!?」

 

「まぁ、そう焦りなさんなって。たぶんそろそろ……」

 

 そう言って、エミルがラジオに目をやったところで、何時ものラジオ番組にノイズが走る

 

『……番組の途中ですが、ここで協会からの公共情報をお知らせします。数日前に中止の取り出された総合技術博覧会ですが、主催、運営を教院から国政院に移し、予定通り開催される事が決定しました』

 

「なっ?」

 

「そっかぁー、博覧会、再開されるんだ! これでアヴニールをやっつける事も出来るし、万々歳だねっ!!」

 

 と、ネプテューヌは普通に喜んでいるが、俺からしてみれば少し複雑な心境だった。

 

「で、良い報告はこの事でしょ? 悪い報告ってのは?」

 

「それに関しても今、ラジオで話していたですの」

 

「主催及び運営が国政院だ。って、部分だろ?」

 

「ご名答、その通りだ」

 

「国政院が運営だと何かあるの? 博覧会は普通に行われるんでしょ?」

 

「ネプテューヌ、国政院はアヴニールと結託してるの忘れたか? そんな国政院が主催の博覧会なんだ。当然、八百長してくるのは目に見えいてる」

 

 水を一気飲みして、エミルは椅子の背もたれに肘をかけ、テーブルに足を乗せようとして……やめた

 

「それだけじゃないわ、依頼で助けたアヴニールの外回りが言ってた。アヴニールは今年の博覧会に向けて三年も前から準備してきたって……」

 

「実は今年のジャンルは武器なんだが、それだって分ったのは今年に入ってからだ。ジャンルが分んなきゃ大した準備が出来ない」

 

 そこで、シアンが大きめの包みを抱えて食堂に入ってきて、一行の会話に加わる

 

「そう、連中は博覧会のテーマの発表を遅らせる事で、他のライバル企業に妨害を掛けたって訳だ。アヴニールには他の企業よりとにかく凝った物を作ってもらわねぇと、八百長のしようがねぇからな」

 

 幾ら、国政院が元からアヴニールを優勝させる気だったとしても、現物を見せる以上、作った物が周りに劣っていては話にならないし、よしんば無理を通して優勝させても、そこから自分達の癒着が露呈する危険性がある。

 

「でも、ジャンルが分らないのはアヴニールさんも一緒の筈です、これじゃアヴニールさんも困るはずですよ?」

 

「そんな訳ないでしょ。国政院はテーマの発表を遅らせると同時に、アヴニールにはそれを前持って伝えてあるはずよ。こっそりとね」

 

「もしくはアヴニール自らジャンルを指定したって言うのも有り得るな……」

 

「どっちにしても今年の博覧会が公正に審査される事は無いと思うですの」

 

「そ、そんなの反則ですぅ! だいたい本当に、アヴニールさんがそこまで考えて動いてきたって思うですか?」

 

「そこなんだよな……今の段階でもアヴニールがこの大陸のトップ企業なのは間違いねぇし、その煽りで周りはガンガン倒産してやがる。このまま放置しててもいずれ、ラステイションの産業はアヴニールが独占出来るってのに」

 

 連中の反撃の芽を潰す為に、博覧会を中止した。そう考えれば突然の中止も納得が言った。けれど、何故わざわざ、いくら八百長するにしても連中に反撃の機会を用意するのか?不確定を嫌い、確実性を重視するサンジュの行動にしては引っかかる部分がある。

 

「技術博覧会を手始めに一気に大陸中の企業を抱き込む気かもしれねー。いいアピールにはなるだろうからな」

 

「そんなもんなの?」

 

「分んねーよ。アヴニールの目的なんて。だけどサンジュ……代表の目的なら分かる。大陸中の全てを、機械に置き換える事だ!」

 

「な、なにそれ……。えっと、ロボットだらけの世界を造りたいとかそゆコト? さては機械オタク!?」

 

「機械が好きなんじゃなくて、人間が嫌いなんだよ。信用できないって感じかな。そー、人間不信?」

 

「アヴニールが作るもんは全て機械が作っている。職人気質の高いラステイションのトップ企業が職人魂の欠片も無いってのはなんとも皮肉なもんだな……」

 

