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真・恋姫無双 刀蜀・三国統一伝 第六節:桃香、攻めに転じる・・・愛紗の憂鬱

syukaさん

何でもござれの一刀が蜀√から桃香たちと共に大陸の平和に向けて頑張っていく笑いあり涙あり、恋もバトルもあるよSSです。

2013-04-17 05:27:47 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:6283   閲覧ユーザー数:4780

まえがき コメントありがとうございます。今回は桃香と愛紗のターンです。メインヒロインと元メインヒロインですね。最近の刀蜀伝は月と薔薇に重きを置きすぎたかな(今更)と思いますので、二人に頑張ってもらいましょう。頑張れ桃香!頑張れ愛紗!それではごゆっくりしていってください。

 

 

皆さんこんにちは!劉玄徳こと桃香です。今、霞さんの何気ない一言で将たちの模擬戦大会が行われることになりました。私は当然観戦に徹します。というより、他に選択肢は残されていませんね。皆、頑張って!ちょっと・・・ちょっとだけですよ。ちょっとだけご主人様を多めに応援します。ご主人様が剣を振るう姿を見るのって久しぶりだな~。絶対格好良いよね~。

 

「ぽへ~。」

「桃香、何をぼけ~っとしてるのよ。もうすぐ試合が始まるわよ。」

「ぽへ・・・え!?詠ちゃん、待って~!」

「まったく・・・。月は劉協様と一緒に観客席の方に移動したからはやくしなさいよ。」

「は~い。」

 

何で模擬戦大会が行われることになったかと言うと、それは二時間ほど前まで遡る。

 

・・・

 

俺は薔薇を起こして朝食を食べに庭へ向かった。

 

「薔薇、よく眠れた?」

「ええ。一人で寝るよりは寝覚めはいいわ。」

「それは良かった。」

 

寝台が固くて眠れなかったわ。とか言われたらどうしようとか思ってたけど、杞憂に終わって少しほっとした。

 

「今日は誰が朝食を作るの?」

「誰だろうね。大体は月か流琉、たまに清羅だけど。まぁ、庭まで行ってみれば分かるよ。」

「そうね。」

 

とりあえず、色々と話しながら歩を進めて庭まで辿りついたんだけど・・・珍しい組み合わせの二人を発見した。

 

「おっ、一刀に劉協はんやないか。おはようさん。」

「ご主人様に劉協様、おはよう。」

「おはよう。霞、翠。」

「おはよう。」

「二人とも、こんな朝からどうしたのさ?いつもは警邏してる子たちと愛紗くらいしか起きてない時間なのに。」

「うちかて、はよう起きる日くらいある。そや、一刀もこれに参加せえへん?」

「げ!ご主人様にも聞くのかよ!?」

「武官で一刀だけ仲間はずれっちゅうのも後味が悪いやん。それに、うちは一刀とも再戦したいおもうとったとこやし、良い機会や。」

「ん?話が見えないんだけど・・・。」

 

模擬戦でもするのかな?けど、それなら参加どうこうって話は出てこないだろうし・・・。

 

「そういえばご主人様、昨日は宴がお開きになる前に自室に戻ってたからな。」

「そういえばそうだった。」

 

話を聞けばこうだ。事の発端は霞で、最近は槍を振るっていなくて暇だったとのこと。それで将たちで大会でも開いてはどうだろう?と提案した詠。それに乗っからない訳が無いうちの子たち。焔耶と桔梗は特に乗り気だったそうで。まぁ、あの二人だからな。

 

「なるほどね。じゃあ俺も参加するよ。」

「よっしゃ!うちも頑張らなあかんな!」

「ご主人様も出るのか・・・。いや、ここでやらぬは馬家の娘として名折れだな!」

「一刀も出るのね。頑張りなさいよ。」

「おう!」

 

よーし!やるぞー!と心の中で意気込んでいたら鈴がひょこっと現れた。

 

「なぁ、私も参加して良いか?」

「・・・。」

 

その言葉に顔を見合わせる翠と霞。

 

 

