沈黙・・・俺の言葉の後にあったのはそれだった。そして―――
「え?・・・・嘘だよね?」
高町が何かの冗談と思ったのか聞いてきた。が、残念ながら俺が言ったことは現実だ。
「言葉の横やりを入れたからよく聞こえなかったか?ならもう一度言うぞ・・・・直す気はないって言ったんだ。」
その言葉に反応したのは八神だった
「なんでや!伸君!!」
「とりあえず声煩い。ここは防音完備の部屋じゃないぞ。」
「ンなことどうでもええ!!伸君直してくれるんちゃうんかったか!?」
「・・・・?お前ら何勘違いしているんだ?」
『?』
「俺は確かに高町の傷の具合を見てできなくはないと言った・・・・」
「ならさっさと・・・」
「では聞くが、俺がここに来てから一度足りとて『直してやる』と言ったか?」
「え?・・・・」
八神の剣幕がそこで止まった。
「お前ら、何か思い込みしてないか?俺が単にここに来たのは、高町がどの程度の傷を負ったのか見たかっただけ。どれほどの大怪我なのかに興味があっただけ。それが終わったから後は帰るだけなんだが」
まあ、あとは観光してそれでおしまいだ。日帰りだし、明日だって俺は惰眠を貪って趣味に興じたいわけなんだし
「そんな・・・・」
高町が落胆したようだが関係ない。だって―――
「そもそも俺は医者じゃないし、なんで医者でもない俺が他人の怪我直さなければなんないんだ?俺はただの小学五年生の餓鬼だぞ。」
「・・・・貴方は何も思わないの?」
「思わんよ」
「そんな!だってなのははこんなに他の人のために頑張ってきたんだよ!それなのに・・・」
アリシア・・・・お前そんなこと言うけどさ・・・・そもそも・・・・
「ふーん・・・・・・・・で?」
「え?」
「いや、だから何?って言ってんの」
「何?言っているの・・・・」
「いや、だってそれ・・・・俺には関係ないじゃん」
「貴方本気でそんなこと言っているの?なのはは学校も休んで一生懸命頑張って犯罪者捕まえたりして困っている人を助けたんだよ!なのに・・・・こんなことになって・・・それでもあなたは何も感じないの?」
「え?なんで
お前らそれくらい覚悟の上だろ?
『え?』
その言葉に全員が呆気にとられていた・・・・まさかとは思っていたが現実になるとは・・・・あ、いや待て。まだそう決めるのは早計だ。もしかしたら俺の言いたいことが分かっていないだけかもしれん・・・・そうあってほしい!
「だから・・・こうなることぐらい・・・・犯罪者に醜く嬲られ殺されたりすることくらい覚悟の上だったんだろ?」
「何・・・・言っているの?」
「・・・・・・」
思わずため息が出た俺は悪くないと思う。まさかここまでボケが進んでいるとは・・・・最も守護騎士は俺の言いたいことがわかったらしいからか・・・俺に対する怪訝の眼は無くなったみたいだ。まあ、だからと言って睨みは止めていないが・・・だが目の前にいる三人娘とベッド少女は分かっていないみたいだ。だが俺は容赦しない。そもそも俺が二度も理不尽で奪われ、手にすることを諦めたものを持っているコイツ等がそれをこの程度の覚悟も無しにドブ川やシュレッダーにかけて廃棄処分するみたいなことをしているんだ。しかもちゃんと忠告を入れたし一部に関しては等価交換で再び与えたにもかかわらずだ。だから俺は容赦しない。嘱託までならまだ許容範囲内だったのだがな。それをコイツ等は・・・・
「・・・・一応言っておくが俺はお前等が管理局の正式局員になったことを知った時からお前等を子供とは見ていない。」
『え?』
その言葉に守護騎士も思わず声が出ていた。
「当たり前だろう?子供というのは親を含めた社会人の背に乗って運ばれる存在のことを言うんだよ。常識だろう?そして一般社会に奉仕して社会を形成しまわす歯車の役目の役目をしている人間を大人って言うんだよ。お前等は『時空管理局』という
そして大人には当然あるべき重荷が圧し掛かることになる。
「大人なら当然『自分の起こした行動とその結果には責任を持たなければならない』・・・大人はある意味誰よりも自由と言えるが誰も重荷を背負ってはくれないんだよ。冤罪等で自身の責任を他人に押し付けたところで今度は『押し付けたことに対する責任』が生まれてくる。隠せば『隠したことに対する責任』が・・・・このループだ。だから俺は直さない。お前たちが高町と同じ末路を辿ろうがそんなこと知ったことじゃない。だって俺には関係ないから。俺は子供だから・・・君たちのような大人じゃない。」