「アヴニールも多くの従業員を雇っちゃいるが、多くは商品を売りに回ったり資材を買いに走ったり。調達する為の肉体労働だったり……。機械のサポートだよな、つまり」

 

「あー……そうだったんですか。じゃあ、あの本社の中に、社員さん見たいなのは殆どいないですね」

 

「そういうこった。それよりもシアン、お前さんはどうするつもりだ?」

 

「どうする、ってのは?」

 

「確かに博覧会は開催される。けど、先も話したとおり勝ち目は限りなく薄い……と言っても、その包みを見る限り、答えは出てるっぽいな」

 

エミルがシアンの持つ包みに目を向け、口元を吊り上げると、シアンは包みをテーブルの上において、腕を組む

 

「このまま引き下がってどうにかなるものでもないし。ぶっちゃけ、投資した後だからな。出ないって選択肢はねぇ!! そこで、お前等に頼みがある」

 

 確かに、勝ち目は薄いかもしれない。けれど、先も話したとおりこちらがアヴニールよりも圧倒的に優れたものを作れば、相手も八百長のしようがなくなる。博覧会が中止された事に比べれば、大きなチャンスである事には違いないのだ。

 

「展示品が武器って事でお前等にイベントのコンパニオンを頼みたいんだ!」

 

「い、イベントコンパニオン!? やだやだ、絶対ヤダ!! なんで人の見世物になるようなコトしないといけないの!?」

 

「別に見世物ってほどじゃないさ。ただ、デモンストレーションみたいなのはやってもらいたいけどな。だから武器を使い慣れているお前等に頼みたいんだ。それに展示が終わったら、追加報酬として武器はそのままお前等にこれてやってもいい!!」

 

「ねーねー武器ってどんな武器? 強い? カッコイイ?? やろーよ、せっかくタダでもらえるんだよー! だいたい武器なんて。出費の一位二位を争う必要経費だよ!? それが浮いちゃうのはアイちゃんも嬉しいでしょー?」

 

「それは、そうだけど……でもやっぱりパス! めんどそうだしハズいし。みんなもイヤよね、そんな水商売みたいなの!」

 

 と、他のメンバーに話を振ってみたが全員が「えっ?」と言う表情になり――

 

「え? だってモンスターさんと戦っていくのに強い武器は必要だと思うですしシアンさんもお願いしてるです……」

 

 と、コンパ。

 

「別に良いと思うけどな。と言うか、報酬で武器がもらえるなら演武ぐらい幾らでもするぞ」

 

 更にケイトが。

 

「ガストも賛成ですの、タダより高いものは無いですの。アイエフ、そんな一文も特にならない羞恥心はすぐに捨てるですの」

 

 続けてガスト。

 

「そもそも、お前等、アヴニールを潰してラステイションを救うつもりなんだろ? だったら、コンパニオンぐらいでしり込みしてる場合じゃねぇだろ」

 

 そしてトドメにエミル。と、見事なアイエフの孤立無援状態が形成されていた。

 

「はいっ! 五対一でネプテューヌ達の勝ちーっ! 必然的にアイちゃんも一緒だよ! パーティだもんねっ!!」

 

「エミルさんまで……はぁ、分かった、分かったわよ。やればいいんでしょ、やれば」

 

 人がいいのが居ると苦労するわね……と溜め息混じりに呟き、アイエフが白旗を揚げたところで。シアンが、包みに手を掛けた

 

「話は決まったな。それじゃあ、これを見てくれ。博覧会に出展する武器の試作品だ」

 

 そして、シアンが包みを開けるとそこには一振りの片刃の長剣。けれど、持ち手から刀身までが機械で構成されている。

 

「機械剣アルマッス、俺がラステイションとプラネテューヌの技術をあわせて作り上げた武器だ。これをお前等に貸しておく」

 

「プラネテューヌの?」

 

「ああ、プラネテューヌに住んでる知り合いの技術者の下で勉強してきたんだ」

 

 母に無理を言って旅費を工面してもらい、シアンはプラネテューヌの技術を学び、それを取り入れこの一振りを完成させた、全ては博覧会の為に。

 

「いいの? だって、博覧会に展示する用のモノなんでしょ?」

 

「……試作品の意味知ってるか? 展示用は別に、これから造るんだよ」

 

「それに、実際にコレを使ってもらって不具合や改善点があったら教えてもらいたいんだ! ……つまり試運転だな」

 

「つまり、粗探しして、ダメな部分をシアンに言いつければいいんだね?」

 

「おおむね間違ってないんだが、粗って言うな!」

 

(なんで、ネプテューヌの解釈はこうも正解と間違いの狭間にあるんだ……?)

