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真・恋姫無双アナザーストーリー 蜀√ 桜咲く時季に 第50話 【桃香拠点】

葉月さん

お久しぶりです。まだ生きています!
やっと書きあがったのでアップします。

今回は投票第二位の桃香のお話です。
ちょこちょこ書いていたので矛盾したところがあるかもしれませんが読んでいただけると嬉しいです。

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2013-04-21 17:08:52 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:7169   閲覧ユーザー数:5209

真・恋姫無双 ifストーリー

蜀√ 桜咲く時季に 第50話 桃香拠点

 

 

 

 

【いつかきっと……】

 

 

 

《桃香視点》

 

「ご主人様!次はあそこに行って見ようよ!」

 

ご主人様の腕に抱きつきながら露店が並ぶ市を私ははしゃぎながら歩いていた。

 

「そんなに急がなくても露店は逃げたりしないぞ」

 

ご主人様は急かす私を見ながら苦笑いを浮かべる。

 

「露店は逃げないですけど、楽しい時間はどんどん過ぎていくんだよ、ご主人様。だから早く行きましょう!」

 

「はは、なんだか子供みたいだぞ桃香」

 

「むにゅ!うぅ~!酷いですよご主人様。私、子供じゃないですからね」

 

頭を撫でながら笑うご主人様に頬を膨らませて抗議をした。

 

「それじゃ、撫でるの止める?」

 

「……も、もう少し撫でていて欲しいです」

 

「了解」

 

撫でるのを止めようか、と聞かれ思わず考えてしまい、その挙句に撫でて貰うことを選んでしまいました。

 

うぅ~、やっぱり、私って子供なのかな?で、でも、ご主人様に頭を撫でられるとすごく心がポカポカして気持ちが良くなるんだよ。うん、これは仕方が無いんだよ!

 

自分に言い聞かせるように頭の中で何度も何度も繰り返した。

 

そして、今更だけど私とご主人様は町ででぇと、つまり逢引の真っ最中なんです。

 

事の始まりは昨日の夜でした……

 

………………

 

…………

 

……

 

「ご主人様!」

 

(どんっ!)

 

「っ!ど、どうかしたのか、桃香?」

 

机を思いっきり叩き身を乗り出して椅子に座ってお仕事をしているご主人様の顔を見た。

 

「……痛いです」

 

「え?」

 

「うぅ~~、思いっきり机を叩きすぎちゃいました」

 

少し涙目になりながら机を強く叩きすぎて手が痛くなっていることを伝えた。

 

「だ、大丈夫か?」

 

「は、はいぃ、大丈夫です」

 

(なでなで)

 

「はぅ!ご、ご主人様!?」

 

ご主人様は私の手を取り、赤くなった掌を撫でてきました。

 

「こうすれば、段々と痛みが無くなって来るだろ?」

 

「あ、う、は、はぃぃ~~~~~っ!」

 

た、確かに痛くはなくなったけど……逆になんだか恥ずかしくなってきちゃったよぉ!

 

ご主人様に掌を撫でられるたびにどんどんと顔が赤くなり、鼓動も早くなっていった。

 

「ん?なんだか顔が赤いけど熱でもあるのか?」

 

「しょ、しょんなことないですよ!?」

 

「本当か?どれ……」

 

(ぴと)

 

「はぅ~~~~~っ!?」

 

ご主人様は私の前髪を上げ、おでこに手をあてがって来ました。

 

うぅ~……は、恥ずかしいよぉ。

 

「う~ん……良く分からないな。どれ……」

 

(コツンッ)

 

「~~~~~~っ!?!?」

 

ご、ごごご、ご主人様の顔がめ、めめ、目の前に!?

 

ご主人様は突然私のおでこにご主人様のおでこをくっつけてきた。

 

「……熱は無いみたいだね。でも、あまり無理しちゃダメだよ」

 

「……」

 

「桃香?」

 

「ふにゃ~~~~」

 

「と、桃香!?だ、大丈夫か!?」

 

「だ、大丈夫れす~」

 

余りにも突然で心の準備が出来ていなかった私はお風呂に長く浸かり過ぎたようにのぼせてしまいました。

 

「ご主人様……」

 

「ん?」

 

「それは反則ですよ」

 

「え?何が?」

 

ご主人様は分かっていないのか首を傾げていました。

 

「もういいです」

 

はぁ、ご主人様って少し鈍感さんだよね。

 

「ならいいけど……そう言えば、俺に何か用があったんじゃないのか?」

 

「っ!そうだ、思い出した!ご主人様、明日はお休みですよね!」

 

「え?あ、ああ。朱里からは急な案件が無い限り休みでいいって言われてるけど」

 

うん、それは朱里ちゃんにも確認済みなんだけど、ご主人様の口から聞きたかったの。問題は次の質問から……

 

「明日は何か用事とかありますか?」

 

「特には……町をぶらぶらするか、剣の稽古でもしようかなって思ってたくらいだけど」

 

ご主人様は誰とも約束してないよ!よかったーーー!

