No.559810

IS〈インフィニット・ストラトス〉 ~G-soul~

光は紅く、そして白く

2013-03-27 20:14:13 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:838   閲覧ユーザー数:792

午後5時17分。

 

すでに日が傾きつつある現在、無人機の数の減少の勢いがゆるまっていた。

 

補給ポイントで聞いた情報からすると原因は二つある。

 

第一の原因は操縦者たちの疲労。長時間の戦闘でISもろとも疲弊してしまうものが増加しているらしい。

 

第二の原因は無人機たちのステルス性だった。無人機は4時を回ったところで忽然とその姿を消し、まったく行方知れずになっちまったんだ。報告からは『目の前で突然透明になった』というものが挙がっていることからなんらかの光学迷彩を使ったっぽい。

 

ISの消滅が刻一刻と迫る中、焦りだけが募っていた。

 

「ダメだ。かれこれ二時間は遭遇してないぞ」

 

「ここまで見つからないと焦るよね…」

 

「…どこにいるのか、わかれば………」

 

「見つからない限りこっちからはどうすることもできないわね」

 

「捜し疲れちゃったすよ」

 

「せめてコアネットワークが回復すればなぁ」

 

俺たち6人は補給ポイントの距離に気をつけながら無人機を探し回っていたんだが、2時間前3機落とした戦闘を最後に完全に無人機を見失っていた。

 

「もうすぐ日も暮れるし、暗くなる前に片をつけたいのによ」

 

前に立ち寄った補給ポイントから拝借したパックに入った水を飲み、愚痴をこぼす。

 

見晴しのいい高台の上にいる俺たちを照らす夕日が山に差し掛かっていた。

 

空軍なんかも捜索にあたってくれているみたいだけど、それらしい情報はまだ来ていない。

 

もしかしたらと思ってこうして陸の方を中心に捜して回っているが全く見当たらない。

 

正直言って、どん詰まりだった。

 

「でも、おかしくないっすか。ちょっと前までうようよいた無人機がぱったり見つからなくなるなんて」

 

「篠ノ之博士がなにか働きかけたのかも。無人機を守るために」

 

「それなら最初からこんなまどろっこしいことせずに私たちのISを消せばいいじゃねぇか」

 

「そんなこと言ったらどうして博士はこんなことをするっすか?」

 

「んなの私が知るかよ。あんなぶっ飛び博士の考えなんて誰もわかりゃしないって」

 

みんなが話し合っているのを聞き流しながら俺は思考にふけっていた。

 

(やっぱり博士の考えてることがわかんねぇ………。ISを消したいのなら最初からこんなことをする必要はない。いきなり爆破なりなんなりをすればいいだけのことだ。なのにわざわざタイムリミットをつくったりなんか…)

 

 

ゴォォォォ………

 

 

「ん? なんだ?」

 

「なんすかこの音」

 

「どんどん近づいてくるよ」

 

音のする方は木に遮られてなにが来てるのか地上からはわからない。

 

 

ゴォォォォォォッ!!

 

 

「上だ!」

 

一斉に空を仰いだ。瞬間、視界に四人の影が飛び込んできた。

 

ほんの一瞬だけどその一人と目があった。

 

(…!)

 

「あれは!!」

 

叫ぶと、すでに20メートル以上向こうにいた四人の動きが止まった。

 

「行くわよ!」

 

楯無さんが言ったのを合図にG-soulを展開して合流する。

 

「ラウラ! シャル!」

 

「瑛斗!」

 

シャルの弾んだ声が聞こえた。

 

「よかった! 無事だったんだな!」

 

「うん!」

 

「嫁、無事だったか」

 

ラウラも安堵の表情で近寄ってきた。追加武装があるところを見ると専用パッケージを搭載したのか。

 

「ああ。マドカに簪と楯無さん、あとフォルテ先輩とダリル先輩もいる」

 

「…げ」

 

ダリル先輩の顔が引き攣った。

 

「? どうしたっすか先輩?」

 

