No.561654

IS〈インフィニット・ストラトス〉 ~G-soul~

駆け抜ける刃

2013-04-01 20:18:56 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1048   閲覧ユーザー数:1008

一夏と箒が光の中から現れた。

 

二人が身に纏う白式第二形態《雪羅》と紅椿は溢れだすエネルギーによって神々しく輝いている。

 

一夏の握る《零落白夜》を発動させた雪片弐型は今まで見たことがないほど強力なエネルギー刃を顕現していた。

 

「――――――――――」

 

「――――――――――」

 

攻撃を阻止された2機の無人機は一夏と箒に迫る。

 

「……………」

 

「……………」

 

「!」

 

「!」

 

一瞬なにが起きたのか分からなかった。

 

いつの間にか二人は無人機の後ろにいた。

 

直後に無人機の身体に十字の亀裂が走り、爆発が起こす。

 

下ろされた箒の長い髪が風に躍った。

 

「すげぇ…!」

 

普段なら分析しているところだけど二人の姿に魅入ってしまってこういうのが精いっぱいだった。

 

一夏たちは後ろの爆発や俺なんかには目もくれず、遠くを見ている。

 

二人の目はとても澄んでいた。自信だとか、覚悟だとかじゃなくて、もっと別のなにかがその瞳に宿っている。

 

「一夏! 箒! ラウラ達が危ないんだ!!」

 

俺が叫ぶと、二人は返事をすることなくまた二つの光になった。

 

白い光と紅い光が超高速で黒い群れに飛び込んでいく。

 

それは雷みたい無人機の合間を駆け抜けて、瞬く間に30機以上いたはずの無人機を連鎖爆発させた。

 

「…………………」

 

「…………………」

 

輝きが消えて、二人の姿が確認できた。零落白夜が消えて、雪片のブレードの位置が元に戻る。

 

すると二人ともハッとしたように声を上げた。

 

「…あれ?」

 

「こ、ここは?」

 

視線を廻らせている二人に近づく。

 

「一夏! 箒! すごいな! 今のどうやってやったんだ!?」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ」

 

一夏が手で俺を制してきた。

 

「?」

 

「俺、ていうか俺たちはなんでこんなところにいるんだ? しかもIS展開してるし、俺は雪羅だし」

 

「………え?」

 

「私も、身に覚えがないのだが…」

 

「な、なに言ってんだよ。お前たちが今、そこら中にいた無人機を全部叩き落としたんじゃねぇか」

 

「私と、一夏が…?」

 

いきなり全然噛み合わない会話をされて、お互いに混乱しているとラウラたちがやって来た。

 

「お兄ちゃん!」

 

「マドカ…」

 

「すごいよ! あんなにいた無人機をばばばーって!」

 

「お、おお」

 

一夏は曖昧な返事をする。

 

「…そうだ! 箒お前怪我は!?」

 

一夏に問われて、箒は自分の腹をさすった。

 

「痛みが…ない?」

 

「箒ちゃん、怪我してたの?」

 

「違うんです楯無さん。そんな軽い感じじゃなくて、もっと凄い怪我を……」

 

「…ちょ、ちょっと待っててくれ」

 

箒は一度俺たちから離れた。どうやら自分の目で確認するようだ。

 

「シャル、悪いんだけど、コアバイパスを頼めるか? セフィロトがもうもたない」

 

「あ、う、うん。でも、回復量はそんなにないよ? 僕のラファールもギリギリで」

 

「構わない。気休めでも充分だ」

 

右腕を元に戻してシャルに手を伸ばす。シャルの手が触れると、僅かながらエネルギーが回復した。

 

「助かった。ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

「…ない。傷が………」

 

戻ってきた箒は自分でも信じられないようにそう言った。

 

「マジかよ。一日やそこらで治る傷じゃねぇだろ?」

 

「わ、私が知るわけないだろ」

 

「なぁ、今はそんなこと議論している場合じゃねーんじゃねえか?」

 

ダリル先輩が頭を掻きながらぼやいた。

 

「私ら途中合流組はなにがあったか知らねーけどよ。一応は戦力増加ってことでいいんだよな?」

 

「どう? 二人とも、戦えそう?」

 

シャルの問いかけに二人とも困惑しながらも頷いた。

 

「ああ。一応」

 

「私も問題ないが…一体なにが起こっている? 楯無さんやエリナさんがいるとは……」

 

「時間がない。要点だけ話す」

 