 

私は心の中で喜びの声を上げた。

 

お、落ち着いて、これも皆に聞いて確認してきたことだよ。重要なのは次……ああ、緊張してきちゃったよ。い、一度、深呼吸を……

 

「すー、はー」

 

私は自分を落ち着かせる為に深呼吸をした。

 

「?」

 

「ご主人様、明日、私とお出かけしましょう!」

 

「いいよ」

 

「……ほ、本当ですか?」

 

ご主人様はあっさりと私のお願いを承諾してくれました。

 

「ああ、特にすることが無いってさっき言ったろ?」

 

「そ、そうですか……」

 

あまりにもあっさりし過ぎてなんだか拍子抜けしちゃいました。

 

「よ~し、それじゃ、今日は明日の為に早く仕事を終わらせないとな」

 

ご主人様は腕まくりをして仕事に取り掛かっていました。

 

「それじゃ、明日楽しみにしてますね」

 

「ああ」

 

(ばたん)

 

そして、私は執務室から出て扉を閉めました。

 

(コツコツ)

 

「……」

 

廊下を無言で歩く。

 

明日、ご主人様とお出かけか~

 

(コツコツ)

 

「……」

 

ご主人様と明日、お出かけ……

 

(コツコツ、ピタッ)

 

「~~~~っ!や、やったーーーーーーっ!!」

 

私は足を止めて嬉しさのあまり大声で叫んじゃいました。

 

「ど、どうしよう!今頃になって嬉しさがこみ上げてきたよ!」

 

人目もはばからず喜ぶ私。

 

「あ、あの、桃香様?どうかされましたか?」

 

「え?あっ、愛紗ちゃん!うん!とってもいいことがあったんだよ!」

 

喜んでいると背後から愛紗ちゃんが心配そうな表情で話しかけてきた。

 

「は、はぁ、それは良かったのですが……あまり廊下で大きな声を出しますと皆が驚きます」

 

「ご、ごめんね、愛紗ちゃん」

 

「分かっていただけたのなら良いのです。まあ、明日はあまり羽目を外し過ぎないようにしてくださいね」

 

「え!な、何のことかな?」

 

愛紗ちゃんの言葉にドキッとして肩を振るわせた。

 

も、もしかしてばれてる!?そ、そんなこと無いよね?

 

「はぁ……明日、ご主人様と予定はあるかと皆に聞いていれば嫌でも分かりますよ、桃香様」

 

「あぅ……えへへ♪」

 

そ、そうだよね、皆に聞いて回れば誰でもそう思うよね。

 

私は照れ隠しに舌を出して誤魔化した。

 

「はぁ……私も勇気を出してお誘いしてみようかな……」

 

「ん?何か言った、愛紗ちゃん?」

 

「い、いえ、なにも!私はこれから兵の調練へ行って来ます」

 

何か呟いていた風だったので話しかけるとなんでもないと言われた。

 

「うん、頑張ってね、愛紗ちゃん」

 

「はい。それでは桃香様、失礼します」

 

愛紗ちゃんお辞儀をすると兵達が居る兵舎へと歩いていきました。

 

「よ~し!それじゃ、私も今日一日頑張ろう!それと、あまり浮かれ過ぎない様にしないとね」

 

ぐっと握りこぶしを作り自分に気合を入れる。

 

だけど、顔が自然とにやけて何度も朱里ちゃんや紫苑さんに注意をされちゃいました。

 

うぅ、私って直ぐに顔に出ちゃうのかな?

 

そんなこんながあり、今日に至る。

 

「さてと、そろそろお昼か。どうする?」

 

「え?もうそんな時間ですか?」

 

空を見上げると確かに陽は真上付近に来ていた。

 

「なんだか時間が経つのが早いですね」

 

「ははは、楽しい時間は早く過ぎるって言うしね。それだけ桃香が楽しんでいるって事だよ」

 

「ご主人様もそうなんですか?」

 

「ああ、俺も楽しいよ」

 

「えへへ♪」

 

ご主人様も私と同じ気持ちだったことに嬉しくなりました。

 

「それじゃ、時間が過ぎないうちに早く食べに行きましょう!」

 

「おいおい、食事くらいゆっくり食べないと体に悪いぞ?」

 

私に引っ張られながら苦笑いを浮かべるご主人様。

 

「それもそうだよね」

 

「それに『もう』お昼、じゃなくて『まだ』お昼って言った方が、一日が長く感じないか?」

 

「確かにそうですね。まだお昼って言った方が少し心にゆとりが出来ました」

 

「様は気の持ちようだよ。仕事でもまだ10件もあるって言うより、もう10件しかないって言った方が気が楽だろ?」

 

「あはは、確かにそうですね」

 

ご主人様の例え話しに思わず笑ってしまいそして納得してしまいました。

 

「よし、それじゃ、この後も楽しくデートする為にお昼にしようか」

 

「はい!あっ、あそこのお店に入りませんか?」

 

私は笑顔で頷き、近くにあった少しお洒落なお店があったのでそこはに入ってみることにした。

 

「こちらのお席へどうぞ」

 

席に案内されて早速何を食べようかなと採譜を眺める。

 

「何食べようかな~♪う~ん……これもいいけど、こっちも美味しそうだな~。あ、でもでも、やっぱりこっちの方が……うぅ、ご主人様は何を食べますか?」

 

「そうだな~……」

 

採譜を見ながら悩むご主人様。

 

「桃香はどれを見て悩んでいたの?」

 

「私ですか?海老炒飯とカニ炒飯で悩んでました」

 

「それじゃ、海老炒飯とカニ炒飯を両方頼もう。それで、半分ずつ食べよう」

 

「はい!」

 

「すみません~ん!海老炒飯とカニ炒飯一つずつ」

 

「はいよ!少々お待ちを!海老、カニ一丁!」

 

威勢の良い声で厨房に注文を伝える店員さん。

 

「えへへ、楽しみですね」

 

「ああ、そうだね」

 

「そうだ!実はね、ご主人様が仕事している時にこんなことがあったんですよ!」

 

そして、私とご主人様は注文した品が来るまで他愛ない会話で笑いあっていました。

 

………………

 

…………

 

……

 

「へい!海老炒飯、カニ炒飯お待ち!」

 

(どん!)