フォルテ先輩が聞いたときにはダリル先輩はにゅっと伸びた手に肩を掴まれていた。

 

「って、白銀の福音!?」

 

「瑛斗、会えてよかったわ」

 

驚く俺の傍にバイオレット・スパークを展開するエリナさんが近づいてきた。

 

「エリナさん!?」

 

「ちなみにアレは福音に良く似てるけど違う機体よ。白銀の旋律って言うらしいわ。良く見てごらんなさい。ちょっと違うでしょ?」

 

エリナさんに言われてもう一度その銀色の機体を見る。

 

「ダリルちゃ~ん、やぁ~っと捕まえたわ」

 

「え、や…あははは……」

 

確かになんか違った。ダリル先輩に顔を寄せて自分の顔を隠すバイザーを上げたその人は、あの臨海学校の帰りに会った女の人だった。

 

「上司の命令無視して勝手に動いちゃダメでしょ~?」

 

「す、すいません…」

 

「声が小さい!」

 

「すいません!!」

 

「うんっ。無事でなにより。さてと。ハロー、桐野瑛斗くん。私のこと覚えてるかしら?」

 

「ナターシャさん…ですよね?」

 

「正解よ。あなたに胸に飛び込まれた上に揉まれたナターシャ・ファイルスよ」

 

わざとらしく胸のあたりを腕で隠すナターシャさん。

 

「あ、あの時はホントすいませんでした」

 

あの時は確か階段に蹴躓いたんだよな…

 

んで、その…があったそのあとシャルとラウラがペットボトルを俺に投げつけて………。

 

「…………ラウラ、シャル、簪。俺に向けてる武器ををしまってはくれませんかね」

 

振り返るとラウラはプラズマ手刀の発振を止めて、シャルはパイルバンカーをいつでも出せるように少し浮かしていたシールドを元に戻して、簪は一つだけ開いてるミサイルラックを閉めて素知らぬ顔をした。

 

「ふふ…どうやら初めましてな子がいるみたいね?」

 

ナターシャさんはマドカと簪の方を見た。

 

「初めまして。織斑マドカです」

 

「更識簪…です」

 

「はい、初めまして。……あら?」

 

「?」

 

ナターシャさんがマドカに近づいた。

 

「な、なんですか?」

 

「あなた…………まさかね。なんでもないわ。よろしくねマドカちゃん」

 

「は、はい」

 

「そう言えば、急いでたっぽいっすけどなにかあったっすか?」

 

フォルテ先輩が言うと、ラウラたちがハッとした。

 

「そうだわ! ここでこんなことしてる場合じゃなかったのよ!」

 

エリナさんが声を荒げる。

 

「急ぐわよ! あなたたちも一緒に来て!」

 

ナターシャさんもさっきと打って変わって真剣な表情になる。

 

「な、なにがあった!?」

 

「行きながら話す!」

 

「行くよ瑛斗!」

 

「お、おい!」

 

訳も分からないまま四人に付いて飛ぶ。

 

「ラウラ! なにがあったんだよ!」

 

「教官たちが危機的状況にある可能性が高い!」

 

シャルも加わった。

 

「瑛斗、よく聞いて。僕たち補給ポイントでホテルに電話すれば先生たちと話ができるって聞いたから電話したんだけど、途中で切れちゃったんだ」

 

「切れた?」

 

「うん。それでもう一度かけなおしたんだ。でもその時には繋がらなくなってて」

 

「他のものも使ってみたが結果は同じでどれも通話不可能となっていた。ホテルへの番号だけがな」

 

「まずいわね。そうなって来ると向こうになにかあった可能性が高いわ」

 

「それでホテルに急いで戻ってるってわけか」

 

「ああ。一刻も早く戻らねば…!」

 

俺たちがいた地点は偶然ホテルの近くだったみたいで、見覚えのある川の上についた。

 

「あ、ここ俺と簪が落ちた川の近くじゃねえか」

 

「そうだね…」

 

「ここまでくればもう少しで―――――――」

 

 

ドガァァン!!

