No.554568

ドキ☆なんかよくわからん恋姫的なもの  4話

ドラぱんさん

今回!!


話が!!

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2013-03-13 00:01:23 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:755   閲覧ユーザー数:688

――――――――――――――――あなたの敵はこの国の常識なのですよ。

 

 

 

 

 

それでも・・・・やる。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――どうやって?

 

 

 

 

 

今はまだわからない。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――あてはあるのですか?

 

 

 

 

 

今はまだない。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――そんなことで変えられると本気で思えますか?

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・ッ!」

 

 

 

目を開けたとき、真っ先に飛び込んできた太陽のまぶしさに、思わず顔をしかめた。

 

清々しい朝だ。

太陽は明るく、空も突き抜けるように青く、風も温かい・・・しかし、そんな自然の恩恵さえ、悪夢によってたたき起こされた今の一刀にとっては忌々しかった。

 

何故、こんなにも変わらないままなのか。

どうして簡単に変わってはくれないのか。

 

そんな意味のない考えばかりが頭の中をグルグルと駆け巡っていた。

 

 

一晩たってなお一刀の心を多く沈み込ませているのは、昨夜のことに他ならない。

 

戯士才の語った事実。

その事実は一刀の憎しみに凝り固まった心にひびを入れるには充分すぎるほどの切れ味。

そしてなおも止めを刺すようにつむがれた戯士才の問い。

一刀はその問いに満足に答えられぬ己自身に対して、あふれ出る激情を抑えきれないでいた。

 

 

どうして・・・・・・どうして・・・・・・

 

 

なおも続く苦悶の輪廻。

 

 

そんな無意味な時間を終わらせたのは、一刀の部屋の扉を叩くノックの音であった。

 

 

 

「おはよう、北郷殿。

 

起きておられるかな?」

 

 

扉の外から聞こえる、ここ数日ですっかり馴染みとなった声。

 

 

一刀は正直、今は誰とも顔を合わせたくはなかったが、それでも声の主が一刀の予想通りであるならば居留守や拒絶など逆効果であろうとため息をひとつつき、声の主―――――――趙雲を部屋に招きいれた。

 

 

 

「おやおや・・・存外元気そうで安心しましたぞ。」

 

 

「そうですか・・・それはよかった・・・」

 

 

 

部屋に入って早々、にやけながらそんなことをのたまう趙雲に、一刀は疲れたようにしぼりだした。

おそらくではあるが、今の自分の状態など趙雲に言わせればその程度なのだろう。

この村に着くまでに聞いたことだが、趙雲は各地を放浪していたらしい。

本人は詳しくは話さなかったが、なかにはどうしようもない悲劇の末路をたどった場所も見てきたはずだ。そんな趙雲からすれば五体満足で生きている自分はまだマシなほうなのであろうと、一刀は頭の片隅で思っていた。

 

 

 

「おきておられるなら丁度いい。

少し我々と共に出かけてみませぬか?

なにそんな遠くにはいきませぬ。」

 

 

 

いつもと変わらぬ飄々とした物言い。

そんな趙雲を見て、一刀は激しく後悔した。

 

 

・・・居留守を使えばよかったと。

 

 

 

宿をでて少し歩いた先の小さな広場。

そこに広がる光景を見て、一刀は思わず声を漏らした。

 

そこらかしこで響く店主の大声とそこを行きかう客の群れ。

 

それは一刀がこの世界ではじめてみる、らしいマーケットの姿であった。

 

 

「こんなところでこれほど活気のある場所があるなんて・・・」

 

 

一刀の口をつくのは感嘆の言葉ばかり。

 

そんな一刀を、共にきていた程立や戯士才、趙雲が笑いながら眺めていた。

だが純粋にはしゃぐ趙雲と一刀をよそに、程立と戯士才の表情には少しばかりの陰りも含まれている。

 

このことを一番最初に言い出したのは戯士才であった。

 

彼女は実のところ、あの時に言葉を投げかけた時点ですでに一刀にこの光景を見せようと心に決めていたのである。

 

言い過ぎたとは思わない。

言わないほうがよかったとも思わない。

 

彼女にとって言わないということは相手への裏切りであるからだ。

 

自分の考えをそのまま相手に伝えなければ相手に対して不誠実であるし、相手のためにもならないと彼女は考えている。

 

その結果、今まで多くの人と対立し友人をなくしてきたが、彼女はあまり気にはしていなかった。

 

しかしながら、同時に彼女は自らの言葉に人一倍責任感も持っていた。

 

自らの言葉が相手に強い衝撃を与えることも知っていた彼女は、そのためのフォローも欠かしたことはないのである。

時には助言を与え、時には機会を与える。

そうしてその人の心が成長する様を観察するのが戯士才の趣味であった。

 

 

