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超次元ゲイムネプテューヌ『女神と英雄のシンフォニー』チャプターⅡ第8話『女神の眷属』

月影さん

教院の人たちの行方を追う中、二人は機械の軍団と戦う一人の少女と出会う。彼女の名はノワール、彼女こそこのラステイションの女神だった。そして教会では、教院のメンバーと共にアゼルが二人を出迎える。そんな時、アヴニールが教院のメンバーを始末しようと機械兵器の集団を差し向けたのだった

2013-04-11 01:29:52 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:947   閲覧ユーザー数:937

 今、目の前で起きた出来事に思考が追いつかない……確かに俺もアゼルも、この世界に来た事がきっかけとなり戦う力を得た。けれど――

 

「アゼル……お前……」

 

 けれど、少なくてもネプテューヌの様に変身する事なんて出来はしない……。やがて、アゼルは唖然としてる俺の顔を一瞥。それから、トンファーを構えて、ロボット達に突っ込んでいった

 

「っらぁ!!」

 

 そして、一撃。ホントに一撃でロボットの頭部を粉砕し、機能を停止させた。そしてそのまま、すぐ傍に居たもう一体にローキック。他のロボットにぶつけ動きが鈍った所を、逆手に持ったトンファーで二体纏めて殴り飛ばす。そこでようやく、ロボット達はレーザーをアゼルに向かって撃つ。

 

「当るかよ……そんなもんっ!」

 

 僅かな溜めと同時に、トンファーが虹色の輝きを纏い、その状態で一回転。放たれた衝撃波がレーザーを打ち消し、ビームサーベルで斬り掛かろうとしていた相手を纏めてなぎ倒す。圧倒的……いや、次元が違った。そこで俺はようやく自分の思い違いに気付く。協会の周囲に転がっていた機械の残骸。さっきまではそれは教院のメンバーとアゼルで破壊したものだと思っていた。けれど、それは大きな間違いだ。アゼルは今日までここを襲撃してきた機械兵器、その全てをたった一人で退けてきたのだろう。

 

「残念だが、この俺が居る限りみんなには指一本触れさせねぇよ。何てったって俺は――」

 

 そして、不敵な笑みを浮かべつつトンファーを構え直す。そして、この後に続く言葉は当然――

 

「何時だって……全てを守る、ナイトなんだぜっ!!」

 

 嘗て望んでいた生き方、そしていまや存在理由そのものとなった生き方。この世界で掴み取った“アゼル”としての今、それを象徴する言葉を。

 

(新しい自分、か……)

 

 地球に居た頃よりもずっと生き生きしていて、その瞳は活気に満ちている。それは素直に祝福できる事だ。が、同時にほんの少しだけ彼が遠くに感じたりもした。そんな複雑な胸中の中、俺は目の前で次々とロボット達をスクラップにして行くアゼルの様子を見つめていた……

 

「これで……ラストっ!!」

 

 ボディブローからサマーソルト、そして、ジャンプしてからトンファーで地面に叩き落し、最後の一体もただの鉄くずと化す。辺りを見渡し、もう居ないのを確認するとアゼルは変身を解き、トンファーをホルダーに仕舞う。

 

「お疲れさん……って言うほど疲れても居なさそうだな」

 

「当然! この程度じゃ準備体操にもならないぜ」

 

 ニッ、と笑みを浮かべるアゼルは息一つ切らしていない。体力も腕っ節も、俺とは格が……いや、次元が違った。

 

「で、ちゃんと話してくれるんだろうな? さっきの変身能力の事。とりあえず、アゼルがかなり普通じゃない状況に居るのは判ったが、今のじゃ全然だぞ」

 

「わーってるよ。と言ってもコレに関しちゃノワールも交えてじゃないといけないからまずは戻ろうぜ」

 

 そう言って、すれ違い様に俺の肩に手を置いて先に協会に戻っていった親友を俺は追いかけたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結論から話すと、アゼルは既に人間じゃない、いいえ、厳密には私が彼を別の存在に変えてしまった。というのが正しいわ」

 

「どう言う事ですか?」

 

 教会に戻った後、俺たち四人は女神の間で今のアゼルについての説明を受けていた。天井とカーテン付きのベッドの縁に腰下ろし、その隣にアゼルが立っており、俺とネプテューヌは二人の向かいに立っている。そして、ノワールの口から放たれた第一声、それには少なからず衝撃を受けた。変身できる時点で普通ではない。とは思っていたが、まさか人間ですらなくなっているとは……

 

「これは私達の代になってから先代の女神が付与した力で、女神には人間の中から一人だけ、己の眷属たる存在を選ぶ事が出来るの。共に大陸を治め、そこに住まう人々と女神を守る存在……その名を『ガードナー』って言うの」