「あかんとは言わへんけど、鈴が参加したら一人勝ちするんやない?」

「流石に私もここで本気は出さん。手加減はする。」

「ちなみに聞くけど、鈴のその手加減は蜀将でいうと・・・誰くらいなんだ?」

「そうだな。一刀と同等といったところだ。」

「・・・私、勝てる気がしないぞ。」

「鈴ってそんなに強いのね。」

「私は竜だからな。」

「・・・聞き間違いかしら?竜って聞こえたのだけど。」

「鈴は竜だよ。黄竜。五台山で出会って、ついて来ちゃった。」

「何を言うか、私の唇を奪ったのは一刀の方だろう。」

「・・・俺の記憶が正しければ俺が鈴に唇を奪われたって思うんだけど?」

「流石に覚えていたか。忘れてたら拗ねるところだったが。」

「俺にどうしろと?」

 

どう返答しても困るのは俺のようだ・・・。

 

「霞、鈴って全然竜とは思えないんだけど・・・。」

「普段はこんなんやけど、正真正銘ほんまもんの竜や。うちも最初は半信半疑やったんやけど、竜の姿を見てしもうたさかいなぁ。信じるしかあらへんもん。」

「へぇ・・・。」

「興味があるなら本当の姿を見せてやってもいいぞ。」

「駄目。」

「即答だな。」

「鈴が竜の姿になったら愛紗に怒られるのは俺なんだからね。」

「愛紗のお説教は長いからなぁ。それにおっかない。」

「誰のお説教が長くておっかないって?」

「だから愛紗・・・。・・・・・・。」

 

翠の背後には額に青筋が入っている愛紗が仁王立ちしていた。

 

「愛紗、おはよう。」

「おはようございます、ご主人様。」

 

俺への挨拶の表情はいつも通り、にこやかだ。しかし・・・

 

「ところで・・・翠。もう一度聞くぞ。誰のお説教が長くておっかないだと?」

 

翠へ視線を向けると、俺にお説教するときの顔になった。仁王ならぬ閻魔大王だよ・・・。連行されるのはもちろんいろんな意味で地獄行き。

 

「すいません!嘘です!ごめんなさい!」

「まったく、怒られると分かっているのなら言わなければ良いだけだろう・・・。」

 

ありゃ?いつも有無を言わさずお説教コースなんだけどな。口に出したら俺がお説教されるから言わない。

 

「それで、何の話をされていたのですか?」

「え~と・・・そうだ。鈴も参加出来ないかって話をしてたんだ。」

「鈴もですか。私としては不足はありませんし、むしろ大歓迎ですよ。」

「愛紗のその自信はどこから来るんだよ・・・。」

「強い相手と一戦交えるのは将としての血が騒ぐからな。」

「それと、俺も参加することになったから。」

「そうですか・・・はい!?」

 

あれ?鈴のときは驚かなかったのに・・・どうしたのかな?

 

「ご主人様は何を考えていらっしゃるのですか!万が一、あなたが怪我でもしたら一大事ですよ!分かっているのですか!?」

「一刀は私の力を体内に宿しているのだ。致命傷を負っても数刻で元通りになるのだし、問題はなかろう?」

「しかし・・・。」

「愛紗、心配しなくても大丈夫だよ。俺が怪我をしなければいいだけなんだし。それに、刃は潰してあるんだから。」

「そういう問題ではないのです・・・。」

「?」

 

どういうことなんだろう?俺が怪我をしなければいいだけなんじゃないのか?それなら他に何か・・・。結局、考えても答えが出ることはなく、そのまま朝食の時間となった。

 

 

「はぁ・・・。」

「愛紗ちゃんが溜息なんて珍しいね。何か悩みでもあるの?」

「桃香様・・・いえ、なんでもありません。」

 

ご主人様は胡花を起こしに行かれた。私のこのような姿をお見せするわけにはいかない。だが・・・どうしても考えてしまう。ご主人様も大会に出るということは、私と当たる可能性もあるということだ。勿論、初戦で私が負けてしまえば当たる可能性としてはぐっと低くなるわけだが、私も武人だ。優勝を狙いに行く。しかし・・・。

 

「はぁ・・・私はどうすれば・・・。」

「無理しちゃ駄目だからね?」

「はい。心配をお掛けして、申し訳ありません。」

「そんなこと気にしなくていいよ~。いつもは私が愛紗ちゃんに心配ばっかり掛けてるんだから。それに、私は愛紗ちゃんのお義姉さんなんだから、相談してくれてもいいからね。」

