No.562413 ソードアート・オンライン 黒と紅の剣士 第二話 二体の牛と二つの裏技やぎすけさん 2013-04-03 23:41:24 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:2183 閲覧ユーザー数:2090 |
デュオ視点
氷の居城【スリュムヘイム】に突入してから、20分が経過した。
【湖の女王ウルズ】の行っていた通り、ダンジョン内の敵影は相当に薄い。
一部の中ボスとフロアボス以外のMobとのエンカウントは無く、ダンジョンのトラップを除けば、妨害となるものは何一つない。
だがその分、フロアボスの強さは異常だった。
リーファ「ヤバイよお兄ちゃん、金色のほう、物理耐性が高すぎる。」
俺の右側、キリトの左側で、リーファが早口に囁く。
直後、その金色のほうからの攻撃が飛んでくる。
高々と振り上げられた巨大なアックスを見て、キリトの頭の上からユイが叫ぶ。
ユイ「衝撃波攻撃二秒前!一、ゼロ!」
カウントに合わせて、前衛、中衛が左右に飛ぶ。
その間隙を、振り下ろされた斧の刃と、それによって生まれた轟音とショックウェーブが一直線に駆け抜け、後方の壁に激突する。
第一層の
右が全身真っ黒、左が全身金色で、どちらも巨大なバトルアックスを持っている。
魔法攻撃を行わないので、第一層よりも楽かと思ったが、問題が一つあった。
どうやら、黒のほうは魔法耐性、金のほうは物理耐性が異常な高さに設定されているらしい。
俺達のパーティは超物理攻撃特化型のため、
今ここにいる中で魔法スキルを上げてるのは、俺、アスナ、シリカ、リーファ、エルフィーの5人だ。
しかしアスナは、半分を細剣スキルに振っているため、マスターしているのは支援・回復系だけだ。
リーファが、使えるのは阻害系呪文と軽いヒールのみ。
シリカも似たようなもので、支援系がメインとなっている。
唯一エルフィーだけが、風魔法をマスターしており、俺は闇魔法スキルが600を越えている。
つまり、魔法攻撃として期待できるのは、エルフィーの風魔法と俺の闇魔法だけとなる。
だが、邪神のあまりの攻撃力にアスナだけでは回復が追いつかないため、エルフィーも回復に回っている。
なので、魔法攻撃が行えるのは俺だけということだ。
当然ながら、ボス級の邪神を1人で相手取るのは不可能なので、先に黒牛を倒してから金牛を倒そうという作戦を立てたが、黒のHPが減ると金が
その間に黒は後方で体を丸め、HPを回復させてしまう。
ならば、黒が回復している間に金を倒そうということになったが、あまりの物理耐性に俺の魔法以外全く通用しないため、HPをろくに削ることができない。
当然ながら、ミノタウロスが俺たちの攻撃をただじっと見ているわけではない。
いかに即死級の大技は避けているといっても、範囲攻撃のスプラッシュ・ダメージ
だけでもかなりHPを削られてしまう。
とてもヒーラー二人で、長時間支えられるものではない。
アスナ「キリトくん、今のペースだと、あと百五十秒でMPが切れる!」
エルフィー「わたしのも、そのくらいしか持たない!」
後ろからの叫び声に、キリトは返事の代わりに右手の剣をかざした。
このような耐久戦では、ヒーラーのMPが尽きることは、パーティの壊滅とほとんど同じことを意味する。
壊滅してしまえば、アルンのセーブポイントから出直しになる。
だが、おそらくそんな時間は残されていない。
リーファ「メダリオン、もう7割以上黒くなってる。【死に戻り】してる時間はなさそう。」
キリト「解った。」
リーファの言葉に、キリトは大きく息を吸うと、腹をくくったように目を開く。
キリト「みんな、こうなったら、できることは一つだ!」
キリトは言葉を切ると、回復中の黒いミノタウロスを見てから叫ぶ。
キリト「いちかばちか、金色を、ソードスキルの集中攻撃で倒しきるしかない!」
キリトの言葉に仲間たち全員が頷いた。
クライン「うっしゃァ!!そのひと言を待ってたぜキリの字!!」
右翼で、クラインが愛刀を大上段に据えた。
その隣では、このパーティ唯一の
左に飛んだリーファも、長剣を腰溜めに構える。
背後でも、リズとシリカがそれぞれの武器を握り直す。
それと同時に、俺はマナポーションを飲み干してMP回復する。
キリト「デュオ、シリカ、カウントで魔法と泡頼む!」
その言葉を聞き、俺は十数単語ある幻惑効果付き闇魔法のスペルを約二秒で詠唱する。
キリト「今だ!!」
シリカ「ピナ、【バブルブレス】!!」
シリカの指示でピナが虹色の泡を吐くと、それに続いて俺が闇魔法を放つ。
宙を滑る泡と、それを追うように飛翔する紫の閃光は、大技を繰り出そうとしていた金牛の鼻先で弾けた。