 

「わは~!美味しそうな匂い!」

 

目の前に置かれた炒飯の匂いに思わず涎が垂れちゃいそうになりました。

 

ダメダメ!ご主人様が見てるんだからそんなはしたない事したら嫌われちゃうよ。

 

「先にどっちから食べる?」

 

「そ、そうですね……それじゃ、海老からいただきます!」

 

「なら、俺はカニだね」

 

「それじゃ……」

 

「「いただきます。はむ」」

 

同時に食べる挨拶をして炒飯を頬張る。

 

「ん~~~~~!美味しいです」

 

「ああ、塩加減が丁度良くて美味しいな」

 

炒飯を一口食べ、その美味しさに笑顔になりました。

 

あまりの美味しさに食べる速度が速くなり、あっという間に半分を食べてしまいました。

 

「それじゃ、そろそろ交換しようか」

 

「そうですね、それじゃ……」

 

私は、お皿を渡そうとして一瞬動きを止めました。

 

「どうかした?」

 

半分ずつ食べ合い……食べ合い……食べさせ合い!?

 

「っ!ご主人様!」

 

あることを思いつきご主人様を見つめた。

 

「な、なに?」

 

「あ、あ~~ん」

 

「……え?」

 

「だ、だから……あ~ん」

 

「た、食べさせてってこと?」

 

「えへへ」

 

頬を染めて照れる私。

 

もちろん皆が見ている前で、すごく恥ずかしいけど、一度はこういうところでやって貰いたいと前々から思ってたんだもん。き、今日くらいいいよね?

 

「……ほ、本当にここでやるのか?」

 

「は、はい!お願いします」

 

「わ、わかった……いくぞ」

 

ご主人様はカニ炒飯をすくい私の口元へと運んできました。

 

「あ~ん!……んふふ~♪」

 

口の中に広がるカニの味とご主人様から食べさせて貰ったという調味料で更に美味しく感じました。

 

「美味しい?」

 

「はい、とても!それじゃ、お返しに……はい、あ~ん」

 

「お、俺もやるの!?」

 

「もちろんですよ。私だけやって貰ったら不公平だと思って」

 

「いや、俺は別にそんなことは思って……」

 

「それとも、ご迷惑ですか?」

 

「いや、そう言うわけじゃ……そ、それじゃ、あ~ん」

 

ご主人様は躊躇っていたけど、最終的には口を開けてくれました。

 

「どうですか?」

 

「う、うん。美味しいよ」

 

「よかった!それじゃ……あ~ん」

 

「ま、まだやるのか?」

 

「もちろんですよ!ほらほら、早く早く♪あ~」

 

私は口を開けてご主人様が食べさせてくれるのを待つ。

 

「んっ!んふ~♪美味しいですね~。はい、あ~ん」

 

「あ、あ~ん……」

 

お互い食べさせ合いっこをしながら残りの炒飯を食べた。

 

「ふぅ、美味しかったですね」

 

「そ、そうだね。最後の方はあまり味が分からなかったけど」

 

「そうですか?私はすごく美味しかったけどな~」

 

「は、はは……周りの視線が無ければ美味しかったかもね」

 

ご主人様は苦笑いを浮かべながらさっきの出来事を思い出していたみたいでした。

 

「とにかく、次はどうしようか。桃香は行きたいところとかは無いのか?」

 

「う~ん……特には無いです。ご主人様と一緒に居られればどこでも私は楽しいですよ」

 

「それじゃ、少し市を見て回ろうか」

 

「はい!}

 

ご主人様の提案に私は笑顔で頷いた。

 

………………

 

…………

 

……

 

「賑わってますね」

 

「そうだね。きっと紫苑の政策が町の人たちの為になってるからだろうね。紫苑から聞いた話しだけど、他の町じゃ領主がまともに政務をしないで荒れてるらしいからね」

 

「早く、成都に行って皆が安心して暮らせるようにしないといけませんね」

 

「ああ、そうだな」

 

ご主人様は真剣な顔でここではない遠くを見ているようでした。

 

「……えい!」

 

(ぎゅっ)

 

「うぉ!と、桃香?」

 

「ダメですよ、ご主人様」

 

「え?」

 

「今は、私とでぇとをしてるんですから、お仕事の事を考えちゃダメです。それと、他の女の子の事も考えたらダメですよ。私の事だけを見て考えてくださいね」

 

「……了解。それじゃ、今日一日、桃香は俺だけの桃香だ」

 

「っ!?」

 

急に真剣な顔で言われて私の胸は矢に貫かれたような衝撃を受けました。

 

はぅ~~、い、行き成りそんな事を言うのは卑怯ですよ、ご主人様。

 

「どうかしたのか、桃香?顔が凄く赤いぞ?」

 

「えっ!?そ、そそ、そうかな?気のせいじゃないかな?あは、あはははは」

 

「ならいいけど、調子悪いなら城に――」

 

「大丈夫!どこも悪くないから!ほら!こ~んなに!」

 

城に戻ろうかと言われそうになり、慌てて元気な振りをして見せた。

 

折角、ご主人様とのでぇとなにのこれで終わりだなんて、ダメなんだから!

