No.554439 リリカルなのはSFIAたかBさん 2013-03-12 19:17:51 投稿 / 全4ページ 総閲覧数:5775 閲覧ユーザー数:5203 |
第二話 私はティアナ・ランスター
三人称視点。
雲一つない天気。
まるで戦場跡地を思わせるような街並み。
そこは時空管理局が管理しているミッドにある訓練場の一つ。
市街戦を想定とした空間を駆け抜ける影が二つ。
「ティア!そっち行ったよ!」
短く切りそろえた青の髪に鉢巻をつけた元気いっぱいの少女が廃墟のビルに穴を開けながら飛び出してくる。
「わかってる!シュートッ!」
もう一つの影はオレンジ色の髪をした少女。ティアナ・ランスター。
魔法を中心に教育している軍学校を首席で卒業したエリートだ。
ただし、彼女は魔力自体の強さで強くなったわけでは無い。
彼女が放った魔法弾は三つ。
「・・・あれ?あの子?」
そんな二人を遠くの場所からモニター越しに見守る茶髪の女性。
彼女はティアナの攻撃を見て疑問に思った。
彼女ならもっと威力の高い魔弾を撃てるはずなのに何で撃たないんだろうと。
そのうちの一つは目標としていた全長が一メートルほどのカプセル状の機械に当たるが何ら効果なく弾かれる。だが、残りの二つの魔弾がその疑問に答える。
一発はカプセルのすぐ上にあったコンクリートの壁に当たり、その壁を砕く。
カプセルはその瓦礫に潰されないように逃げようとしたが残りの一発に足止めを食らい動けない。
結果、カプセルは瓦礫に潰されて爆散した。
「・・・これは反則とられないかな、ティア?」
「大丈夫でしょ、これでも
「でも…」
「それにね、スバル。人間があんな狭いところから飛び出してくるわけない。たとえ、人間だとしてもあんたから逃げ切れる人間よ?あんな瓦礫にやられるわけないわ」
スバルと呼ばれた少女はティアナの言葉に納得できないのかまごまごしている。
「それに反則とられるのは私よ。あんたが気にすることはないわ」
ティアナは自分が手にしている二丁拳銃型のデバイスをクルクルとまわして腰のホルスターに収める。
「でもぉ…」
自分が逃がしたカプセル型の標的の所為で反則を取られるのが嫌なのかスバルは悲しそうな顔をする。
「はぁ…。そんなに落ち込むなら私の点数稼ぎの為にもっと頑張んなさい。あんたはクイント・ナカジマの娘なんでしょ?あんたなら出来るわよ」
「う、うんっ」
ティアナはふっと笑いかけると、スバルはそれに答えるかのようにコクコクと頷く。
もし、スバルに犬の尻尾がついていたら千切れんばかりに振っていただろう。
「「っ!」」
ズドオオオッン!
と、二人が笑い合っていると上空から直径二メートル程の球体が落ちてきた。
二人はその球体に潰されないようにその場から弾けるように離れる。
「ティア!あれ!」
「わかっている!一度離れるわよ!」
あれが最後の障害なんだろう。
先程逃げていたカプセル状の標的に似ている。だが、明らかに先程のよりも装甲が厚い。
ティアナは自分の使える魔法では効果は薄いと見たのか、スバルに指示を出す。
「スバル、私が指示を出すからそれまでは回避に専念!あいつの動きを捉え切れたらあんたの大技で沈めなさい!」
「わかった!」
そんな二人を見守る女性は非常にうれしそうな声色で二人を称賛する。
「へぇ、初心者や経験が浅い人だと突っ込んで行くのにそうはしないで観察に入るか。でも…」
球体型の機械から蛇腹のように伸びてきた四本の鉄の腕は地面に根を張るように這いつくばるとまるでバリアを張るかのごとく放電し始め、自分を半球状のドームの中にこもる。
そして、そのドームの中からビームのような物を放ってくる。そのビームはドームを突き抜けて二人に襲い掛かる。
「うひゃああああっ」
「ちぃっ、シュート!」