が、それでもなおも食い付いてくる。そしてこいつらは前々から思っていたが中途半端なのだ。例えば―――
「学校すら休んで困っている人を助けることが―――」
例えばこれ、学校休んでまでうんたらかんたら―――
確かに聞こえはいいけどさ・・・・そもそも、子供が学校を何度も休んじゃいかんでしょ。しかも無理して出席しても碌に授業は聞けずにテストはオジャン。それでは意味が無い。その点でいえばハラオウンのほうが評価できる。訓練学校のような特殊な学校には通っていたかもしれないがアイツは完璧に普通の学校生活を捨てる覚悟がある・・・・中途半端じゃない。アイツは犯罪者を逮捕するためなら死ぬ気はないが死ぬ覚悟はあるだろう。コイツ等にはそんなものは無い。子供であることを捨てられないコイツ等が死を許容できるはずがない・・・・大人だ。
だがコイツ等は違う。大人でありながら子供でいたいと言っているのだ。例えでいうなら会社で働いているサラリーマンが「僕も小学校の子供たちみたいに夏休み欲しいでーす!」と言っているようなものだ。それは通らない。そんな奴はすぐにトカゲのように切り捨てられて乾涸びて死ぬだけだ。
そしたら今度はこんなことを言って来た。
「仲間や・・・友達じゃなかったんか」
と、それこそ馬鹿らしい
「仲間?友達?・・・・笑わせるな。そもそも仲間だと言うなら。一度でも俺がピンチになった時に駆け付けたか?何時かの犯罪者のように・・・・それから、俺はお前たちのことは知人程度にしか思っていない。」
まあ、俺の基本ポジションはここだな。大体、社交辞令で交流を持っている程度の存在はたいていここに収まる。
「友というのは信用と信頼の二つがあって初めて成立すること。分かるか?肉親や嫁または婿以外の何者かを信じて頼れ、用を言える存在のことを指すんだよ。お前等のことはある程度は信用しているが信頼などこれっぽっちもない。俺が友と呼んでいる存在は少ない
お前達みたいにちょっと話しただけで友達とはわけが違うんだよ。」
「そんな言い方・・・」
「友というのはそもそも己の中にある不安や悩み事と言ったことを打ち明けられる存在のことを指すものだ。それを信頼も信用はおろか信じることすらできずに打ち明けることを恐怖した奴が使っていい言葉じゃない」
その言葉に高町の肩が震えていたが他の奴は気付かない。
「そして、友と呼ぶ人間の不調にすら気づけない奴が友を騙るな。虫唾が走る。」
それは普段の高町を見ていればわかっていたことだしな。コイツ等より関わっていない俺や刃達にすら分かったんだ。同僚であり、長く一緒にいているはずのコイツ等がそれに気付かないはずはない。本当の友達ならば・・・・確かに知られたくない自分でも秘密にしておきたいことがあるだろう。だがそれは決して悩みや不安にしてはいけない。そういうのは隠れた趣味趣向性癖に当たるものだ。断じて悩みや不安ではない。
「そんなんじゃない!私たちの友情はそんなものじゃ・・・」
「じゃあなんで高町は疲労骨折なんてしたんだ?疲労骨折っていうのは文字通り、身体に疲労、ストレスが蓄積しそれが骨に異常をきたすものだ。お前たちが高町のことを友達だというなら当然高町の身体の異常は分かっていたんだよな?同じ友達で普通の小学生の月村やバニングスよりも近くにいて関わりもっているお前等は当然わかっていたんだろう?」
「それは・・・・」
「それをお前たちは見て見ぬふりをして大怪我させたわけだ。大した友情だな。」
「テメエ!」
今度はヴィータが食って掛かろうとしたが
「いいのか?俺は善良な一般人の少年だぜ?手を上げれば暴行罪で逮捕確定だ。しかも何かのはずみで高町の体に異常をきたすかもな。」
「ク!?」
「もういいか?俺も帰らせてもらう」
実は高町家はもうここにはいない。と言っても俺はちゃんと事の顛末(になる予定)は伝えておいている。あの次元船の中でな・・・・
回想
「なあ・・・伸」
「・・・・なんだ?」
「お前はひょっとしてなのはを直せるんじゃないのか?」
「死んでなければな」
「本当か!?なら・・・」
「だがそれはアイツ次第だ。」
「どういう意味だ?」
「恭也さん・・・俺はね、彼女たちが管理局に正式に入っていると疑った時からアイツ等を子供としては見ていないんだ。嘱託ならまだいい。あれは仕事を受ける受けないは自分で選べるから形だけ入っている状態でも別に問題ないからさ・・・」