 

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

突然後ろで爆音が聞こえた!

 

川原が爆発したんだ。それにも驚いたがもっと驚いた。

 

「地中からだと!?」

 

地中から飛び出してきた大量の無人機にラウラが驚愕する。俺は合点がいった。

 

「そうか! あの川原の地下には秘密基地が!!」

 

「ひ、秘密基地?」

 

「そんなことは後! 無人機たちが――――――」

 

無人機たちが俺たちと同じ高度まで来た。

 

「なんて数…」

 

「ざっと見ても30機…いや40機はいるぜ」

 

「――――――――」

 

しかし無人機たちは俺たちに向かって来なかった。全部が同じタイミングで背を向けて、高速で飛んで行く。

 

「に、逃げてくっす!」

 

「…いや違う! アイツら………ホテルに向かってる!!」

 

俺たちに背を向けるってことはつまり俺たちと同じ方を向くことだ!

 

「もしかして電話が繋がらなかった原因って…!」

 

「理由は最早どうでもいい! 止めるぞ!!」

 

先行するラウラが肩にマウントされていた大型の剣を握って黒の群れに飛び込んでいく。

 

「ラウラ! 一人じゃ危ないよ!」

 

「私たちも!」

 

全員でその後を追う。

 

「ナタル!」

 

「わかってるわ!」

 

ナターシャさんが銀色の翼を広げると砲口が開いた。去年俺たちを苦しめた福音のメイン武装の『銀色の鐘』をイメージさせる。

 

「行かせないわよ!」

 

飛び出したエネルギー弾が無人機に襲い掛かる。

 

ドドドドドッッ!!

 

確実に当たっているはずだった。それなのに無人機たちは一機も止まらない。

 

「効いてないの!?」

 

「違います! 被弾の前に装甲を細かくパージして防いでるんだ!」

 

「それなら!」

 

楯無さんが無人機たちに向けて水のヴェールを針のようにして飛ばした。

 

ナノマシン内蔵の水が爆発して一部の無人機の装甲が砕け落ちる。

 

効いているはずなのに、無人機は止まらない。

 

「どうしても進むみたいね…」

 

「前から止めるわ! みんな! 無人機の前に回り込んで!」

 

エリナさんが指示を飛ばして全員で無人機の前に躍り出る。

 

「――――――――――」

 

すると無人機たちが持っている武器を向けて攻撃を仕掛けてきた。ミサイルや弾丸、レーザーが怒涛のように飛んで来た。

 

躱しながらこっちも攻撃するけど数が違い過ぎて防戦を強いられた。

 

そのうちの数機が俺たちの頭上を通り過ぎてホテルに向けて飛んでいく。

 

「しまった! 抜かれた!」

 

「瑛斗くん! あなたが追いかけて!」

 

「楯無さん!?」

 

「セフィロトを使えば充分追いかけられるわ!」

 

「でもそれじゃあみんなが―――――!」

 

俺の目の前に飛んできたレーザーをシャルがシールドで防いだ。

 

「瑛斗行って! こっちはなんとかするから! 早く!」

 

「シャル…! わかった!」

 

一度G-soulの展開を解除してすぐにセフィロトを展開した。

 

「あれ止めたら、戻って来るからな!」

 

みんなに背を向けて無人機を追いかける。

 

(セフィロト…みんなが俺を頼りにしてる! 頼むぞ!)