「ありがとうございます。」

 

桃香様にまで心配されるとは・・・しっかりしなければ。

 

「もしかして・・・ご主人様のこと?」

「(びくっ)」

「やっぱり~。愛紗ちゃんがそういう顔をしてる時って、大体はご主人様のことを考えてるもん。」

「顔に出ていますか?」

「うん。」

「そうですか・・・。」

「なんか、昔の愛紗ちゃんみたい。」

「と、言いますと?」

「反董卓連合がある前くらい? 私がご主人様といる時の愛紗ちゃん、いつもそんな表情だったよ。」

「気付かれていたのですか・・・。」

「私はいつもご主人様のことを見てるけど、それ以前に愛紗ちゃんたち皆のことを見てるもん。ずっと昔から一緒にいる愛紗ちゃんなら尚更分かるよ。勿論、鈴々ちゃんもね。」

 

あの頃は・・・私は家臣の立場で、ご主人様に添い遂げることは出来ないと考えていた頃だったか。確かに、考えていることは似ているかもしれないな。昔は、私は女である以前に一人の武人なのだと考えていた。しかし今は・・・私自身の気持ちに気づいてしまった今は武人である以前に・・・一人の女なのだと思い知らされた自分がいる。だからこそ、今回の大会は・・・

 

「愛紗ちゃん。」

「・・・なんでしょうか。」

「私、ご主人様のこと好きだよ。」

「存じています。」

「皆のことをちゃんと考えて、好きでいてくれるご主人様のことが好き。優しいご主人様が好き。少し抜けてるけど、しっかりしてるご主人様が好き。言いだしたらキリがないくらいに。けど、一つだけ言えることは・・・ご主人様の一番になりたい。」

「・・・っ。」

「皆を平等に愛してくれるっていう点も好きの一つって言ったけど、それでも私はご主人様にとっての一番でいたい。たまにね、思うんだ。私だけを見て欲しいって。独占欲って言うのかな?矛盾してるかもしれないけど。」

「・・・分かる気がします。」

「うん。それで、良い機会だからはっきり言っておくね。」

 

桃香様は真剣な眼差しで私の瞳を見ている。桃香様は・・・本気だ。

 

「私、負けないからね。」

「・・・。」

 

そう言い残して桃香様は戻ってきたご主人様の傍へ行ってしまった。私は、桃香様の言葉に言い返すことが出来なかった。私も負けるつもりはないと。こんなのは私らしくないと頭では分かってはいるのだ。しかし・・・体と心が言うことを聞いてくれない。

 

「愛紗よ、前途多難だな。」

「星か・・・。」

「話はこっそり聞かせてもらったぞ。愛紗も大変だな。ああなった桃香様は強敵だ。恋敵としてな。」

「恋敵・・・。」

「主は皆を平等に愛してくださるだろうが、桃香様はそれでは納得されないのだろう。無論、私もな。」

 

 

「なぁ星、一つ聞いてもいいか?」

「私の答えられる範疇ならな。」

「今回の大会にご主人様も参加されるのは知っているだろう?」

「勿論。それで?」

「もし、お前とご主人様が当たったら・・・ご主人様に槍を向けることができるか?主であるご主人様に、模擬刀であるとしても・・・刃を潰しているとしても・・・槍を向けることは出来るか?」

「愛紗は出来ぬのか?」

「私には・・・出来ぬ。そう言う星はどうなのだ?」

「私は主を守ると決めたのだ。それに、主を守るならば主以上に強くならなければ示しが付かないからな。それを主に証明する良い機会だと私は考える。」

「示し?」

「これは個人的な問題だがな。そこは気にしないでくれ。とにかく・・・」

「?」

「愛紗が何故悩んでいるのかは大体は把握した。とりあえず、腕試しとして主に挑むのもアリではないか?一人の武人として、な。(光兄さん・・・見ていてくだされ。)」

 

星も酒を飲みに霞たちの下へと行ってしまった。武人として・・・か。それが出来れば苦労しないさ。それから、少し朝食を摂っても悶々とした気分が晴れることはなかった。

 

・・・

 

皆が朝食を摂り終わった後、大会参加者は鍛練場に集められた。ちなみに、鈴は出た時点で優勝が確定するため参加不可となった。拗ねた鈴の機嫌を取るのも俺なんだよ・・・。

 