そんな彼女であるからこそ、もっとも一刀に興味を示したのかもしれない。

 

 

彼女は見たかったのだ。

あれほどの鬼を飼える人物が自らの与えた機会でどう変わるのか。

 

彼女はその好奇心に染まった相貌を隠そうともせず、一刀に話しかけた。

 

 

 

 

「どうですか?この光景を見て。」

 

 

「どうって・・・いい雰囲気だと思いますよ。

みんな活気があって、少なくとも食べ物で困っていない。」

 

 

「なるほど・・・なるほど・・・」

 

 

 

含み笑いをする戯士才を一刀は怪訝な表情で見下ろした。

その笑いはまるで予想通りに間違えた答えを言う教え子に対する教師のようであると感じたからだ。

 

そしてそれは決して間違いではない。

 

戯士才はその笑顔を消すと、凍てつくような瞳で目の前の光景を睨み付けながら言った。

 

 

 

 

 

「では、この村の本当の姿を見せてあげましょう。」

 

 

広場の通りを抜け、民家の姿もない村のはずれに一刀たちはいた。

無言で歩く程立と戯士才の後をついてきた趙雲と一刀であったが、その胸中には困惑が渦まいていた。

途中、広場を通った際、当然のごとく趙雲と一刀は立ち並ぶ屋台に目を奪われたが、戯士才はそんな二人にはじめてみせるほどの迫力ある眼力でいったのだ。

 

屋台のものには何一つ手をつけないでください―――――――――――と。

 

実際、程立と戯士才は度々かけられる店主の大声をすべて無視しずんずんと先に進んでいったのである。

それどころか、肉を焼いていた店の店主に趙雲が試食を進められた時など、程立が店主が手渡そうとしていた肉を叩き落としたほどだ。

趙雲も、いつもは穏やかな程立の行動だけに珍しく困ったような苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

 

だがそんな二人の疑問は一気に氷解していくことになる。

 

 

 

「着きました・・・ここです。」

 

 

 

戯士才がやっと口を開いたのは、村のはずれに着いてしばらく歩いた後だった。

一行は背の高い林の中を、隠れるように屈みながら進んでおり、先頭を行く戯士才や程立はともかく、後に続く一刀と趙雲には周りの状況は全くわからない。

いや、正確にいえば、前方から聞こえてくる作業音や人の声からそれなりの人数が何かをしているということだけはわかる。

 

 

 

「では~頭を上げてみてください~。

 

あ、そっとですよ~、そっと~。」

 

 

今なお眠そうな程立の声に促され、一刀と趙雲は顔を少しづつあげていった。

そこに広がる光景を一刀が見たとき、はじめそれが何をしているところか理解できなかった。

 

無数の木箱と数十台の檻付きの馬車。

そして武装した兵士達の傍らを歩く、ボロを着て手を紐でつながれ一列に歩いていく人々――――――――――おそらく全員男性だ。

 

 

 

「なんだこれは、まるで囚人の収監のような・・・」

 

 

 

そう呟きながら、一刀が隣の同行者を仰ぎ見たとき、その異常な表情に思わず表情が固まった。

 

そこにはいつもの飄々然とした余裕のある雰囲気など微塵もない。

肩を震わせ、頬を高潮させ、目は血走り唇はわなないている。

 

そこにあるのは驚きでもましてや恐怖でもない、純粋な怒りだった。

 

趙雲はそのきつくかみ締めた唇を開き震える声で呟く・・・

 

 

 

 

「奴隷市場・・・・・・・」

 

 

「・・・・・・・え?」

 

 

 

それは想像だにしない単語であった。

 

 

「そう、これは奴隷市場です」

 

勤めて冷静に、冷酷ともいえるほど冷え切った声色で戯士才は言った。

この村は奴隷市場で栄えている村であると。

そのため人の出入りが多く、あのような発展した商店通りがあるのだと。

 

しかし・・・しかしである。

 

 

「だけど、あそこの商店の人たちはみんな明るかったし親切だったじゃないか・・・」

 

 

そう、あそこの人々はみな笑顔であった。

まるでいまの世情など関係ないかのように明るかった。

 

しかしそんな一刀の言葉を戯士才の言葉が打ち砕いた。

 

 

 

「あの商店の店主の中に、一人でも男性はいましたか?