 

今日何回目か分からないサイコフレームの発動。フェイスマスクが顔を覆い、黒い装甲に青い光が差す。

 

意識を集中させると流れる景色が一層速くなった。どんどん無人機との距離が近づいて行く。

 

「うおおおおおおっ!!」

 

無人機の一体の背中をクローアームが切り裂いた。

 

「―――――――――!」

 

そのまま動きが止まった無人機に背中のクローアームを捻じ込む。無人機の両腕がもげ落ちた。

 

「落ちろぉっ!!」

 

推進器のような気がするものを手当たり次第削ぎ落として、腰から上を切り裂いた。

 

その無人機は大きな音を立てて地面に落ちた。

 

「次っ!」

 

でも他の無人機は気にも留めずに進んでいく。

 

「ふっ!」

 

背中のクローアームから10本のクローを飛ばす。

 

2機の無人機に当たったクローが付いたワイヤーを巻き戻そうとすると向こうも抵抗してブースターの出力を上げてきた。

 

「い、か、せ、る、かぁぁぁ!!」

 

両腕を元に戻してワイヤーを掴んで思いっきり引っ張る。。

 

「おりゃあああっ!!」

 

無人機2体の身体がつんのめるようにぶつかったところをもろともブレードで叩き斬った。

 

「…あいつに言われたのが嫌だけど、徹底的にだ!」

 

最大出力のビームカノンが無人機を飲み込んだ。爆発が起こる。

 

「残り3機!」

 

追いかけるとそのうちの1機が俺に向かってきた。

 

「ぐっ…!」

 

クローと右腕と一体になった刃がぶつかり火花が散る。無人機の頭のアイ・センサーが赤く光っていた。

 

「邪魔すんな!!」

 

サイコフレームから青い光が飛び出して無人機の身体を貫いた。

 

無人機はそれでも動き続け、抜き手で俺の胸を突いてきた。

 

「がはっ…!」

 

装甲で守ってるけどその力の強さに鋭い痛みが走った。感覚で傷が開いたのがわかる。

 

「痛てぇだろうが!!」

 

サイコフレームの光がもう一度飛び出して、今度は無人機をその光で切り刻んだ。

 

「はあっ…はあっ……!」

 

息が乱れる。あんまり向こうが抵抗してこないとはいえ。立て続けに相手にするのは非常にキツイ。

 

「あと2!」

 

みんなが持ちこたえてるうちにトドメを!

 

2機の無人機がさらにスピードを上げた。

 

「待ちやがれ!」

 

連戦でセフィロトも結構ダメージを受けてっけど、それでもやるしかない。

 

「あああああっ!!」

 

こっちもスピードを上げて追いすがり、加速したままクローを振り下ろす。

 

クローが届きそうになったその時!

 

「!?」

 

レーザーが俺の背中にぶち当たった。

 

反射的に振り返る。

 

「…………!」

 

みんなが必死に無人機の進行を食い止めている。けど捌ききれない攻撃が俺の方に飛んできていた。

 

「しまっ――――――!」

 

その一瞬が命取りだった。2機の無人機がさらに加速。俺との距離を一気に突き放した。

 

「くそぉっ!」

 

追いかけてクローを飛ばしても弾かれて届かない。

 

段々と視界がぼやけてきた。散々流血して貧血になったのかも知れない。

 

装甲とISスーツの間からまた血が滲みだしていた。

 

「う……!」

 

意識が揺らいでスピードが落ちる。

 

(根性見せろよ俺…!!)

 

奮い立たせてみても、無人機との距離はどんどん遠くなっていく。

 

(間に合え……!)

 

林を抜けたところで高度まで低くなって、地面に激突しそうになった。

 

「うぐっ…………!」

 

ゴロゴロと地面を転がるようにして着地。

 

顔を上げると2機の無人機が俺の上でホテルの建物を見据えている。

 

「ちくしょ…う………!」

 

背中のクローアームが力無く垂れ、右腕をなんとかあげてクローを飛ばしてみても、途中で勢いが死んで地面に落ちてしまった。

 

「――――――――」

 

「――――――――」

 

無人機2機の身体が中央から開く。大量の小型ミサイルが顔を覗かせていた。大きさは関係ない。あの数なら建物は簡単に吹っ飛ばされる。

 

「やめろ…!」

 

俺が叫ぶのとミサイルが飛び出すのが同時だった。

 

「やめろぉぉぉぉぉっ!!」

 

 

 

竹刀がぶつかりあう音が響く。

 

一撃一撃が重い。俺は防戦を強いられている。

 