スバルはそれを転がるように避け、ティアナは瓦礫の合間に身を隠しながら魔弾で応戦するが、半球状のドームに弾かれる。
「アレはドローンⅡ型。一度、守りに入るとなかなか倒すことは出来ないよ。さぁ、どうするのかな?」
二人を見守る女性はそう言いながら自分がいた部屋を出る。
もうすぐ、試験終了時間だ。
今から自分も現場に向かえば試験の合否は関係なく終了時間ぴったりで到着するだろう。
ティアナ視点。
「ティア~、あいつビリビリいって近づけないよ~」
「あ~、そんな情けない顔をしない」
情けない声を出しながら私に言い寄ってくるスバルの頭をぐりぐりと撫でながらスバルを私の体から引き離す。
私達二人が隠れている瓦礫の向こう側からゆっくりとさっきの球状カプセルが四本の鋼鉄の足で蜘蛛のように這って近づいてくる。
「一応、対抗策はあるわ」
「本当!」
「声が大きい。まったく、でも私は補助しか出来ないわよ。決めるのはあんた。チャンスは一回。失敗したらあんたは自爆覚悟で突貫しなさい」
一度知られたら絶対に改善される。
あれだけ精巧なロボットは一撃で仕留めないと…。
「無情すぎるよ!」
・・・スバル。そんな難しい言葉を知っているなんて。
「・・・ティア?どうしたの?」
「うん。気にしないでちょっと信じられないものを見たから」
「?」
首を捻るスバルは放っておいて作戦を伝える。
するとスバルは目をぱちぱちとしていたが何か慌てた様子で私を止めようとする。
「それって、一番ティアが危険だよね!」
「だからってあんたにやらせるわけにはいかないの。あんたは攻撃に専念」
「でもぉ・・・」
ああ、もう!めんどくさい子ね!
「スバル。私はティアナ・ランスター。あんたの知っている私はそんなに頼りない?」
「そ、そんなことはないよ!」
「だったらいいじゃない。私の心配をするくらいなら一回で決めなさい。それじゃあ、作戦開始!」
私はスバルの肩を叩いてビルの中に入っていく。その後ろからスバルは慌ててついてくる。
気張んなさいよスバル。頼りにしているんだから。
スバル視点。
私の親友ティアナ。私はティアと呼んでいる。
ティアはとても頼りになる親友だ。
学校でも主席をとっても天狗にならず、いつでも自分のスキルの向上に余念がない。だけど、私みたいにダメな子でも面倒を見てくれている。
まるで、あの空港で私を助けてくれた
少しぶっきらぼうだけど本当は優しい。炎の鞭を持ったお姉さんによく似ていた。
お姉ちゃんのギン姉は氷の盾を持ったお姉さんに助けられた。
それから私達はその人達のようになりたくて努力してきた。
だけど、私はティアに助けられてばっかりだ。こんなんじゃ駄目だ。私はもっと強くなる。その為にも…。
「力を貸してね。相棒」
私は母さんから譲り受けた籠手型のデバイス。リボルバーナックルにお願いをする。
そして、魔力と気配を出来るだけ悟られないように小さくして機会をうかがう。
ズシン。ズシン。と、何か重いものが私の頭上にある天井から聞こえる。
今いるビルの上の階にあの丸い機械がいるんだろう。そして、ティアも…。
(…スバル!やるわよ!)
先程の球体。
あのドーム状のバリア。一見すると全方位を守っているように見えるけどティアはしっかり見ていた。あのバリアは段差のある所を通ると、その段差の間にバリア隙が生まれる。
だけど、その隙間が小さすぎて私達の攻撃は通らない。
そこでティアナが建てた作戦はこうだ。
隙間が小さければ大きくすればいい。
「うん!リボルバーナックル!」
ティアナの役割は私を幻術で隠すこと。撃破対象を自分がいる上の階におびき出すこと。
そして、おびき出した目標の足場を壊すこと!
[カートリッジロード!イグニッション!]
魔力をカートリッジで使って強化。狙うは天井の向こう側にいる標的!