「・・・・」
おそらく俺の言いたいことが分かったんだろう。沈黙して聞いている
「だがアイツは今分岐点にいる。だから俺はアイツに問う・・・どっちを取るのか。それに・・・・」
「?」
「アイツは他人のためとか言っているみたいだがその実他人のことを全く考えてない。ただただ自分にとっての善意を押し付けているだけだ。『自分が楽しいから他の人も楽しいに決まっている』『自分が正しいのだから他の人だって賛同してくれる』『自分が了承したのだから他の皆も賛成する』・・・子供の思考だ。大人なら他人の考えは本当の意味で決して交わることはないことを知っている。その過程において偶々二人の道が同じだったってだけ。電車に乗る人なんかわかりやすい。
回想終了
そしてアイツは両方を取った。子供でいたく大人でいたい。だがどちらかとらなくてはならない。せめて「小学三年生の始まりのようなあの頃の自分に戻りたい」とか「すべて捨ててでも人を助けたい」くらいのことを言ってほしかった。これでもまだ子供よりだが覚悟はある。後悔もしている。だがアイツの覚悟は薄っぺらいものだった。しかもこんなことになったにもかかわらず後悔していなかったのだ。結局のところただ単にアイツの心は単純でつまらない構造だった。あの会話の中に全て入っていた。アイツの心は結局のところ―――
嫌われたくない
この一言に尽きる。嫌われたくないからいい子でいる。従順でいる。そんな薄っぺらい覚悟じゃだめだ。それが許されるのは子供と
そして同時にアイツ・・・いや――――
「わかった・・・・じゃあ勝負しよう」
此処で今まで黙っていたフェイトが口を開いた。
「勝負だと?」
「うん、私たちが勝負で勝ったらなのはを直してあげて」
「正気かお前?テスト、運動。その他のゲームでも勝てなかったお前等が・・・・」
「模擬戦・・・・・魔法を使った模擬戦で勝負だよ!」
「戦いならいいよ。それでもいい?」
「いいよ。次元震を起こされたら困るから伸は魔法の出力を限定、魔力量は好きにして良いよ」
「それくらい当然だろ」
「後、こっちのメンバーは私と・・・」
「あー、ハイハイ。わかった・・・んじゃこっちからもいくつか条件ださせてもらう」
「何?」
「まず、戦う場所は俺が用意する。いいか?」
「いいよ。じゃあ・・・」
「まだだ」
「え?」
「なんで?こっちは一つしか・・・」
「そっちは数人なんだ。こちらもそれなりの条件は付けさせてもらう。そも、これを受け入れなきゃ俺はお前達との戦いなんか受けないが」
そう、向こうはこちらに頼んでいる側だ。それを忘れてはいけない。故におれの提案に対して口出ししていいことではない。俺の出す条件は絶対だ。でなければ成立しない。高町を本気で直したいのなら
「なんやそれ!卑怯やろ!」
「口を慎め。高町がこのままでもいいなら別にいいけど」
「ク!?」
お前等とは場数が違うんだよ
「つづけるぞ・・・時間指定についてだがこれはお前たちの好きにしていい。ただその一週間前には俺に口で報告すること。それからコレが最も重要なのだが・・・・」
「まだあるの!?」
「姉さん!」
「高町を連れてくるのが絶対条件だ。」
「え?」
「そんな!?」
「な、何故だ?」
「決まっている。俺が勝った時に『なのはがいれば勝てた』みたいな負け犬の戯言を聞きたくないだけ。案ずるな。その戦いの間だけは大怪我する前のいつも通りの状態に戻してやる」
「けどそんな・・・なのはちゃんは・・・」
「自分の身体がかかっているんだ。それくらい簡単にできるだろう?じゃあな。質問は受け付けない。地球にいる際に改めて契約書渡すから。分かっていると思うけどこれに同意しなきゃ俺は戦わないから。」
そう言って今度こそ俺は去った。あーあ、結局中将に会えなかったな・・・・まあ手紙の中身は報告書みたいなものだったのは不幸中の幸いかな?
あーでもなんかイライラする・・・・ちょうどその時にイケメンオッドアイ数人が俺に襲い掛かってきたから殺しちゃったけどいいよね?なんかリーダー格っぽいやつが『なかったことにしろ』とか言っていたけどあれタダの暗示だし催眠術師でもできるよアレ・・・催眠術師で生計立てればそれなりに儲かっただろうにな・・・・イケメンなんだし・・・もったいない
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第七十話:祝七十話!!え?もっと重要なことがあるって?