「はあああああっ!!」

 

「ちっ!」

 

箒の竹刀が振り下ろされた。

 

持っている竹刀を横にして受け止めて膝のばねを使って箒の竹刀を押し上げる。

 

「もらった!」

 

一瞬隙ができた。それを見逃さず竹刀を振る。

 

「甘いっ!」

 

「!?」

 

箒はその場で右足を軸に回転して俺の振り下ろした竹刀をいなした。バランスを崩した俺はもたついて防御のタイミングを逃してしまう。

 

「……勝負あり、だな」

 

俺の首筋にピタリと竹刀を置いた箒はそう言うと竹刀を下ろした。

 

「ああ。俺の負けだよ。やっぱ強いな、箒は」

 

潔く負けを認めて俺も竹刀を持つ手の力を抜いた。

 

「だが、いくら強くても、それだけでは意味はない」

 

箒は目を伏せてそう言った。

 

「ただ強くても、決してそれは意味を持たない。私はそれを知らなかった・・・」

 

俺は気になったことを箒に問いかけた。

 

「箒…さっきの、もう一人のお前の傍で倒れてたのって………」

 

「……姉さんだ」

 

「やっぱり…あれはいったいなんだ? なにがあったんだ?」

 

答えることはなく箒は道場の外に出た。俺もその後を追う。

 

「……えぇぇぇん…うぇぇぇぇん」

 

幼い箒はまだ横たわる束さんの前で泣いていた。

 

「助けないと―――――」

 

動こうとする俺を隣に立つ箒が止めた。

 

「やめておけ。無駄だ」

 

「そんなことない!」

 

箒の制止を振り払って幼い姉妹に近づく。倒れている束さんの呼吸は浅かった。血が腹のあたりから流れて地面を汚している。

 

「束さん、今助けますよ!」

 

触れようとしたら、俺の手が束さんの体をすり抜けた。

 

「え…!?」

 

掴もうとしても掴めない。

 

泣いている箒に触れようとしても同じことが起こった。

 

「だから言った。無駄だと」

 

傍に来た箒が淡々と言う。

 

「なんなんだよ、これ…」

 

「ほう…き………ちゃん…」

 

「!」

 

横たわっていた束さんが動いた。血で汚れた手で、泣いている幼い箒の頬に触れる。

 

「姉さん…!」

 

「だい…じょうぶ、だよ。わた、し、は………」

 

眩暈がして、視界がぐにゃぐにゃに歪んだ。

 

「な、なんだ…?」

 

意識が遠のいて、目の前が真っ暗になった。

 

気が付くと最初に感じたのは花の匂い。

 

そして目を開けると、そこはもう篠ノ之神社の境内ではなく真っ白な景色の中央に石畳の一本道が続く謎の空間だった。

 

「今度はどこだよ、ここ…」

 

一際目を引いたのはその一本道の左右に咲き乱れている赤い椿の花。道に沿ってどこまでも咲いている。

 

遠くに、箒の後ろ姿が見えた。紅椿を展開している。

 

「箒!」

 

石畳の道を進み箒のもとへ近づこうとした。

 

「うわっ」

 

花びらを巻き込んだ突風が俺の動きを止めた。

 

「ほ、箒!」

 

「…一夏」

 

「なんだ?」

 

「お前は、私を許してくれるか………?」

 

「え…?」

 

振り返った箒の目からは、涙が流れていた。

 

「許してくれるか?」

 

「許すもなにも…なにを許すんだよ?」

 

箒は答えてくれない。ただ涙を流すだけだ。

 

「……彼女は、許しを求めています」

 

俺の横に、白い女騎士がいた。ガードで目から上を隠した顔を箒に向けている。

 

「あなたは…」

 

「……彼女は、許しを求めています」

 

「箒は……箒は俺になにを許してほしいんだ?」

 

「彼女の行い…そして、彼女の非力」

 

「箒の、非力?」

 

もう一度箒を見る。その目がどこまでも寂しそうで、悲しそうで、だけど、綺麗だ。

 