「それではこの箱に入ってる紙を一枚ずつ取ってください。それから仕合相手と大会表を作り上げますので。同じ数字を引いた人が初戦の対戦相手になります。」

 

朱里が持っている箱から一枚ずつ紙を引いていく。ちなみに、参加人数は十六人。

 

「やったー!鈴々、壱なのだー!相手は誰なのだ?」

「私ですね。鈴々ちゃん、よろしくお願いしますね。」

「流琉が相手なのかー。」

「第一仕合は鈴々ちゃんと流琉ちゃんですね。」

「蒲公英、陸引いたー。相手はー?」

「恋。」

「・・・どうしたの?」

「恋、陸。」

 

蒲公英がこの世の終わりみたいな表情を浮かべている。

 

「蒲公英。」

「蒼兄様・・・もしかして、代わってくれるの!?」

「骨は拾ってやるからな。」

「期待した蒲公英が馬鹿だったよ・・・。」

「? 蒲公英、体調、悪い?」

「へ? ど、どうして?」

「顔色、悪い。」

「そ、そんなことないよ!」

 

うん、恋は何も悪くないんだ。蒲公英のくじ運が悪いだけであって。

 

「第陸仕合は鈴々ちゃんと流琉ちゃんですね。・・・蒲公英ちゃん、本当に大丈夫?」

「う、うん・・・。死なない程度に耐えてみせるよ。」

「?」

 

それから皆がどんどん紙を引いていき、そして箱の中が空になった。

 

「なぁ雛里、ちょっといいかな?」

「なんですか?」

「この大会ってさ、優勝したら何か商品とか用意してたりするの?」

「え~と・・・これです。」

「どれどれ・・・。」

 

雛里に渡されたルール表に目を通してみる。

 

「使用する武器は刃を潰した模擬刀を使用すること。仕合中の言葉は戦略・策略として用いても良い。場外へと落とされた場合、その者の敗北とする。膝を付き、十秒経過した場合その者の敗北とする。優勝者には翌日、北郷一刀と二人っきりになれる権利を与えられる。・・・ん?」

 

 

何、この最後の項目・・・。俺、初耳なんだけど。

 

「ねぇ雛里、この最後の項目は何なの?」

「え~と・・・蒲公英ちゃんの要望に星さんが乗っかったんです。」

「・・・。」

 

少し離れたところで沈んでいる蒲公英を見やる。ここで蒲公英に言うと追い討ちになっちゃうから今は言わないであげよう。

 

「けどさ、これって俺が優勝した場合どうなるのさ?」

「う~ん・・・この規定が決まった時はご主人様は既に眠られていたので。朱里ちゃん、どうしようか?」

「ご主人様のお願いを、大会参加者の誰かに聞いてもらうということで良いのではないでしょうか?」

「うん、それなら俺も大丈夫かな。」

「待て待て。俺が優勝したらどうすんだよ?兄貴と二人っきりになっても俺は嬉しくないぜ・・・。」

「蒼さん!大丈夫ですよ!」

「(こくこく)」

「何を根拠に?」

「蒼さんならご主人様と二人っきりでもやっていけますよ!」

「蒼さんなら劉協様からご主人様を取り返してくれるはずでしゅ!」

「・・・自分の意思に反して八百一に肩入れはしねぇからな。」

「え~!?」

 

俺と蒼の絡みのどこに興味を持ってるのかは全く理解できないけど・・・薔薇から俺を取り返すっていうのはどう言う意味なんだろうか?

 

「とりあえず、仕合を開始しますので皆さん移動しますよ~。」

 

俺たちは観客席の用意されている鍛錬場へと移動した。

 

・・・

 

俺たち将、その数十六名はとりあえず戦闘の時は待機。戦をし終え勝敗が決まった場合、勝者は待機室へ、敗者はそのまま応援席へ。又は怪我人として華佗の下へ連れて行かれる。模擬刀が使われるから怪我をする心配はぐっと減るけどね。

 

「それでは第一回戦、第一仕合。鈴々ちゃんと流琉ちゃん、壇上に上がってください。」

「流琉!尋常に勝負なのだ!」

「はい!」

 

鈴々と流琉が対峙する。

 