ラウラが箒に説明した。昨日の夜、博士が世界中のISコアを破壊させようと動き出したこと。無人機が世界中にばらまかれたこと。そして、無人機が束さんの造り上げたもの。ということを。

 

「姉さんが…そんな………」

 

「ショックなのはわかる。だけど、今は束さんを止めるのが先だ」

 

一夏が箒に語りかける。

 

そこでセフィロトのウインドウが勝手に開いた。

 

見れば俺だけじゃゃなくて、ここにいる全員のが一斉にだった。

 

『イェーイ! みんなのってるかーい!? 束さんインフォメーションの時間だよー!』

 

「姉さん!?」

 

箒が映像の向こうにいる人物の名を呼ぶ。

 

『ここでみんなにすんばらすぃーお知らせだよ! なんと! 無人機の数が残り1機となりました! 拍手!』

 

パチパチパチパチと手を叩く博士は実に楽しそうに話している。

 

『みんなすごいね。束さんの予想を上回る速さだよ。でも、運が悪かったね。システムを持っている機体を最後の1機にしちゃうなんて。はっきり言ってそう簡単には見つからないよ』

 

システムを持った1機…一体どこにいるんだ。

 

『でもでも、残り6時間くらいあるし。そんなに長いこと探し回って、見つかりませんでしたっていうオチじゃつまんないよね。んー…よしっ! 決めた!』

 

は博士がパチンと指を鳴らすと音もなく大きな日本列島の地図が現れた。

 

『今からこの日本地図にダーツを一本投げるよ。そこに最後の1機の無人機を向かわせまーす! 《日本列島無人機が旅》! なんちゃって!』

 

手にはピンク色のダーツが握られていた。

 

『いっくよー! うりゃぁ!』

 

博士が投げたダーツは、陸の部分に当たった。

 

『はーい、それじゃあここ! ここにラストの無人機が行くよ! 頑張ってねー!』

 

そして映像は消えた。

 

「………無茶苦茶だな、ホント」

 

「そう…すね」

 

「あの投げ方は素人ね」

 

「ナタル、重要なのはそこじゃないわよ。どこなのかってことよ」

 

そう。エリナさんの言うとおりだ。重要なのは投げ方なんかじゃない。

 

「私に言われても、そんなのすぐにはわからないわ」

 

「む」

 

ラウラが何かに反応して上を見た。

 

「ラウラ? どうしたの?」

 

「…………ふっ」

 

突然ラウラが薄く笑った。

 

「篠ノ之博士のコントロールは、天才的だな」

 

 

ゴォォォォッ!!

 

 

轟音が大気を震わせた。

 

「!?」

 

視界の端を黒い塊が通り過ぎた。

 

「うわっ!」

 

衝撃に煽られてバランスが崩れる。

 

「ま、まさか…!?」

 

「……………」

 

排熱音とスチームが十数メートル先で広がる。スチームが風に流されて消えると、その姿がはっきり見えた。

 

 

 

真っ黒なボディカラー。

 

頭頂部から垂れる無数のエネルギーケーブル。

 

そして、『四本』の腕。

 

 

 

来やがった。よりによって、俺たちの前に。

 

「ゴーレムEx………」

 

箒のその言葉がヤツの名前なんだと直感した。

 

『…機ハ熟シタ』

 

機械音声が聞こえる。

 

『…決スル時ガ来タ』

 

その腕に握られた、四本の刀。西日を受けて怪しく光を放っている。

 

『…サァ、私ノ相手ハ誰ダ』

 

「やる気みたいっすよ!」

 

フォルテ先輩の言葉に武器を構える。

 

「…待ってくれ」

 

箒が俺たちの前に出た。

 

「箒?」

 

「この勝負、私一人でやる」

 

「バカ言うな! お前、コイツにあんな風にされたの忘れたのか!?」

 

俺は思わず怒鳴ってしまった。

 

「無茶だよ箒!」

 

「一人じゃ…危ない」

 

「勝てる確証はあるのか?」

 

シャル、簪、ラウラも反対する。

 

「箒…」

 

一夏が箒になにか言おうとした。しかし箒はそれを遮るように口を開いた。

 

「一夏、お前は一年前の今頃、私に『自信過剰と独断専行を控えろ』と言ったな。けど、これが姉さんの行いというなら私がカタをつけなければならない。これは、私たち『姉妹』の問題なんだ。私自身の手でけじめをつけたい」