 

そ、そりゃ、急に『桃香は俺だけの桃香だ』なんて言われたら恥ずかしくて顔も赤くなるよ!

 

「ふぅ~……よし!ご主人様、それじゃ行きましょう!」

 

私はご主人様に背を向けて深呼吸をし、自分を落ち着かせてから振り返り笑顔で伝えた。

 

「それじゃ、腹ごしらえもしたことだし市を見て回ろうか」

 

「えへへ♪はい!」

 

ご主人様は腕を差し出してきたので私は笑顔で頷きその腕に抱き着きました。

 

………………

 

…………

 

……

 

「ホント賑やかですね」

 

「ああ、本当にすごいな、流石はし――」

 

「……(じーーーー)」

 

「っと、お!あんなところに装飾品売りが居るぞ、見てみようか」

 

ご主人様をじーっと見つめるとご主人様は慌てて話を逸らしました。

 

さっき言ったばっかりなのに、ご主人様ったら……

 

「ほらほら、桃香。これなんか桃香に似合いそうじゃないか?」

 

「あっ!もう!先に行かないでくださいよ、ご主人様!」

 

いつの間にか露店の前に移動して私の事を呼んできた。

 

「もう、先に行っちゃダメですよ、ご主人様」

 

「ごめんごめん。でも、ほら、この髪飾り桃香に似合いそうだなって思ってさ」

 

「わ~、可愛いですね」

 

ご主人様が差し出してきたのは桃の花を模った髪飾りでした。

 

「だろ?それに……ほら、やっぱり似合うよ」

 

ご主人様は髪飾りを私の髪に当てて頷いていました。

 

「そ、そうですか?」

 

「ああ、とても可愛いよ」

 

「~~っ!」

 

可愛いと言われ、嬉しさと恥ずかしさで顔を赤くして俯いてしまいました。

 

「すみません、これください」

 

「毎度あり!」

 

「ええ!?だ、ダメですよ、そんな高そうなの!」

 

ご主人様はさっきの髪飾りを買おうとして、私は慌てて止めました。

 

「いいからいいから。これは今日、桃香とデートをした記念みたいなものだからさ。それに可愛い桃香をずっと見て居たいっていう俺のわがままでもあるからさ」

 

「そ、そう言われちゃうと、ダメだなんて言えないじゃないですか……せ、せめて少しくらいお金を」

 

「だ~め」

 

ご主人様は微笑みながら私がお金を出そうとするのを拒みました。

 

「さっきも言っただろ?これは俺のわがままだって。だから桃香は気にしなくて良いんだよ。逆にねだって欲しいくらいなんだから」

 

「そ、そうなんですか?それじゃ……ご、ご主人様、これ買って欲しいな?」

 

「ああ。すみません、これください」

 

ご主人さんは手に取った髪飾りをお店の人へ渡した。

 

「毎度!直ぐに身に着けますか?」

 

「ああ。だから包まなくて良いよ」

 

「わかりました。ではお品をどうぞ」

 

「ありがとう。ほら、桃香。こっちに来て」

 

「は、はい」

 

ご主人様の近く行くと私の髪に髪飾りを付けてくれました。

 

「うん。良く似合ってるよ」

 

「えへへ♪そう言われると照れちゃうよ」

 

「それじゃ、また市を見て回ろうか」

 

「はい!」

 

私は頷き、ご主人様とまた市を見て回り始めました。

 

「♪~~」

 

ご主人様に髪飾りを買ってもらい上機嫌になった私は鼻歌を歌いながらご主人様と市を見て回っていた。

 

「うぉ!?な、なんだ?」

 

しばらく歩いていると急にご主人様が声を上げました。

 

「どうかしたんですか?」

 

「いや、それがさ……」

 

ご主人様は困惑した顔で目元を下へと移したので私も目を向けました。

 

「……」

 

「子供?」

 

ご主人様の片足にぎゅっと抱きつく小さな女の子がいました。

 

「急に足に抱きついてきちゃってさ」

 

「……爸爸」

 

「「え?」」

 

女の子の言葉に思わず声をそろえてしまいました。

 

「い、今、なんて言いました?き、聞き間違えじゃなければ、」

 

「爸爸!」

 

(ぎゅっ)

 

女の子をは聞き間違え者無かった言葉をもう一度言ってご主人様の足に抱きつきました。

 

「ご、ごご、ご主人様、こ、これはどういうことですか!?ま、まさか、隠し子!?」

 

「し、知らない!俺の子供じゃないよ!」

 

「じ、じゃあ、なんでご主人様のことを爸爸って呼んでるんですか!」

 

「それは俺が聞きたいくらいだよ。そ、それに――」

 

「媽媽!」

 

(ぎゅっ!)

 

「ええぇえ!?わ、私も!?」

 

ご主人様が何かを言うとしたとき、今度は私のことを媽媽と呼んで抱きついてきました。

 

「もしかして……」

 

「これって……」

 

「「迷子!?」」

 

「?」

 

声をそろえて驚く私たちに小さな女の子は私に抱きついたまま首を傾げていました。

 

「と、とにかく、早いところ両親を探してあげないと」

 

「そ、そうですね!えっと、こんにちは」

 

「こんちに?」

 

「こ・ん・に・ち・は」

 

「こんちにわ」

 

「あはは、まあいいかな。えっとね、お名前を教えてくれるかな?」

 

「媽媽!」

 

(ぎゅっ)

 

「わぷっ!私じゃなくて、あなたのお名前を教えてほしいな?」

 

「三ちゅ」

 

「すごい名前だな……」

 