「………箒は非力なんかじゃないよ」

 

俺は舞い踊る花びらを手で払いながら風の中で足を動かした。

 

「箒は強い。俺が保証する…って俺が言ってもって感じか。だけど、箒は強い。絶対に」

 

少しずつ、けど確実に近づいて箒に向けて手を伸ばす。

 

「お前が悩んでるなら話を聞いてやる。力になってやる。だから、泣くなよ」

 

「一夏…お前は………」

 

「ああ…許すよ。箒」

 

箒の指先が、俺の手のひらに触れたとき、赤い光と、白い光が、俺たちを飲み込んだ。

 

 

「た、多数の熱源が高速で接近してきます!! ミサイルです!」

 

真耶の悲鳴に近い声が周囲にどよめきを広げた。

 

「距離、直線で80メートル!」

 

「その距離で探知できなかったの!?」

 

「生徒たちの避難を!」

 

「間に合うわけないでしょ!」

 

「織斑君は!?」

 

「無理よ! 熱源の数が多すぎる!」

 

周囲から絶望の声が上がる中、千冬だけは表情を変えなかった。

 

「……………」

 

「織斑先生?」

 

「………来たか」

 

ぽつりとつぶやいた瞬間、真耶が新たな報告をした。

 

「ね、熱源群前方に新しい反応! これって……!?」

 

 

 

 

 

 

ミサイル群が飛び出して、そのすぐ後。

 

白い光と赤い光が、ミサイルの前に現れた。

 

白い光から一筋の光が昇って木の枝のように広がって、ミサイルを全て破壊した。

 

信じられない光景。

 

「あ…あ………」

 

幻なんじゃないかと疑った。でも胸の痛みが現実を証明してる。

 

光が収束して、シルエットが見えた。

 

「……………」

 

一人は、手に持った剣を空に掲げ、

 

「……………」

 

一人は二本の刀を握っている。

 

その姿は、絵画のように気高く美しい。

 

 

「箒…一夏!!」

 

 

俺は、二人の名前を叫んでいた。

 

 

 

 

 

 

瑛「インフィニット・ストラトス~G-soul~ラジオ!」

 

一「略して!」

 

瑛&一「ラジオISG!!」

 

瑛「読者のみなさんこんばどやぁー!」

 

一「こんばどやぁ」

 

楯「こんばんは、おねーさんよ」

 

簪「……………」

 

瑛「オープニングからいるんですね。オープニングからいちゃうんですね!」

 

一「最早レギュラーですよ、出演頻度的に」

 

楯「今日は簪ちゃんもいるわよ。ねー?」

 

簪「う、うん」

 

瑛「楯無さん、簪を巻き込まないで上げてくださいよ」

 

楯「だって今日の質問は私たち姉妹宛てに来てるんだもの。連れて来ないわけにはいかないわ」

 

瑛&一「「質問の内容もすでにチェック済み!?」」

 

楯「ほらほら、今日の質問行ってみよう」

 

一「えー、カイザムさんからの質問! 俺と瑛斗宛ての質問だ。IS学園で一番楽しいと思ったのは何部ですか?」

 

瑛「部活動の話か」

 

一「生徒会に入ってからいろんな部活に派遣されたよな」

 

楯「二人の仕事っぷりはどの部活動からも好評よ」

 

簪「どの部活が…楽しかった、の?」

 

一「んー、楽しいはどこも楽しいんだよな。忙しいけどいろんな部活できてなんか得した気分になれるし。しいて言うならやっぱ剣道部かな。昔持った杵柄で勝手がわかるし。結構練習相手頼まれたりもするんだ」

 

瑛「俺は…そうだな。印象深いのは茶道部かな。茶道部って顧問織斑先生だろ? ほとんどの時間正座でさ、足が痺れること痺れること」

 

一「俺もそれあった! 巻き込まれてこっちも正座させられたり」

 

瑛「ラウラがすげえ。マジで顔色一つ変えないんだ」

 