 

「ノワールはブラックハート、そしてそのガードナーたる俺はブラックガードナーって訳だ」

 

「つまり、アゼルは女神様のパートナーみたいな見たいなものなんだね。でもさ、それだとアゼルが人間やめてる理由にはならないよ?」

 

「重要なのはこの先よ。人が女神のガードナーとなる際、女神は人に己の力の一部を、人は女神に――」

 

 そこで、ノワールの表情が少し苦々しいものになる。やがて、意を決して口を開いた

 

「女神に……己の魂を捧げるわ」

 

「魂……ってことはアゼルは――」

 

「勘違いしないで、別に死人って訳ではないわ。魂を捧げると言うのは失うという意味ではなくて、ホントの意味で女神に預ける事。彼の魂はちゃんと私の中ある」

 

「そう、ですか……けど、なんでわざわざ魂を預かる必要が?」

 

 その言葉に安堵する。と、同時に新たに沸く一つの疑問。人の己の眷属するのなら力を与えるだけでいいのでは?

 

「女神が自分のガードナーの魂を預かるのには二つの理由があるみたい。一つは老いや寿命の概念の消去、女神と言う存在は老いや寿命と言う概念が無い。なら、ガードナーもまた同じ状態でいる必要がある。女神にとってガードナーは最も信頼に足る人物よ。数十年毎にコロコロと変えられるものではないの」

 

 数十年、人間にとっては長い時間を、まるで数時間毎の感覚で話ている。最初は偶像崇拝等と思っていただけに、女神という存在がどれだけ人とは違うか改めて思い知った

 

「もう一つの理由も、やっぱりガードナーにおいそれと死なれては困ると言う理由から来ているのだけれど普通、肉体が致命的ダメージを追って生命活動に支障をきたした場合、人間で言うところの死に至った場合、器は魂を現世に留めておけず、輪廻に戻ってしまう。けど、魂が元々別の場所にあればそれを防ぐ事が出来る。そして、女神の持つ創造の力。まぁ、私達の場合は女神の力や権限は四分割にされてそれぞれに与えられているんだけど……本人の魂とその力を用いる事で傷ついた肉体を修復出来る」

 

「えっと……それってつまり、どう言う事?」

 

「相変わらずね、あなた……兎に角、ガードナーは仮に戦いか何かで死んでしまったとしても女神の力で生き返らせる事が出来るって意味よ」

 

 長々と難しい説明を聞いていた二人だったがネプテューヌはその内容を理解できずに思わず聞き返した。心なしか、彼女の頭から煙が上がっているように見えたのは、気のせいとしておこう。

 

「つまり、今のアゼルは不老不死、って認識でいいのですか?」

 

「不死、では無いわ。ガードナーにも死は存在する。それは守るべき女神の死……私が何らかの理由で死んでしまえば、それにあわせてガードナーも、アゼルも死ぬ事となる」

 

 正に、女神と共に生き、共に死ぬ存在。それがガードナー

 

「なるほど~、つまり死んでも教会の神父さんに金払えば何故か生き返るのと同じって事だね! 生き返らせる人が居なくなったらどうしようもないし」

 

「確かに、ゲームやってて俺も気になったな。教会でお祈りしてもらったり、宿屋に泊まるだけで普通に何事も無く生き返るのって、普通じゃありえねぇよな?」

 

「どうでもいいでしょ、そんな事。どうせ神父がザ〇リクやザオ〇ル使って……って、そうじゃくてねぇ!」

 

 と、またしてもネプテューヌの間違ってはいない解釈をすると、アゼルがそれに便乗。ノワールがそれにツッコミをいれ、疲れたように溜め息を吐く。

 

「ハァ……兎に角、ガードナーと言うのは役職じゃなくてそういう存在なの。親友の貴方に何も言わずに彼を勝手に変えてしまった事、謝るわ。本当に、ごめんなさい……」

 

 ベッドから立ち上がり、俺に頭を下げる。それが演技や表向きのものではなく、心からの謝罪だと言う事は雰囲気からも見て取れた。そんなノワールの話を聞いて俺が思ったことは――

 

「日本の政治家もコレぐらい真摯な奴なら苦労しないで済むんだけどな……」

 

「へっ?」

 

 今までの話とは全く関係の無い事だった。と言うよりも俺が知りたかったのはアゼルの現状だけでありそれ以外の事に関しては既に結論は出ている。

 

「アゼルは今の、ガードナーとしての生き方に何一つ不満を感じていません。こいつ自身が望んで、選んだ事です。なら、俺はそれを尊重するし、幸せだってんなら祝福もします。謝られるいわれは何処にもないですよ。ですからブラックハート様、こいつの事、これからもよろしくお願いします。割と熱血バカなんで手綱を取るのに大いに苦労すると思いますけど」