 

 女神だから、なんて考えが一瞬浮かんだがすぐに頭から追い出した。おそらくこれはネプテューヌ本人の感性なんだろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 剣ならばと言う事でアルマッスはネプテューヌが使うこととなり、あれからモンスター退治の依頼を中心に引き受けて一週間が過ぎた頃。今日はアヴニールからの依頼と言うことで一行は古い施設を訪れていた

 

「お久しぶりですね、お待ちしてましたよ? 今日もお仕事の内容できました」

 

「おっ、いつかの外回りか。」

 

「エミル、彼は?」

 

「アヴニールの外回りやってる奴だ。名前はガナッシュ、まぁ、サンジュよりは格段に人当たりはいいから、気楽っちゃ気楽だな。しかし、外回りに、仕事の説明に下っ端ってのは苦労するな」

 

「そんなに忙しそうに見えますか? ここのところ、週半分は休日なんですけどねぇ。だいぶ大詰めなので、下準備も済んでしまって」

 

「うらやま……いいえ! 週半分もお休みなんて、労働基準法違反はなはだしいです! やっぱり悪い会社ですぅ!!」

 

「コンパ、本音が洩れてるですの……」

 

「そりゃ、従業員も多い訳だ。休日が多くて給料もそこそこで」

 

 加えて、企業の経営も非常に安定している。周りの人間からある意味では理想の仕事環境と言える。

 

「まー、我が社の製造工程のほとんどを機械がになっているもので」

 

「そっか、代表が技術者嫌いだもんね。造るのは機械の仕事なんだー」

 

「そう言う事です。では、雑談はそれぐらいにして本題の説明に参りましょうか。えー、この施設なんですが見た目以上に年数が立ってまして。実はもう廃棄された施設なんです……」

 

 そう説明をしながら、ガナッシュは工場敷地の入り口を塞ぐ鉄格子に掛けられた南京錠に、これまた古びた鍵を差し込んだ。

 

「が、実は施設を引き上げる際に、必要な資材の一部が取り残されたままになっていたらしいんです。今回は、そんなアイテムの回収をお願いします」

 

「アイテムを集めて、全部渡せばいいですか? なんか、ぬか喜びばっかりさせられるみたいでやなお仕事ですぅ」

 

「いえいえ、回収したいのはごく一部。お願いしたもの以外は全て自由にしてもらって構いませんよ?」

 

「つまりそれが追加報酬って訳、ですか」

 

「そう言う事です。いわゆる、歩合制って奴ですね」

 

 必要なもの以外のアイテムを見つけた分だけ、こちらの報酬は増えていく。敷地内を進んで行き、やがて一見の廃工場の入り口にたどり着く。

 

「ところで、どんなアイテムを回収してくればいいの? 銃器系? 先折りタバコ? それともダンボール?」

 

「ちょっと待て……最初以外、何に使うんだ、何に……」

 

「始めに資材だと言ったはずなんですけどねぇ。特定の鉱石を見つけて回収してきていただきたいんです」

 

「見つけて欲しいアイテムって石ぃ!? そんなのアヴニールの工場の何処で使うの?」

 

「これが意外と使うんです。にも関わらずモンスターのせいで採掘もままならない有様で、枯渇しがちな物資の一つなんですよ」

 

「鉱石っつーと、鉄鉱石とかそんな辺りか?」

 

 機械を作りに鉄は不可欠とも言える材料だ。それならば十分に有り得る。が、ガナッシュは首を横に振る

 

「いえ、違いますよ。なんと、たった1グラムでゲーム機を一万年も動かせる常軌を逸したエネルギー鉱石なのです!!」

 

「ゲーム機を一万年!? それはちょっとスゴイかもー……そんなスゴイのを取ってくるんだね!!」

 

(ゲーム機を一万年ねぇ……)

 

(うわぁ、うさんくせぇ……)

 

 と、ネプテューヌは目を輝かせながら驚いているが。ケイトとエミルを筆頭に残りは似たような感想を抱いた。

 