「鈴々の丈八蛇矛と流琉の電磁葉々。どっちも一撃が大きい武器だけど、どっちが優勢だと思う?」

「あの二人では、どちらが有利と言うことは出来ませんね。強いて言うのであれば、一撃の大きさであれば流琉ちゃん。素早い動きと武器の射程で言えば鈴々ちゃんでしょう。」

「紫苑もそう思う?」

「えぇ。体型的にも似たような二人ですから。」

「二人とも~、頑張って~!!」

 

桃香の声援が鍛練場に響く。

 

「うりゃりゃりゃりゃ~~~!!」

 

二人とも待つことを知らないのか、仕合開始すぐに攻撃態勢に入る。鈴々は流琉を射程圏内へ入れるために前へ、流琉は鈴々が葉々が届く距離に来るまで待ちの態勢を取っている。これだけで言えば先に攻撃できるのは流琉だ。だが、それだけでは有利か不利かとはまだ言い難い。

 

「今です!せやーーー!!」

 

流琉の葉々が鈴々を襲う。まぁ、これに当たる鈴々ではない。

 

「ひょいっ。」

 

鈴々は避けながらも流琉との距離を詰めていく。

 

 

「流琉の葉々が落ちた場所・・・ひび割れてるよ。」

「直撃したらひとたまりもないでしょうな。」

「直撃すれば、だがな。私は思うのだが、武器を用いるより自分で殴りに行ったほうが早くないか?」

「得物がある方が射程が長くなるでしょ?」

「拳や脚に気を纏わせ、気弾を放てば問題はない。」

「それもそっか~。」

「鈴さんとご主人様の会話って、次元が違いますね・・・。」

「あの二人は気にしたら負けだ。」

 

何か話してるけど、気にしない。

 

「隙ありなのだー!」

「まだです!」

「にゃ!?」

 

葉々が戻ってきて背後から鈴々を襲う。そういえばヨーヨーだもんな。戻ってくるのも考えなきゃいけないのな。流琉の勝ちかな?

 

「まだまだなのだー!!」

「え!?」

「とう!」

 

鈴々がヨーヨーの乗った!?そして鈴々は流琉の眼前へ。そして丈八蛇矛を流琉に向ける。

 

「う~・・・負けました。」

「勝者、鈴々ちゃん!」

「やったのだ!!」

 

鈴々が勝ったか~。まぁ、ヨーヨーに乗れるのは体型と身体能力を考えて鈴々くらいだからな。

 

「また機会があったら再戦お願いしますね。」

「分かったのだ!」

 

それからどんどん仕合が進み・・・第二仕合、翠対桔梗。苦戦の末桔梗の勝利。

 

「く~っ、弾が切れたからいけると思ったんだけどなぁ。」

「わしの豪天砲は鈍器としても活用できることを忘れておったな。」

 

第三仕合、愛紗対紫苑。紫苑の弓の残弾が切れ、短刀で応戦したが愛紗の力押しに対応出来ず愛紗の勝利。

 

「流石は愛紗ちゃんね。私の弓を全て見切るとは・・・恐れ入ったわ。」

「紫苑の弓も普段から見慣れていなければ対処できなかった。次仕合をしたら勝てるかどうか分からないからな。」

 

第四仕合、蒼対胡花。一番の大番狂わせがあった仕合だった。体格や経験から蒼が勝つと思ったんだけどな、最後は胡花の素早い動きに翻弄された蒼が二本の短刀を首に突きつけられ胡花の勝利。

 

「ありがとうございました!ふぅ・・・。」

「やられちまったか。胡花ちゃんもつえーな。俺も修行が足りねえってことか。まぁ・・・このまま進んで万が一優勝しちまったら俺が兄貴と二人っきりになっちまう。それは俺も兄貴も望んじゃいねぇからな。喜ぶのはあの二人しかいねぇし。」

「あ、あはは。」

「次は愛紗か、頑張れよ。」

「はい!(ちょっと怖いですけど・・・頑張ります。)」

 

第五仕合、焔耶対霞。始めは焔耶が力押しで場外ギリギリまで追い詰めたのだが、そこで霞の闘争心に火が付いてしまったのが焔耶の敗因だろう。

 

「アイタタタ・・・。霞、途中から私を殺すつもりでやってたろ?」

「いや~、堪忍な。うちも次の仕合で恋が待っとるて考えると負けられへん!って思ってな~。」

「次の仕合の結果が付いてない・・・恋と蒲公英か。結果は見えてるな。」

 

