第26魔 黒衣集結、英雄からのギフト
明日奈Side
和人くんのお見舞いのあと、自宅へと帰りついたわたしは少しの勉強を行い、昼食を取り、
長時間のプレイになった時の為に軽めの準備を整えた。
そして午後3時、携帯端末からアラームが鳴り、音を止めてナーヴギアを被った。
ベッドに横になり、ALOへとダイブした。
明日奈Side Out
アスナSide
瞼を開き、宿屋のベッドから身を起こした。すぐ隣のベッドからリーファちゃんも体を起こしたようだ。
「いよいよだね…」
「はい、頑張りましょう」
「頑張るです!」
わたしの呟きにリーファちゃんが答え、胸ポケットからユイちゃんが出てきて意気込んだ。
わたし達は部屋から出て下の階へと下りた。
そこには既に男の子達が集合していて、こちらに視線を向けてきた。
「それじゃあ、取り敢えずは例の世界樹の入り口に行ってみよう」
ハクヤ君がそう言い、わたし達は頷き、宿屋を後にした。
宿屋から出て歩き出そうとしたわたし達の上空に、雷が奔って黒い裂け目が現れた。
「「「「「「「……まさか…」」」」」」」
再び目にする現象に予想しながら
「(すた!)ふぅ、着地せい「「きゃあっ!?」」(どんっ!)げふっ!?」
1人の男性は着地に成功したものの、後から落ちてきた2人の女性が男性の上に落ちてきて、彼は押し潰された。
「び、びっくりしました…」
「な、なんなのよ…」
女性2人は驚いた様子で辺りを見回して、わたし達を視界に収めた。折角なのでわたしが代表して声を掛けよう。
「ALOへようこそ、ティアさん、カノンさん」
「「アスナさん(ちゃん)!」」
ウンディーネのティアさんとインプのカノンさんだ、2人は驚きつつも喜びの表情を浮かべている……が、
「あのさ、2人共降りてくれると助かるんだけど…」
「「シャイン!? ご、ごめん(なさい)!」」
2人はノームのシャインさんの上に座っていることに気が付くと慌てて立ち上がった。
「ふぅ~、ったく……ま、一応いいところに出て来れたってことでいいのか?」
「その通りっすね。どもっす、シャインさん」
ニカッと笑いながら聞いてきたシャインさんにルナリオ君が頷く。
これで揃った、SAOにおいても最高戦力と言われた黒衣衆8人の内の7人が。
あのままあそこで説明するのもどうかと考えたので、わたし達は別行動を取ることにした。
ルナリオ君とヴァル君とハジメ君がシャインさんとティアさんとカノンさんに、
現状や起こった事象の説明、飛行や装備購入を担当し、
わたしとユイちゃん、リーファちゃんとハクヤ君が一度世界樹の入り口に向かいつつ、情報収集を行う。
わたしは3人と共に世界樹の入り口に歩いて向かう。
「それにしても大きいな、世界樹は…」
「あの樹の上に街があって、そこに妖精王オベイロンと光の妖精アルフが住んでいて、
最初に妖精王に謁見出来た種族がアルフに転生できる……っていう、話しのはずだったんですけど…」
ハクヤ君の呟きにリーファちゃんが説明するように答えた。
オベイロン、GMが使うキャラクターの名称……奴があそこに…彼と…。
「外側からは登れないよな…」
「そうですね。幹の周りは侵入禁止エリアになってますし、飛んでいこうにも翅の方に限界が来ちゃうんです」
ハクヤ君とリーファちゃんの言葉は、わたしの耳には入っていなかった。
中央市街に入る為の門を潜り、中へと足を踏み入れたその瞬間だった。
わたしは
「? アスナさん?」
「アスナ…?」
リーファちゃんとハクヤ君が足を止めたわたしに気付いて振り返る。
「……いる…」
「アスナ、どうしたんだ…」
「っ、パパです! ママ、このまっすぐ上空にパパがいます!」
「ホントに!?」
わたしの小さな呟きにハクヤ君が危なげな表情で問いかけ、ユイちゃんの一言にリーファちゃんは驚きのままに訊ねた。
いる……彼が、キリトくんが…この上に!
わたしは水色の翅を瞬時に展開して、直上へと一気に翅を羽ばたかせて飛翔した。
「くっ、リーファちゃん! ルナリオ達を、早く!」
「は、はい!」
わたしは弾丸の如く空中を突き進み、青い空に浮かぶ雲を突き破ろうと突撃した……けれど、
―――ダァンッ!