 

 と、苦笑を浮かべながら言葉を返すとノワールは最初はポカンといていたがやがてクスクスと笑い出して――

 

「安心して、既に苦労してるから」

 

 それからは場の雰囲気は既に穏やかなものとなり、地球とゲイムギョウ界でのアゼルについての雑談と思い出話に華を咲かせていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言う訳で、悪いけど今日はこのままこっちで一泊するよ」

 

『りょーかい、っと。そんじゃ、明日の昼にシアンの所で合流な』

 

「判った、それじゃ」

 

 そう言って、携帯を閉じる。あれから夜も遅いと言う事もあり、俺とネプテューヌは教会に一泊する事になった。そして今、教会のホールには俺しか居ない。所謂、見張りと言う奴だ。

 

「まぁ、アゼルの奴も順調そうで何よりだな……色んな意味で」

 

 ほんとに、地球いた頃より充実した人生を送っているようで何よりだ。さて――

 

(ちょっと変な形になってしまったが、俺の目的もコレで達成、か……)

 

 後はイースンの救出、そして地球に帰る方法を探す事、一番の手がかりは古の四英雄だろう。彼らの軌跡を追うのが今の所、唯一の手がかりだ。ただ、それとは別で気になることもある。それは――

 

(俺は、どうしたいんだ?)

 

 アゼルの件については結論が出た。けれど、今俺は俺が思ってる以上に地球への帰還に執着心が湧いてこない。けれど同時にこのゲイムギョウ界で暮らして生きたいとも思わない。普通なら、こんなモンスターが溢れている世界よりも、たとえ生活が苦しくても、戦いの無い平穏な生活の方が良い筈だ。なのに、二つの世界の間で俺は今どっちつかずな状態に陥っている。一体何が俺をそうさせているのか?そんな自己分析に浸っていた時だった。

 

「ケイト……」

 

 呼ばれて振り返った先に居たのはノワールだった。その表情は真剣そのもので、少なくても眠れないから雑談をしに来た。と言う雰囲気ではない。

 

「話しておきたい事があるの。着いてきて……」

 

 彼女に言われるがままに俺はノワールと教会の外に出る。少し前にこの付近でアゼルが大立ち回りしてたとは思えないほど静かで、虫の鳴き声だけが時より耳に入ってくる

 

「それで、話と言うのはなんでしょうか? ブラックハート様」

 

「ノワールでいいわ、敬語も要らない」

 

 だって貴方はアゼルの親友でしょ? そう言って、俺の方を振り返る。

 

「話っていうのはね……ネプテューヌ、あの子についてよ」

 

「ネプテューヌの? だったら本人も一緒の方が……」

 

 その言葉にノワールは目を伏せて首を振った

 

「いいえ、知らない方が良い。知ってしまえば、あの子はまた、背負わなくてはいけなくなるもの」

 

「背負う? 一体何を……」

 

「プロセッサユニット……アクセス」

 

 静かにそう呟いた瞬間、ノワールが光の柱に包まれる。それは、何度か俺達が目にした光景。そして、光が晴れた後、そこに居たのは――

 

「あんた……あの時の」

 

「あの時は悪かったわね、手荒な事しちゃって。まっさか、ネプテューヌが記憶をなくしてるなんて思わなかったんだもの」

 

 サイドに結ったツインテールは解かれ、白いロングヘアーが夜風に揺れている。そしてその手に握られた身の丈ほどもある音叉の様な大剣。間違いなく、ガストを探しに行った際に出会った、ネプテューヌに似た謎の新型だった

 

「この姿を見てもらえれば、もう判った筈よ。あの子の正体が」

 

「……このゲイムギョウ界には今、普段は神界にいる筈の女神が全て降りてきているとされている」

 

「そうね、ユニミテスとかって言う奴に私達が負けた、って言う、ふざけた噂付きでね。ホント誰かしらね。そんなありもしないデタラメなんか流した奴は」

 

「そしてそんな中、ある大陸だけ、女神の姿が確認されていない」

 

「そりゃそうよ。だって自分の大陸ほっぽったまま、他の大陸に居るんだもの。最初は自分の大陸放っておいて、なに人の大陸で宝探しなんかやってんのよ、ってかなりイラっと来たしね」

 

 変身すると性格変わるのはネプテューヌだけかと思ったが、ノワールも彼女ほどではないがやはり性格が変わっている。若干、砕けた雰囲気になっている。

 

「しかも、記憶喪失のおまけ付きでな。つまり、あいつがそうなんだな?」

 

「そう、あの子の本名はネプテューヌ・プラネリア・パープルハート――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プラネテューヌの……女神よ」 


 
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