「そんなスゴイの取ってきてもらうんです! ウチの製品は野外で使われる物も多いのでコンセントNGで内部電源な場合が多いんですよ」

 

 と、説明も一通り終わり、ケイトたちは工場の内部に足を踏み入れる。その直後だった。

 

「はぁ!? 何でいきなり入り口が閉じちゃうの!! ちょっと外回り! へんな冗談やめてよね!!」

 

「冗談、なんの話ですかぁ? いやーすいません。手違いで閉まっちゃいました」

 

「へぇ……こんなさび付いたでかい扉を閉めるなんざ、なんとも大掛かりな手違いもあったんもんだな…………てめぇ、何が狙いだ?」

 

 最後の一言はいつもの軽い皮肉めいた口調とは違い、エミルが怒りを交えた低音で扉越しにガナッシュに問いかけた。

 

「単純にこちらの都合です。貴方達にはこの中でモンスター達の餌食になっていただきましょう」

 

「い、一体どういうことです!? 真っ暗は怖いです。はやく入り口を開けて欲しいですぅ!!」

 

「あらら……そうですね。さすがに真っ暗というのは可哀そうです。見えるように、明かりくらいはつけてあげましょうか」

 

 と、同時に壁の誘導灯に明かりがつき、辺りがぼんやりと明るくなる。

 

「ちょっと! どうして!? アイテム取ってきてあげないよ!」

 

「……この状況でどうしてそう、間の抜けた発想に繋がるんでしょうねぇ……。ゲーム機が一万年も動く石なんてありませんよぉ。オーバーな方が返ってノりやすいかと思いまして。仕事の方も、アヴニールではなく私個人からです。名義には、会社の名前を使いましたが、何か?」

 

「見事な仇返しだな……。依頼とはいえ、助けてやった分、俺らに貸しはあっても恨みがあるとは思えねぇんだが?」

 

「実はずっと前に、ある人に会いましてね。それ以来、アナタの事は知っていたんですよ……ネプテューヌさん?」

 

「うわ……新型だけじゃなく、こいつもネプ子狙い? やっぱりネプ子、記憶がなくなる前は大悪党とかだったんじゃないの?」

 

「そんな事無いもん!!」

 

(まぁ、他の大陸とのしがらみは非常に多いけどな……)

 

「あー……一つ言い忘れてましたが。この施設はあと数分で爆発しますからぁ! なんかお決まりですいませんね、ではさようなら」

 

「ってちょっと!?」

 

 そう言って、アイエフが入り口のドアを叩くが、反応は無い。今度はドアに耳を寄せるが、やがて諦めたように離れた

 

「……もういないか。どうするの、モンスターもいるみたいだし。他の出口だってあるかどうか分かんないわよ?」

 

 

「よし! とにかくここを出よう。そんで、次にあの外回りにあったら倒しちゃおう!!」

 

「出口がないって話聞いてた? まぁ、その人の話を聞かない前向きさが長所でもあり、短所よね」

 

「とにかくこんな所でじっとしてる訳にも行かないですの。早くしないとガスとたちみんなああの世行きですの!!」

 

「まぁ、あちらさんの思惑通りに爆発オチで終わるのもカンベンだしな。とにかく他の出入り口を探すぞ。元・工場だってんなら裏口ぐらいあるだろ。とりあえず、周りには気をつけろよ。誘導灯は一応付いてるが、視界はかなり狭いからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから、モンスターに加えてアヴニールの自立機動兵器にも襲われたがモンスター自体は何処にでもいる様な連中ばかりで、ケイト達にとってはさして脅威でもなかった。加えて、程なくして裏口も見つかり一行は無事に工場を脱出後、ラステイションの中央市外に戻ってきていた。

 

「探せばやっぱりあるもんだね、出口! 諦めなくて正解だったじゃん!」

 

「私は別に諦めてたつもりは無いけど。にしても……本当にモンスターと一緒に閉じ込めたぐらいで、倒せると思ったのかしら?」

 

「いえいえいえ……モンスターさんと一緒に閉じ込められるなんてかなりのものですぅ! 一歩間違えれば本当に外回りさんの言ったとおり、ヒジキだったかもですよ?」

 

「餌食、な。そのモンスターさんを注射器の形をした兵器とエニグマでボコボコにしてたのは何処のどいつだ?」

 