私が天井に向かって飛び出すと同時に天井の四隅にティアが放っただろう弾痕が刻まれる。その弾痕から幾つも亀裂が走り、天井が崩れ落ちる。
崩れ落ちる天井の向こう側。私の目の前に撃破目標の球状カプセルが落ちてくる。ただ、その身を守るドームは未だに全身を覆えていない。
アリサさん!技を借ります!
カプセルは私の存在に気付いたのか鋼鉄の腕を振り回そうとしたが、地面をしっかりつかめていないからかバタバタと動かすだけ。
ドームもガードも間に合わないカプセルに私は右手を突き出す。
「うおおおおおおっ!バァアアアアニングブレイカァアアアアアア!!」
ズドオオオンッ!
私の背中から勢いよく吹き出す魔力の翼は私の体を更に力強く前に押し出す。その勢いに乗せて突き出す腕は、拳だけではなく私の体すらも通れるほどの巨大な穴をカプセルに作り出して粉砕していった。
ばらばらと吹き飛ばした後を見て、私は一息つくと上の方で私にむかって親指を立てるティアがいた。
「ティアー、やったよー」
「ナイスよスバル。それじゃあ、ゴール地点まで行くわよ」
こうして、私達は無事試験を終了することが出来た。
三人称視点。
「今の技って…」
「アリサちゃんのやろ」
「でもなんであの子がアリサちゃんのを?」
私達三人はヘリで移動しながら今回有望視されている二人の映像を見ていた。
ティアナは臨機応変がよくできているし、スバルは粗削りだけど突破力のある魔導師になりそうだ。
「あ、あれじゃないかな。はやてが消火活動をした空港で、アリサとすずかが助けたっていう子」
フェイトがそう言うとはやては得心したのかポンと手をうって頷いた。
「あー、たしかにゲンヤのオッチャンの娘もそこにおったなぁ。あの子なんかなぁ?」
「だとおもうよ。ミッドでアリサちゃんの技を知っているのは私達以外だと限られるしね。それにしてもあの時の子か」
「あの時、母さんが率いる部隊。特別派遣チーム。ゼクシスがいなければ被害はもっと拡大していただろうし…」
部隊というものはそう簡単には動かせない。その部隊の隊長でも管理局に属している以上、さらに上の人達に指示を仰がなければならない。
だが、ゼクシスは管理局の協力は受けるが、正式な管理局の部隊ではない独立した部隊なので指示を仰ぐまでもなく救助など行うことが出来る。
「で、試験の結果は?教導官のなのはちゃん?」
「うん。私は合格でいいと思うよ。ただ、やり方が・・・」
「瓦礫で攻撃はちょっと、ね」
ティアナの中盤でやった攻撃。
あれが人だったら大変だ。魔法には非殺傷設定というものがある。それがあるので攻撃された方は滅多な事では死なない。
ティアナは人である可能性は低いと判断した。確かにそうではあるのだが、低いと言うだけで人の可能性が残ってない訳でもないのだ。
「まあ、人じゃないってわかっていたからあんな攻撃したんだろうけど…」
「うーん。これを出汁に引き抜いてみようかな?ついでにいろいろと聞きたいし」
「・・・うん。そうだね」
はやてのやや物騒な発言をスルーしながらもなのはは何か引っかかることがあった。
瓦礫で攻撃。
自分は魔法で戦ってきた。
魔法が使えるのにそんな非常識な攻撃をしてくる人を自分は他にも知っている。そして、思い出した。
「・・・あっ、高志君!高志君と似ているんだティアナ!」
「なんやて?!」
クロウと戦った事のある高志。当時は九歳だった高志は遠距離攻撃方法が無かったのでビルの中にクロウを誘い込み、冷蔵庫や金庫といった物を投げつけてブラスタと戦っていた事がある。
「そうかな?あ、でも、なんとなくわかるかな。雰囲気が少し似ているし…」
幼い頃に会った時、フェイトは自分を構ってくれていた高志の事を思いだしてティアナの方を見る。
「ふーん。これは何が何でもティアナにはいろいろと話してもらわんとなぁ」
くっくっくっ。と、不気味に笑うはやてを見て苦笑することしか出来ないなのはとフェイトだった。
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