魔法耐性の低い金牛は、幻惑効果にとらわれ、約3秒間動きを止めた。
キリト「ゴー!!」
キリトの絶叫に合わせて、俺、アスナ、エルフィーを除く全員の武器が眩いライト・エフェクトを迸らせる。
スタンしている金ミノタウロスに対して、正面からキリト、右にクライン、左にリーファ、更にその左右からリズとシリカが一斉に
口々に吼えながら、それぞれが習得している最上級のソードスキルを繰り出す。
クラインの刀が炎に包まれて暴れ、リーファの長剣が疾風を巻き起こして閃き、シリカの短剣が水飛沫を散らしながら抉り、リズのメイスが雷光を放ちながら唸り、ガッシュの槍が光を放って突き刺さる。
更に隣からは、氷の鏃を煌めかせる矢が、俺の放った紫の閃光と並んで飛翔し、牛の急所である鼻の頭を正確に貫く。
俺はMPが続く限りスペルを詠唱し続ける。
さらに、MPが0になる直前にマナポーションを取り出し、それを瞬時に飲み干して、MPを尽きないようにする。
クラインたちのソードスキルが終了して、スキルディレイに固められている。
だが、キリトのソードスキルだけは未だに止まらない。
あれは間違いなく、キリト専用のシステム外スキル【スキルコネクト】である。
あのスキルは二刀装備状態で片手剣ソードスキルを左右交互に放つというもの。
ソードスキルが終了する瞬間に、右または左半身から意識をカットし、同時に逆側の半身だけに意識を向けてソードスキルを放つという動作を繰り返す。
これは、ソードスキルによるスキルディレイを、更に別のソードスキルで上書きして硬直を防ぎ、同時に二刀流上位スキルを上回るほどの連撃を放つことができる。
三ヶ月前、俺とのデュエルの最中にこの現象に気付いたキリトは、デュエルを中断し、代わりにこれの特訓に付き合わされた。
その時、偶然俺もシステム外スキルを開発することに成功した。
クライン「ぜぇりゃああああっ!!」
ひときわ大きな雄たけびに乗せて、クラインたちが集中攻撃を再開する。
それに続くようにして、俺は残ったマナを全て使う魔法のスペルを詠唱すると、それを待機状態にして、剣を抜き放ち、思い切り床を蹴る。
そして、ミノタウロスが剣の射程範囲に入った瞬間、待機状態だった魔法を発動、
同時にオリジナルソードスキル【アルトラ・インパクト】(7連撃)を放つ。
放たれた闇魔法が直撃する瞬間、同じ場所を全く同じタイミングでソードスキルがヒットする。
オリジナルソードスキルは本来、魔法属性を持っていないため本来なら効果は無いはずだが、俺の剣がヒットするたび、金牛のHPはさっきまでの魔法と同じかそれ以上のスピードで減少していく。
これが俺のシステム外スキル【スペルコネクト】である。
キリトにスキルコネクトの練習に付き合わされた後、半ば八つ当たりで、魔法とオリジナルソードスキルを同時に放った際に発見したシステム外スキルである。
システムの処理速度の問題なのか、6連撃以上のオリジナルソードスキルでしか発動できないが、物理耐性と魔法耐性の両方をほぼ無視しての攻撃ができる。
それに気付いて以来、俺とキリトは実戦形式の特訓を繰り返し、キリトはスキルコネクトを、俺はスペルコネクトを完成させた。
途轍もない衝撃音を迸らせ、俺の剣が敵の巨体を斬り裂き、キリトの剣が根元までその下腹に貫通した。
8mはあろうかという巨体が激しくノックバックすると、俺達にも長いスキルディレイが科される。
金ミノタウロスのHPは一気に減少していき、消滅した。
甲高い悲鳴を上げるミノタウロスの金の巨体は、硬質のサウンドエフェクトと共に爆散した。
すると、ちょうどHPを全快させて立ち上がった黒牛が、爆散した相棒を信じられないかのような目で見る。
クライン「お~し、牛野郎、そこで正座。」
硬直が解けた俺達が一斉に視線を向けると、クラインが抜き出した歯で歯軋りしながら言った。
オリジナル設定
【スペルコネクト】
デュオがキリトに八つ当たりした際に偶然発見したオリジナルソードスキルに魔法属性を纏わせるシステム外スキル。
攻撃魔法と6連撃以上のオリジナルソードスキルを、同じ場所に同じタイミングでヒットさせると発動する。
ソードスキルの後を魔法が追ってくるような形になるため、ソードスキルのダメージと魔法のダメージを一度に与えることができる。
しかし、デュオも完全に使いこなしているわけではなく、8割程度の確立で成功するが、まだ確実性に欠ける。
あとがき
キリトのスキルコネクトに対して、デュオはスペルコネクトを覚えさせました。
これは
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スリュムヘイム第二層のミノタウロス戦です。