火属性に限定されるものの少ないチャージタイムで攻撃できる注射器と駆動時間があるものの通常の魔法を行使できるエニグマ、この二つを使い分ける事によりコンパの戦闘能力は飛躍的に上昇。ガストと二人で立派にパーティをの後衛を務められるようになっていた。

 

「……でも少なくても、外回りは私達の実力を何度か見てるわけだし。フツーすぎて、らしくないと言うか……」

 

「生き残った今だから言わせて貰うが、俺らが出口見つけて工場から脱出する頃には既に10分以上は経過していた。ガナッシュの奴、後数分で爆発する、とか言っておきながらな」

 

 ますます持って怪しい。爆発しなかった工場、対して脅威でも無いモンスター、ネプテューヌ絡みで自分達を始末するにしてはあまりにもお粗末過ぎる……一行がその事に頭を悩ませている時だった

 

「……はぁはぁ、居た!! 頼む、助けてくれ!! アヴニールのロボ共が……ウチの工場にっ!!」

 

 息を切らしながら、シアンがこちらに駆け寄ってきた。先の疑問の答えと共に――

 

「……時間稼ぎだったのかもね、外回りにとっては。個人的だって言ってたけどきっとこの為に閉じ込めたのかもねっ!」

 

 一行の目の前では、工場でも見かけたアヴニールのロボ達がパッセ製造工場を片っ端か破壊してた。

 

「他と違ってシアンのとこは結構、ガチだったからな。本格的に潰しに着やがったかっ!」

 

 言うや否や、エミルは太刀で近くに居たロボットの頭部を横に真っ二つにする。

 

「兎に角、こいつら全員スクラップにするぞ! シアン、他の従業員はっ!?」

 

「従業員の方はみんな逃げている、だから遠慮なくやってくれっ!!」

 

「了解だ、そんじゃいくぜっ!!」

 

 エミルの言葉を合図にコンパとガストが魔法の準備に入り、残りの4人が武器を構えロボット達に突っ込んでいった

 

「こいつで――」

 

「ラストっ!!」

 

 棒術具で頭部を粉砕し、太刀で胴を真っ二つにされたところで全ロボットが沈黙、辺りは機会の残骸と、火がくすぶる音だけが聞こえていた。

 

「ひどいです……ほとんど全壊ですぅ。これじゃあもう、お仕事できないです……!」

 

 もはや、工場はほぼ全損。今のラステイションの経済状況では工場の建て直しすら難しい……。そんな中、シアンは一行に背を向けた状態で壊れた工場をじっと見つめており、その表情は見えない

 

「シ、シアンさん? そんなに落ち込まないで欲しいです。博覧会がムリでもわたし達がアヴニールさんを何とかするです」

 

 やがて、コンパがおずおずとその背に向かって声を掛けた時だった。

 

「……うぁー! やられたーっ!!!」

 

 と、一瞬だけ頭を抱えながらシアンはそう叫んだが、その声は一行が思ってたよりも悲痛な雰囲気は無い。

 

「でも、まだ大丈夫だ!! まだお前等にやった試作品が残ってるだろ!? 俺だって、まだまだ諦めないぜ。中止だっていわれたときみたいなみっともない姿はもう見せないって決めてるからな!!」

 

「そうだよ! 試作品!! わたし達が持ってるコレがあれば、まだ出展だってできる訳だよね!!」

 

「もちろんだ! ……と言う訳で、博覧会が始まるまで一時回収な」

 

 そう言って、ネプテューヌがアルマッスを取り出したかと思うと、シアンはそれをネプテューヌの手から奪い取る。

 

「……え? ええ!? なんで! せっかくもらったのにぃ!!」

 

「博覧会当日にはちゃんと返すって! だけどそれまでに使って壊れちゃまずいし改善点だって山積みだ」

 

「むー……分かった。シアンに預けるよ」

 

「っていうか、貸すとしか言ってないだろ? 博覧会が終わるまではまだお前等のモンじゃないぞ」

 

 動きが本格化してきたアヴニール。黒き陰謀が渦巻く黒の大地での冒険はいよいよ佳境へと入り始める。そして博覧会を一週間後に控えた時、アゼルからの連絡により物語は動きを見せる――


 
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