 

「……………」

 

一夏は何も言わない。ただ、ジッと箒の目を見つめている。

 

「………………」

 

箒も、逸らすことなく一夏を見据える。

 

「………わかった」

 

「お兄ちゃん!?」

 

「いいんすか織斑!」

 

マドカとフォルテ先輩が声を荒げる。

 

「でも、一つだけ」

 

箒に、一夏は告げた。

 

「勝て。絶対に、勝って、戻ってこい」

 

「…!」

 

箒は力強く頷くと、ゴーレムExに向き直った。

 

「来い。お前と私の一対一の再戦だ」

 

『良イダロウ…』

 

ゴーレムExはまた上空に飛んでいく。

 

「…………」

 

箒もそれに追従するために上を向いた。

 

「箒!」

 

一夏が箒を呼び止めた。

 

「ほら」

 

一夏の手には、箒がいつもしている白いリボンが。

 

「白式の拡張領域の中に入ってた。いっぱいいっぱいのはずなのに、なんでか知らないけど」

 

「……………」

 

箒はリボンを受け取ると、自分の髪を結った。

 

「うん。やっぱり似合ってる」

 

「…行ってくる」

 

僅かに笑って、箒はゴーレムExの後を追って空を昇っていく。

 

「一夏。当然危なくなったら助けに行くよな?」

 

「いや。行かない。ここで待つ」

 

「おま……! 何考えてんだよ!」

 

「箒が勝つこと」

 

「ふざけんな! また箒が――――――」

 

掴みかかって一夏の顔を俺の方に向かせる。

 

「…………」

 

その目はまったく曇っていない。ついさっき見た目と同じで、迷いがない。心の底から、箒が勝つことを信じて疑ってない。

 

(なんて目をするんだコイツは…)

 

いつか鈴が蘭の目をどうこう言っていたが、多分こういうことなんだろう。

 

「…そこまで言うなら、俺も待ってやるよ」

 

「瑛斗!」

 

「私も待つわ」

 

「お姉ちゃん…」

 

「一夏くんが、箒ちゃんを信じて送り出したんだもの。私もそれを信じてみるわ」

 

「待つっきゃない空気かな、こりゃ」

 

「みたいっすね」

 

「どうする? エリー?」

 

「決まってるわ。……ここで待つのよ」

 

「ん。了解♪」

 

俺たちは箒の勝利を信じて待つことにした。すでに相当な高度にいるらしく、箒の姿は完全に夜空と夕焼けの間の空に消えていた。

 

 

箒は雲より高い位置まで来ていた。

 

先に待ち構えていたゴーレムExと高度を合わせる。

 

『…………ソノ目、何カヲ振リ切ッタ目ダ』

 

「…………」

 

『アノ負傷デマダ動ケルトハ、驚キダ』

 

「闘いに長話は不要と言ったのは誰だ?」

 

『…ソウダナ』

 

ゴーレムExは四本の腕に四本の刀を握った。

 

「………」

 

箒も、その手に空裂と雨月を構える。

 

「……………」

 

『……………』

 

睨み合いが続く。さながら居合のタイミングを計る侍のように。

 

風が吹いた。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

『……………………………』

 

瞬間刃が交わる。

 

手数ではゴーレムExが有利だった。両腕の斬撃を防げても、背中の刀の斬撃が襲い掛かってくる。

 

「紅椿!」

 

箒が叫ぶと、肩の展開装甲が開き、何かが飛び出した。

 

ビームの刃がゴーレムExの背中の刀を抑え込み、さらに背中の右腕を切り裂いた。爆発が起きてゴーレムExの背中の右腕が吹き飛ぶ。

 

「斬撃ビット《切鶴(きりつる)》。お前の手数を上回らせてもらう!」

 

箒の周りには、ビーム刃を露わにしたビットが飛び回っている。

 

『………………』

 

ゴーレムExは怯むことなく箒に迫る。

 

切鶴がそれに反応してゴーレムExに飛びかかった。

 

しかしゴーレムExは体にダメージを受けても箒に突進し、もう一度刃をぶつけ合った。

 

後ろから切鶴が襲い掛かる。するとゴーレムExの脚部装甲が開き、何か粒子を散布した。その瞬間、切鶴のビーム刃が消し飛んだ。

 

「BRFか!」

 

背中の左腕が箒にその手に握る刀を突き立てようと振り下ろされた。

 