一「俺その隣で足痺れて転げまわった。他の部員の人たちも全然平気そうなのも凄いよな」

 

瑛「でもお茶菓子美味いぜ」

 

簪「そうなんだ…」

 

一「まあ最終的にはどこの部活もマッサージしてくれって頼んでくるんだよね」

 

瑛「気持ちいいみたいで寝ちゃう人もいるぜ」

 

一「さて、次の質問行くか。竜羽さんからの質問。更識姉妹に質問。仲直りしたあと二人っきりでどこか遊びに行ったんですか? ってこれか、さっき楯無さんが言ってた質問って」

 

瑛「どうなんです? 実際、どっか行ったんですか?」

 

楯「まぁね。二人っきりっていうのも久しぶりでちょっぴり緊張しちゃったけど、街に買い物行ったりしたわ」

 

簪「でも、あんまり買い物は…しなかったね」

 

楯「あはは、そうね。ただ一緒に街を散策して、おしゃべりしただけね」

 

一「そうなんですか」

 

楯「話したいことがお互いにいろいろあってね」

 

簪「それでも、嬉しかった…」

 

楯「そうね、充分楽しかったわ」

 

瑛「仲が良さそうで、なによりです」

 

楯「な、なんか照れちゃうわね。こういう質問だってわかってても答えるのって」

 

一「楯無さん顔赤いですよ」

 

瑛「ホントだ、ははは」

 

簪「………ふふっ」

 

楯「な、なによ、おねーさんだって照れたりすることもあるんだから」

 

瑛「はいはい。じゃあ次の質問だな。ロキさんからの質問。男sに質問です! 男の浪漫とはなにか!?」

 

楯「力強く言うのね」

 

瑛「そう書いてありますからね。男の浪漫か……浪漫ねぇ」

 

一「ロキさんはパイルバンカーに浪漫感じるらしいぞ」

 

瑛「パイルバンカーって、シャルのラファールに付いてるようなやつかな? そういう浪漫なら俺もISに浪漫感じるぜ」

 

一「ISに浪漫ってんなら俺の白式も武器は一つだけだし、充分浪漫だろ」

 

瑛「それ勝てない。その浪漫には勝てない!」

 

楯「ふっふっふ…」

 

瑛「? 楯無さん?」

 

楯「二人とも、男の浪漫、大事なことを忘れてるわよ?」

 

一「そ、それは?」

 

楯「これよ、こ・れ」ピラッ

 

瑛&一「「!?」」

 

簪「……………!!」

 

楯「どう? 簪ちゃんの、もとい女の子のスカートの中、浪漫感じるでしょ?」

 

簪「お、お姉ちゃん!」ババッ!

 

瑛「…!」

 

一「…!」

 

楯「あら? 二人とも反応がないわね? じゃあおねーさんのも…」

 

簪「ダメ! ダメだよ!」

 

楯「じょ、冗談よ。ほら、二人とも、しっかりして」

 

瑛&一「「…はっ!?」」

 

楯「効果は抜群みたいね、簪ちゃん」

 

簪「そんな親指立てられても……」

 

瑛「大丈夫だ簪! 俺は見てないぞ!」

 

一「お、俺も見てない!」

 

簪「…嘘、見た」

 

楯「二人とも、鼻血」

 

瑛&一「「なっ!?」」

 

簪「……………」

 

瑛「お、おおっと時間だ! エンディングをやってる時間もねぇ!」

 

一「そ、そいつは大変だ!」

 

瑛&一「「それじゃあみなさんさようならー!」」ピューッ

 

簪「…………逃げた」

 

楯「…逃げたわね」

 

簪「逃がさない…打鉄弐式……。」

 

楯「あ、ちょ、簪ちゃん?」

 

簪「……………」

 

 

瑛&一「「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁ…!!」」

 

 

楯「……………みんなは勝手に人のスカート捲っちゃだめだぞ☆ じゃあ良い子のみんな、ばいば~い」


 
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