「もう、そんな名前あるわけが無いじゃないですか、ご主人様」

 

ご主人様の言葉に思わず突っ込んじゃいました。

 

「違うでしょ?お歳の前に言うことがあるでしょ?」

 

「……(ちゅん)

 

「そっか、(ちゅん)ちゃんって言うんだね」

 

「うん」

 

「それで、(ちゅん)ちゃんの爸爸と媽媽はどこにいるのかな?」

 

「爸爸!媽媽!」

 

(ちゅん)ちゃんはご主人様と私を順番に指差して呼んできました。

 

「こ、困っちゃいましたね」

 

「人に聞いて回るしかないな」

 

「そうですね」

 

「?えへへ♪」

 

うっ……か、可愛い。

 

(ちゅん)ちゃんは首を傾げていましたが、ご主人様と見ると照れたようにはにかみました。

 

こうして、(ちゅん)ちゃんの両親を探すべく、ご主人様と町の人に聞きながら回り始めました。

 

………………

 

…………

 

……

 

「中々見つかりませんね」

 

「ああ、結構探したんだけどな」

 

あれから一刻ほど探しましたが(ちゅん)ちゃんの両親は見つかりませんでした。

 

「きっと両親も探してると思うんだけどな」

 

「そうですよね」

 

「あふ……」

 

(ちゅん)ちゃんを見ると眠そうな目をしてうとうとしていました。

 

(ちゅん)ちゃん、眠たいの?」

 

「……(こくん)」

 

「よし。それじゃ、俺がおんぶをしてあげるよ」

 

「ん……」

 

(ちゅん)ちゃんは頷くと腰を屈めたご主人様の背中におぶさりました。

 

「すー、すー」

 

おぶさった(ちゅん)ちゃんは直ぐに寝息を立てて眠ってしまいました。

 

「ふふ。(ちゅん)ちゃんもう寝ちゃいましたよ」

 

「ちょっと歩き過ぎちゃったかな。だっこして探してあげればよかったかな」

 

「そうですね。でも……(ちゅん)ちゃんの寝顔可愛いな」

 

(ちゅん)ちゃんの寝顔は今が群雄割拠だということを忘れるくらい健やかな寝顔でした。

 

「早く(ちゅん)ちゃんたちが安心して暮らせる世の中になるといいですね」

 

「そうなる為に、桃香は立ち上がったんだろ?」

 

「はい!だから私、頑張っちゃいますよ!」

 

「はは、その意気、その意気。でも、これだけは忘れないで。桃香は一人じゃない、愛紗や鈴々、仲間がたくさん居るってことを。困ったり、悩んだり、悲しかったり、苦しかったりしたら一人で抱え込まずにみんなに相談するんだ。きっと力になってくれるから」

 

「はい、そうします」

 

「よし、それじゃ、両親探しの再開だ」

 

「はい!」

 

「んんっ」

 

「「っ!」」

 

「……すー、すー」

 

「「ほっ」」

 

私の大きな返事に(ちゅん)ちゃんが目を覚ましたかと思ったが、暫く黙っていると寝息が聞こえてきて二人して安心した。

 

「あはは」

 

「ふふ」

 

「静かに探さないとね」

 

「そうですね」

 

(ちゅん)ちゃんを起こさないように小さな声で笑い両親探しを再開した。

 

「だいぶ日が傾いてきましたね」

 

「そうだな。早く見つけないと」

 

あれから方々探してみましたが(ちゅん)ちゃんの両親は見つかりませんでした。

 

「もしかして(ちゅん)ちゃんは捨てられて……」

 

「そんなこと無いよ。こんなに可愛い子を見捨てるなんてこと絶対に無い」

 

「そ、そうですよね。すみませんご主人様。へんなこと言っちゃって」

 

うぅ……私、なんてこと言っちゃったんだろう。そうだよね、こんなに可愛いのに捨てるなんて絶対に無いよね。

 

「う~ん。これだけ探して居ないとなると、まだあの市で探してるのかな?一旦、(ちゅん)ちゃんを見つけた市に戻ってみよう」

 

「そうですね。探しているかもしれませんし、戻ってみよう、ご主人様」

 

私とご主人様は(ちゅん)ちゃんと始めてあった市に戻ってみることにしました。

 

……

 

…………

 

………………

 

「……居ないですね」

 

「ああ」

 

(ちゅん)ちゃんと会った市に戻ってきたけど、人を探しているそぶりをしている人は周囲には居なかった。

 

「やっぱりこの娘は……」

 

捨てられたのかな……

 

(ちゅん)!」

 

そう思った矢先でした。(ちゅん)ちゃんの名前を呼んでこちらに駆けてくる二人の姿が見えました。

 

「ん……媽媽?」

 

ご主人様におぶさり眠っていた(ちゅん)ちゃんは呼ばれる声に目を覚まし、目元をこすりながら辺りを見回していました。

 

「ああ、よかった!(ちゅん)(ちゅん)!」

 

(ちゅん)ちゃんに駆け寄り、抱きしめながら何度も名前を呼んでいました。

 

よかった。捨てられてたわけじゃなかったんだね。

 

涙を流しながら(ちゅん)ちゃんを抱きしめる母親に私は嬉しくなり少し涙ぐんでしまいました。

 

「御遣い様、劉備様。この度はお手数をおかけして申し訳ありませんでした」

 

(ちゅん)ちゃんを抱きしめる母親の横で父親が私たちに頭を下げてきました。

 

「そんな。対したことはしていませんよ」

 