「きゃっ!?………っ、ハアァァァァァ!」
見えない壁に阻まれた、システムの障壁なのだろう。
だけどわたしは『クロッシングライト』を抜き放ってそれを斬りつけた。
弾かれる、意味がない、だとしても! けれどわたしの手が掴まれた。
「やめろ、アスナ!」
「離して! そこに、キリトくんがいるんだ!」
止めてきたのはハクヤ君だった。だがわたしはその制止を振り切ろうと足掻く。
「ママ、わたしが警告モード音声で呼びかけます! パパ、わたしです!パパ!」
必死に叫ぶユイちゃんの隣で、わたしは障壁を殴りつけていることしか出来なかった。その時…、
―――(アスナ…)
「え…?」
彼の声が聞こえた気がした……違う、彼の声を
アスナSide Out
キリトSide
いつものように鎖に吊るされながら雁字搦めにされていたが、俺は彼女の存在を確かに感じ取った、来てくれたか…。
同時に彼女の只ならぬ様子に、この現状を維持したままの自分に怒りと不甲斐なさ、
彼女への申し訳なさと愛情が沸き起こった。
「茅場、監視を逸らしてくれ。あと鎖の解除を……来たんだ、彼女達が…」
『分かった……………よし、問題無い』
「ああ…」
鎖から解放され、自由になった体で鳥籠の中にある花壇へと近づき、そこに隠しておいたカードキーを手にする。
そして格子に近づき、雲の下へと顔を俯かせて目を閉じる。
「(アスナ…)」
俺は彼女へスキルを使った……システム外スキル《接続》を…。
キリトSide Out
アスナSide
わたしは障壁を殴りつけるのをやめ、空を見上げながら瞳を閉じた。
この感覚は懐かしい、あのSAOで戦闘中に彼と共に至った境地…彼は、キリトくんはこう言ってた、《接続》と…。
―――(アスナ、ごめんな……こんなところまで、来させてしまうことになって…)
―――(そんなことないよ…。わたしは、キリトくんの為なら…)
―――(ユイは、ちゃんと
―――(うん、ちゃんと
―――(直葉は、元気にしているか…?)
―――(うん、キリトくんを助ける為に、手伝ってくれてる…)
―――(ハクヤ達は、どうしてる?)
―――(みんなも、キリトくんを助ける為に、一緒にいてくれてるよ…)
―――(あとで、たくさん謝るから……だから、俺の元まで…)
―――(行くよ、わたしは…アナタの元まで…)
―――(俺はアスナを…)
―――(わたしはキリトくんを…)
―――(愛している・愛しています)
聞こえなくなった心の声、繋がっていたはずの心がまた途切れた。
それでもほんの僅かな逢瀬だったとしても、これはわたしの力になってくれる。
わたしは瞳を開いた、上空から何かが落ちてくる。それは、1枚のカードだった。
「アスナ、それは?」
「これは……キリトくんからの
「「キリト(パパ)からの!?」」
わたしの答えた内容にハクヤ君とユイちゃんは驚愕する。ユイちゃんがカードに触れた。
「これ、システム管理用のアクセス・コードです!」
キリトくんはわたし達に必要な物を届けてくれた。
わたしの内から湧き上がる確かなもの、それは彼への愛情、いやもっと暗いもの…。
「ハクヤ君、みんなを早く連れてきて…」
「ぁ、あぁ……」
わたしの有無を言わさぬ物言いに怯んだ様子のハクヤ君、わたしが無理をしないと思ってくれているのか、
この場を離れてみんなを迎えに行ってくれた。
リーファちゃんが一度向かっているからすぐに来ると思うけど。
「ユイちゃん、世界樹への入り口は?」
「ママ…」
心配そうにわたしを見つめてくるユイちゃん。本当は心配を掛けたらいけないのにね…。
「ごめんね、ユイちゃん…。でも、いますぐ何かをしていないと……わたし、狂っちゃいそうなの…」
「っ……あの前方に見える階段を上ってすぐです!」
「うん、ありがとう…行くよ」
わたしは空中からそのまま入口らしきゲートへと向かって飛行した。
グランド・クエスト、それが行われるであろう入り口の扉の前には巨大な像が2体おり、そこから声が響き渡った。
『未だ天の高みを知らない者よ。王の城へ到ることを望むか?』
その言葉の後に出てきたYesかNoの選択肢に、迷わずYesを選ぶ。
『さればそなたが背の双翼、天翔に足ることを示せ』
そして巨大な扉が開かれた。何故か恐怖はない、それよりも彼への想いが上回ってしまう。
「ユイちゃん、頭をしっかり引っ込めてね?」
「はい。ママ、頑張ってください」
ユイちゃんにそう言い聞かせて、わたしは開かれた扉の中へと足を踏み入れた。
アスナSide Out
To be continued……
後書きです。
ついにシャインとティアとカノンが合流しました。
アスナはキリトとの心の会話に何かが蠢きだす・・・。
次回、アスナが単独で『グランド・クエスト』に挑みます!
どうなるかは是非お楽しみに。
それでは・・・。
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第26魔です。
残りの3人と合流し、彼からの届け物が・・・。
どうぞ・・・。