第六仕合、恋対蒲公英。皆も結果は見えていただろうが、珍しく恋が本気を出したのも蒲公英の運が悪かったのだろう。半ばヤケで先手必勝、乾坤一擲で蒲公英が素早さを生かし突撃した。それを恋が容赦なく、一撃で場外まで吹き飛ばしてしまった。

 

 

「ちょっとー!少しくらい手加減してよー!!」

「? 本気だけど、手加減はした。」

「う~、ご主人様とでぇとしたかったー!!」

「ご主人様は、渡さない。」

 

・・・気を取り直して、第七仕合。星対猪々子。今日の星はどこかやる気に満ちていた。先ほどの蒲公英とは違い、星は一撃で猪々子の懐に飛び込み喉元へと槍を突き出し勝利を決めた。

 

「ちぇ~、勝てると思ったんだけどなー。」

「今回は主と戦えるのでな。私に似合わず真剣になってしまった。」

「兄貴とでぇとじゃなくて、戦えるとこなんだな。いつでも模擬戦とか出来るじゃんか。」

「でぇともしたいがな、今回は私の実力を主に証明するというのが目的だからな。」

「ふ~ん。」

 

続いて第八仕合、俺と斗詩。やっと俺の出番か~。長かった・・・。

 

「斗詩、よろしくね。」

「お、お手柔らかにお願いします。」

 

俺は聖桜を、斗詩は金光鉄槌を構える。いつも俺の中にいる鈴は応援席で仕合を傍観しているのが少し不思議な光景だ。

 

『負けたらお仕置きだからな。』

 

・・・なんで?

 

「行きます!」

 

斗詩がこちらに突撃してくる。あの槌で殴られるのはヤバイよな~。まぁ、武器の性質上動きは単純だからな。俺の眼前に槌が迫る。

 

「よっと。」

 

サイドステップで避けると俺がいたところにヒビが入っている・・・。当たったら痛いとかそう言うレベルじゃないよね?骨が砕けるよ!俺は一歩後退する。鍔迫り合いはしない方がいいからなぁ。あれ・・・やってみようかな。俺は聖桜を地に刺し、ポケットに忍ばせていた篭手を装着する。これを付けるのも久しぶりだ。

 

「まだ終わりませんよ!」

 

うん、やっぱり距離を詰めてくるよね。だったら・・・。

 

「婆ちゃん直伝、拳☆骨!」

 

拳骨とは言っても相手にするのではなく、拳に気を纏わせた状態で、拳を地に打ち付ける。するとどうでしょう。地は揺れ、俺の拳から地面はひび割れていく。う~ん、やっぱ婆ちゃんほどの威力は出ないなぁ。今はこのくらいでも十分だけど。思わぬ出来事に体勢を崩した斗詩。狙うなら今が好機!俺は聖桜を引き抜き、斗詩の眼前へと刃を向けた。

 

「どうする?まだやる?」

「こ、降参です。」

「勝者!ご主人様!」

 

とりあえず一回戦目はこれで終了。次の二回戦目は星とだな。楽しみだ。とりあえず俺も控え室に・・・

 

「お~い!兄貴~!」

「ん?どうしたの~?」

「兄貴のさっきの技で麗羽様が腰抜かしたんだけど!どうしたらいいー!?」

「・・・。」

 

控え室に行く前にこっちの対処をしないといけないみたい。

 

「ご主人様。麗羽様のことは私に任せて、控え室に向かってください。」

「う~、なんかごめん。今度ご飯でも奢らせてね。」

「は、はい!//」

 

麗羽のことは斗詩に任せて、控え室に向かった。

 

 

あとがき 読んでいただきありがとうございます。桃香、愛紗拠点いかがだったでしょうか。今回は前半ということになりますね。桃香、愛紗拠点っぽくしようとしたら愛紗がメインっぽくなってしまった・・・(反省)。悶々とする愛紗も可愛い!一刀にだだ甘えモードになる桃香も可愛い!蒲公英、やられ役として使ってごめんね。どこかで優遇するよ。それでは次回 第六節:大会終幕! でお会いしましょう。 次回もお楽しみに。

 


 
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