 

一人でもあなたに声をかけてくる人がいましたか?」

 

 

 

そして気づく、そんな人はいなかったと・・・。

 

 

――――――――――――――――――ただの一人もである。

 

 

 

 

「つまりあの人たちは北郷さんを風たちが売りにきた奴隷と勘違いしたわけですね~。

 

ちなみにですが、先ほど星ちゃんが食べさせられそうになったお肉・・・」

 

 

と相変わらずの間延びした声で、程立がいう。

しかしその瞳には今までのような柔らかみなど微塵もない。

 

 

 

「もともとはあの人達と同じものだったんですね~」

 

 

 

そういいながら程立が指差した先・・・蓋の開いた木箱・・・・その中身・・・

 

 

 

一刀は思わず嘔吐した。

 

 

頭の中を駆け巡る、いつもどおりの、だからこそ余計に響く程立の言葉。

それは不思議と抗うことを許さぬ不思議な響きがあった。

だからこそ一刀は否応がなく理解する、いやさせられる。

 

 

 

 

(これが今の現状・・・・・この国の常識。)

 

 

 

 

日本という国で、平成という世で生きてきた・・・そしてこの世界でも男村という特殊な環境で生きてきた一刀にとってはあまりにも直視しがたい光景。

しかし見なければならない。焼き付けなければならない、『これからのために』。

 

こみ上げる嘔吐感に肩を上下させながら、しかしその瞳は燃え盛るように輝いている。

 

そう、そうなのである。

 

今の一刀の脳裏にあるのは激しい怒りと少しの驚きと固い覚悟だけ。

 

 

今まで自らを苛んできた暗いわだかまりなど、既に消えうせていたのだ。

 

 

 

 

 

 

そんな一刀を戯士才は今までとは違う輝いた目で見つめていた。

 

 

 

(これだ!この瞬間がたまらない!!)

 

 

 

おそらくかつて戯士才の突きつけた問いの答えはいまだ見つかっていないだろう。

 

しかし、そんなことは関係なくなっている。

ただやるだけ、それしか頭にないのだろう。

だがそうでなければいけない。

戯士才の問うた内容など、大事の前の小事に過ぎないのだ。

 

やり方が重要なのではない、やることが重要なのだ。

 

戯士才が最も好む人種は無謀と思えることに突っ込んでいける勇敢な馬鹿なのである。

 

臆病な賢者であることを自覚している戯士才にとって、そんな存在はまぶしく見えるのだ。

 

しかも、この人物は常識を覆すなどと吹いて回る大馬鹿である。

これほどの馬鹿は、今まで数多くの馬鹿を見てきた戯士才でさえ類がない。

おそらく比肩しうるは知る限り二人だけ。

 

一人は一役人に過ぎぬ身であるくせに天下を手にするなどとのたまった宦官の娘、そして・・・

 

 

 

「この趙子龍の前でぬけぬけと・・・あまつさえあのような・・・・ッ!」

 

 

もう一人の稀代の馬鹿が血管を浮かび上がらせながら目の前の奴隷商人たちに踊りかかる。

その瞳は殺意に染まり、まるでトラのように跳躍しながらその槍を振るう。

 

護衛も剣を抜き攻めかかるも応戦空しく、趙雲による血化粧があたりを染め上げていった。

 

そんな光景に戯士才は呆れたように嘆息した。

 

 

(まったく、彼らは国のお抱えだろうに・・・おたずね者にでもなったらどうするつもりですか・・・)

 

 

そんなことを思いながらもその口角は本人の自覚なしにつりあがっている。

 

 

そうだ、馬鹿はこうでなくては。

後のことなど考えず、自らの信念に従う・・・だからこそ人々はただの馬鹿を英雄と崇めるのだ。

 

 

(さて、もう一人の馬鹿は・・・)

 

 

と、一刀の様子を伺う戯士才であったが、肝心の一刀の姿がない。

はたしてどこに行ったのかと辺りを巡らせる戯士才であったが、烈火のごとく響く掛声で気づく。

 

なんのことはない、もう一人の馬鹿も既に信念に流されていたのだ。

 

 

(やれやれ・・・猪にもほどがありますね。)

 

 

そう心の中で思いながらもその頬は高揚で真っ赤に染まっていた。

 

 

そして・・・・遂には臨界を突破する。

 

 

 

「・・・・・・・・ぷはっ!」

 

 

「は~い凛ちゃん、と~んとん。」

 

 

「ふがふが・・・」

 

 

 

 

興奮のあまり鼻血を流し、程立にとんとんされる戯士才。

 

 

なんかもう・・・台無しであった。

 

 

 

その後の話をしよう。

 

その後一通り暴れまわった一行は程立の提案によりその日のうちに村を立つことにした。

そしてその際に戯士才はひとつの提案を一刀にすることになる。

つまり我々と共に諸国を旅してみないかということだ。

その提案にこちらこそと一刀は同意し、四人での旅は始まったのだ。

 

広い大陸の北から南、西から東。

 

一刀がある程度、見識を深めた頃には既に2年の月日が経っていた。

そして一刀がこの世界に来て10年の月日が経った頃、ようやく歯車は動き出す。

 

暦は184年、一刀26歳の時・・・場所は北平である。


 
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