「とんでもありません。最近近隣の邑では子供が攫われる事件が頻発していると聞いておりました。そんな矢先、(ちゅん)が居なくなったと慌てる妻を見て私も心配で探していたのです」

 

「そんな事件が起きているなんて……」

 

父親の話はまだ城では報告にあがってきてはいませんでした。

 

多分だけど、不確かな情報を報告するわけにはいかないと朱里ちゃんたちが調べてる最中なんだと思う。

 

でもこうして慌てているってことは結構深刻な状況なのかもしれない。

 

「ほら、お前からも御遣い様と劉備様にお礼を言いなさい」

 

「この度は本当にありがとうございました。このご恩を一生忘れません!」

 

父親に言われ、母親は立ち上がり頭を深々と下げてお礼を言ってきた。

 

「そんな、頭を上げてください!それよりも、これからは出かける時、しっかりと手を繋いであげていてくださいね」

 

「はい!もちろんです!本当にありがとうございました」

 

母親は力強く頷き、また私たちにお礼を言ってきました。

 

「それでは、これで失礼いたします。御遣い様、劉備様」

 

「はい、気をつけて帰ってくださいね」

 

(ちゅん)ちゃんは両親と手を繋ぎ、お家へ帰っていきました。

 

「いいな~」

 

親子を見送りながらポツリとつぶやいた。

 

「ん?」

 

私のつぶやいた言葉にご主人様は聞き返してきました。

 

「あの親子を見ていたら羨ましくなっちゃって」

 

「羨ましい?」

 

「はい。私、夢があるんです」

 

「夢?それって『みんなが笑顔で暮らせる世界にする』ってやつか?」

 

「それも確かに夢なんですけど。もっとささやかな夢です」

 

「どんな夢なんだ?」

 

「わ、笑わないでくださいね?そ、その、ね?……好きな人との間に子供を作ってさっきの親子みたいに手を繋ぎたいなって……~~~っ!はうぅ、恥ずかしいよ」

 

自分の言った夢に恥ずかしくなり両頬を両手で隠しました。

 

「桃香……」

 

「ご主人様……」

 

見つめ合い自然とお互いの顔が近づく。

 

「ん、ん……あ、あの、御遣い様」

 

「「っ!?」」

 

その時、遠慮しがちに話しかけてくる声が聞こえてきた。

 

「大変申し訳ないのですが、店の前でやられますと……」

 

「「……あ」」

 

二人で周囲を見回して思わず声を漏らしてしまいました。

 

「す、すみませんでした~~!」

 

「ち、ちょ!桃香!」

 

恥ずかしさのあまり、私はご主人様を置いて走って逃げてきてしまいました。

 

城に戻り私は部屋に駆け込んだ。

 

「はぁ……」

 

自室で後悔の溜息を吐く。

 

「うぅ~、ご主人様怒ってるよね、きっと……」

 

だって、ご主人様を残して逃げて来ちゃったんだし……

 

「はぁ~~~~~」

 

先ほどの事を思い出し、また溜息を吐く。

 

「はぁ……しばらくご主人様と顔を合わせたくないなぁ」

 

いくらご主人様が好きでも、流石にあんな事があった後だと会う勇気が沸かない。

 

「はぁ~~~~~」

 

何度目かの溜息を吐く。

 

「桃香様、お帰りですか?」

 

「あ、うん。今帰ってきたところだよ」

 

扉の前で月ちゃんの声が聞こえてきた。

 

「お茶をお持ちしました、中へ入ってもよろしいでしょうか?」

 

「うん、どうぞ」

 

「失礼します」

 

月ちゃんは茶器をお盆に載せて器用に扉を開けて入ってきた。

 

「お淹れしますね」

 

「あ、大丈夫だよ。あとは私がやるから。月ちゃんも疲れたでしょ。もう休んでいいよ」

 

「はい。後片付けが終わったら休ませて貰います。それでは失礼します」

 

月ちゃんは微笑んでお辞儀をすると部屋から出て行った。

 

「ふぅ、持ってきてもらった月ちゃんには悪いけど、今日はもう寝ちゃおうかな」

 

今日の終わりがあんな終わり方だったので早く忘れたいという気持ちがあった。

 

(こんこん)

 

「?誰だろう」

 

寝ようと着替えをはじめようとした時だった。部屋の扉を叩く音が聞こえた。

 

「は~い」

 

そこで気が付くべきだった。部屋の扉を叩く人はたった一人しかいないことに。

 

「は~い、誰です、か……」

 

「やあ、桃香」

 

「ご、ご主人様!?」

 

扉を開けると目の前にはご主人様が居た。

 

「な、なんでここに……」

 

「先に帰っちゃったからさ。ちょっと気になってね」

 

「う゛……」

 

私を心配して会いに来てくれたことに嬉しさよりも、申し訳なさが大きかった。

 

「そ、その……私は大丈夫ですから」

 

「そっか、よかった」

 

「……」

 

ご主人様の笑顔にさらに罪悪感が募る。

 

逆に、怒って貰えた方が気が楽なのに……

 

でも、ご主人様が普段怒っている所を見たことが無い。ご主人様が怒る時は決まって自分の身をかえりみない時だけだった。

 

うぅ……すごく居心地が悪いよ。

 

「え、えっと……お、お茶でもどうですか?さっき月ちゃんに持ってきてもらったんですよ」

 

ひーん!私何言ってるんだろう!いくら会話が続かないからってお茶に誘うなんて、もっと会話が続かないよぉ!