「ちっ!」

 

箒は切鶴のビット本体をゴーレムExにぶつけて自爆。その威力でゴーレムExのバランスが崩れたところで刀を弾き飛ばした。

 

刀は回転しながら雲の中に消えた。

 

「これでお前も刀が二本だ!」

 

『………』

 

ゴーレムExは気にする素振りも見せない。機械であるから当然なのだろうか。

 

しかし変化は起きた。ゴーレムExのボディから小さな爆発が連続的に起こったのだ。

 

「!」

 

箒も直感的になにかあることを判断して刀を握る手に力を込める。

 

装甲がバラバラと落ちていく。はがれおちた装甲の内側は人のそれと変わらず、彫刻のように美しい体があった。

 

『剣トハ…』

 

機械音声が響き、ゴーレムExは左腕の刀を消した。

 

『剣トハ、相手ヲ倒ス為デ無ク、力トハ己ニ打チ勝ツ為ノモノナリ・・・・・』

 

一本の刀を、まっすぐ箒に向ける。

 

『ソノ真髄ハ己ガ心ヲ剣トシ、己ガ心ヲ力トスル事ナリ・・・!』

 

「篠ノ之流の極意…姉さんの入れ知恵か。ならば・・・私もそれに倣おう」

 

箒は、雨月を収納し。空裂だけを構えた。

 

「ふぅー………」

 

息を長く吐き出し、精神を集中させる。

 

前を見れば、自分に良く似たシルエットのゴーレムExがいる。

 

(そうだ…剣とは、力とは―――――――!)

 

バーニアが火を噴き、刃が閃いた。

 

「…………」

 

紅椿の肩の上部装甲が切れ落ちた。箒は空裂を払い、ゴーレムExを見る。

 

『……………』

 

ゴーレムExは刀を下ろし、箒に振り返った。

 

『…………』

 

そのエネルギーケーブルを束ねるリングが砕け、頭頂部から亀裂が走る。

 

『………お見事だよ。箒ちゃん』

 

その言葉の直後ゴーレムExは、爆破消滅した。

 

「…姉さん」

 

箒は無意識に束を呼んだ。

 

 

 

楯「インフィニット・ストラトス~G-soul~ラジオ!」

 

マ「りゃ、略して!」

 

楯&マ「「ラジオISG!」」

 

楯「読者のみんなー! おねーさんよー!」

 

マ「お、織斑マドカでーす! って、楯無さん、お兄ちゃんと瑛斗は?」

 

楯「あー、今頃控室でぐっすり寝てるんじゃないかしら?」

 

マ「寝てる?」

 

楯「うん。象でもコテッと眠る眠り薬入りの飲み物をスタッフに用意してもらったから」

 

マ「な、なんでそんなことを!?」

 

楯「だって今日の質問がこれだから」

 

マ「えっと、kikiyuyuさんからの質問。あ、私に質問だ。千冬さんと一夏、どっちかを彼氏にするとしたらどっち? って、えぇ?」

 

楯「ね? 一夏くんがいたら答えられないでしょ?」

 

マ「そ、そういうことだったんですね…」

 

楯「どうなの? 兄妹、姉妹の禁断の愛ってやつよ。漫研の人たちがネタにして描きまくってたわねぇ」

 

マ「そ、そうなんですか?」

 

楯「そうよ。ほら」

 

マ「え…わ、わ、わ、わー!?」

 

楯「だ、大丈夫?」

 

マ「お、お姉ちゃんはここ、こんなこと言わないしこんなこともしません!」

 

楯「うふふ、千冬×マドカよ」

 

マ「そういうこというのもダメッ!」

 

楯「じゃあ、こっちなんてどうかしら?」

 

マ「へ………なな、ななな…!?」

 

楯「んっふっふー、一夏×マドカ…」

 

マ「お、おに、お兄ちゃんもこんなこと言わないしこんなこともしません! って言うか、こんなのが学園で出回っちゃってるんですか!?」

 

楯「さぁ? どうかしらねぇ」

 

マ「出回ってる! そのニヤニヤは確実に出回ってる!」

 

楯「おっと、時間が押してるみたい。今日はここまでね。それじゃあみなさんさようならー!」

 

マ「あ、ちょ、楯無さん! 楯無さーん!? ・・・行っちゃった」

 

マ「………」チラッ

 

マ「…!」パタンッ

 

マ「しないっ! こんなことしないもんっ!」


 
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