 

「それじゃ、貰おうかな」

 

ご主人様は私の気も知らずに笑顔でお茶に誘われちゃいました。

 

「そ、それじゃ、中へどうぞ」

 

御主人様を部屋に招き入れる。

 

「ちょっと待っててくださいね。すぐに入れますから」

 

「……」

 

(ぎゅっ)

 

「きゃっ!?あ、あの、ご主人様!?」

 

ご主人様に背を向け、お茶を淹れようと茶器を手に取ったところで後ろからご主人様に抱き着かれました。

 

「俺、ちょっと怒ってるんだよ?」

 

「っ!」

 

耳で囁く言葉に体がびくっと震えた。

 

怒ってる……ご主人様が……

 

本当は謝らないといけないってことは分かってる。だけど、震えて声が出てこなかった。

 

「言ったよね?『今日一日、桃香は俺だけの桃香だ』って」

 

「えっ……んっ!?」

 

ご主人様の言葉に振り返るとそのまま接吻をされました。

 

え?え?これ、どういうこと?だってご主人様は怒ってて、でも私に接吻を……え?え?

 

「んんっ!……ん……」

 

最初は驚き混乱していた私でしたが、そのうちに落ち着いてきました。

 

「んっ……ぁ……」

 

ご主人様と唇が離れ、思わず物足りなさそうな声を出してしまった。

 

「ん?」

 

「そ、その……もう一回してもらってもいいですか?いきなりだったから驚いちゃって」

 

「いいよ。何度でもしてあげる」

 

「んっ……ちゅ、……んふっ……」

 

今度はご主人様の正面を向き再び接吻をしました。

 

「ちゅっ……んんっ……ごしゅじん、ひゃま……んん、……ちゅぷ……」

 

二度目の接吻は最初のものよりも長く、そして濃厚な接吻になりました。

 

「……ぷは……はぁ、はぁ……えへへ♪」

 

長い接吻が終わり、お互いの口が離れるとまだ互いを求めているかのように私とご主人様の口から一筋の糸が現れました。

 

それを見た私は照れくさくなり、思わず照れ笑ってしまいました。

 

「……ご主人様、私の全てを見てくれますか?」

 

私は少し勇気を出してご主人様にお願いをしてみた。

 

「桃香がそれを望んでくれるなら、よろこんで」

 

「きゃっ」

 

ご主人様は頷き、私を抱きかかえると寝台へと連れて行ってくれました。

 

「……優しくしてくださいね」

 

「もちろんだよ、桃香……ちゅ」

 

「んっ……」

 

触れるだけの軽い接吻をしてくれるご主人様。

 

そして、ご主人様は私の服を脱がしていく。

 

「……は、はずかしい」

 

服を全部脱がされ恥ずかしさで顔を隠す。

 

「そんなことないよ。とても綺麗だ」

 

「ぁぅ~~~~」

 

ご主人様の言葉にさらに恥ずかしくなる。

 

ほっ、部屋が暗くてよかったよ。こんな赤くなった顔見られたくないし。それに今、ご主人様の顔を見たらもっと大変なことになっちゃいそうだし。

 

その後、ご主人様は優しく私を抱いてくれた。

 

「はぅ~~~~……」

 

事を終えて今はご主人様に寄り添うように横になっていた。

 

ご主人様は疲れたのか私の横でぐっすりと眠っていました。

 

「ま、まだご主人様が私の中に居るみたい……」

 

お腹を軽くさすり私の中に注がれたご主人様の精を感じる。

 

「……えへへ♪」

 

思わず笑みがこぼれた。

 

「やっぱりご主人様は凄いな」

 

横で眠るご主人様を見て改めてご主人様は凄いなと思った。

 

だって、あんな別れ方をして楽しい一日を台無しにしちゃったのに、ご主人様は最後の最後で覆してくれたから。

 

「やぱりご主人様を好きになって良かった……」

 

「ん……桃香……」

 

「っ!?も、もしかして聞かれちゃった!?」

 

「……桃香……」

 

「……」

 

思わず息をのむ。

 

「……いつまでも、一緒に居るぞ……ぐぅ……」

 

「ね、寝言?」

 

「ぐぅ~、ぐぅ~」

 

「ほっ……」

 

どうやら寝言だったらしく私は一安心した。

 

「……でも」

 

寝言でも『いつも一緒に居るぞ』って言われてとてもうらしかった。

 

「ご主人様とずっと一緒……」

 

その言葉に昼間出会った家族の事を思い出した。

 

「子供、か……」

 

私もいつか……

 

そこで眠るご主人様をまた見る。

 

「いつか、私もご主人様との間に子供が出来るといいな……」

 

でも……

 

「ご主人様は鈍感さんだからな……」

 

(つんつん)

 

「んん……」

 

ご主人様の頬をつんつんと突くと痒そうに頬を掻いた。

 

「ふふ♪……ふぁ……」

 

不意に眠気が襲ってきて欠伸がでてしまった。

 

「ん……そろそろ、私も寝ようかな」

 

(ごそごそ)

 

「……えへへ、おやすみなさい、ご主人様……ちゅ」

 

眠るご主人様の頬に口付をしてたくましい胸に頭つける。

 

(とくん……とくん……)

 

ご主人様の鼓動……とても安心できる優しい音。

 

目を瞑りご主人様の鼓動を聞きながら私は眠りについた。

 

明日も元気に頑張れるように……そして、ご主人様とこれからもずっと一緒に居られるように願いながら……

 

《To be continued...》

葉月「ご無沙汰しています。葉月です」

 

愛紗「愛紗だ。そして」

 

桃香「えへへ、今回の主役の桃香です!」

 

葉月「はい。という訳で今回はこのメンツで奥付を行いたいと思います……そ、その前にこの縄解いてくれますか?」

 

愛紗「……は?」

 

桃香「……え?」

 

葉月「いやいやいや?始まる直前に縄で締め上げられ、さらに木の棒にくくりつけられてるんですよ?私が何かしましたか!?」

 

愛紗「何かしたか、だと?」

 

桃香「う~ん、逆に何もしなかったからこういうことになってるんじゃないのかな~」

 

葉月「え?」

 

愛紗「前回の投稿から、どれほど時間がたっていると思っているんだ?」

 

桃香「うんうん」

 

葉月「いや。だ、だって年度末で仕事が……」

 

愛紗「書く時間など家に帰ってからすれば出来ることだろう」

 

桃香「うんうん」

 

葉月「そ、そりゃそうですけど、疲れて帰ってくると考えるのも面倒なんですよ」

 

愛紗「そんなことは私の知ったことではない」

 

桃香「うんうん!」

 

葉月「桃香はさっきから頷いているだけですね」

 

愛紗「それが桃香様だ」

 

桃香「うんうん!って、あ、愛紗ちゃん?それはどういう意味かな?」

 

愛紗「そして!なぜ私の出番があれだけなのだ!」

 

葉月「本題はそこですね!桃香の事は建前ですね!」

 

桃香「ねえ、ねえ!無視しないでよ、愛紗ちゃん!それが私だってどういう事!」

 

愛紗「そこが桃香様の良い所と言う事です」

 

桃香「そ、そうかな?えへへ、照れるな」

 

葉月「あ、愛紗が桃香を丸め込んでいる……」

 

愛紗「何か言ったか?」

 

葉月「イ、イイエナニモ」

 

愛紗「さて、桃香様。約二か月も放置した罰、葉月をどういたしましょうか」

 

桃香「えへへ……え?あ、う、うん!そうだね!それでいいと思うよ!」

 

葉月「……」

 

愛紗「……桃香様。私はまだ何も言っていませんが」

 

桃香「え!?あ、あの……そ、そうだ!愛紗ちゃんの好きにしていいって意味だよ!」

 

葉月「いま、そうだって言いましたよね」

 

桃香「き、気のせいだと思うな。それか、気の迷いとか!」

 

葉月「いや。こういう場面で使う言葉じゃないですよ、それ」

 

桃香「はう!い、いい!兎に角、葉月さんは火あぶりに串刺しの刑ってことで、今回のお話のことだよ!」

 

葉月「今、さらっとえぐいこと言いましたよね!?」

 

愛紗「桃香様、ご主人様に抱いていただくのが今回で二度目ですか、羨ましいです」

 

葉月「無視!?」

 

桃香「えへへ。でも、肝心なところが書かれてなくて残念かな」

 

愛紗「それは仕方ないでしょう。年齢制限が掛けられないのですから。そしに、葉月のへたれっぷりのせいでもありますから」

 

葉月「うぅ……酷い言われ様だ」

 

桃香「でも、ご主人様とお買い物出来て楽しかったな♪」

 

愛紗「それは何よりです。私も『早く』書いてもらいたいものです」

 

葉月「うわ、ものすごく強調された。そうは言っても仕事がい―」

 

桃香「大丈夫だよ!きっと私みたいな良いお話を書いてくれるよ」

 

葉月「とうとう、最後まで喋らせて―」

 

愛紗「だと良いのですが」

 

桃香「大丈夫!やれば出来る子だから、葉月さんは!」

 

葉月「……(今、私は桃香以上に出来ない子と言われた気が……)」

 

桃香「なんだろ、今物凄く不愉快な気分になったよ」

 

愛紗「それはいけません。では、この松明で葉月の下に組んである薪に火を放ちましょう。きっとすがすがしい気分になることでしょう」

 

葉月「っ!?ち、ちょ!さ、さすがにそれはやりすぎでしょ!わ、わかりました!謝ります!遅れたこと謝りますから!」

 

愛紗「と、申していますがどういたしましょうか」

 

桃香「それじゃ、遅れたこと謝ってくれたら許してあげます」

 

愛紗「だそうだ。桃香様に感謝するのだな」

 

葉月「こ、この度は投稿が二か月近く遅れてしまい申し訳ありませんでした。次回は少しでも早く投稿できるように努力します」

 

桃香「それじゃ、謝ったことだし、許してあげます!」

 

葉月「ほっ……」

 

愛紗「では、桃香様。その松明をお渡しください」

 

桃香「どうするの?」

 

愛紗「こうするのです……(ぽい)」

 

葉月「ちょ!?熱っ!も、燃えてる!薪が燃えてる!」

 

愛紗「ああ、手が滑ってしまった。申し訳ない」

 

葉月「嘘だ!明らかに薪目掛けて投げてたでしょ!」

 

愛紗「さあ、桃香様。ここは危険です。後の事は葉月に任せて帰りましょう」

 

桃香「そうだね。それじゃ、葉月さん。頑張ってね!」

 

葉月「縛られてるのにどうがんばれと!?って、ツッコんでいる間に居なくなった!と、兎に角、次回は投票第一位の愛紗のお話です!それではみなさん次回お会いしましょう!あちぃぃいいいい!?誰か助けてぇぇぇええええっ!!!」


 
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